助けてください、R君のHPはもうZEROです…。〜第3話 メビウス〜J1第23節 ガンバ大阪vsジュビロ磐田戦観戦日記

【前回までのあらすじ】

夏場、第21節第23節の3試合で連続でガンバ大阪の試合を観戦しに行く事になった私。しかしその最初を飾る神戸戦では2点リードを吐き出す形で同点で決着し、意気消沈として帰路に着く。次こそは。そう思って向かったホームでの広島戦、試合終了間際のゴールが決まってガンバが勝利したはずだった。しかしスコアボードに書かれていた数字は「1-1」。事態を受け入れ切れないまま、まだマリノスvsマンチェスター・シティ観戦日記もそういえば書いていない私はいよいよこの夏の3連戦最終回を執筆しようとしている…。

 

 

 

助けてください、R君のHPはもうZEROです…。〜第3話 メビウス〜J1第23節 ガンバ大阪vsジュビロ磐田戦観戦日記

 

 

 

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基本的にサッカーを観戦しに行く時に誘う、誘われる人というのはかつて一緒にサッカー部に所属していた面々だったり、またお互いにサッカー観戦が趣味と既に把握している面々だったりする。だがこの日は珍しく、昔のバイト先の友人…基本的にはサッカーにあまり興味が元々あった訳ではないというメンバーでパナスタに向かった。

あまり興味がないと言っても、そのうちの一人は元々定期的に阪神タイガースを一緒に観に行く仲(ちなみに甲子園に行けば負ける私に「お前は京セラだけ行ってろ!」と辛辣な台詞を放ったのも彼)だし、割と多趣味な人という事もあって日本代表戦はチェックしているなど、それなりの知識と興味は持ち合わせていた。もう一人はサッカーどころかスポーツを殆ど見ておらず、基本的にはインドア系な趣味の人間だが何故かフットワークだけ異常に軽い…というメンツ。もちろんこの2人にとってはサッカーを現地で観るのは初めてという事だった。この3人でサッカーを観に行くならどの試合に行くのがベストだろう…となった時に、やはりお土産としてユニフォームが配布されるこの日は丁度良いだろうと思ってジュビロ磐田戦のチケットを確保したのである。

そう、この日は2017年から毎年開催している「GAMBA EXPO」の日で、ユニフォームも貰えるし、毎年チケットは完売している。初めてサッカーに来るという友人に対して、一発目から「満員のパナスタ」を見せる事の意味はなかなかにあると思っていた。

 

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入場すれば、遠藤保仁などガンバの選手とも親交のある木梨憲武氏がデザインしたユニフォームを早速身に纏う。(この写真は後日、家で撮ったものだけどね)

 

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普段は絶望的にアルコールに弱い私ではあるが、今日は幾分かの高揚感が……いや、違う。前述の通り、ガンバはここ2試合でメンタルをえぐられるような引き分け方を続けていた。ある意味、精神的ダメージでは敗北以上とも言える引き分けを…。そんな不安をまるで喉の奥に共に流し込むかのように友人と3人でビールを購入する。ビールの味が好きとは未だ余り思わないけれど、でも天気が良い日のスポーツ観戦で飲むビールというロケーションのレベルは尋常じゃなく高い。

 

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夕陽が沈み始めて空にオレンジが帯びる中、ウォーミングアップやエントリーメンバーの発表が行われるフィールド。契約上の理由により前節広島戦には出場できなかったパトリックにとってはこれがパナスタ復帰戦となる為、盛大な拍手が捧げられた。

一方、ここ最近のガンバは神戸戦、広島戦のショッキングな引き分けの後で、天皇杯にて上田綺世も抜けた法政大学に0-2で敗れるというジャイアントキリングを起こされている。2年連続、大学生に敗れての天皇杯敗退…サポーターからはその事に関連していると思われる横断幕も掲げられていた。

 

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さぁ、いよいよスタメン発表である。この試合の直前に、昨季ガンバを退団してから無所属の状態になっていたDFファビオが磐田に入団。そして2012年にガンバに加入し、入団当初はJ2降格などの苦難を味わったが2014年以降は「今野依存症」という言葉が出来るほどにガンバに貢献したMF今野泰幸が夏から磐田に移籍するなど、昨季のGAMBA EXPOでは共に先発フル出場で勝利に貢献した2人の名前がコールされた。当然この2人に対しては、スタンドは盛大な拍手で2人のパナスタ帰還を迎える。そういえば今野に関しては…今年のGAMBA EXPOも最初のポスターに載ってたのに、まさか対戦相手としての参加になるとは…。

さぁ、いよいよ試合開始。

 

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試合の詳細はマッチレビューの方を見て頂きたいのだが、開始15分の時点で磐田の新加入FW、ルキアンが2枚目のイエローカードで退場となる。

 

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さすがに早過ぎる退場劇に歓声とざわめきの入り混じるパナスタ。しかし元々大スランプの磐田である為、ここから更にガンバ優勢の試合展開が続いていった。前半終了間際にはややラッキーゴール的な形ではあったが、小野瀬康介のクロスがそのままゴールに吸い込まれてガンバが1点を先制し、前半をリードで終える。

 

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問題は後半である。第4節川崎戦、第16節湘南戦、第19節清水戦のように終了間際のゴールで勝利を掴んだ試合もある一方で、第3節名古屋戦第5節神戸戦第7節浦和戦のように終了間際のゴールで敗北に追い込まれた試合、そして…ここ2試合もまさに「勝ち試合」をドローゲームに持っていかれた試合だったからこそ、1人少ない最下位の磐田が相手とはいえ、ガンバファンの頭の中は油断せずに引き締めていこう…という戒めではなく「不安」「恐怖」が先に頭の中に渦巻いていたのだ。それでも最初の方は、数的優位を活かしたガンバが優勢に立つ形で進んでいく。

 

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しかし、再三のチャンスを活かせないうちに試合はいよいよ追い込まれていた磐田がパワープレーでごり押してくる試合展開に。失うものはもう無い磐田に対し、ガンバ必要以上に焦っていた。それは選手も多分そうだろうし、観ている側の人間もそうだった。誰しもが油断をしていた訳ではない。しかし神戸戦、広島戦の記憶がガンバを愛する者全てにもたらした感情はある意味で油断よりも厄介なものだったのかもしれない。

磐田の猛攻を受ける姿が映し出されるピッチに渦巻くものはここ最近のガンバの嫌な流れだった。そしてスタジアムは段々悲壮な空気に包まれていく。試合終了までのカウントダウンは、ガンバファンに刻一刻と恐怖を刻み込んでいった。そんな中、アディショナルタイムに訪れた決定的な2点目のチャンスをパトリックが逃してしまう。パナスタ史上最多、37334人が見守るスタジアムは一つ一つのプレーに息を飲んだ。

 

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アディショナルタイムも結構な時間が過ぎた。磐田の最後の猛攻がペナルティエリア内で繰り広げられたその時、写真の笛が鳴り響く。しかしそれは、試合終了…即ちガンバの勝利を意味する笛にしては随分と短い音色だった……そう、試合は終わったのではなく、磐田にPKを与える笛が鳴り響いたのだった。

ここ2試合と天皇杯の記憶があるガンバファンは一斉に静まり返り、緊張より絶望に似た静寂がスタジアムを包む。決めようが決めまいが、このPKが間違いなくラストプレーになる。そして磐田のFW、中山仁斗から放たれたシュートは無情にもゴールネットを揺らした…。

 

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初めてのサッカー観戦となった友人2人は非常に満足そうで、楽しそうにしていた。そりゃそうだろう。ガンバファンでも磐田ファンでもない2人にとって、数的不利のチームがアディショナルタイムのラストワンプレーで追いつく展開はスリルに満ちていて見応えのあるものだっただろうし、最後のワンプレーはPKだったから、東口順昭がそれをセーブしていたらセーブしていたで、それもまた劇的な展開として面白かったはずだ。私としても、彼らがある程度満足して帰ってくれた事は喜ばしい事であったと同時に「いやぁ、君らが楽しんで帰ってもらえたならそれで十分だよ」と言ってあげる事は出来なかった。私がその言葉を発する代わりに友人からかけられた言葉は「行きより口数減ったなぁ」であった。

重い足取りの中、自分の好きなサッカーチームを持つという事の意味について、万博記念公園まで歩く道のりと人混みの中で考えていた。

 

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8月18日夜中、ガンバ大阪vsジュビロ磐田の試合を観終えた後、私は愚痴混じりに友人にこんな話をしていた。この日、埼玉メットライフドームでは私の大好きなバンド…GLAY25周年ライブが行われており、Twitterなどでそのライブレポートを読んでふと思った事である。酒に異常に弱い私がスタジアムで生ビールを飲んでしまった影響も多少はあるかもしれない。

 

「スポーツ観戦って切ないよなぁ…。だってさ、ライブは行った時点で大体楽しい気持ちで家に帰ってくる訳やん?スポーツ観戦なんかさ、好きなチームを持ってしまった以上絶望を買って帰ってくる事もある訳で…。」

 

まぁ我ながら、だいぶ酔ってるというか気持ち悪いテンションである。ただ、よりによってガンバのこの3試合全てを現地で観てしまった私には心の叫びとしか言えなかった。友人曰く、過去に格闘家に同じような発言をしていた人がいるらしい。勿論、この儚さとどちらに転ぶかわからない部分がスポーツの面白さと魅力を作り上げている事に間違い無いが、同時にスポーツのチケットはコンサートのチケットとは違って「幸せが保証されたチケット」では無いのだ。3枚の持ち帰った半券を眺めながら、強くその事を思う。

この3試合は自分の中でスポーツ観戦という娯楽の真理を改めてみたような気がする。元アルゼンチン代表でJリーグでも清水エスパルス横浜F・マリノスの監督を務めたオズワルド・アルディレスはこんな名言を残している。

 

「車も、家も、妻さえも変えられる。だが、応援するサッカーチームだけは変えることができない。」

 

別にサッカーに限った話ではない。スポーツを見て、そしてのめり込むように好きなチームが出来たその瞬間、スポーツが持つ感情のブラックホールへと飲み込まれていくのだ。きっとそこには愛や情があればあるほど、その渦から抜け出す事は出来ない。その後無関心になる瞬間が訪れたとしても、次にまた関心を持つ時にはまたその場所に戻ってくるのだ。

スポーツチームを好きになるという事は結局、その形や熱量を問わずメビウスの輪に突っ込んでいくようなもの。私にとってそれはガンバでありサンガであり、たとえ低迷して文句を言い放とうと次の試合では勝利を祈り、もし仮にチームごと消えて無くなったとしても来ない明日を待つのだろう。たとえHPがゼロになっても、来週の勝利が助けてくれると信じて…。

 

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www.rrr3k.com

 

 

完。