誤算〜2020年の京都サンガFCを振り返る〜第1回 ギア

8位。

 

 

 

順位自体は去年と同じである。

 

 

 

だがその「8位」という文字が持つ意味は去年とは大きく違っていた。

 

 

 

確かに今季はあまりに誤算続きで、サンガからすればどうしようもない事情で千載一遇のチャンスをフイにしてしまったアンラッキーな部分もある。

あまり「失敗」とは言いたくはない。だが今季が「成功の年」では無かったのも間違いない。ただ、歯車が噛み合わなかったというよりは……予定外の噛み合い方をしてしまった歯車がそのまま回り続けてしまったような気もする。

 

今回からはそんな2020年の京都サンガFCについて振り返っていきたいと思う。

 

 

 

まずは昨季から振り返る。

不安しかない中で始まった2019年は中田一三監督の下でJ3に快進撃を見せた。7月には首位にまで浮上しながらも9月頃からの失速もあって最終順位は8位に留まったのだが、2018年がJ3に降格しかけるという散々なシーズンだった事もあって2019年は例年と比べると随分満足度の高いシーズンではあった。

 

 

中田監督の退任を巡り、退任の是非というよりも繰り返されるサンガあるあるみたいな側面で疑問視されたりはあったが、2020年に向ける期待値は2017→2018、2018→2019の時のそれとは比べるまでもなく高かったと思う。後任は中田監督のところでコーチを務めた實好礼忠監督だったのである程度方向は継続されるだろうし、布部陽功監督であったり、なんなら中田監督よりも監督経験は豊富ではあった。

なにより、クラブ創立26年目を迎えた2020年は待望の新スタジアムである「サンガスタジアム by Kyocera」がオープン。中田監督の下でポゼッションサッカーを築いた2019年の西京極ラストイヤーを「西京極からの脱皮」とするならば、その結実はサンガスタジアムの初年度で果たそう……これは間違いなくサンガ側が青写真として抱いていたイメージではあったと思う。

方向性などは各々それぞれに意見があると思うが、サンガのフロントサイドが今年はかなり「本気」モードだったのは間違いない。その姿勢は補強から明らかだった。

獲得した主な即戦力選手は以下の通りである。

 

 

 

DF2 飯田貴敬←清水

DF23 ヨルディ・バイス←徳島

DF46 森脇良太←浦和

MF8 荒木大吾←磐田

MF11 曽根田穣←甲府

MF14 中川風希←横浜FM

FW9 ピーター・ウタカ甲府

FW18 野田隆之介←湘南

FW20 李忠成横浜FM

 

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2019年を牽引した仙頭啓矢、小屋松知哉、一美和成の3トップがごっそり抜かれたのは痛手だったが、ここに関してはJ2が定位置になった以上仕方がない(そもそも一美はレンタルだし)。だが、補強の具合としては少なくともJ2クラスではなかった。森脇や李のような代表経験者に始まり、昇格争いのライバルになるであろう甲府と徳島の絶対的レギュラーである曽根田、ウタカ、バイスを補強。補強に投じた予算を見ればJ1下位すら上回る金額だったと思う。

 

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毎年毎年、とにかく適当に「J1戻れるやろ」的な雑なスタンスしか持っていないように見えたサンガだったが、今年に関しては2020年に対する本気度はあった。それだけの理由はあった。今年のシーズン前の時点での要点は以下の通りである。

 

①継続性

中田監督とフロントの関係性があまり良くないのはそうだと思うが、一方で昨季のスタイルはフロントも評価していたとは思うし、監督を内部昇格にしたのは継続性を持ちたい部分だったと思う。その点、元々補強ポイントだったDFに獲得した森脇やバイスは足元の技術が高い選手。広島や川崎ほど完全でも円満でも無かったが、それに近い形を目指していたところではあった。

 

②確実性

結局のところ、良くも悪くも今年のサンガの全てはここに集約されていたと思う。

積極補強と言われる補強には「即戦力を大量に獲得してなんとしても結果を残す」「若手有望株を多く獲得して近い将来に繋がる」の2つに分けられる。後者は例えば今年の鹿島なんかが当てはまるだろうか。サンガが前者であるのは言うまでもないが、森脇やウタカといったベテランを獲得した以上「今年結果を出す事」は至上命題だった。一人ならまだしも、それを複数名獲得した訳で。要するに、彼らは今年活躍してくれる可能性が高い代わりには長い目で見ることを期待出来る訳ではない。そういう補強をサンガが選んだ理由は、いわゆる「新スタバブル」なるもので恐らく収入は昨季より増すであろう事、そして何がなんでも今年昇格を掴む…何がなんでも2021年のカテゴリーをJ1に所属する事……この2つが全てだった。

 

 

 

2020年のサンガの補強は有効かつ即効性があった。ベテラン勢以外にも中堅どころの選手も獲得しているし、方向性の一つとして正しい。だがその分、なんとしても今年結果を残さなければならないという補強でもあった。そのタイミングを新スタ元年に置き、昨季からの線の下でJ1昇格を勝ち取る、そして2021年からJ1で戦う事で、言うなれば「2年連続新スタバブル」のようにさえしてしまおうという理想があったんだと思う。

 

新スタジアムのこけら落としとなったセレッソ大阪戦、開幕戦のレノファ山口FC戦……敗れはしたし、山口がこの後最下位になるとはこの時は思っていなかったが、実際にどちらも内容としてはそこまで悪くは無かった。

 

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しかしこのタイミングで、開幕戦を消化したタイミングで、2019年末には誰もが予想しなかった中断期間が訪れてしまう。サンガスタジアムで行われる初の公式戦を目前にしたタイミングだった。サンガの構想が一気に崩れた事は想像に難くない。なんといってもまさか、長年想い続けた新スタで新たなスタートを切った年と世界史に残る規模のパンデミックがぶつかるとは……。

世界中のあらゆる人にとって特大の誤算が一つのギアを思いっきり踏み込んでしまい、ここからサンガはビジネス的な大誤算のみならず、正解の中に潜む小さな誤算が連なり続けるシーズンを過ごす事になる。

 

 

 

つづく。