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どうなる?マンチェスター・シティ…!〜マンCのチャンピオンズリーグ出場停止処分を受けて慌ててブログ書いたついでに「FFP」と「CAS」のざっくりした用語解説も添えておきました〜

当分Jリーグ開幕直前系のブログ連発しとこうと思ってたのにどえらいニュース持ってきおって。

 

どーもこんばんは

 

 

さてさて、日本時間では2月15日の午前4時前くらいでしょうか。衝撃のニュースが飛び込んできました。

 

 

 

マンチェスター・シティUEFAチャンピオンズリーグ2年間出場停止。

 

 

 

 

 

 

 

欧州サッカー連盟UEFA」は現地時間の2月14日、イングランド・プレミアリーグに所属するマンチェスター・シティに対してFFP絡みの違反があるとして、UEFA主催大会(UEFAチャンピオンズリーグUEFAヨーロッパリーグなど)の2年間出場停止を命じました。ざっくり言えば、欧州規模の大会から締め出される形になったという事ですね。また、同時にプレミアリーグ側からも勝点剥奪や下位リーグへ降格の可能性も報じられています。

シティ側の公式声明では、今回のUEFAの最低に「失望はするが驚きはしない」とした一方、今回の裁定はUEFAが調査を開始し、UEFAが起訴し、UEFAが処分を下したもの」とし、公平性に欠ける事からCASに提訴する構えを表明しています。最終的に今回の件がどのような結末を迎えようと、2020年代前半のサッカー界勢力図に於いて大きな影響を与えうる案件となった事は間違いありません。

 

で、今回慌てて書いているこのブログではなぜこのような事態に至ったのか、これからこの件とシティはどうなるのか…について書いていきたいと思います。

 

…が、その前に。今回の件は「チャンピオンズリーグ出場停止」という言葉のインパクトが大きすぎる事から、欧州サッカーに興味を少し持ってるくらいの方も関心を持っている方が多いのではないでしょうか。となると、当たり前の様に並ぶアルファベットの意味もなんのこっちゃ…となってしまっている方も多いでしょう。という訳でまずは、FFP」「CAS」とはなんぞや、というところから簡単に説明していきます。

今回のブログで書くのは主に以下の7点です。

 

FFPとはなんぞや?

②CASとはなんぞや?

③そもそも何故今回のような事態に至ったのか?

UEFAは何故今回の重い処分に踏み切った?

⑤CASで処分が撤回or軽減される可能性は?

マンチェスター・シティプレミアリーグはこれからどうなる?

横浜F・マリノスに影響は及ぶ?

 

基本的に既出ニュース以上の事は知らないので何とも言えませんが、これまで出ているニュースのまとめ+私的な推測と予想として読んで下さい。

ではまずは①から書いていきます。

 

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FFPとはなんぞや?

 

FFPとはUEFA Financial Fair Play Regulations(UEFAのファイナンシャル・フェアプレー規則)」の略語で、2011-2012シーズンから施行されたUEFAに所属する全サッカークラブに対する規則の事です。

2000年代、サッカーの市場規模が肥大化していく中で資産家がオーナーとなりクラブを買収するケースが多く発生しました。しかしそれはロマン・アブラモビッチ氏が買収したチェルシーのような成功例もあった一方でオーナーの無理な投資と無責任なプランでクラブが崩壊してしまったケースも多く、それによって財政破綻に至るチームも多くなった事で、各クラブが健全な経営を図れる様に最低ラインをブレイクイーブン(収入と支出が同額)とするべくUEFAの各クラブに義務付けられた制度です。

ここで述べられる「収入」は、例えば入場料収入やTV放映権料、広告・スポンサー料や選手の売却益などが対象になります。それは即ち、一介のオーナーによるポケットマネーは「収入」としてはカウントされず、例えば、選手の獲得に100億円を費やした場合は例えそれがオーナーのポケットマネーで捻出した金額で会ったとしても上記の「正当な収入」で100億円を計上しない限りは赤字として見做される事になります。

代表的な例を挙げるとすればACミランで、かつてこのクラブは元イタリア首相のシルヴィオ・ベルルスコーニ氏が会長として私財を注ぎ込んでいましたがFFPのルールに於いてそれは認められない事から2012年にはチアゴ・シウヴァズラタン・イブラヒモビッチなど高価な主力の売却を迫られ、結果的にそれは今日に至るまでのミランの不振の引き金を引く事にも繋がりました。FFPの提唱からは10年以上が経過しましたが、現在でも「クラブの財政破綻を防げる」「クラブ経営の健全化を図れる」としてFFP制度に賛同する声、一方自由経済に於ける競争の面などから否定する声もあるなど未だに賛否両論な制度ではあります。

 

このFFP制度の違反が確認された時に課される処分は段階毎に以下の通り。

 

1 注意

2 警告

3 罰金

4 勝点剥奪

UEFA主催大会参加による収益分配の停止

UEFA主催大会に対する登録選手数の制限と選手リストに記載する全選手分合計年俸の制限 

7 UEFA主催大会参加資格の取り消し

8 タイトル剥奪

 

要するに、今回シティに科された処分は2番目に重い処分という事になります。

余談ではありますが、かつてFCバルセロナチェルシーに科された補強禁止処分はFIFAの規約に拠るものなのでFFPとは関係ありません。

 

②CASとはなんぞや?

 

CASとは「Court of Arbitration for Sport(スポーツ仲裁裁判所)」の略語で、1984年にIOC(国際オリンピック委員会)により設立された仲裁機関です(厳密には裁判所ではない)「スポーツ」と名が付いている通り、サッカーのみならずスポーツ全体を対象とした機関ですね。

CASが取り扱うのは主にドーピングを巡る裁定、競技結果の判定、出場資格の認定などですので、主にリーグや連盟などの機関に対してクラブや選手個人が異議を申し立てる事が多いなど、基本的には処分をなどを受ける立場の側が異議を申し立てる仲裁機関としての認識が一般的です。

最近話題になった事例で言えば、ロシア反ドーピング機関が世界反ドーピング機関から科された「今後4年間にわたり主要なスポーツの国際大会への参加を禁止」する処分への仲裁要請をCASに提出した事でも話題になりました。Jリーグ関連で言えば、2007年に当時川崎フロンターレに所属していた我那覇和樹とその弁護団Jリーグからの処分を不服としてCASに提訴。最終的にCASが我那覇の主張を全面的に認めた事で潔白が証明される形となったケースもあります。

 

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③そもそも何故今回のような事態に至ったのか?

 

これについては、ガンバファンやJ SPORTSのサッカー番組「Foot!」のファンにはお馴染みのサッカー解説者、ベン・メイブリー氏のツイートにわかりやすく纏められているので、まずは元ツイートをご覧下さい。

 

 

 

今回の件で重要になってくるのは、今のマンチェスター・シティがどういう経営形態を持つクラブなのか、という点です。

ベン氏のレポートから引用すると「シティ(とPSG)にはお金持ちのオーナーが居るというよりも、資金力がほぼ無限の国家がクラブを持っているわけである。」と述べられていますが、これこそがチェルシーを筆頭とした有象無象のオーナークラブとシティ、PSG(パリ・サンジェルマン)の決定的な違いであり、今回の問題の根底とも言える点でもあります。物凄くざっくり言えば、シティのオーナーはUAE(アラブ首長国連邦)の王族であり、PSGのオーナーはカタールの王族。会社の業績にも左右される会長や社長としての顔がメインの他オーナーとはスタートラインが最初から異なり、出そうと思えばいくらでもオーナーが金を出せる状態なのがこの2チームなのです。

ただ、FFPというルールがある以上いくら金があろうとクラブとして同額の収入を得なければいけない……実際、両チームとも2014年には一度CLの登録人数削減と罰金という処分をFFPの規定により科せられているので、計画通りの予算を注ぎ込む為、何としてもCLを獲る為には資金投入の「抜け道」を探す必要が彼等には必要だった訳です。

そこでシティが画策したのは、胸スポンサーのエティハド航空を筆頭にエティサラート(通信)、アブダビ環境庁、アーバル投資といった国営企業…即ち、王族であるオーナー一家の傘下にある企業をスポンサーとして仲介業者のような形とし、これらの企業を間に挟む事によってオーナーからの投資をスポンサー料としてチームに振り込まれるようにする事でした。しかしFFPでは相場を大きく上回るスポンサー料も禁じられている事で、シティはUEFAに提出する報告書等でこれらの事実を隠蔽や誤魔化すなどしてFFPの抵触を回避する為の工作を図っていたとの事。その手口などは前述のベン氏のレポートに詳しく纏められていますが、ただでさえFFPにとってグレーな存在だったシティへのUEFAの捜査が本格化し、今回の処分に至りました。

 

UEFAは何故今回の重い処分に踏み切った?

 

どの業界でもそうですが、処分を下すという事は一つの前例を作る事と同義になります。それを踏まえるとシティのCL出場停止という処分が及ぼす影響とインパクトは相当大きくなるので、これまでの所謂「グレーな状態」での処分には踏み切れないという事情がありました。実際、UEFAは2018年にPSGに対してのFFP再調査の是非でPSGからCASに提訴され、PSGの主張が全面的に認められた(=UEFAの敗訴となった)という事例もあったので尚更でしょう。またベン氏のレポートにもある通り、巨大化したサッカー市場に於いて資金力のあるチームを敵に回すと兼ねてから構想が進んでいると言われる「欧州スーパーリーグ構想(UEFAの管轄外でビッグクラブに限定したリーグを作ろうという構想)」を更に推進されてしまう恐れもあった事で、シティに対してもPSGに対してもこれまではグレーである以上踏み切れない理由がありました。

そんな事情を抱えるUEFAが今回、シティにこのような処分を科した事を考えると、UEFAの中でCASに持ち込まれても大丈夫なくらいの「クロである証拠」を掴んだ事で今回の処分に踏み切ったのでは無いか、と考えられます。

 

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⑤CASで処分が撤回or軽減される可能性は?

 

冒頭で述べた通り、シティは公式声明で仲裁要請を提出する事を既に表明しています。このようなケースでの処分は「実際に考えているよりもちょっと重め」で下す事が多いので、罰金なり出場停止なりの処分が軽減される可能性はあると思います。罰金が減額されるとか、出場停止が1年に短縮されるとか。

ですが、今回の経緯や過去にシティが①に挙げた処分の第6段階を受けてしまっている事を踏まえると撤回はかなり難しいでしょう。CASに持ち込む事で来季のCLに関してはCASの裁定待ちという事で出場出来る可能性はありますが、いずれにせよ1年の出場停止は避けられないのではないでしょうか。軽減はあっても撤回は無さそうに見えます。

 

マンチェスター・シティプレミアリーグはこれからどうなる?

 

言うまでもなくUEFAチャンピオンズリーグとは選手にとってFIFAワールドカップに並ぶ「目標」とされる大会であり、クラブレベルでは世界最高峰の戦いと言えます。無論、シティに移籍してくる選手はCLに出られる事を前提に加入しているでしょうし、シティも唯一獲得出来ていないCLのタイトルを獲得する為にこれまで強化に走ってきました。「CLに出られない」という事が選手獲得に及ぼす影響は間違いなく大きく、FFPに処分を正式に科された事で札束攻撃も出来なくなった以上選手獲得での苦戦は確実にあるでしょう。

そして最もシティファンが懸念しているのが現有戦力の流出です。今やシティのレギュラーにまでなるような選手は、多くがサッカー選手としてのピークとしてそこに居る訳です。そんな選手にとって「2年」が持つ意味は相当大きく、1年だけならまだしも2年の出場停止なら主力流出に繋がる可能性は高く、シティ側も選手売却による正当な収入を得る必要性にも迫られています。

現時点で具体的な移籍先などの話は無く、シティのレギュラーとなるとかなりの移籍金が必要な為獲得可能なクラブは限られてきますが、ペップ・グアルディオラ監督を始めMFケヴィン・デ・ブライネやFWラヒム・スターリングなどにも流出の可能性は浮上し、挙句Twitterでは「#マンチェスター・シティドラフト会議」なるハッシュタグがトレンドに入る始末。ただシティにとっても選手を獲得するクラブにとっても、今回の案件が案件なだけに移籍金とFFPはかなり気にした上での取引を行う必要があるのは確かです。

2006年に「カルチョ・スキャンダル」によって2部降格を余儀なくされたユベントスのような事態になれば更なる混乱と主力流出には拍車がかかりそうですが、報道を見る限りその可能性は今のところ少ないとの事(でもゼロでは無いし勝点剥奪の可能性は低くも無いとの事)

 

今回の件はあくまでも「シティが勝手にやらかした事」という扱いなので、プレミアリーグにペナルティが科せられる事はありません。プレミアリーグに及ぶ影響としてはシティの出場停止に伴うUEFA主催大会の出場枠について。プレミアリーグに非が無い以上出場枠が削減される事は無いと思われるので、今季と来季のCL出場圏内は事実上5位までと見るのが自然でしょう。ヨーロッパリーグに関しては、カップ戦の結果次第では8位のチームまで出場の可能性が残される事になりそうです。

 

横浜F・マリノスに影響は及ぶ?

 

Jリーグファンが気にしている事と言えばこの部分かもしれません。

Jリーグに所属する横浜F・マリノスは2014年7月、マンチェスター・シティなどを保持するサッカー事業グループ「シティ・フットボール・グループ(CFG)」が少数株主になる事が発表されました。それ以降のマリノスの発展や外国籍選手獲得のオペレーションなどに於いてCFGの貢献は小さくなく、昨季は16年ぶりの優勝を果たしたマリノスの一つのターニングポイントに2014年のCFG介入を挙げる人も多くいる程。このCFGの親会社が今回の問題の主役的存在とも言えるアブダビ・ユナイテッド・グループなので、今回の裁定の影響がマリノスに何らかの影響を及ぼす可能性が懸念されるのも流れとしては必然と言えるでしょう。

 

一つ確かに言える事は、少なくともマリノスに対して大きな影響が及ぶ事は無いでしょう。100%CFG傘下にあるメルボルン・シティ(オーストラリア)やニューヨーク・シティ(アメリカ)ならまだしも、マリノスは傘下というよりは深めの業務提携という立場ですので、マリノス側が何かを危惧しなければならない程のダメージが発生する事は無いと思います。

ただ、この件を機にCFGが規模を縮小するなり投下予算を減らす可能性は否定出来ないので、大きな影響は無いだろうけど小さい影響まではもしかしたらあるかも…という感じです。

 

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なんにせよ、2011年から開始されたFFP制度でここまでのインパクトを与える裁定が下される事はこれまで殆どありませんでした。冒頭でも述べた通り、UEFAの主張が通るにせよシティの主張が通るにせよ、2020年代の欧州サッカー史に於いて重要な局面をいきなり迎えている事は間違いありません。

 

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…で、ガンバとサンガには誰か来てくれるんかい?

ではでは(´∀`)