Tragedy 〜Jリーグが急に中断期間に入っちゃったから印象に残るシーズンを振り返ろう企画・第8回 2013年優勝争い〜【2013年J1最終節特集】

2020年2月25日、Jリーグは開幕戦とルヴァン カップを1試合ずつ終えたタイミングで新型コロナウィルスの影響により、3月15日までのJリーグ主催全公式戦を延期する決定を発表した。

事情が事情である為、こうなってしまった以上中止はやむを得ない。ただ、同時にJリーグファンにとってはやっとシーズンが始まったのに、またもオフシーズンのような状態に、退屈な日々に戻った事も確かである。そこで…昨年のリーグ閉幕前に5回連載していた過去のJリーグの印象的な優勝争い・残留争い・昇格争いを振り返る企画を一時的に再開しようと思う。中断期間の暇潰し程度に使ってもらえれば幸いである。

今回取り上げるのは2013年の優勝争い。古豪復活、新興勢力……それらが終盤に複雑に絡み合うリーグ戦の末に待っていたのは一方から見れば奇跡的で、そしてもう一方から見ればなんとも悲劇的なラストシーンだった。そんな2013年の優勝争いを見ていこう。

 

 

2013年のJ1チーム

ベガルタ仙台(前年2位)

鹿島アントラーズ(前年11位)

浦和レッズ(前年3位)

大宮アルディージャ(前年13位)

柏レイソル(前年6位)

FC東京(前年10位)

川崎フロンターレ(前年8位)

横浜F・マリノス(前年4位)

湘南ベルマーレ(前年J2、2位)

ヴァンフォーレ甲府(前年J2、優勝)

アルビレックス新潟(前年15位)

清水エスパルス(前年9位)

ジュビロ磐田(前年12位)

名古屋グランパス(前年7位)

セレッソ大阪(前年14位)

サンフレッチェ広島(前年優勝)

サガン鳥栖(前年5位)

大分トリニータ(前年J2、6位)

 

開幕前の優勝予想としては「本命」を見つけるのはなかなかに難しいと見られていた。というのも、前年優勝の広島、準優勝の仙台は「本当に強くなったのか去年が特別だったのか」がまだハッキリしておらず、クラブ規模から補強も主力の慰留に努めるのが精一杯で、そこにACLも加われば…と考えると苦戦も予想されていた。

逆に優勝予想で多く名前が挙がったのは興梠慎三森脇良太那須大亮などを獲得した浦和、クレオ鈴木大輔キム・チャンスなどを獲得した柏の大型補強組、前年は残留争いを強いられたがナビスコ杯を制し、柴崎岳大迫勇也といった若手が育ってきたタイミングで黄金期を知るトニーニョ・セレーゾ監督が復帰した鹿島といった面々。降格争いに関しては湘南と大分が真っ先に予想され、あと一つがどこになるかな…という構図だった。

 

 

 

 

序盤戦

 

開幕から快調に飛ばしたのはマリノスだった。開幕戦の湘南戦ではラスト16分から3点を奪って4-2で勝利すると続く清水戦では5-0の圧勝。6試合で19得点を叩き出す圧倒的な攻撃力を見せつけて開幕6連勝を飾る。6試合中4試合で3得点、特にFWマルキーニョスは6試合6得点を奪う大爆発を見せた勢いがどこまで続くか…と思われたが、第7節で新潟相手に初黒星となる完封負けを喫すると今度は逆に4試合勝利から見放されてしまう。

第6節まで無敗だったチームはあと二ついた。2-2で引き分けた第3節大分戦以外は全て勝利した浦和と前年終盤からの無敗を続けていた大宮の2チームである。第7節、マリノスが新潟に敗れる3時間前にこの両チームは首位に立つチャンスを掴む為の無敗同士さいたまダービーを迎えたが、この一戦で勝利したのは大宮だった。

当時の大宮といえば「残留マスター」というキャラが定着しており、毎年毎年序盤戦は不振に陥りながら終盤戦は急に連勝して残留を掴み取る……それは「落ちないお守り」が発売されたり「終盤戦の大宮はバルサより強い」とまで言われるほどだった。しかしそれは裏返せば「前半戦はズタボロ」という意味でもあった。そんな大宮が前半戦から大躍進を続けていたのだ。ズデンコ・ベルデニック監督の下で整備された守備から繰り出されるカウンターを、最後はズラタン、ノヴァコビッチという強力ツートップが仕留める……実に合理的なサッカーは優勝争いとは縁遠かった大宮に「首位」というポジションを与えたのだった。優勝候補に名を挙げられていた鹿島、浦和、柏、前年王者の広島を次々と倒して7連勝を果たした後、第11節で仙台に1-2で敗れて前年から続く無敗記録こそ21で止まったが(※1)、1ヶ月半の中断期間に突入するまでの13試合の成績は10勝2分1敗。文字通り、ここまでの主役は間違いなく大宮だった。一方共に第7節で初黒星を喫したマリノスと浦和だったが、両者ともその後も黒星を引っ張る事なく着実に勝点を積み上げる。

 

J1は第13節を最後にブラジルW杯アジア最終予選コンフェデレーションズカップに伴う中断期間に入るが、この時点で上位につけていたのは上記3チームに加えて着実に勝点を獲得した鹿島と広島、そして第7節からは7戦無敗(※2)を継続していたセレッソの6チーム。逆に低迷していたのは大型補強を敢行しながらも3失点以上喫した試合が6試合を数えた11位柏、豊富な戦力を持ちながらドラガン・ストイコビッチ監督体制6年目でマンネリ感が否めなかった14位名古屋。降格圏に沈んだのは16位湘南、18位大分はある程度予想されていたが、意外だったのは磐田だった。開幕前には現役日本代表の伊野波雅彦チョン・ウヨンを補強し、伊野波に加えて駒野友一前田遼一アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本代表の常連を3人揃えながらも(※3)第13節までに挙げた勝利は僅か1勝。第9節で甲府に1-2で敗れると森下仁志監督を解任したが、結局13試合を終えて1勝4分8敗という数字は最下位の大分を得失点差で何とか上回るだけの体たらくだった。

 

※1 2012年第24節浦和戦〜2013年第10節広島戦まで続いた21戦無敗の記録はJ1最長記録となっている。

※2 第16節広島戦に敗れるまで、最終的に9戦無敗にまで記録は伸びている。

※3 当時の日本代表は既に海外組が多くを占めていた中で、駒野と伊野波はDFラインに出場停止者が続出した最終予選イラク戦で先発出場するなど準レギュラーの地位を築いていた。特にレギュラーの地位を築いていた前田に関しては、基本スタメンに3人しかいない国内組のうちの一人で、残る2人はG大阪遠藤保仁今野泰幸で2013年のG大阪はJ2だった事から「国内組スタメンはJ2とJ1の17位だけ」とネタにされる異様な構図にもなっていた。コンフェデ杯には最終的に伊野波と前田が招集されたが、複数名メンバーが招集されたJリーグチームは磐田、G大阪FC東京の3チームのみ。

 

第13節終了時点

1位 大宮アルディージャ(32)

2位 浦和レッズ(27)

3位 横浜F・マリノス(27)

4位 鹿島アントラーズ(25)

5位 サンフレッチェ広島(24)

6位 セレッソ大阪(23)

7位 FC東京(19)

8位 川崎フロンターレ(19)

9位 清水エスパルス(18)

10位 ベガルタ仙台(17)

11位 柏レイソル(17)

12位 アルビレックス新潟(14)

13位 ヴァンフォーレ甲府(14)

14位 名古屋グランパス(12)

15位 サガン鳥栖(10)

16位 湘南ベルマーレ(9)

17位 ジュビロ磐田(7)

18位 大分トリニータ(7)

 

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中断明け〜後半戦

 

しかし中断明けに事態は一変する。

首位に立つ大宮は再開明けの2試合を1勝1分で乗り切ってここから首位固めに走ると見られたが、第16節にマリノスとの上位対決を1-2で落とすと、第17節では川崎にアディショナルタイムの失点2-3で敗れて首位陥落。第18節では大宮から首位を奪った広島との直接対決が組まれ、ここに勝てば首位を奪い返せるチャンスだったが……勝点で並ぶ天王山は石原直樹ハットトリックを決めた広島の快勝に終わった。

 

2013Jリーグディビジョン1第18節

サンフレッチェ広島3-1大宮アルディージャ

2013年7月31日19:04@エディオンスタジアム広島

広島得点者:石原直樹(3分、81分、90+4分)

大宮得点者:渡邉大剛(74分)

 

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大宮にとって第16節マリノス戦からの5試合は上位直接対決の連戦だった。しかし前述のマリノス戦、広島戦どころか第19節鹿島戦、第20節セレッソ戦も落として5連敗。順位こそ4位につけていたが、ここでフロントはベルデニック監督を解任して小倉勉監督を招聘し勝負を賭ける。しかし最終的に連敗は8にまで伸び、前半戦であれだけ強かった大宮が真っ先に優勝戦線からの脱落を余儀なくされたのだった。

 

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上位争いはマリノスと広島が激しいデッドヒートを繰り広げ、頻繁に首位が入れ替わる攻防戦を見せながら優勝争いをリードする。しかし広島は第22節でぶっちぎり最下位だった大分相手に引き分け、マリノスも第24節で当時8連敗中だった大宮に敗れるなど取りこぼしも目立っていた為、この2チームの後をぴったりとつけていた浦和の他にも鹿島、セレッソがまだ優勝の可能性を現実的に残していた。

そして残り6試合となった第29節、2013年のJ1はここで大きなポイントとなる試合を迎える。

 

終盤戦

 

第28節終了時点

1位 サンフレッチェ広島(53)

2位 横浜F・マリノス(53)

3位 浦和レッズ(51)

4位 鹿島アントラーズ(50)

5位 セレッソ大阪(47)

6位 川崎フロンターレ(45)

7位 FC東京(44)

 

第28節では首位マリノスが15位甲府相手に勝ち切れず0-0のドロー。一方広島は清水に3-1で勝利した事で再び首位に浮上した。鹿島、浦和、セレッソといった上位陣もそれぞれ勝利を挙げて迎えた第29節は今後の行方を左右するであろう2つの直接対決が組まれる。

 

第29節

鹿島アントラーズ(4位)vs浦和レッズ(3位)

横浜F・マリノス(2位)vsサンフレッチェ広島(1位)

 

1位広島が2位マリノスと勝点で並んだ上で4位鹿島と勝点差 3である事を踏まえると、少なくともセレッソを含めた上位5チームは確実に順位がシャッフルされる事になる。間違いなく2013年のキーポイントとなるであろうこの試合は両会場とも15:04にキックオフを迎えた。

 

鹿島はこの年ここまでホーム無敗を継続していた為、ここでもきっちり勝利を収めたいところだったが20分に柏木陽介コーナーキックから那須大亮に合わせられて浦和に先制点を許す。前半を1点ビハインドで折り返すが、後半もなかなか思うように攻められないフラストレーションは鹿島の方に少しずつ蓄積していく。60分、遂に我慢の限界に達したダヴィと挑発した森脇良太が小競り合いに発展し、喧嘩両成敗のような形で両者にイエローカードが提示された。しかしダヴィは直前にもイエローカードを受けていた事でこれが2枚目となり退場処分に。得点源を失った鹿島のリズムは一気に狂い、71分にはドリブルで切り込んだ原口元気のエリア外からのシュートが決まって浦和が追加点。鹿島も終了間際に大迫勇也が豪快なボレーを決めて一点を返すが時既に遅し。1-2で敗れた鹿島はこれが2013年ホームでの初黒星となって5位に転落。逆に浦和はこの勝利で2位に浮上した。

 

2013Jリーグディビジョン1第29節

鹿島アントラーズ1-2浦和レッズ

2013年10月19日15:04@茨城県立カシマサッカースタジアム

鹿島得点者:大迫勇也(87分)

浦和得点者:那須大亮(20分)、原口元気(71分)

 

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そして勝点で並ぶチーム同士の首位天王山となったマリノスと広島の一戦は中村俊輔を中心にマリノスペースで試合が進む中、55分には日本代表にも招集されるようになった齋藤学が左サイドから得意のカットインで切り込んで豪快なシュートを放つ。これが決まってマリノスが先制点を奪い、4万人近い観衆を集めた日産スタジアム歓喜の渦に包まれた。その後広島の猛攻を集中して防ぎ切りタイムアップの笛まで持っていったマリノスがこの天王山を制して再び首位に浮上。広島は浦和が勝利した為3位に転落し、鹿島が敗れた事で最下位大分相手にきっちり勝利を収めたセレッソが4位に浮上した。

 

2013Jリーグディビジョン1第29節

横浜F・マリノス1-0サンフレッチェ広島

2013年10月19日15:04@日産スタジアム

横浜FM得点者:齋藤学(55分)

 

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シーズンはラスト5試合となり、この5チームでの優勝争いが更に激化していく。

首位に立ったマリノスは17位磐田、18位大分からきっちりと勝点3を獲得して首位をキープ。第31節で名古屋に敗れたが、上位5チームのいずれも第30節〜第32節の間に取りこぼした事で首位の座は盤石となった。そしてマリノスが磐田に勝利した第32節、2位浦和はホームで風間八宏監督のサッカーが浸透してきた川崎に1-3で敗戦。3位広島もこの試合が優勝争いに残るラストチャンスだった5位セレッソに1-0で敗れる。更には鹿島も鳥栖の前に散った事でマリノス以外の上位チームは直接対決だったセレッソを除いて全て第32節で敗れたのだ。これにより、マリノスは残り2試合のどちらかを勝てれば優勝決定という王手をかける。しかもマリノスが残り2試合で勝てなくても浦和と広島が2連勝しなければ優勝という圧倒的優位な状況に立った。中村俊輔を筆頭に中澤佑二ドゥトラマルキーニョスなど35歳以上の選手が多くスタメンを占めたチームは「おっさん集団」と呼ばれながらもその分ここに来て圧倒的な経験から来る安定感を見せており、誰もがマリノスの優勝を確実視していた事だろう。

 

しかし事態はここから予期せぬ方向へと進む。

 

 

 

第33節

 

第32節終了時点

1位 横浜F・マリノス(62)

2位 浦和レッズ(58)

3位 サンフレッチェ広島(57)

4位 セレッソ大阪(56)

5位 鹿島アントラーズ(56)

 

第33節

セレッソ大阪(4位)vs鹿島アントラーズ(5位)

サガン鳥栖(13位)vs浦和レッズ(2位)

横浜F・マリノス(1位)vsアルビレックス新潟(8位)

サンフレッチェ広島(3位)vs湘南ベルマーレ(16位)

 

この試合でのマリノスの優勝条件は以下の通り。

マリノスが勝利→優勝決定

マリノスが引き分け→浦和、広島が引き分け以下で優勝決定

マリノスが敗北→浦和の敗北&広島の引き分け以下&セレッソvs鹿島が引き分け

 

というものだった。

マリノス以外に優勝の可能性がある4チームに関しても、2位浦和以外の3チームは勝利を逃した時点で優勝の可能性は消滅、セレッソと鹿島に至っては勝利してもマリノスが勝点を1でも積めば優勝の可能性が無くなるという厳しい条件だった。2位の浦和も敗れれば、広島は引き分ければマリノスの結果を問わずして優勝の可能性が無くなる。そんな状況下で迎えた第33節は14:00キックオフの試合が5試合、17:00キックオフの試合が4試合に分かれていたが、優勝争いに絡む試合は全て14:00に同時キックオフの刻を迎える。

 

 

 

前半から各地で試合は激しく動く。

まさしくサバイバルゲームとも言えよう直接対決となったセレッソと鹿島の一戦は、共にこの年日本代表デビューを果たし、共に翌年のブラジルW杯メンバーにも選ばれる事になる柿谷曜一朗大迫勇也が1点ずつ奪って前半を1-1で終える。優勝争いに絡む5チームの中で比較的対戦相手に恵まれた感のある広島は36分に青山敏弘が自ら持ち込んでミドルシュートを決めて1点をリードした。一方浦和は、残留争いを強いられながら後半戦に一気に調子を上げてきた鳥栖相手に苦しんで前半だけで2点のビハインドを喫する。

そして肝心のマリノスだったが、ホーム日産スタジアムにこちらも後半戦絶好調の新潟を迎え撃つ。しかし新潟の激しいプレッシングを前になかなか決定機的なチャンスを作れないまま前半を0-0で折り返した。

 

前半終了時点

セレッソ大阪1-1鹿島アントラーズ

サガン鳥栖2-0浦和レッズ

横浜F・マリノス0-0アルビレックス新潟

サンフレッチェ広島1-0湘南ベルマーレ

 

1位 横浜F・マリノス(63)

2位 サンフレッチェ広島(60)

3位 浦和レッズ(59)

4位 セレッソ大阪(57)

5位 鹿島アントラーズ(57)

 

後半に入っても広島は安定した試合運びを見せる。湘南相手に90分間試合を支配しながら、追加点こそ奪えなかったものの、湘南に決定的なチャンスはほとんど与えずに1-0で勝利を収めて逆転優勝への絶対条件をクリアした。

生き残りをかけたセレッソと鹿島の直接対決では、柿谷を筆頭に山口螢扇原貴宏杉本健勇といったロンドン五輪世代の選手を中心に南野拓実などの若手が躍動する勢いそのままに鹿島に対して攻勢を強めていくが逆転弾が遠い。逆に終了間際の85分、劣勢だった鹿島は小笠原満男フリーキックセレッソDFに当たってルーズボールになったところを中村充孝が押し込んで勝ち越しゴール。鹿島が2-1で勝利を収めたこの瞬間、鹿島が優勝の可能性を繋ぎ止めると共にセレッソの優勝の可能性が消滅した。

2位ではあるが、優勝の可能性を残す為には最低でも引き分けには持ち込む必要がある浦和は後半怒涛の猛攻を仕掛ける。しかし幾度と無く決定機を迎えた浦和だったが、ユン・ジョンファン監督の下で昨季から躍進を遂げる鳥栖の前にゴールまで持ち込めず、この年の途中から鳥栖に加入したGK林彰洋を中心とした鳥栖DF陣の厚い壁の前に猛攻は虚しく跳ね返されるばかり。アディショナルタイムには那須大亮が1点を返すが、逆に前がかりになったところをカウンターで突かれて豊田陽平にはハットトリックを許して終わってみれば大量4失点。最後まで攻めた浦和だったが、鳥栖の前に完敗を喫して優勝の可能性が消滅した。

 

この結果、優勝の可能性を残す……マリノスの結果を待つ権利が与えられたのは広島と鹿島の2チームとなった。

 

2013Jリーグディビジョン1第33節

セレッソ大阪1-2鹿島アントラーズ

2013年11月30日14:03@大阪長居スタジアム

C大阪得点者:柿谷曜一朗(38分)

鹿島得点者:大迫勇也(25分)、中村充孝(85分)

 

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2013Jリーグディビジョン1第33節

サガン鳥栖4-1浦和レッズ

2013年11月30日14:03@ベストアメニティスタジアム

鳥栖得点者:早坂良太(15分)、豊田陽平(37分、90分、90+6分)

浦和得点者:那須大亮(90+2分)

 

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2013Jリーグディビジョン1第33節

サンフレッチェ広島1-0湘南ベルマーレ

2013年11月30日14:05@エディオンスタジアム広島

広島得点者:青山敏弘(36分)

 

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当時のJリーグ最多入場者数を更新した62632人の前で優勝を決めたいマリノスは得意というよりもはや十八番とも言えたセットプレーからよ得点を試みる。しかし63分の中澤佑二のドンピシャのヘディングは枠を逸れ、中村俊輔フリーキックはGK東口順昭のファインセーブに阻まれ……。

チャンスを活かせないマリノスに対し、後半戦絶好調の新潟は72分、コーナーキックの混戦からこの年ブレイクを果たしていた川又堅碁が豪快に叩き込んで先制点を奪う。まずは同点にしたい、いや、しなければならないマリノスは猛攻を仕掛けるが、こうなってくると大観衆と絶対的優位の状況はかえってプレッシャーになり始めるのか、日産スタジアムを異様な空気が包み始めてマリノスの攻撃も空回りし始める。川又のゴールというよりも、後半からどこか焦りが見えていたマリノスに対しアディショナルタイムマリノスのDFラインにぽっかり出来た隙を突いて新潟の鈴木武蔵がゴールを決めて決定的な追加点。0-2で敗れたマリノスは優位な状況は変わらないが、ホームで優勝を決められず広島と鹿島と共に優勝の行方を最終節に持ち越す事になってしまったのだ。

 

2013Jリーグディビジョン1第33節

横浜F・マリノス0-2アルビレックス新潟

2013年11月30日14:03@日産スタジアム

新潟得点者:川又堅碁(72分)、鈴木武蔵(90+3分)

 

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最終節

 

第33節終了時点

1位 横浜F・マリノス(62)+19

2位 サンフレッチェ広島(60)+20

3位 鹿島アントラーズ(59)+10

4位 浦和レッズ(58)+13

5位 川崎フロンターレ(57)+13

 

鹿島アントラーズ(3位)vsサンフレッチェ広島(2位)

川崎フロンターレ(5位)vs横浜F・マリノス(1位)

 

マリノスの優勝条件はまず勝てば無条件で優勝が決まる。加えてマリノスが敗れたとしても2位3位の直接対決となった鹿島vs広島が引き分けに終わればマリノスは敗れたとしても優勝が決まるし、鹿島が勝った場合でも優勝はほぼ決まり(※4)で優位な状況は変わらない。

マリノスが優勝を逃す状況はマリノスが勝利を逃した上で広島が勝つ事だった。マリノスが引き分けて広島が勝った場合も勝点では並ぶが、得失点差で既に広島が上回っている以上マリノスが広島の上に行く事が出来ない。とはいえ、マリノスは前節ほどの余裕は無くても優位な状況に変わりはない。長らく続いた低迷から抜け出し、2004年以来9年ぶりとなる優勝を…そしてチームの象徴、中村俊輔が唯一国内タイトルで手にしていないリーグ戦タイトルを目指し、15:00に両会場同時にキックオフを迎える。

尚、数字の上では鹿島も優勝の可能性を残していたが現実的な可能性は薄くなっていた為(※4)、ここでは優勝はマリノスと広島に絞られたものとして扱う。

 

※4 鹿島が優勝するシチュエーションは鹿島が勝利して横浜FMが敗れると勝点62で並び、得失点差で横浜FMを上回る事だった。しかし第33節終了時点で横浜FMと鹿島の間に開いていた9点の得失点差がひっくり返る事は考えにくかった為、事実上横浜FMor広島の構図と見られていた事に依る。

 

 

 

大前提として勝利が絶対条件の広島は序盤から果敢に鹿島ゴールに迫った。2011年まで指揮を執ったミハイロ・ペトロヴィッチ監督が築いたチームのスタイルをベースに森保一監督が安定感を加えたチームは、大量得点で勝たなければならない状況の鹿島相手に安定した試合運びを見せる。35分、高萩洋次郎のスルーパスに抜け出した石原直樹ループシュートを決めて大きな先制点。一方の鹿島は前半アディショナルタイムに得点源の大迫勇也塩谷司を倒してこの日2枚目のイエローカードで退場処分を受けて更に追い込まれる事になった。

 

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同時刻、等々力競技場。神奈川ダービーの構図にもなったマリノスと川崎の試合では、勝てば無条件で優勝が決まるマリノスが先に決定的なチャンスを迎える。8分、中村俊輔のロングボールに小林祐三が抜け出し、最後はマルキーニョスが詰めるがゴールに至らない。逆に20分には川崎のレナトフリーキッククロスバーに当たり、28分には自陣でのミスから中村憲剛に危ないシーンを作られるなど劣勢を強いられる。

この年の川崎は開幕からの6試合で3分3敗の未勝利になるなど、大きな出遅れからのスタートになっていた。その為、2012年途中から指揮を執っていた風間八宏監督への風当たりも日に日に強くなっていたが風間監督のサッカーが浸透し始めるとチーム成績は一気に上向き、優勝争いには絡めなかったものの来季ACL出場権を獲得出来る可能性は残していたのだ。そう考えれば、この時の川崎は優勝に王手をかけたチームが最終節で戦う相手にしては色んな意味で最悪の相手だったのかもしれない。

結局前半はスコアは動かず0-0。気がつけば順位表では既に広島が得失点差で上回っていた。今度は優位な状況だったはずのマリノスがいよいよ追い込まれてしまう。

 

前半終了時点

鹿島アントラーズ0-1サンフレッチェ広島

川崎フロンターレ0-0横浜F・マリノス

 

1位 サンフレッチェ広島(63)+21

2位 横浜F・マリノス(63)+19

3位 鹿島アントラーズ(59)-9

 

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絶望的な状況に追い込まれた鹿島は57分にダヴィを投入し、意地の反撃を見せる。しかしGK西川周作を中心に、リーグで唯一失点を20点台に抑えていた広島のDFは鹿島になかなか隙を見せず、鹿島の猛攻は何度も何度も跳ね返されるばかり。そんな中で広島は佐藤寿人ミキッチといったベテランを下げて野津田岳人清水航平といった若手を投入するとチームの活性化に成功し、80分にはその清水の折り返しに再び石原が合わせて決定的な追加点を奪った。

87分にはこの日2枚目のイエローカードファン・ソッコが退場となったが今更10対10に試合が戻ったところで試合の大勢は変わらず、試合は広島が2-0で勝利を収めて逆転優勝の絶対条件をクリア。後はマリノスが勝たなければいい……広島はマリノスの結果を待つ権利を手にした。

 

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こうなると焦るのはマリノスである。前節新潟戦は勝てば優勝が決められるという優位な状況だったが、それに負けるという事は流れとしては最悪の展開とも言えて、この一戦にかかるプレッシャーは益々大きくなった。追われる側にとって一番しんどくなる瞬間は追われていたのが逆転されたその瞬間である。後半開始の時点で広島に抜かれたマリノスには、自力で優勝を決められる立場にも関わらず既に悲壮な空気が漂っていた。10年前……2003年にマリノスは大逆転での優勝を決めたが、文字通りあの時とは真逆の立場に追い込まれていたのだ。

54分、チームの象徴であり、この年のMVPを受賞する事になる中村俊輔から中村憲剛がボールを奪うと素早いパスワークから一気に攻め込んでいく。そして大久保嘉人の強烈なミドルシュートをGK榎本哲也が弾くと、こぼれ球のフォローに入った大島僚太の折り返しに詰めたのはレナト。他会場の広島、目の前の川崎の迫力…間接的なものと直接的なもの、そしてプレッシャー……受け得る全ての圧を一身に背負う形になったマリノスにとって、負の流れの全てが押し寄せたような失点だった。

 

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広島がリードしている以上、マリノスは2点を取って逆転しなければ優勝には辿り着けない。特にこの年の広島はシーズンを通じて一度も逆転負けが無かったから尚更であった。

刻々とカウントダウンが進む。中村俊輔フリーキックはGKの正面に飛び、アディショナルタイムに入ると、左サイドからのクロスに合わせたマルキーニョスのヘディングシュートはポストに直撃。更に左サイドから切り込んだ齋藤学のパスに再びマルキーニョスが抜け出し、更に齋藤も詰めるが連続してGK西部洋平に阻まれる。最後のコーナーキックではGK榎本哲也も前線に上がったが、他会場では鹿島と浦和が敗れていた事で「凌げばACL」という状況になった川崎のゴールを崩せないまま試合が終わる。カシマで広島の選手達の歓喜の輪が広がる頃、等々力ではACL出場に沸く川崎の選手達とその場に崩れ落ちるマリノスの選手のコントラストが色濃く映し出された。

誰がどう見ても日本サッカー史上最高の選手にの一人に数えられる中村俊輔にとって、Jリーグのタイトルは彼の輝かしい歴史の中に唯一欠けていたものである。キャプテンマークを巻いてチームを牽引し、MVPに何の異論の出ないような活躍を見せた今年こそ……少なくとも1週間前までは優勝の可能性があるチームのサポーター以外は誰もがそう思っていた。だがリーグが終わったその瞬間、彼の手はカップを上に掲げるのではなく芝に向かって下に突くしかなかった。

 

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2013Jリーグディビジョン1第34節

鹿島アントラーズ0-2サンフレッチェ広島

2013年12月7日15:33@茨城県立カシマサッカースタジアム

広島得点者:石原直樹(35分、80分)

 

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2013Jリーグディビジョン1第34節

川崎フロンターレ1-0横浜F・マリノス

2013年12月7日15:34@等々力陸上競技場

川崎得点者:レナト(54分)

 

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2013年のJ1リーグ

 

1位 サンフレッチェ広島(63)

2位 横浜F・マリノス(62)

3位 川崎フロンターレ(60)

4位 セレッソ大阪(59)

5位 鹿島アントラーズ(59)

6位 浦和レッズ(58)

7位 アルビレックス新潟(55)

8位 FC東京(54)

9位 清水エスパルス(50)

10位 柏レイソル(48)

11位 名古屋グランパス(47)

12位 サガン鳥栖(46)

13位 ベガルタ仙台(45)

14位 大宮アルディージャ(45)

15位 ヴァンフォーレ甲府(37)

16位 湘南ベルマーレ(25)

17位 ジュビロ磐田(23)

18位 大分トリニータ(14)

 

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大宮の大失速や新潟の後半戦の快進撃が印象強かったとはいえ、2013年は比較的上位と下位の構図は翌2014年などと比べてシーズンを通じて大きく変わらなかった。実際川崎を除く上位6チームはシーズンを通じて上位争いに絡んでいたし、逆に中位ブロック、下位ブロックの顔触れもそれぞれシーズン全体で見れば比較的最初から固まっていたと言える。

特に降格争いに関しては大分がぶっちぎりの最下位に終わり、磐田もシーズン途中に前年ロンドン五輪で日本代表を4位に導いた関塚隆監督を就任させ、安田理大カルリーニョスの緊急補強も実らず一度も降格圏内を脱出する事が出来なかった。結局、最下位大分は第28節に1年での降格が、17位磐田は第31節の時点でクラブ史上初のJ2降格が決まり(※5)、16位の湘南も第32節に降格が決定。自動降格枠が3に設定されていた2009〜2017年の間で降格チームが2試合を残した時点で全て確定したのはこの年のみである(※6)。

 

※5 「史上初の降格」というフレーズは主にオリジナル10のチームが初めて降格した際に用いられる事が多いが、磐田のJリーグ加盟は1994年だったのでオリジナル10では無い。だが当時はJ2リーグが発足しておらず、1994年以降降格していない磐田はJ2でシーズンを過ごした事が無かった為、各メディアではその表現が用いられていた。

※6 最終節を待たずに1試合を残して降格枠が全て埋まったケースは2009年、2013年、2015年の3ケース。

 

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その後…

 

この年の上位を争った6チームは軒並みこの後の2010年代に於いて好成績を残している。この年のリーグを制した広島は2015年に再び優勝を飾り、2位マリノスは2019年、3位川崎は2017年と2018年、5位鹿島は2016年のリーグを制した。6位浦和もリーグ優勝は成らなかったが2016年は年間勝点で1位になっており(※7)、2016年にはルヴァン杯、2017年にはACL、2018年には天皇杯のタイトルを勝ち得ており、4位セレッソも2017年にカップ戦二冠を達成している。ただし、セレッソの場合は翌2014年は躍進を期待されながらJ2降格の憂き目を見た事で「セレッソが優勝争いに絡んだ次の年は降格する」というジンクスが継続される形になってしまった(※8)。

この年、土壇場で優勝を逃したマリノスはその6年後の2019年の第33節、優勝を逃した場所、対戦相手である川崎に4-1で勝利して首位を固め、最終節では引き分け以上で優勝の状況下でFC東京に3-0で勝利し、あの時逃した2004年以来となる優勝を飾った。奇しくもその日は6年前にマリノスが土壇場で優勝を逃した12月7日という日取りであった(※9)。

 

※7 2015年と2016年はJ1は2ステージ制が採用されていた。これにより2016年の浦和は年間最多勝点でありながらチャンピオンシップで鹿島に敗れた為2位という扱いになっている。尚、2015年も年間勝点では2位だったがチャンピオンシップ準決勝でG大阪に敗れた事で3位扱いになっている。

※8 2000年、2005年も終盤まで優勝争いに絡んでいたが、いずれも翌年はJ2降格を喫していた。J1に再昇格した2017年にも3位に入った事でジンクスが心配されたが、2017年は早い段階で川崎と鹿島のマッチレースになっていたせいか2018年は残留争いにも巻き込まれずに7位でフィニッシュしている。

※9 2019年のマリノス所属選手のうち、2013年シーズンにも所属していたのは栗原勇蔵喜田拓也の2名のみ。

 

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こうやって振り返ると改めて、Jリーグに毎年のように訪れるドラマ性は世界的に見ても稀有なものだと感じる。今年は既に日程がかなりスクランブルになっているのでどういう形になるか不透明だが、今年も様々なドラマが生まれる事を期待したい。