What is "GAMBAISM"〜2019年のガンバ大阪を振り返る〜第1話 崩れゆく幻想

7位。

 

12勝11分11敗。

 

ガンバ大阪の2019年は、最終的に今年のガンバに対するイメージと比べれば思っていたよりも悪くない順位で着地した。定義にも拠るが、7位はまぁ…ギリギリ上位と言っても無理はない順位である。

 

2019年1月、あの時のガンバは過大評価というよりも、どこか明らかに過剰な期待を寄せてしまっていた。「監督・宮本恒靖」というガンバファンの誰もがいつかは…と思っていた言葉の響き、2018年終盤の9連勝…一連の流れが余りにも出来すぎていて、油断では無くとも過信な夢を見るには十分過ぎる下地は確かにあったのだ。

かく言う私も、ガンバファンとしてシーズン開幕前は盲目気味の夢を少し見ていた事を否定出来ない。さすがに今年優勝出来るとまでは思っていなかった。それでも、今年の開幕前にガンバを包む期待感は過去のどの空気感とも違う感覚があった。少なくともあの時点では「GAMBAISM」と掲げられたスローガンも、夢心地になってしまうだけの説得力も幾ばくか有していた。こうしてガンバは、昨季ほど絶望的では無くとも昨季よりも得体の知れない混迷へと迷い込む事になる。

 

今回からは2019年のガンバ大阪を振り返るブログを書いていこうと思う。どうかお付き合い頂きたい。

 

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2018年の9連勝が、少なくともハッタリとは言い切れなかったのは一定の戦術ベースがチームに存在していた事が大きかった。選手のポジション適正であったり、戦術的な整理は相当されていた。

 

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要するに、あの9連勝が何も偶然と勢いだけの産物ではなかった事は確かだと今でも思っている。だが大きなミスがあったとすれば、そのシステムの賞味期限を余りにも長く見積もり過ぎていた事に他ならない。

ガンバにとってボランチ問題は近年ずっと言われ続けていた。余りに遠藤保仁今野泰幸という存在が絶対的過ぎたが為に若手育成を完全に疎かにしていたのである。遠藤&今野でフルシーズンを戦うなんて計算は誰の目から見てもどう考えても甘かった。若手にしても、遠藤の後継者と目されていた市丸瑞希は伸び悩み、2018年から今野のポジションに入るようになった高宇洋と髙江麗央は一定の存在感を見せたが、やはり今野ほどの存在感は発揮出来ない。2018年はシーズンの半分以上を今野が欠場した事が大きな要因だったが、2019年は勤続疲労もあってか、今野が一気にコンディションを悪くしていく事になる。

似たような事はサイドバックにも言えた。藤春廣輝米倉恒貴オ・ジェソクの3人はかれこれ5シーズンほど大きな負担を強いている上に、米倉とジェソクは元々怪我がちで、近年は藤春も離脱しがちになっている。3人ともいつガタが来るかわからなかった。最大の補強ポイントと言われていたセンターバックにはキム・ヨングォンを獲得したが、いくら日本慣れはしていると言っても韓国代表としてアジアカップを戦い、合流が遅くなった新外国人CBに開幕からすぐフィットしろというのも酷な話であり、同じく韓国代表としてアジアカップを戦ったファン・ウィジョは文字通り休み返上レベルのフル稼働だったので、その跳ねっ返りがいつやってくるかわからない…。怒涛の9連勝を果たしたチームをベースにしたガンバは、開幕前の時点で余りにも多くの爆弾を抱え過ぎていた。

 

しかし、そこで尾を引いたのが2018年末の快進撃で、ベースをそこからひっくり返すほどの決断を施す事も出来ずにいた。それは今野が開幕に間に合うかどうかもわからない状況であるとしても…。

結局のところ、色々なツケがじわじわと回ってきたガンバは、昨季終盤からややスケールダウンした形で開幕を迎える。スコアこそ2-3ではあったが、開幕時点でチームが出来上がっていたこの年のチャンピオンになるマリノス相手にスコア以上の差を付けられた事は今思えば自然な流れだったように思う。

 

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第2節清水戦からはコンディションが万全では無かった今野をスタメンに戻し、清水戦では4-2で快勝を収めたが、2-3で敗れた第3節名古屋戦を含めると開幕3試合で8失点という中々にヘビーな数字がガンバにのしかかった。

そこで宮本監督は昨季終盤の4-4-2システムと、遠藤をトップ下に、倉田秋と高がボランチを組んでアデミウソンを左サイドハーフに、三浦弦太を右サイドバックにスライドさせた4-2-3-1システムの併用に踏み切った。第4節川崎戦ではそれが功を奏して前年王者相手に完封勝利を収め、このシステム変更は成功したかのように思えた。しかし、この次の試合…満員のPanasonic Stadium Suitaで迎えた第5節神戸戦は今季のガンバにとって「悪い意味でのターニングポイント」となる。

ダビド・ビジャアンドレス・イニエスタルーカス・ポドルスキの所謂「VIPトリオ」を贅沢に配置した神戸に対し、前半のガンバは100点満点の入りを見せた。ここまでの4試合全てで試合の主導権を握っていた神戸に対し、アデミウソンとウィジョのゴールで2点リードを奪い、そこからは何度も神戸ゴールを脅かす。この時点では2勝2敗で好調とも不調とも言えなかった為に、あの試合の前半はここから先にも大いなる希望を持つのに十分すぎる内容だった。

 

だが前半終了間際にポドルスキ、後半開始早々にビジャにゴールを許したガンバは、遠藤のパスに倉田が詰めて勝ち越したものの、あろう事か終盤に立て続けに失点を喫して3-4で敗れてしまったのだ。

 

この敗戦のショックは余りにも大きかった。

誰もが勝ったと思った瞬間は、少なくとも2回はあった。

ビジャでもイニエスタでもポドルスキでもなく、田中順也に決められたあの失点…ここからガンバはひと月そのものをエイプリルフールと呼びたかったほどの「魔の4月」に突入する。

 

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4月最初の試合、アウェイでの第6節広島戦は前節の内容面を評価してか神戸戦と同じスタメンで挑むが、ぐうの音も出ない程の完敗で敗れ、今野をスタメンに復帰させてシステムも4-4-2に戻した第7節浦和戦でも終盤の一撃で落とし、ホーム4連敗に陥った。この頃、ガンバは従来の4-4-2と川崎戦から採用した4-2-3-1を用いていたが、併用していたというよりは「どちらでもうまくいかない」という表現が最適としか言えず、4月の4試合を1分3敗で終える。

昨季のクルピ体制を擁護するつもりは無いが、ホームゲームの鳥栖戦や仙台戦など悪くない試合はいくつかあった。中断期間を経て更にボロボロになってしまったが、5月時点ではフロントが続投に踏み切った事も多少の理解は出来るくらいには、内容的にそこまで酷くない試合はいくつかあった。今季のガンバの序盤戦はそこと比べても内容としても攻めも守りも中途半端な試合が続いており、攻撃の形なんてファン・ウィジョとアデミウソンの単騎突破しか無く、小野瀬と倉田も好プレーは見せていたが、フォローには乏しく虚しく光るだけ。この時の先の見えなさは、ある意味ではクルピが率いた昨季よりも深刻なものだったのかもしれない。

何より、そんな状態が宮本恒靖という人物が監督務めるガンバで起こっていた事がガンバファンの心を切り裂くような気分にさせていた。

 

「GAMBAISM」…もしそんなものがあるとすれば、それは負の歴史なのか?西野朗監督が就任してからの十数年の方が幻だったと言うのだろうか?そもそも「GAMBAISM」という言葉に中身なんてあるのだろうか?今季、ガンバファンの胸を躍らせるだけの説得力を持つように見えたスローガンは幻想に過ぎないのではないか…試合を一つ一つ積み重ねていく度にその事を感じ、スローガンがより一層絶望に彩りを与えていく。

 

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一方その頃、ルヴァン杯ではリーグ戦と打って変わって躍進を見せていた。

宮本監督はトップチームの監督に就任するまで、1シーズン半ガンバ大阪U-23の監督を務めていた。例えば2018年、宮本監督就任以降に出場機会を掴んだ高、髙江、今季は京都にレンタル移籍した一美和成らは宮本監督がU-23監督時代に指導して引き上げた選手でもある。宮本監督がトップチームの監督に就任して以降は實好礼忠監督がその職を継いだが實好監督も今季からは京都のコーチに就任した事で、今季からはガンバOBの一人でもある森下仁志監督が就任していた。

 

この森下監督という人物は監督としての評価は決して高くない。2013年に磐田降格の引き金を引いた人物とされ、その後に監督を務めた鳥栖、群馬でも評価は芳しく無く、前任の實好監督が有能と見られていた事もあって、森下監督の就任には懐疑的な声が多かったのである。

しかし人間の適性は実に面白いもので、森下監督は監督としての評価は高くなくとも若手育成という側面に於いては非常に優秀な人材と言えた。昨シーズン、若手起用に積極的なレヴィー・クルピ監督が率いたチームでも髙江、福田湧矢、食野亮太郎、中村敬斗といった選手がデビューを果たしていたが、いずれも若干伸び悩み、シーズンが進むにつれて出場機会は失われ、今季のキャンプに至ってはチームが沖縄キャンプに行く中で大阪に残された選手もいる。そんな選手達を森下監督が徹底的に鍛え上げ、そして自身もU-23の監督を務めていた事から宮本監督もU-23を無視するという事もない。U-23の選手達はJ3リーグだけで無く、ルヴァン杯でも結果を残し始めた。

2019年5月11日…今年のキーポイントとなったのはある意味、大阪ダービーよりもこの日だったのかもしれない。ガンバにとって大きな分岐点が訪れる。

 

 

 

第10節を終え、ガンバは勝点8の15位に沈んでいた。第11節は敵地、駅前不動産スタジアムで鳥栖との一戦を迎える。

この時点での鳥栖というと、余りにも散々な出来だった。10節を終えての成績は1勝1分8敗の最下位。それだけでも十分酷いのだが、得点に至っては10試合を終えた時点で僅かに1。フェルナンド・トーレスを筆頭に、イサック・クエンカ、金崎夢生豊田陽平ビクトル・イバルボといった攻撃のタレントを擁しながらもチームとして最悪の状態を迎えており、第9節終了時点でルイス・カレーラス監督はその職を追われていた。

…そんな状態に陥っていた鳥栖相手に、あろう事かガンバは3失点を喫してしまう。10試合で僅か1点しか取れなかったチーム相手に、1試合で3点も許してしまったのだ。それも前節、首位のFC東京相手に内容的には悪くないドローに持ち込んだ次の試合で…。この敗戦で16位に転落したガンバは、次節の結果次第では最下位に落ちる可能性も生まれるなど早くも正念場に追い込まれる結果となった。

ただ…3点ビハインドで迎えたアディショナルタイム、これまでU-23でプレーしていた食野亮太郎が個人技からもぎ取った1点…このゴールはある意味で、次の試合で宮本監督が大きな決断を下すに辺り、ヒントというか伏線にはなるゴールだったのかもしれない。今季のガンバのターニングポイントを挙げるとするならば、大阪ダービーというよりも鳥栖戦というよりも、鳥栖戦の食野のゴールだったと言うべきだろうか。

 

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つづく。