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「フェアプレー」という言葉の暴力〜浦和vs湘南戦を経て、VARやGLTの導入と、あの時の浦和の対応について考えてみる〜

何故か家に侵入してきたヤモリとの戦いに勝った。

 

どーもこんばんは

 

自称圧倒的なテクニックで外に逃がしました…。

 

さてさて、今回は審判、レフェリングについての話をしようと思います。

 

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VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)GLT(ゴールラインテクノロジー)などの存在が認知され、2018年のロシアW杯以降はUEFAチャンピオンズリーグなどの主要大会でも使用されるようになった事から、その使用の是非などが度々議論されるようになっていますが、この議論が更に加速しそうな事件が先日起こってしまったのは皆さんもご存知でしょう。

5月17日に埼玉スタジアム2002で行われた浦和レッズvs湘南ベルマーレの試合で、湘南の杉岡大暉の放ったシュートがポストに跳ね返った後でゴールネットを揺らしたものの、審判団はこれをゴールと認めずに試合を続行させました。試合は湘南が大逆転勝利を収めた事で美談になりそうな空気もありますが、実際問題として湘南が今シーズン、得失点差1の差で優勝やACL、賞金圏内や残留を逃してしまう可能性だってある訳で…。

 

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という事で今回は、議論されているGLTやVARをJリーグで導入する事について冷静に考えてみよう、そして浦和vs湘南戦でも議論となった「フェアプレー」について、私なりの考えを書いてみたいと思います。

浦和vs湘南戦が終わった後に慌てて書いた此方のブログと内容が重複するところも多分出てきますが、そこはご了承下さい。

 

 

 

ゴールラインテクノロジーJリーグで導入するべきかどうか。

 

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大前提として、ゴールラインテクノロジー(以下GLT)を導入した方が良い事は間違いありません。VARはデメリットと言える部分もありますが、GLTに関しては導入さえしてしまえば、後はメリットしかないと言ってもいいでしょう。

更に今シーズン、Jリーグでは前述の浦和vs湘南以外にも、FC東京vs湘南ベルマーレ森重真人のゴール、サンフレッチェ広島vs横浜F・マリノスでの川辺駿のゴール、鹿島アントラーズvs清水エスパルスでの中村慶太のゴールが明らかにゴールラインを超えているにも関わらずノーゴールと判定されて物議を醸しているだけに、GLT導入が求められるのは必然の流れでしょう。

 

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ただ、現実問題としてGLT導入は莫大な費用がかかります。当然ながら、GLTをJリーグで導入するならば全試合で導入する必要があり、「GLTが適用されるスタジアムと適用されないスタジアムがある」という状況は絶対作ってはなりません。更に、GLTを導入するとなればスタジアム側にもある程度の設備を要する必要がある訳で、設備の揃った新しいスタジアムと、そうでない古いスタジアムが混在するJリーグでGLTを導入するのは現実的に厳しい…というのが実情と言えます。

実際、DAZNYouTubeで配信されている「Jリーグジャッジリプレイ」という番組に於いて、日本サッカー協会審判委員会副委員長であるレイモンド・オリバー氏も「VARを導入すれば、結果的にGLTの役割も兼ねる事が出来る」という見解を示していましたし、国際的な流れとしてもリーグに導入するならVAR、ワールドカップクラスの大会になった時はGLTも考える…という傾向になると思われます。

 

 

 

②じゃあVARは?

 

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…ならば、GLTの役割も兼ねる事が出来るVARを今すぐにでも導入した方がいいのでは?と考えるのは自然な流れではあると思います。ただ、やはりVARというものは画期的なシステムである為、その導入のタイミングには慎重さが求められる訳で。

まず、平等性という観点からシーズン途中に導入する事はする訳にはいかないでしょう。Jリーグルヴァン杯プライムステージからVARを導入する事を発表していますが、これは1試合ごとの勝敗で優勝が決まるカップ戦だから可能な事であって、1試合1試合の積み重ねの結果が順位に反映されるリーグ戦では公平性に問題が生じるのです。

 

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来年以降の導入に関しても、Jリーグジャッジリプレイなど、様々なコメントを見るに2020年シーズンからの導入を目指してはいるのだろうと思いますが、GLTより低コストで済むとはいえ、VARを扱う為の専門的なトレーニングというものを履修しなければならない事がFIFAガイドラインで定められており、更にそのトレーニングを受けた、一定以上の人材の確保が求められますから、2020年までに導入出来るかどうかも判断はし難いと言えるでしょう。見切り発車でVARを導入し、必要以上のトラブルを巻き起こしては本末転倒ですから、まずは今年のルヴァン杯でVARが良くも悪くもどのような影響を与えるか…というところが一つのキーポイントとなりますね。

余談ですが、W杯で初めてVARが発動されたフランスvsオーストラリア戦はカザンで現地観戦してました…。

 

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③審判について思う事

 

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中学、高校、大学でサッカーを部やクラブチームに所属してプレーしていた人間なら、主審はともかく副審なら練習試合なり紅白戦なりで一度くらい経験した事のある方も多いと思います。その為、私もしょっぼいしょっぼいものではありますが、一応審判経験者といえば経験者です。紅白戦レベルの試合でも難しさだったりを感じたりしていましたから、その任務をトップレベルで務めようとしている事は純粋に尊敬の念を抱いていますし、とりあえず審判に真っ先に批判の目が向きがちな風潮には賛同しかねるというか、同情の念すら持っています。

例えば、際どい接触プレーが起こったとして、審判はそれをファウルと判定したとしましょう。その場合、このファウルという判定が正しかったとしても、際どいシーンであった以上相手チームからは「審判どこ見てんだよ!」「ミスジャッジだろ!」という意見やブーイングは確実に寄せられてしまいます。そういう仕事だと言ってしまえばそれまでですが、審判というのは実に気の毒な立場で、際どいシーンという審判が一番必要な瞬間が訪れたその時、どう転んでも100%どちら側かに文句を言われる…そういう立場で彼らは戦っています(あくまで一般的事例に於いてですので、さすがに今回の浦和vs湘南戦の件に関しては論外だと思っていますが…)。

だからこそ選手のみならず、テクノロジーは審判救済の意味でも導入すべきです。今年からはDAZNYouTubeJリーグジャッジリプレイという番組が配信されていますが、これを見ると改めてレフェリングの難しさを感じますし、多角的に見る事の出来る「新しい目」というテクノロジーは、審判にとって日々進化していくサッカー界で戦い続ける為の武器になると思うのです。

 

 

 

④フェアプレーとは

 

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前述の浦和vs湘南戦の誤審に関連して話題になった事と言えば、「あの誤審の後、浦和はどう対応すれば良かったのか?」という点でしょう。試合終了後に本人も認めているように、GK西川周作はゴールである事を認識しており、その後のスローイングもゴールを誤魔化す為のパスでは無い事は映像を見ても明らかでした。その為、西川を筆頭に浦和の選手に対しては「なぜ自分達でゴールであると審判に進言しなかったのか?」という事、そして「なぜ湘南にオウンゴールや守備放棄などで一点を返さなかったのか?」という事がネット上などでも話題になっています。

 

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もし仮に、西川が「あれはゴールだった」と審判に自ら申告したのであれば、それはフェアプレー精神に準じた素晴らしい行動である事に異論はありません。しかし、これはそういう行動をしたら賞賛されるべきという話であったとしても、それをしなかったからと言って非難されるのは明らかに筋違いです。審判は西川に確認を取るべきだった、という意見も見受けられますが、選手の立場からすれば、西川にこの状況で「ゴールだった」と言わせる事は正直酷ではないでしょうか。あれくらいのシーンならDAZNの映像でも確認出来たでしょうし、西川にその行為を求めるまでは良いとしても、叩くのは違うと思っています。

かつて、ブンデスリーガの試合で元ドイツ代表ミロスラフ・クローゼが与えられたPK判定を自己申告で返上した…という事例があり、それと比較して西川を叩く人も見受けられますが、そもそも獲得したところでGKがシュートを止めるor枠外に外す可能性のあるPKとゴールかどうかを自己申告する事を比較する事自体がそもそも無理があるのではないでしょうか。PKや、単純にボールアウトを自己申告するならまだしも、ゴールか否かとなると審判がゴールと判定してしまっている以上、試合やこれからの秩序を色々な意味で破壊してしまう恐れすらあるので、むしろこればかりは西川としては「何もしない事」の方が賢明だと思います。西川だって別に、細工したりしてゴールを無かった事にしようとしていた訳ではないでしょうからね。こればっかりは、だんまりを決め込んだというよりも、下されたジャッジに身を委ねるしか出来なかったと考えるべきです。

 

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「浦和はオウンゴールなり、守備放棄なりで湘南に1点を返すべきだった」という意見に関しては、先日のイングランド2部リーグのリーズ・ユナイテッドvsアストン・ヴィラのケースや、2003年に西京極で行われた京都パープルサンガvs大分トリニータの試合のケースが引き合いに出されますが、此方は暗黙の了解に反する形で得たゴールを守備放棄という形で返した…という事例であって、浦和の立場からしても受動的に進んでしまった今回のケースには当てはまりません。そもそもtotoなども絡んでいますし、選手には個々の人生がある訳です。自分達のその決断は間違いなく賞賛を呼ぶ事になりますが、これがキッカケに自分達が良くない状況に陥ったとしても、賞賛をしてくれた人間が助けてくれる訳ではありませんからね。

ある意味でこの件に関しては、浦和もまた被害者の一部であるのではないでしょうか。

 

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オウンゴールして欲しかった」という希望なら個人の意見ですが、オウンゴールしない浦和はサッカー人として失格」とでも言いたいかのような、西川や浦和に対し「フェアプレーではなかった」という批判が多く浴びせられている現状は、正直アンチ浦和の私ですが少し苛立ちも感じています。確かに、浦和がそのような行為をすればそれは素晴らしいフェアプレーで、賞賛に値する行為だったと言えるでしょう。しかし、それをしなかったからといって、浦和を責め立てるのは明らかに間違いというか、近年の日本社会を表しているような気さえします。


 

試合後、湘南の曹貴裁監督が会見で「浦和の選手が早く始める気持ちも分かるし、レフェリーが決めることなので、ノーゴールと言えば彼らはそのまま進めるべきですし、良かったとも悪かったとも思わないです」と仰っていたように、浦和は勝手に始めたのではなく審判が続けるように言ったから続けたのであって、なんならプレーを勝手に止めれば審判からは意義を唱えたという事でイエローカードを提示される恐れすらある。イエローカードが取り消させる事なんて滅多に無いので、「○○して欲しかった」的な意見ならわかりますが「○○しなかった浦和は最低だ」的な意見はサッカー通を名乗るなら尚更言ってはいけない言葉です。

「フェアプレーと賞賛されないプレー」というものは「フェアプレーに反するプレー」と「普通のプレー」の2種類があるはずなのに、まるでフェアプレーの極致じゃなければ反フェアプレー、とでも言うような…あくまで浦和は「普通のプレー」をしたまでであって、浦和をこの件で大批判している方には、少し冷静になって考えて欲しいかな…と思います。

今回の件は、レフェリング問題の議論とともに「フェアプレーとは何か?」を考える良い機会ともなったのではないでしょうか。フェアプレーは決して、自分の価値観に過ぎないフェアプレーを他人に強要するものではありません。サッカーの秩序に反する行為こそが断罪されるべきものであり、今回の浦和はそれには該当しないはずです。はっきり言って、この件で必要以上に西川や浦和に粘着している方こそフェアプレーを語る資格は無いのではないでしょうか。

 

 

 

一応念の為に言いますが、当然私も含めてサッカーを観ている人は全て、サッカーにフェアプレーは存在するべきと思っているはずです。

ただ私が言いたいのは、普遍的な、いつもと変わらない姿勢もまたフェアプレーの一つであって、基本的にいちファンにしか過ぎない我々がフェアプレーの極論のような事を求め続ける事はあってはならないし、期待するのは勝手だけど迂闊に求めるべきでもないプロスポーツはその選手のキャリアだけでなくチームの勝敗に関わり、そしてそのチームの勝敗は想像しているよりも多い人間の明日を動かしかねない。フェアプレーのハードルを観てる側が勝手に高くし過ぎる行為というのは、「フェアプレー」という言葉による暴力とも言えるんじゃなかろうか…という事です。

 

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日本vsポーランドの時と空気感似てきたなぁ…。

ではでは(´∀`)