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【永井秀樹氏、ヴィッセル神戸SD就任】なぜ神戸(三木谷会長)はパワハラ処分を受けたばかりの永井氏の招聘に踏み切ったのか?

「監督、オレ」理論により就任した三木谷監督がヴィッセル神戸にストーミング戦術を落とし込んでレオザに激賞される回

 

 

どーもこんばんは

 

 

さて、3月20日三浦淳寛監督を解任したヴィッセル神戸

 

 

しかし更なる衝撃があったのは翌日でした。

ヴィッセル神戸は3月21日、ヤングプレイヤーデベロップメントコーチであり、かつてスペイン3部やFC今治での監督経験があるリュイス・プラナグマ・ラモス氏が暫定監督として就任。並びに、三浦監督体制でコーチを務めていた林健太郎氏と平野孝氏は強化部に異動となりました。

そして、最も大きなトピックとなったのが永井秀樹氏のスポーツダイレクター…要は強化責任者への就任でした。

 

 

ご存知の通り、永井氏は2019年7月から東京ヴェルディの監督を勤めていましたが、選手やスタッフに対するパワハラ案件が発覚し、2021年9月1日付で成績不振を理由に辞任。その後、Jリーグは2021年12月24日に東京ヴェルディに対して罰金とけん責処分を、JFAは2022年3月10日に永井氏の1年間のS級ライセンス停止処分が科しました。

 

パワハラを犯した人間が同じ業界(今回でJリーグ)に戻ってくる自体に関しては、セカンドチャンスの観点などもあって是非が分かれるところです。ただし、今回の件がここまで問題視されているのは、永井氏の処分が下ってから2週間も経たずして抜け道的なやり方で、それも強化責任者という人を評価する立場に就いた事でしょう。

その一方で、「パワハラの件が無かったとしても、なぜ永井氏なの?」的な意見も多く見られるので、今回のブログではその"そもそも"のところについて考えていこうと思います。

 

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オリジナルアルバムの配信も始めたので是非聴いてみてね

 

 

 

①なぜヴィッセル神戸(及び三木谷会長)は永井氏を招聘したのか

 

まず、永井氏と三木谷浩史会長に個人的に深い付き合いがある事は三木谷会長も認めています。

 

楽天は元々、三木谷会長が神戸を買収する以前に東京ヴェルディ(当時は東京ヴェルディ1969)の胸スポンサーを2002〜2003年に務めていました。三浦淳寛前監督や林健太郎氏、平野孝氏など…現在の神戸の人事の話になる度に名前がよく挙がる面々というのは一概に「神戸OB」という文脈で語られがちではありますが、林氏と平野氏の在籍は一年のみで、林氏に至っては神戸での1年はレンタル。なので神戸OBという以上にこの3人の、そして永井氏を加えた4人の共通項としては「楽天スポンサー時代のヴェルディの選手」というところがあります。

悪い言い方をすれば「お友達人事」ではありますが、自身にとっての信頼を踏まえた人脈とルートから監督を選ぶ事自体に関しては大袈裟に間違った事では無いので、永井氏は三木谷会長の中で、その人脈とルートの線上にいたのは前提としてあります。

 

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ここからは完全に個人的な推測ではありますが、それを踏まえると、三木谷会長は外野が思っている以上に「バルサ化」に執着しているところがあるのかな…という気もしていて。それは「バルサのエッセンスを加えつつ…」ではなく「バルサを目指す!」みたいな形というか。

永井氏の就任に際し、ファンやサポーターの意見が「よろしくお願いします!」「ようこそ神戸へ!」みたいな好意的な意見が、少なくとも多数派になる事は確実にないのは三木谷会長とてわかっているはずです。それでも永井氏の招聘に踏み切ったのは、三木谷氏のバルサ化へのある種の未練と執着があるのかなと。

永井氏招聘に至る「Why?」を考えるには、バルサ化を目論んでからの神戸の監督人事と、それぞれのスタンスを振り返る必要があります。

 

 

木谷会長の理想と現実に若干のズレが生じてきたのは2019年6月〜2020年9月のトルステン・フィンク監督体制からでしょう。彼が神戸でやったサッカーは、アンドレス・イニエスタを中心としたバルサ的なポゼッションを「バルサ化」ではなく「バルサのエッセンス」として残した上で、豊富な戦力と戦術のバランスの擦り合わせを調節した、どちらかと言えばバランス重視のスタイルとも言えました。この時点でこれは三木谷会長の思うような「バルサ化」では無かったんですが、事実としてフィンク体制の2019年後半はリーグで復調し、神戸が長年追い求めていたタイトル獲得にも成功。三木谷氏の中で、バルサ化がある種の未練みたいなものになっていたのはこの辺からだったと思います。

辞任という最期を迎えた点でファン・マヌエル・リージョ監督(2018年10月〜2019年4月)と同一線上に置かれる事も多いですが、スタンスや考え方の違い等が辞任の引き金にはなったとしても、少なくともリージョ監督のスタイル自体には三木谷会長も共感していたんじゃないかと思っています。その上でのリージョ氏との決別、後任のフィンク氏との相違があって、未練は強くなったのかなと。

 

で、2020年9月にそのフィンク監督の後任に就いたのが三浦前監督でした。

そもそも三浦氏は2018年から強化責任者を担っており、三木谷会長と密に接しながら、イニエスタの獲得など神戸のバルサ化であったり監督選定であったりを担っていた人物だった訳で、いわばバルサ化をフロントの立場で推し進めていた最重要人物とも表現できる立場の人間です。クラブとして初めて迎えるACLまで残り2ヶ月…それに当時は外国人監督を新規で招聘するのは不可能でしたから、今回のリュイス監督と同様に暫定的な意味合いもあったとは思いますが、その一方で三木谷氏は三浦氏は自身の理想を理解している人間だと考えていたはずですし、前述の2人の外国人監督との事を踏まえて「やはり自分とスタンスが近い事を肌感覚で理解している人の方が良いんじゃないか?」という考えが三浦氏のSDから監督への配置換えに繋がったと考えるのは自然です。これは今回の永井氏の件でも言える事でしょうし、或いは同じく楽天がオーナー企業であるプロ野球東北楽天ゴールデンイーグルスの監督で、三浦氏と同じで強化責任者を経て就任した石井一久監督にも同じ事が言えるでしょう。

 

ただ、三木谷会長にとってのある種のジレンマはここから更に深くなっていったように感じています。それは2020年のACLや2021年の序盤戦の戦い方にも表れていたように、三浦監督は予想に反して結構現実的なサッカーを展開したという事でした。特に2020年のACLはそれが顕著で、あのやり方でACLでベスト4まで行けた事は三木谷会長にとってもある種のジレンマだったように感じますし、それが後述する2021年の監督人事と関連してきます。三浦氏からすれば、SDとしての考え方と実際に監督になった時の考え方はまた別…みたいな。

個人的な感覚ですけど…基本的に神戸ファンとしてはおそらく、三浦氏は三木谷会長寄りの人物であり、リージョ氏やフィンク氏を追い出した側の人間という印象が強くなっている部分はあると思いますが、勿論監督としての能力やらなんやらには差があるとは言えども、いざ監督になった時のスタンスや考え方は実はフィンク氏と三浦氏は割と近いんじゃないか?とも思うんですよね。そしてその上で三浦氏が2021年の続投を勝ち取ったのは後述の監督人事が上手くいかなかった事が前提とはいえ、三木谷会長からの人間的な信頼は得ていた事、以前のブログでも書いたように監督としての現場とフロントのバランスを擦り合わせながら仕事を行う術には長けていた事があると思いますし、その最大公約数とも言えるのが2021年のチームだったと考えられます。

 

 

そして…実は一説として、そもそも神戸は2021年の新監督として永井氏を迎えようとしていた…という話もあるんですね。要は神戸としては、形はともかくクラブに永井氏を迎え入れる案は今に始まった事ではない、と。

その考えの根底にあるキーワードとしてはやはり「バルサ化」であり、フィンク体制や三浦体制が三木谷会長にとっては「思ってたのとちょっと違った」みたいな部分が思ってた以上にあったような気はします。その点、永井氏がヴェルディで見せたサッカーは、方向性は確かに良くも悪くもバルサの影響を強く強く受けたものではありました。少なくともポゼッションサッカーという部分に関しては、結果は出なくてもスタイルは徹底(悪く言えば固執)していましたし、三木谷会長にとっての永井氏は「同じ熱量でバルサ的なスタイルに"執着"してくれる人物」だったんだと思います。なんなら、永井氏はS級ライセンス取得の際の研修先にリージョ監督時代の神戸を選んでますし、リージョ監督のスタイルには以前から相当感銘を受けているようですし。

 

 

現在、リュイス監督はあくまで暫定監督という立場です。一応ACLのグループステージはリュイス監督で戦いつつ、どこかしらのタイミングで新監督を迎えて、その選定には永井氏も当然関わる訳ですが、そこで適当な人物が見つからなかった場合、永井氏のライセンスが回復した暁には彼自身が監督を務める可能性は十分にあると考えていいでしょう。教科責任者から監督への配置換え自体を楽天グループ的は2度やっている訳ですし、そこへの抵抗は彼らには別にない。神戸というか三木谷会長は永井氏を元々監督として迎えたかった訳ですから。そう考えると、永井氏を招聘する是非はともかく、辻褄は合うのかな…とは思います。

 

 

 

一応私は京都サンガFCのファンです。サンガが曺監督を招聘した事は、今回の件に関連して色々な立場と文脈から是非が再び議題に挙がっています。

ただ、Twitterにも書きましたが…サンガの時は曺監督の招聘に際し、色んな意味での対策というか、彼が湘南時代に犯した愚行の温床を作らない為の組織を構築した上での招聘でした。要は、いわゆる「セカンドチャンス」に対して必要な手順を踏み、必要な対策は講じて外堀は徹底的に固めた。クラブとして、曺監督招聘のプロセスは非常に上手くやれたと思っています。

 

 

ヴィッセル神戸というクラブは、クラブの体質として常に明確な"ドン"がいるクラブですので、そういう意味ではこれまでも噂された介入を監視として活かせる可能性はあります。

ただ、そもそもサンガの時にもブログに書いたのですが、一度パワハラ問題で前職を追われた人間が業界に復帰するという事は、それはサッカー界に留まらず、その成否に社会的な意味を背負わなければならないという事です。果たして神戸はどうなんだろう…というのは疑問点としてあります。身内贔屓と言われればそうかもしれませんが、少なくともサンガはその自覚は持っていたと考えているので。

 

 

 

木谷会長は今後、永井氏の会見なんかを検討しているようですが、果たしてどうなることやら…。

 

 

この前行った鹿島戦から急展開でしたねぇ…

 

 

ではでは(´∀`)