ロシアW杯観戦記〜あれから1年…《海外ド音痴、ロシアに翔ぶ。〜英語もまともに話せない私のロシアW杯観戦記〜》2019年再編集版〜第17話 ハーフタイムから帰れない

【ロシアW杯観戦記再編集版、第1話、前話はこちら↓】

 

 

 

サンクトペテルブルク・スタジアムに入る前の雨混じりな曇天から、気がつけば空には晴れ間が差し込んでいた。

最近はこういうスタジアムも多くなっているが、このスタジアムは閉会式の屋根を持ち合わせている。自分の座っていた席も影響しているが、見上げたら空と雲だけなのだ。時間は20:00を過ぎたところ、まだまだ明るいロシアで、スタジアムで買ったぼったくりコカ・コーラを飲む。…カップ代と思えば適正価格か…。

 

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ゼニトショップで購入したゼニト・サンクトペテルブルクのジャージを着込んでぱしゃり。写真を撮るのももう楽しい。非常に楽しい。

 

そうこうしているうちにウォーミングアップが始まり、両チームのメンバー紹介も行われた。

 

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↑実は前から結構好きだったロシアのGK、イゴール・アキンフェエフ

 

スタメン発表時には…どうやら大会共通という事なのだが、ホーム側のチーム、即ちロシアのメンバー紹介の際のBGMは布袋寅泰氏の「Battle Without Honor Or Humanity」だった。わかりやすく言うと「新・仁義なき戦いのテーマ」「キル・ビルのテーマ」。

 

 

このブログでも過去何度も言っているが、私は布袋さんファンであり、BOØWYファンであり、COMPLEXファンである。憧れ続けたワールドカップの地で、しかも好きなアーティスト、自分がギターを始めるきっかけにもなったギタリストの曲を爆音で聴けるなんて感無量だった。しかもよくよく考えたら、自分は観れてはいないがホーム側で流れるという事は、日本代表もグループステージのセネガル戦、ポーランド戦はこの曲がバックに流れていた事になる。ここで日本人がシンクロするって結構エモくね…?

 

……余談だが、布袋さんのこの曲は少なくとも誰もが一度も聴いた事があるであろう楽曲である上に、ギター初心者にも割と弾きやすい楽曲でもある。最近ギターを始めた、これからギターを始める方には最初にトライする曲として結構おすすめ。

 

 

 

…話をスタジアムに戻す。

さぁ、いよいよ…と思っていたところ、ここで時間が起きる。困った顔をしたロシア人2人組がチケットと座席、そして我々の顔を何度も何度も確認してきたのだ。

 

ロシア人男性は私の友人に話しかける。

 

 

 

ロシア人男性「○△□◇¥$€%°#?」

私の友人「€$¥→♪☆○*・%°#。」

 

 

 

何を言っているのかはさっぱりわからないから、実際問題こういう感じで聞こえてしまうのはもはや仕方ない。

だが、なんとなくの内容はこの場の雰囲気、ロシア人の顔、そして万国共通のサッカー観戦あるあるを照らし合わせると友人に訳される前に大体察した。

 

 

 

 

 

 

 

 

どっちかが席間違えてる。

 

 

 

 

 

 

 

そして間違っていたのは我々だった。

それも席番ではなくエリアを間違えるという大失態。…2人とも、高揚感が先走って小っちゃい事に目が行かなかったのである。友人はビールを既にキメてたし。ただし、指定席として番号が振られている以上、小っちゃい事は気にすんな☆では事は済まない。わかちこわかちこ☆で許される話ではない。ロシアがどうのとか関係ない。当然である。慌てて荷物を纏め、正規の席へ急いだ。

 

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まさかの移動先の席の方が良席だった。

確かに、試合は若干観にくいけど……でも、もうちょうど中央線上で、それも割と前の方。

 

はっきり言って、フランスvsオーストラリアも含めて現地観戦したワールドカップの試合でマッチレビューを書く事は最初から考えていなかった。イキってやれ戦術だ、やれ戦力だのと普段から言っておきながらこんな事を言うのもアレではあるが、少なくともロシアに滞在してワールドカップを楽しむこの2週間は戦術とか難しい事を一切考えず、それこそバカになってワールドカップを楽しむ所存でもあった。だから試合が見やすい上段よりも、臨場感が圧倒的なこの場所は文字通り「神席」だったのである。恐ろしいのは危うくこの席を自ら手放しかけた事であるが……。

 

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フィールドがあの夏、テレビで良く見た形に装飾されていく。ユニフォームやシャツを身に纏い、タオルや国旗を振り回すロシア人達が皆歌い始める。

スタジアムDJが前口上を一通り述べると、スタジアムに爆音で「Seven Nation Army」が鳴り響いた。バッと広がった2つの国旗は緑の芝の上で鮮やかに輝き、こうなると選手どころか観客やスタッフの一挙手一投足さえもエモーショナルに映り、どこかスローモーションに見える。フランスvsオーストラリアの時の感動も凄まじかったが、やはり開催国の試合が持つ力は格別だった。……つくづく思った。もし2002年に自分がサッカーに興味を持ち、かつ自分でサッカーを観に行けるような年齢だったら……と。

 

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エジプト国歌に続き、いよいよロシア連邦国歌斉唱である。やはりそのエネルギーは凄まじく、6万人を超す大観衆の歌声というよりも叫びが木霊する。ロシア国歌なんて覚えていない私だが感慨深い感情にはなる威力を持っていた。

 

ふと目を左側に移す。友人はしっかりガッツリ歌っていた。お前国歌まで歌えるんか……。

 

 

 

最近の国際大会ではお馴染みとなったカウントダウンでスタート。ただ、これに関してはテレビで見た方がもしかしたらしっくりくるのかも。テンションの昂りは確かに現地に勝るものは無いだろうが、それとは別に若干のタイムラグはある。何はともあれ、いよいよこの度のラストイベントの笛が鳴った。

 

 

あれから2年近く経とうとしているので、とりあえずこの試合の状況を簡単に説明しておく。

開幕戦でサウジアラビアを5-0でボッコボコにしたロシアと、初戦で健闘こそしたが、最後は強豪ウルグアイに終了間際の失点で敗れたエジプト…簡単に言えば「勝てば決勝トーナメント進出がほぼ決まるチームと負ければ敗退がほぼ決まるチーム」の対戦だった。崖っぷちに立たされているのはエジプトの方だったが、エジプトはこの試合から大会出場自体が危ぶまれた絶対的エースのモハメド・サラーが復帰。開幕戦で5点を取ったとはいえ、第3戦の相手はウルグアイだからロシアもこの試合で確実に勝点3を稼いでおく必要があった。

 

サラーの件に関しては我々も非常に焦った。来月にはワールドカップの舞台で生サラーを観れると確信しながらテレビで観た17-18シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝、レアル・マドリードセルヒオ・ラモスがサラーに技を決めて負傷退場させた時は本当にアンチ・ラモスになりかけた。嘘やろお前オイ、と。ただ、最後まで本調子では無かったが…。

 

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前半は0-0。陽が沈むのが遅いロシアも、前半が終わる頃(22:00前)には徐々に陽が沈んでくる。

 

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ハーフタイム、ピッチでは司会者と思わしき男女と公式マスコットのザビワカが出てくる。スタジアムでは爆音で「カチューシャ(Катюша)」が流れていた。

 

 

この曲はロシアの旅で色んな場面で耳にした。ストリートミュージシャンはW杯客の集まるエリアで積極的に路上ライブを行ったりしていたが、この曲を演奏し出すと群衆が沸く、みたいな場面も目にした。この曲が持つ意味はそれだけロシア人にとって大きいのだろう。実のところ、元々私もこの歌は結構メロディーラインが好きだった。

日本人でカチューシャを歌える人間は恐らく「ガールズ&パンツァー」のファンだと思うが、遥か昔…確か私はテトリスをやり込んでいた時にちょっとハマったのである。それから長い年月が流れ、ガルパンファンの友人がカラオケでカチューシャを入れた時に「あぁ、これアレやんけ!」…と。実際、現地で聴く「本番のカチューシャ」なるものはテンションを昂らせるだけの訴求力を持っていた。「GLAYは函館で聴くべし」「サザンは茅ヶ崎で聴くべし」とよく言う意味がよくわかった。思い返せばカザンの夜、友人も眠りに落ち、どうにも眠くなかった私はiPhoneGarageBandを起動して勢いと衝動でいつもページの最後の方ににYouTubeのリンクを貼っているカチューシャのドラム打ち込みをこそこそと制作していた。

 

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ハーフタイム、客席は一気にガラガラになる。テレビで観ていた方の中にはもしかしたら「あれ?後半開始時のスタンド、ガラガラ過ぎない?」と思った方もいるかもしれない。理由は簡単、大量にトイレに押しかけたからだ。そしてロシアのスタジアムのトイレ事情が大きく影響していた。

 

私は、実は前半30分くらいで一度トイレに行っていた。理由としては2つある。一つは単純に年の割には少し近い。ごめん、綺麗な思い出の最中に汚い話で…。だから、ハーフタイムに行くよりも前半と後半の適度なタイミングで1回ずつ行っておいた方が本当に大事な瞬間が来るってわかってるのにみすみす見逃す事は無いと考えていた。近い分、その辺の計算は出来る。

もう一つは、いかんせん6万人である。Jリーグでもそうだが、この人数が一斉にハーフタイムにトイレに行ったら後半開始に間に合うなんてまず不可能。それどころかいつ帰ってこれるかわかったもんじゃない。そう思って前半30分くらいに行ったのだが、辿り着いたトイレで見たのは衝撃の光景だった。

 

日本のトイレならば、男子便所の中に入れば小便器や個室がズラッと並んでいる。女子便所なら個室がズラッと並んでいる。というか、ロシアでも他の施設では大体そんな感じだった。

しかしこのスタジアムは違ったのだ。一つの扉の中にあるのは大便器が一つだけ。その扉は1ブロックに男女2つずつくらいだけ。要するに、1ブロックで同時に用を足せるのは男女合わせて最大4人なのだ。前半30分過ぎ、その光景を目の当たりにした私は自らの計算が当たっていた事をほくそ笑む一方、「これで6万人が押し寄せるってか…」と絶句した。

 

 

 

結果、多くのロシア人と我が友人はハーフタイムにトイレへと向かい、そして案の定帰ってこれないという事態が発生した事でロシアサッカー史に残る歓喜の瞬間を思いっきり見逃す事になるのだった…。

 

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つづく。