ロシアW杯観戦記〜あれから1年…《海外ド音痴、ロシアに翔ぶ。〜英語もまともに話せない私のロシアW杯観戦記〜》2019年再編集版〜第11話 偶然が重なる予感

【ロシアW杯観戦記再編集版、第1話、前話はこちら↓】

 

 

 

「偶然が産んだ奇跡」と呼べるほど下心が無かった訳ではない。確かに若干「その事」は頭に過ぎった事もあった。

だが最初は「その事」は頭に無かったし、考慮するようになったのは観戦する試合が決まって何日の何時の電車を予約しようかという話になってからだ。というかそもそも、偶然が産んだどうのこうのでモノを言うならばロシアにこうして訪れた事自体が自分にとってもそもそも奇跡的なシチュエーションだったとも言える。ロシア語を専門で習っている友人がバリバリ現役のタイミングでロシアワールドカップが開かれている事自体がタイミングとしてはハマり過ぎていたし、その上でこんな出来事に出くわした自分はもしかしたら自分が自分で思う以上に強運持ちなのかもしれない。そう思わざるを得ない出来事が、まさしくスケジューリングの妙が生み出した奇跡がフランスvsオーストラリアを観戦した翌日に起こったのだ。

 

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カザンのスタジアムを後にした我々はこの日の宿に向かう。カザンでの宿はホテル…ではなくアパートホテルに泊まる事になっていた。文字通り、ホテルの部屋というよりアパートのような形式になっているホテルである。

 

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今回の旅行に於いて各都市で宿泊をしているが(車中泊3回もあったけど…)、ちゃんとホテルに泊まった時は全て1泊2日だ。深圳もモスクワも、そしてこの後に泊まるサンクトペテルブルクでも。だが、今回の旅程の中でこのカザンだけ最初から2泊3日する事になっていた。

というのも、この旅行期間の中でカザン滞在期間はちょうど折り返し地点である。この旅はここまでとにかく移動が続きに続きまくる弾丸スケジュールだった。ホテルで1泊したら機内泊、ホテルで1泊したら車中泊…といった具合に。実際、フランスvsオーストラリアの開場時刻は10:00だったのだが、モスクワから夜行列車に乗った我々は10:30頃という結構ギリギリなタイミングでカザンに付き、ホテルに荷物を預ける時間も無かったから大荷物と一緒にスタジアムまで行っている。

 

 

 

時は遡り2018年4月21日。チケットを確保して友人と行程について話し合っていた時の事だ。チケットを確保したイランvsスペインを断念する事を決めた後、いよいよ本格的なスケジュールの詰めと交通機関やホテルの予約作業に入った。16日にフランスvsオーストラリアを観戦してカザンに1泊した後、17日のうちに夜行列車に乗り込んで18日にはサンクトペテルブルクに到着するスケジュールか、或いはカザンを2泊3日にして18日に夜行列車、ロシアvsエジプト当日19日朝にサンクトペテルブルクに着く2案を提示された。この連載で何度も言っている通り、今回の旅は友人がとにかくロシアに精通しまくっているので全てを友人に丸投げしていたし、最初から私も「俺はそれに従うから全部そっちで決めてくんない?」というスタンスでいた。此方が意見を出したところで、友人がせっかく考えてくれたプランにロシアどころか海外旅行そのものに無知な自分が意見を出したところでそれはかえって行程をややこしくしてしまうだけである。それはもはや意見じゃなくて茶々にしかならないと思っていた。友人もそれを汲んでくれて「モスクワで行きたいところある?」「食べたいものある?」と聞かれたように細かいところ以外の部分は全て彼が決めてくれていたのだが、スケジュールの根幹となる部分で唯一聞いてきたのが「カザンを1泊にするべきか、2泊にするべきか」という部分だった。

ちょうどカザン滞在はロシア旅行の中間地点だったし、1試合観終わった後というタイミングも良い。それに1泊置きに車中泊が続いているし、試合当日にサンクトペテルブルクに入ると言っても13:00キックオフのフランス戦と違ってロシア戦は21:00キックオフだからバタバタもしないし、モスクワ行きの列車に乗るのは20日の夜だからサンクトペテルブルク観光は20日にゆっくり出来るから、カザンを2泊にして17日を「何もない日」にしてしまうのも良いんじゃないか?…というような理由でカザンで2泊するプランの方を友人に希望したのだ。そしてその後に半笑いしながらジョークとして

 

「日本代表のキャンプ地もカザンやし、ワンチャン会えるんじゃね?」

 

という言葉を添えて。

この時は冗談で放ったこのセリフだったが、この日自宅に帰る途中でふと考えた。日本は19日のコロンビア戦に向けて18日には前日練習の為にサランスク入りしていないといけない事を思うと、カザンの空港からサランスクに向かうのって17日なんじゃないか?…あれ、これって本当に会えるんじゃないのか?…と。この2ヶ月後、半信半疑の期待は現実の光景となる。

 

 

 

話をロシアに戻す。

アパートホテルである為、料理は外食か部屋にあるキッチンで自分達で作る必要がある。スーパーでおつまみ系やらお酒やらを購入し、(その辺も丸投げして)宅飲み感のある夕食となった。テレビを付ければ「ロシアのテレビで見るプーチン大統領」の映像に何ともレア感を感じたり、チケット購入候補試合でもあったブラジルvsスイスを優雅にテレビ観戦したり。やっぱりロシアのテレビで観ると字幕なんてさっぱりわからなかったけど…。

何にせよ、ここまでは移動などに忙殺されていた事もあって、現地観戦したフランスvsオーストラリア戦以外はワールドカップの試合を1試合も観ていなかった。この旅行行程で初めてとなるゆっくりとした時間を過ごし、そこまでビールが好きではない私でもおいしいと思えたかなりフルーティーなロシアのビールを飲み、つまみをつまみ…ロシアの水事情にはなかなか苦しめられたがそれについてはどちらかと言えば日本が異常に優れすぎているだけだし、とにかくこの夜は楽に過ごしていた。ちなみに、YouTubeに上げたКатюшаの打ち込みドラムを作ったのはこの日の晩である。

 

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…翌朝、日本代表のTwitterを見れば、チームはまだカザンに滞在してトレーニングを行なっていた。そうなれば、18日にはサランスクに居る必要がある以上移動日は間違いなく今日。この日は「起きたら適当にカザンでぶらぶらしよう」以外の予定は一切決まっていなかったので、じゃあカザンの空港行ってみよーぜ、代表来るんじゃね?仮に代表は見れなくても今日は唯一「多少時間を無駄に使える日」なんだから!…という事で、昨日の残りのチーズを朝食にとり、昼過ぎにはカザンの空港に到着した。

 

空港にはバスで向かったのだが、日本がおかしいのかロシアがおかしいのかわからなくなるシーンも見た。道中でバスがスーパーの前で停まる。停留所かと思ったが、人が降りる様子も乗車してくる様子もない。降車したのはバスの集金係の女性ただ一人だった。少しして集金係の女性はスーパーでパンとジャムを購入して戻ってきたのである。そして運転しながら運転手と共にガッツリジャムの塗られたパンを食す。友人は「ロシアクオリティー」と微笑む。初の海外旅行でロシアという特殊めな国に行ってしまった私にとっては完全に犬も歩けばカルチャーショックみたいな勢いだった。

 

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空港に着いたら、昨日行われた試合のハイライトを見たりTwitterを駆使して日本代表の情報を集めながら昼食。

 

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入国後初のボルシチとロシア名物の飲み物、モルス。ベリー系の果物のジュースである。個人的にモルスは帰りにお土産で買うくらいに美味しかったが、もう一つの名物ドリンクであるクワスに関しては前日トライした結果無理でした…。ライ麦パンを発酵させて作るパンはロシアでも好き派と嫌い派がくっきり別れる日本でいう納豆的なポジションであり、友人から飲んでみろやと奢られたがこれについては…。


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…で、これがロシアで伝統的に朝食やデザートなどで食べられるシルニキ。これは非常に美味しかった。チーズケーキみたいな感じだが、甘さは割と抑えめ。ちなみにシルニキの横にあるのはサワークリームで、上の写真のボルシチの中に入っているのもサワークリーム。ロシア人はとにもかくにも隙あらばサワークリームをぶち込んでいる。朝昼晩おやつの全てにサワークリームが出てくる。

海外旅行では「その国のメシが合うかどうか」は結構なポイントだし、興味を引くポイントでもあるし、人の好みもあるから一概にどうとも言えない。個人的にロシアでの食生活は結構エンジョイ出来た。美味しかった。ただ、あれもこれもサワークリームの件が表すように確かにヘビーではある。住んで毎日食べ続けろとなると少ししんどいかもしれない。だが観光として食べる分には非常に美味しく、特にハズレと感じるようなものもなかった。クワス以外。

 

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…さて、空港のロビーに着けば、この後カザンで行われる試合を観に来る人物や昨日の試合を終えたフランス、オーストラリアのサポーターが出国ゲートを抜けていく。FIFAのボランティアの姿も多く見えた。しかし日本代表が訪れそうな気配は一向にない。今日は別に無駄足になっても良いという前提で空港までまあまあな時間をかけて訪れ、今もこうしてまあまあな時間を待っている訳だが、さすがに本当に無駄足になれば少し切なさはある。「偶然が産んだ奇跡」を完結させる為に空港で情報を集めながら待つ事数時間。何か時間と頃合いを見計ったかのように何人かの日本代表ユニフォームを着た集団が数組集まってきた。この環境下、日本人はそう多くはいない。思い切って集団のたまる空港内の喫茶店に向かったところ、若干戦場のメリークリスマス的な気分なのか快く受け入れてくれて話も弾む。

 

「お二人もコロンビア戦行かれるんですか?」

「あー、僕らはコロンビア戦は行けないんで、ワンチャンに賭けて来てみました!」

 

なんて話をしながらもワンチャンにかけているのは喫茶店に集う誰もが同じで、みんな考えてる事は同じやなあ…と呑気に構えていた。単純に友人以外と普通に日本語で喋れた事に対する安堵感もあったのだろう。喫茶店エスプレッソを注文した。みんななんやかんや同種やなぁなんて思いながら。

 

 

 

しかし、しかしである。

この喫茶店の中にある殆どの日本人は確かに我々と同種だった。

しかし一人だけ明らかに「同種ではない人」がいた。いや、言い方を変えよう。「同種とくくる訳にはいかない人物」がいたのだ。そして彼がここから、我々を含めて喫茶店にいた人間全員を予想だにしなかった展開へと導いていく。

 

 

 

つづく。