すべてをここに。
どーもこんばんは
さてさて、本日のマッチレビューは2022 FIFAワールドカップカタール大会、グループE第1戦、ドイツ代表vs日本代表の一戦です!!
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自称・当ブログ的カタールW杯テーマソング
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W杯とは何か…という話です。
サッカーというスポーツに心を奪われ、サッカーというスポーツに取り憑かれ、サッカーというスポーツに人生を捧げ、サッカーというスポーツに生きる場所を求めた全ての者にとって、必ず辿り着こうとする舞台がこの4年に一度の祭典です。結局、この世界のカレンダーはこの4年に一度のポイントを軸に全てが動く。小国のヒーローからワールドクラスのスーパースターまで、誰もがW杯という共通の目標を目指し、人々はそれに魂を震わせ、喜び、怒り、そして狂っていく……サッカーワールドカップ、それはこのスポーツに取り憑かれた全ての者にとって、まさしく狂気の祭典です。そう、W杯とは狂気なんです。誰もがこの舞台に取り憑かれ、魅了され、苦しみ、泣き崩れ、そして歓喜に湧く……人間の喜怒哀楽の全てを爆発させるものは狂気だけで、そしてその狂気を持ち合わせている世界でも数少ない舞台がこのFIFAワールドカップなのです。
2018年7月3日、本田圭佑のクロスをティボー・クルトワがキャッチしたあのスローから始まった攻撃は何よりも早く、そしてなによりもスローモーションに見えました。ロストフの他で仰いだ夜空の色と、テレビに映る一つの時代が終わった喪失感……多くの日本人があの14秒に取り憑かれ、未練を抱きながらこの4年間を過ごしてきました。
……あれから4年が経ちました。今、日本代表は新しい景色を見るべき段階に来ていると思います。初戦がドイツ……まるで漫画のようなこのシチュエーション。時代の濁流に飲み込まれるような2022年、ここまで来たら後はもう、ただただ90分先の歓喜を祈るしかない。後はもう応援するだけです。
言いたい事はあるでしょう。思うところもあるでしょう。それでも賽はこのフィールドに投げられた。たとえその目が何であったとしても、その全てが一つの運命です。サッカーを愛した全ての選手にとってのハイライトシーンに笑顔を添えられるのは自分達しかいません。さぁ、行こう日本!新しい景色をドーハの地に塗れ。記憶を記憶で塗りつぶせ!!
両チームスタメンです。
日本は9月のアメリカ戦のメンバーをベースにしたワントップに前田大然、久保建英を左に置く形の先発を組んできました。アメリカ戦からの変更点は負傷の影響で合流が遅れた守田英正と冨安健洋、そして負傷離脱した中山雄太が外れ、そのポジションにそれぞれ田中碧と板倉滉、長友佑都が入った事。直近のリーグ戦で脳震盪を起こし、本大会出場が危ぶまれた遠藤航は何とかこのドイツ戦に間に合わせてきました。スタメンの5人がドイツでプレーする選手という組み合わせです。
マルコ・ロイス、ティモ・ヴェルナーが怪我で大会出場を断念し、レロイ・サネが初戦を欠場しているドイツもシステムは4-2-3-1を採用。直近のオマーン戦からはメンバーを7人入れ替えており、メンバー自体はネーションズリーグのイングランド戦に近いメンバーとなっています。明確なFWを置かない方針もあり、ワントップはカイ・ハフェルツを起用。ニクラス・ズーレは右SBでのスタートとなり、腰痛の影響が心配されたトーマス・ミュラーも先発に名を連ねています。
本日の会場はカタール、ライヤーンのハリーファ国際スタジアムです。
今大会の開催に向かってカタールは8会場のうち7会場を新設しましたが、その中で唯一既存のスタジアムを改修する形に留めたのがこのハリーファ国際スタジアムです。これまではカタールで最大の大型競技場として、2006年アジア競技大会や2019年の世界陸上などのメインスタジアムとして活躍。今大会でも3位決定戦などが行われます。
日本は中東で試合を行う際には、カタールとの試合でなくてもこのスタジアムで戦う機会が多く、例えばアジア最終予選第2戦中国戦もこのスタジアムでの開催となりました。そして何と言っても2011年、アジアカップ2011決勝……ある意味で、日本サッカーが新時代に突入したあの大会のフィナーレ、あの大会の李忠成のボレーが歓喜を生んだのもこのスタジアムでした。日本にとっては縁起の良い場所。この場所を明日から、歓喜の場所と呼ぶために…!
カタールW杯で使用される全スタジアムの紹介はこちらからどうぞ!
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アメリカ戦と同じ設計で試合に入った日本は、立ち上がりから守備時には前田と鎌田が2トップくらいの位置関係になりながらハイプレスを仕掛けていき、しっかり他の2列目の選手がパスコースをケアする事で連動を見せながら上手くドイツ相手にプレスで嵌めるやり方を試みていきます。その結果、ドイツはサイドエリアまでは持ってこれるものの、そこから上手く日本が追い込む事でボールを奪える場面も多くありました。
そんな中で8分、イルカイ・ギュンドアンのボールを鎌田が奪うと右サイドにスルーパスを送って一気にショートカウンター。伊東純也のクロスにファーサイドに前田が走り込んでシュート!!ゴール!!!!…かと思いましたが、これは前田がオフサイドを取られてノーゴール判定。列島ぬか喜び。
しかしドイツが少しずつ日本のスピードとテンポになり始めると、ドイツのビルドアップのスタート地点そのものが高くなった事で、日本はバイタルエリアでドイツに細かく繋がれていくようになっていきます。それでも最も危険なゾーンは吉田-板倉-遠藤のところできっちり締めた事でそこに侵入される場面は少なかったものの、サイドからのパスの崩しで肝を冷やす場面は作られ始めました。
14分のジョシュア・キミッヒのミドルは田中がブロックすると、20分には再びキミッヒのシュートを今度は権田修一がファインセーブ。更に26分と29分には立て続けに波状攻撃の場面を作られ、それぞれ遠藤と吉田麻也が連続ブロックで阻みはしたものの、危ない時間は確実に増えていきます。
しかしバイタルエリアで細かいパスを繋がれ続けると、センターラインの選手がそれに振られ続けて消耗する形になり、サイドの選手との守備連携に歪みが生じていきます。それが明確に形として表れたのが34分でした。エリアでのテンポでDFを中央に集められたところでキミッヒが左に展開すると、ペナルティエリアの左のエリアがまさかのガラ空きと化し、そこに走り込んだダビド・ラウムにチャレンジに行ったGK権田のプレーがファウルと判定されてPK献上。これをギュンドアンに決められて先制を許す事に…。
似たような展開は何度も続きました。前半アディショナルタイムにはトーマス・ミュラーのクロスのこぼれ球をキミッヒがシュート。一度は権田が阻止したものの、こぼれ球に反応したセルジュ・ニャブリの折り返しにハフェルツが詰めて2点目…かと思われましたが、今度はこのゴールがオフサイドで取り消されてノーゴールに。
ただそれでも、バイタルで面白いようにパスを繋がれた日本はなかなか苦しい展開と1点ビハインドで前半を終えます。
後半、森保一監督は前半終了間際に脚を痛める場面があった久保を下げ、怪我の影響が心配された冨安を投入。これに伴い冨安-吉田-板倉の3バックと伊東と鎌田をシャドーに配した3-4-2-1にシフトします。
後半開始早々、いきなりミュラーのパスからニャブリにシュートを放たれ、51分にもムシアラにドリブル突破から決定機を作られた日本でしたが、圧倒的に攻め込まれた前半からシステム変更を通じてチームとしてのライン設定をグッと上げる勇気を持つようになりました。ラインを一つ上げた日本はこれで鎌田にボールが入りやすくなるようになり、そこから攻撃を紡いでいけるようになっていくと、50分には伊東のカットインのフォローに入った鎌田がシュート。DFにブロックはされましたが、前半には無かったようなシーンが後半には多く生まれるようになっていきます。
後半からのシステム変更は確実に功を奏し、日本は前半に不利を被ったミスマッチを味方につけられるような設定になり始めました。ドイツに攻められる回数は相変わらず多かったものの、一方的に耐える展開を強いられた前半とは異なり、後半は高い位置からのハイプレスにハイラインを呼応させたことで試合をオープンな展開に持ち込むことに成功。その流れを加速すべく、55分には前田と長友を下げて浅野拓磨と三笘薫を投入し、三笘を左WGとしてピッチに送り込みます。すると57分には酒井宏樹のパスから浅野→伊東と繋いだアーリークロスに浅野が飛び込み早速チャンス創出。
しかし流れは好転させられたものの、日本としてはある意味でAll or Nothing的なリスクを伴うハイライン戦術を敢行した弊害は少なからず発生します。60分にはギュンドアンがシュートを放つと、70分にはドイツが連続しての波状攻撃。しかし60分のシュートは右ポストに直撃し、70分の大ピンチは何度もシュートを打たれながらも権田が怒涛の4連続セーブという前半のミスを帳消しにするほどのビッグプレーを見せて危機を脱します。
中央の鎌田に対し、浅野が左、伊東が右に抜けるような形で上手く日本はショートカウンター気味のリズムを生み出し始めると、ドイツは66分にギュンドアンとミュラーを下げてゴレツカとホフマンを投入して中盤を活性化することを試みました。一方、森保監督は71分に堂安律を田中碧に替えて投入して鎌田をボランチにシフト。73分、中央でボールを受けた遠藤の浮き球のパスを伊東が持ち込んでシュート!しかしこのシュートはマヌエル・ノイアーに阻まれ、こぼれ球に詰めたのは酒井…!!しかしこれも枠外……。
それでもこれまでに無い決定機を作り出した日本は直後、脚を痛めた場面もあった酒井を下げて南野拓実を投入。ワントップに浅野がいて、WBに伊東と三笘、シャドーに堂安と南野、ボランチに鎌田……森保ジャパンが始まった2018年からチームを牽引した南野と堂安、中期からメキメキと主軸に上り詰めた伊東、そして急激にその存在価値を高めた鎌田と三笘……まさしくこれまでの4年半の集大成と言うべきか、森保ジャパンの軌跡を辿るようなアタッカー5人を並べる超攻撃的采配を森保監督は繰り出しました。
文字通り勝負に出た…そして何より、これまで保守的な采配が多かった森保監督が明確に腹を括るような采配を見せると、その気迫はピッチにも波動していきました。運命が揺れたのは75分。伊東の突破は阻まれたもののこぼれ球を繋ぎ直すと、冨安が左サイドの三笘に縦パスを供給。カットインを匂わせた三笘の動きに釣られたDFのズレを見逃さずにスルーパスを送ると、そこに抜け出した南野のシュート!しかしこれはノイアーがセーブされました…が!!!
どうああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
どうてん!どうてん!どうあん!どうてん!!!!!!!
スタジアムを包む熱気は、そのボルテージの全てを飲み込むようにフィールドに渦巻いていきました。空気の全てを味方につけた日本、実力やクオリティとは違うところで追い込まれた立場になったドイツ……この90分の終着点が同点では無い事を多くの人が感じていた事でしょう。ドラマはいつも唐突に訪れます。
誰もが熱気に包まれ、その全てを飲み込んだような狂気のフィールドの中で、日本が自陣内で獲得したフリーキック。選手達は異様なハイテンションに乗りながらも、狂気の中に一瞬だけ潜んだ静寂を見逃しませんでした。時が止まったかのように浅野が動き出すと、しっかりと呼応した板倉がフリーキックでそのままロングボール。相手DFを完全に振り切った浅野は右足を振り抜いて───
あさのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
運命はすぐそこへ。
これまでドイツのような強国を追うことしか出来なかったこの国の代表チームは、ここに来て初めてドイツのような強国に追われる立場になりました。JFAのスローガンで言えば、ある意味ではこの時点で「新しい景色」だった……。そこを吉田・板倉・冨安という日本サッカーの概念を覆してCBとして欧州で戦う3人が跳ね返し、攻撃の為に投入されたアタッカー達も必死で身体を張ったディフェンスを疲労。日本相手に見せたことのない目の色をしたドイツが迫り来るアディショナルタイム、最後にはノイアーも上がってのパワープレー…。
凌いだ。
弾いた。
蹴り出した。
南野が止めた。
笛が鳴った。
笛が鳴った!!
勝ったああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああいあああああああああああ
……とりあえず先にスポーツ的な触れ方をしましょうか。
まず、日本がこの試合に臨むにあたってのゲームプランは理に適っていましたし、それを遂行出来ていました。8分の前田の幻のゴールは理想型も理想型だったと思います。しかしこのゲームプランはどうにかして前半20〜25分で点を取り切る必要があった。それが結果的に頓挫してしまい、そしてドイツはやっぱりさすがドイツで、20〜25分くらいを想定していたのが15分くらいで日本のやり方にフィットしてきた。そこから猛攻を喰らうのはもう必然の流れではありましたし、失点に繋がったPKに関しては権田の対応も、そもそも権田の場面に至るまでのあそこでああいう状況を生んだ事もミスでしたが、試合後のインタビューなんかも聞いていると、こちらが思っているより…というか映像としての印象より、ピッチ内の選手はあの状況を割り切れていたのは良かったと思います。
そして後半は3バックに替えた事で、常に鎌田や伊東、途中から入った浅野はスタートポジションでドイツのDFと噛み合わない位置から動き始める事が出来た。そこに堂安を入れて鎌田を落として配球役に専念させるとみるみるうちに攻撃に流動性が出てきたのは、別に偶然ではなく必然の流れだったとも思います。個々のパフォーマンスの素晴らしさはもう取り上げ始めたらキリがなくなるので(嬉しい悲鳴)泣く泣く敢えて取り上げませんが、森保監督の采配は本当に素晴らしかったです。素晴らしかったというか、感動しました。
森保監督って基本的には保守的なタイプの監督じゃないですか。もちろん、これ自体は監督のタイプであって、それは彼の長所にも欠点にもなるし、別に何も悪い事じゃない。1点ビハインドで既に浅野と三笘を投入した場面で、堂安や南野、或いは上田綺世らを投入する事は誰もが考えるけど、交代をするという事は誰かを下げなければならない。そうなるとポジション的には鎌田か伊東だけど、今この2人を下げる訳には行かない。じゃあ田中と酒井を下げて鎌田をボランチ、伊東を右WBにする考えはあるけれど…考え方としてはこれは第1戦ですから、ドイツに対して最悪0-1でも構わないという考え方は、3試合の結果で勝負を決めるグループステージでは現実的な選択肢であり、それ自体も間違ったものではないんですよね。その中であの決断をした……あの采配は震えましたし、普段はセーフティーな采配が多い分、「監督が腹を括った」という事でピッチ内の選手に伝わったメッセージ以上の意味も大きかったんじゃないでしょうか。
それに関しても、カナダ戦や6月のガーナ戦の段階で3バックや伊東の右WB、鎌田のボランチを一応触っておいて、短い時間ながら「初めてではない」という状態にしておいた事も大きかったと思います。それも含めて、森保一は…最終予選のオーストラリア戦しかり、やっぱり彼は勝負師としての顔も持っていた。その輪郭に触れた今、鳥肌が立つような感覚を覚えています。
ドイツという国は日本サッカーの歴史を紐解く上で欠かせない存在でした。デットマール・クラマーという著名なドイツ人が、この国のサッカーに世界という概念を教えに来た。それから50年が経つ頃には、ドイツのリーグで多くの日本人選手が活躍するようになった。そして遂に両者はW杯という舞台で対峙した……この2国にはそういうドラマもあった。その結実を結んだ場でもあるのでしょう。
そして何より、この地はドーハです。ちょうど29年前、あの悲劇は物語の終わりの地であり、そして始まりの地でもありました。ホイッスルが鳴った時に崩れ落ちた男は、あの時届かなかった夢の舞台で自ら勝点3を掴み取りにいった。しかも点を取った2人は、自身が代表監督になるにあたって新世代の旗頭として4年間期待を寄せ続けた新星と、文字通り自身の愛弟子とも言うべき存在の2人……全てがストーリーとして出来すぎた夜で、今まで見てきたどの小説よりも美しい物語だったような気がします。
23時59分に鳴った笛がスタジアムに轟き、ピッチに歓喜の輪が生まれたその瞬間、この国の時間は0時00分になり、日付が変わった。
まるで、ドーハの悲劇がドーハの歓喜へと姿を変えた事を示すかのように───
【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】
11月23日(大会4日目)
E組
ドイツ1-2日本
スペイン7-0コスタリカ
F組
ベルギー1-0カナダ
11月24日(大会5日目)
※時間は全て日本時間です。
19:00 G組 スイスvsカメルーン
22:00 H組 ウルグアイvs韓国
25:00 H組 ポルトガルvsガーナ
28:00 G組 ブラジルvsセルビア
堂安に泣かされたよ…
ではでは(´∀`)