RK-3はきだめスタジオブログ

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ロシアW杯観戦記〜あれから1年…《海外ド音痴、ロシアに翔ぶ。〜英語もまともに話せない私のロシアW杯観戦記〜》2019年再編集版〜第13話 シベリアどうでしょう

【ロシアW杯観戦記再編集版、第1話、前話はこちら↓】

 

 

 

カザンの空港でまさかまさかの日本代表との遭遇を果たした後、世界遺産にもなっているカザン・クレムリンに赴く。ロシア全体に言える事ではあったが、カザンはその中でも特に日差しが強かった。気温としてはちょうど良い具合に過ごしやすいものではあったが、多くの時間帯でサングラスを外せなかった。サングラスを掛けた姿を友人に「胡散臭さが増した」と言われようとも、自分でも「インチキ投資勧めて来そうなヤツ」みたいなビジュアルに仕上がっている事を自覚はしていたが、それ以上に眩しさが拭えないもんで仕方ない。そもそも、この時カザンのクレムリンに居た人間の8割以上がサングラスを掛けていた。

ただ、それは逆に言えば紫外線を遮る雲すらないという事でもあり、クレムリン見物としては絶好のロケーションであった事も間違いない。

 

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宇佐美ユニ続行。

とにかくまあ、ロケーションの良さとそこまで人がごった返している訳でも無かったので、ここからは題して「トプ画に出来る写真を撮ろうの会」なるものが始まる。

 

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…で、皆さんも中継映像などで見たかもしれないカザンのワールドカップモニュメントもここにあった。(念の為に記すが神戸のモニュメント等とは違ってご自由にお乗りください状態ではあった)

 

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カザンでのイベントはこれにて終了。翌朝からは列車に乗り、この旅最後の目的地であるサンクトペテルブルクへと向かう。この日の晩はスーパーで買った大量のペリメニ(日本で言うところの水餃子みたいな感じのロシア料理)を大量のサワークリームで頂く。

 

 

 

日付も変わり、どうせ明日は夜行列車からほぼ1日出る事は出来ないのだから、ゴロゴロとスマホをいじってこれまでの写真を送ったり整理するなりなんなりしていた。ロシアの地でプロスピAもやったりしていた。

 

…そんな時である。あれは午前2時前くらいだっただろうか…突如としてLINEニュースの通知が【速報】の文字を記す。LINEニュースの速報なんて見慣れた訳では無いが、見慣れていない訳でも無い。部屋の中、窓の外の風の音一つすら聞こえない状況でいつものように通知を消そうとした手が通知の文字を見て止まる。

 

 

 

「大阪北部震度6弱

 

 

 

…………はい…?

 

 

 

手の動きと同時に一瞬思考も止まる。場所が場所なのだ。大阪北部なんてガンバのホームである上に、ガンバが関係ない案件でも頻繁に通う場所だ。高槻や茨木なんてモロである。というかそもそも、大阪北部で6弱なら自分が住んでいる京都だって震度5前後はあるだろう。あの恐怖は今まで感じた事の無い恐怖だった。日本の違うところや外国で大きな地震があった訳ではない。自分が住んでいるところ、バリバリ通うところでの大きな地震だったにも関わらず、今の自分はロシアに居るから揺れの一つも何も感じない。タイミングが誘った微妙なズレの恐怖は実際に地震を体感した人達のそれと比べる事は出来ないにしてもジャンルの違う言葉で表現しにくい恐怖があった。

 

京都の震度は5。日本というお国柄、耐震などはしっかりしているから本当に深刻な心配まではしていなかったが、得体は知れるも掴みきれない恐怖を抱えたまま、午前2時のカザンから午前8時の京都へ電話を繋ぐ。時間帯的にも母は居るし、父も出勤前、妹も登校前の家族が揃っている時間帯で、割と直ぐに電話が繋がった。

 

 

 

私「もしもしー?」

 

 

 

 

 

 

母「(電話)かかってきたー!wwwwww」

父&妹「wwwwwwwwwwww(電話の外で漏れ伝わる笑い声)」

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでも地震発生直後、ある程度落ち着いてからは「息子がロシア旅行で揺れを回避した事」と「果たしてロシアにいる息子から電話がかかってくるのかどうか」の話で随分盛り上がったらしい。相当盛り上がっていたのだろう。ボケまで放り込んできた。

 

母「そっち揺れた?」

私「んな訳あるかい」

 

この一家は………。

 

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この日は午前中にはカザンを出る為、前日のうちに準備の殆どは済ませていた。ロシアのマクドナルドで朝食を摂り、そのままカザン・パッサジルスキーへと向かう。ここからは間違いなく、この旅で一番過酷な時が待っているのだ。

…というのも、モスクワからカザンまでは11時間の旅を余儀なくされた訳だが、前に書いた通り同室となったロシア人とのプチ宴会もあって11時間という言葉ほど過酷では無かったのだが、カザンからサンクトペテルブルクに要する時間はなんと20時間である。

 

…20時間である。

 

…20時間?シベリア鉄道20時間?これはなんだ、水曜どうでしょうでも聞いた事ないよ、そんな数字…。

 

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更に私が一番懸念していたのは今回の部屋割りである。カザンからサンクトペテルブルクに向かうこの列車はかなりの人気車両だったらしい。その為、なんと私と友人は隣とはいえ別部屋になってしまったのだ。タイトル通り、ロシア語どころか英語もまともに話せない私に課せられたこの試練はなかなか深刻である。しかも電車の中はWi-Fiなんて全く効かないからほぼ無力化していた。挙げ句の果てには音楽に逃げようとしても、モスクワ→カザンの車両と違ってコンセントさえも無い。これで20時間…?大丈夫か、生きて帰れるか…?

列車は走り、シベリア鉄道の名に相応しく「そりゃこんなところで電波なんか通う訳ないよな…」と言わざるを得ない道を走り抜けていく。

 

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とりあえず電波も通じないからワールドカップの結果も入ってこない中で、とりあえず時間を潰そうとDSにマリオカートを差し込んで友人と食堂車へと向かう。時間はお昼過ぎ。ちょうど昼食時を少し過ぎたところだったし、食堂車での食事はロマンが無い訳じゃない。友人はポトフ的なものをオーダーし、私はマッシュルームと玉ねぎを炒めたみたいな、料理名はわからないがスピードメニュー感のあるメニューを頼んだ。

 

 

 

マリオカートで数レース戦う。注文してから10分くらいが経った。食堂車のテーブルは客で埋まり始める。飯はまだ来ない。まぁ、まだ10分か…そう思ってマリオカートを再開する。

 

 

 

注文してから30分ほど経つ。確かに見え隠れしている厨房に人はいる。働いてはいる。ただ飯は一向に来ない。

 

 

 

注文してから1時間ほど経つ。我々より後に来た人間の飯も運ばれ始め、そして友人の飯も運ばれ始めた。印象としては友人のよりも私の頼んだメニューの方が早く来そうな感じはあるけれど…頼んだ品が運ばれたらお金を払うシステムなので、友人はこのタイミングで料金を払って食事にありつく。窓の外を見れば果てのない緑が広がる。こうなってくると「果たして自分にとってマッシュルームは1時間待ってでも食べたいものなのか?」という疑問すら湧く。

 

 

 

90分ほどが経つ。サッカーならもう試合が終わっている。友人はとっくに食べ終わり、我々より後に来た客はもう席を立ってすらいる。なんなら、客も増えつつある為か食事も終わったのに長く居座っている客にはそろそろ退店するように…との声掛けもしていたが、既に90分も居る我々のテーブルはそれを言われていない。という事はオーダー自体は彼らは頭の中に入っている。そうなると益々訳がわからない。友人が店員に確認すると、店員は「オボエテル、ワカッテルヨー」的な返し。

…もしかして私はとんでもない料理を頼んでしまったのか?マッシュルームと玉ねぎを炒めたやつと言ったが、尋常じゃないやつでも出てくるのか…?混乱の中で再びマリオカートを戦うが、いい加減マリオカートにも飽きが見え始めてくる。

 

 

 

…2時間経った。ようやく、ようやくである。ようやく料理が運ばれてきた。

気力を失っていたのだろう。もう写真を撮る気は無かったがこれだけははっきり覚えている。完全にマッシュルームと玉ねぎを炒めたやつだった。

美味しかった。美味しくはあった。だが絶対にあれは2時間待って食べる飯では無い…。

 

 

 

シベリア鉄道の恐ろしい話はまだある。

車両の連結部分には各所、こんな張り紙が貼られていた。

 

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…絵と数字だけで何となく意味と恐怖は伝わる。要するに「5月25日から7月25日(要するにW杯期間中前後)の間、列車内に銃の持ち込みを禁止する」という注意書きだ。

 

 

 

 

 

 

他の日はいいんだ…。

 

 

 

 

 

シベリア鉄道での20時間は、この国が「おそロシア」と呼ばれる所以を見せつけられたような気がした。

ちなみに、まさかの友人と離れて最大の危機と化した部屋に関しては、乗り遅れたのか何か知らないが4人部屋にも関わらず自分ともう一人しか入ってきていなくて、しかもその男性は20時間ずっと寝ているかのような勢いだったから心配したほどの事は起こらなかった。

 

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20時間のリアル水曜どうでしょうを戦い抜いた我々が辿り着いた先はこの旅の最終目的地、サンクトペテルブルクである。いよいよ訪れたロシアW杯観戦記の最終章は水の都と呼ばれる幻想的な街でそれぞれの熱狂とともに繰り広げられるのだった。

 

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つづく。

 

番外編の未公開写真↓