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奪還〜ガンバ大阪2018振り返り企画〜第2話 完全中断【2018.5〜2018.7】

【前半は此方になります。是非此方からお読み下さい♪】

 

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ロシアW杯による中断前最後の試合となった第15節浦和戦が終わった時点で、中断期間前の5試合を2勝1敗2分と少し復調したかのような成績で終える事は出来た。シーズン序盤と大きく違ったのは第12節仙台戦から今野が帰ってきた事に他ならない。前編やそれ以外のガンバ関連ブログでも述べたように、マテウスや遠藤は守備には難があるものの攻撃では大きな力を発揮してくれる選手だ。その為、マテウスと今野にボランチを組ませて遠藤をトップ下にする事で遠藤もマテウスも守備面での負担が減る。攻撃陣も決して満足いく出来とまでは言えなかった為に第13節で札幌に完敗したり第14節では横浜に押し込まれたりしたものの、状況は多少改善されていたと言えるだろう。

しかし5月19日、状況が一気に変わった事が意外な場所から発覚する。

4月から日本代表監督に就任した西野朗監督がロシアW杯最終候補メンバーとも言える28選手を発表した際、「呼ぶつもりだったけど呼べなかった選手」の1人として今野の名を挙げた。西野監督の口から告げられたのは「今野が手術を受けなければならなくなった」という事実。これは勿論、今野がロシアW杯欠場を余儀なくされた事も残念だが、即ち今野が長期離脱をも余儀なくされた事をも示すものと言えた。

 

 

結局のところガンバは4勝3分8敗の16位で中断期間に入る。若手起用に定評のあるクルピを招聘した事もあり、必ずしも今シーズンのガンバはタイトルを獲らなければならないシーズンという訳ではなく、どちらかと言えば来シーズン以降再びタイトル争いに加わっていく為の再構築的な位置付けのシーズンだった。とはいえ、16位なんて数字は到底看過できるものではないのも事実。一方で僅かながら向上の兆しも見えなくはなかった為、中断期間の建て直し次第では…という期待は決してゼロだったとは言えない。しかしそんな期待は6月に入ってすぐ、打ち破られる事になる。

 

 

 

ルヴァン杯プレーオフステージではファン・ウィジョの2戦4発の大活躍もあって決勝トーナメント進出を決めたが、その2試合の間に行われた天皇杯2回戦が問題だった。対戦相手は関西学院大学。本来は控え主体でもいい試合だが、クルピはこの試合でW杯メンバーに入った東口と負傷中の今野を除くベストメンバーを起用。スタメン11人中8人が日韓の代表経験者で、残る3人のうちマテウスは世代別ブラジル代表経験者というメンバーで大学生と戦った訳だが、あろう事かここで敗戦を喫してしまう。

その3日後のプレーオフ2ndレグはファン・ウィジョのハットトリックで勝利したものの、何の慰めにもならなかった。それだけダメージの大きい敗戦だったのだ。

 

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中断期間に突入した時点での下位2チームである名古屋は弱点の守備を強化すべく、丸山祐市エドゥアルド・ネットを始め、多くの守備的な選手を補強。鳥栖も得点力不足を補うべくフェルナンド・トーレス金崎夢生と大型補強を施行した。資金力が決して豊富ではないV・ファーレン長崎もヨルディ・バイスを獲得したり、各チームが再開後のJリーグに向けてのチーム強化を図る。W杯イヤーである今年は中断期間でリーグが2ヶ月ほど空く為、補強を行わなかったチームも各自キャンプを張るなど、前半戦の課題を修正し後半戦に繋げていく策を練り始めた。

だがガンバだけ、キャンプを張るだとか補強の噂も一切なかった。唯一勃発した柿谷曜一朗獲得説も、矢島を獲得した時とどうように「来てくれるなら嬉しいけど補強すべきは柿谷タイプじゃないだろ…」という印象だったし、それも結局あえなく頓挫。前半戦を見れば修正しなければならない部分は山のようにあったはずなのに、オフ明け以降に何も動いている気配はなかった。6月18日に発生した大阪府北部地震の影響は無いとは言えないのかもしれないが、リーグで低迷したのは当然地震より遥か前だしキャンプも地震の有無を問わず予定すらされていないから、別に地震は関係なかった事がわかる。

水面下で何か動いているのか?何か見られたくない秘策でも用意しているのか?無理矢理ポジティブな事を考えてはみるが、しかし現実は思っていたよりも酷かったらしい。その辺りについてはクルピ解任直後にアップされた下園昌記氏の記事を見て頂きたい。

 

 

一連の流れを見れば当然とも言えるかのように2ヶ月の中断期間を経て迎えた第16節広島戦では開始8分のファビオの退場でほぼ90分数的不利だった点はあるにせよ、何も良いところなく0-4で敗れ去る。続くホームでのシーズン折り返しの試合となる第17節清水戦は前半戦のガンバを見事に映し出したような試合で1-2で敗北。この試合を以って、クルピの解任と宮本恒靖ガンバ大阪U-23監督の昇格が発表された。

この時の事や、フロントへの文句的なものは当時別でブログを書いたのでそちらを見てほしい。

 

 

結局クルピ体制とは何だったのか。

2012年のセホーンの時と違うのは、決してクルピは全てが全て悪かったという訳ではなかったという事である。

まず前提としてクルピには実績は確かにあった。セレッソ時代に残した実績もそうだし、ブラジルでも多くの成果を残し、2001年はブラジル代表監督の有力候補になった事もあるほど。

以上の点を踏まえれば、「攻撃サッカーへの回帰」と「世代交代」という2つのキーワードを追い求めた2018年のガンバにとって、クルピ招聘は決してセホーンやサンガの布部陽功氏の招聘、名古屋の小倉隆史氏の昇格、柏の加藤望氏の昇格ほど無計画ではなかったのは間違いない。

 

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若手起用に関しては、恐らく数年後にはクルピの功績は出る可能性はある。若い人材登用の積極性は確かにクルピは示した。今野の欠場と井手口の退団で守備的MFが誰も居ないという事態が招いた出来事とはいえ、攻撃的MFの高卒ルーキーである福田湧矢をボランチで開幕スタメンに抜擢するような事は普通出来ないし、福田はボランチで奮闘を見せたから、選手を見る目は確かにあった事はわかる。

クルピ体制では福田以外にも開幕スタメンで福田とボランチを組んだ市丸瑞希に加えて中村敬斗、食野亮太郎、高江麗央らがコンスタントに出場機会を掴み、松田陸や芝本蓮もベンチ入りを果たすなどした。最終的に彼らは宮本監督就任以降も出場機会をキープ出来た訳ではなかったが、トップでの経験があるのとないのとではJ3U-23チームでプレーする上でも全く変わってくる。若手起用に定評のある監督というだけあって、クルピがガンバに残した功績としては「若手の種を蒔いた」事。この部分はクルピを監督にした事で促進された良い部分と言えるのではないだろうか。

 

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だがやはり、クルピにはそれ以上に采配が余りに雑だった。

開幕戦で福田&市丸の若いボランチコンビが機能した事に始まり、第11節鳥栖戦での米倉の右サイドハーフ起用など、スタメンのチョイスは時折光る事もあった。だがそれ以外の采配は余りにチームとしてのバランスや試合の流れを止めてもいないのか…?とさえ思うものが多かった。

特にクルピの途中交代はカードを切る度に弱体化すらしていると感じたほどで、象徴的だったのが第5節FC東京戦である。

2点ビハインドからファン・ウィジョの2ゴールで試合を振り出しに戻したが、すぐさまFC東京に勝ち越しを許してしまう。だがこの日の攻撃は機能していたので3点目を取れる気配はそこそこにあった。その気配にはウィジョの破壊力が一番の原動力だったが、それは前線で上背のある長沢駿が潰れ役になる事でウィジョのスペースを作り出すという長沢の貢献が大きかった。しかしクルピはその効いていた長沢をベンチに下げてしまう。これによってウィジョにはスペースがなくなり、残りの30分ほどを窮屈そうにプレーする事を余儀なくされ、長沢が中央にいる事で活きていたダイナミックさがまるで消されてしまった。

例えばFC東京の徹底したディフェンスが見事だったからそれが消えた、という事であれば諦めもつくし、素直にそれはFC東京の守備が素晴らしかったんだな、という話になる。だがこの試合は自分達の采配でエースの良さを消してしまったのだ。

 

 

 

第16節の広島戦もそうだ。詳しくはこの試合のマッチレビューを参考にしてほしいが、この試合の采配は最後までクルピが何をしたいのかがさっぱりわからなかった。

結局のところ、トップ下の遠藤をフリーマンのような扱いをした開幕戦のような形を何故続かなかったのか?というのがそもそもの疑問で、マテウス獲得後は遠藤とマテウスのWボランチで攻撃には力を発揮出来たものの守備力は著しく低下し、ボランチセンターバックの間にはいつも広大なスペースが出来てしまっていた。サイドバックも頻繁に前に出る為、いつだってガンバの守備はツーバックノーボランチと化す。

かといって、そうなった時の為の守備戦術や約束事などクルピは何もチームに施して居ない。今シーズン序盤、三浦弦太やファビオ、菅沼駿哉はさぞ苦労した事だと思う。気がつけば守備戦術は東口順昭の超人的なファインセーブに期待する事しか出来なくなってしまっていた。本当に今年の東口に掛かった負担は計り知れない。

 

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結局のところ、クルピの良かったところは若手起用に積極的で、成長を促す第一条件であるトップでの出場機会を与える部分では何年後かにクルピが蒔いた種が花開く可能性を残した事、悪かったところは試合の流れを読めていないような、試合の先を見据える能力が欠如しているかのような采配が余りに多かった事だ。

 

 

 

あれ、どこかで聞いた事がある長所と短所だ。

あ、そうだ、あれだ、思い出した。

金本知憲(前阪神タイガース監督)である。

 

 

 

 

今思えば、クルピと金本監督は良くも悪くも非常に似た監督だったのかもしれない。長所と短所の根っこは振り返れば同じだった。

だが当然、サッカーと野球はそもそも競技としてのメカニズムが違う。それに金本監督は阪神での3年間が初の監督で2年目には優勝も争い、そもそもまだ監督として成長過程にいる人物であり、尚且つ監督の力に依るところはサッカーよりは小さいのに比べ、実績のあるベテラン監督であるクルピがガンバで見せた結果は、いくらスロースターターとて残念なものでしかなかった。

無論、フロントの補強の不備というクルピに同情すべき部分や、今野の負傷が長引くという不運な要素だってあったとは思う。だが結果としてクルピは「若手が少し多くJ1デビューを果たした」以外にポジティブな要素を残せなかった。

 

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阪神タイガースセントラル・リーグの順位表の浮き沈みを激しくしていた頃、前半戦を終えたガンバは降格圏で安定した順位をキープするという最悪の事態に陥ってしまった。

2012年12月1日に見たあの悪夢が、再び同じ暦を迎える2018年12月1日繰り返される目を覆いたくなるようなシナリオがいよいよ現実味を帯び始めた時、ガンバ大阪はクラブとしての地位と存在意義にすら関わるようなギャンブルに打って出る事になる。

 

 

 

つづく。