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【W杯はベスト16が一番おもろい】カタールW杯ベスト16企画、歴代のベスト16の激闘を振り返ろう!〜ジャイアントキリング編〜

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さて。

2022 FIFAワールドカップカタール大会はいよいよ決勝トーナメントに投入します!!

ベスト16のキックオフです!!

 

まずは対戦カードから確認しておきましょう。

 

12月3日

24:00 オランダ(A1位)vsアメリ(B2位)@ハリーファ国際スタジアム

28:00 アルゼンチン(C1位)vsオーストラリア(D2位)@アフメド・ビン=アリー・スタジアム

 

12月4日

24:00 フランス(D1位)vsポーランド(C2位)@アル・トゥマーマ・スタジアム

28:00 イングランド(B1位)vsセネガル(A2位)@アル・バイト・スタジアム

 

12月5日

24:00 日本(E1位)vsクロアチア(F2位)@アル・ジャヌーブ・スタジアム

28:00 ブラジル(G1位)vs韓国(H2位)@スタジアム974

 

12月6日

24:00 ロッコ(F1位)vsスペイン(E2位)@エデュケーション・シティ・スタジアム

28:00 ポルトガル(H1位)vsスイス(G2位)@ルサイル・アイコニック・スタジアム

 

テレビ放映スケジュール試合開催会場スタジアムガイドはこちら

 

 

 

 

ところで、皆様。三陸海岸ってご存知でしょうか。漁業の名所です。

なぜあそこが漁業の名所と呼ばれるかと言うと、黒潮親潮という二つの海流がちょうどあの辺りでぶつかって、それによって生まれる"潮目"が多くの魚介類を呼び寄せる事に繋がっているんですね。

 

……何が言いたいかと言われましたら。結局、W杯で一番面白いのってベスト16なんですよ。結局ね。

例えば日本は、森保ジャパンでは「ベスト8が目標」と度々言い続けていました。メキシコやスイスといった国々も、目標として挙げるのはベスト8。また、そもそもベスト16まで辿り着けた事を奇跡と捉える国もあるでしょう。そんな国々にとってベスト16は晴れ舞台であり、最終関門。まさしく自分達の歴史をベスト16で切り拓こうとする訳です。一方、優勝候補国は…もちろん優勝出来ないと少なからず批判に遭う訳ですが、それと同時に最低限の成績と言えるのがベスト8まで辿り着く事。ベスト8に行けば、少なくとも最低限の成績と呼ぶ事は出来る。ただベスト16敗退はもう言い訳が許されない……そう、優勝候補国と非優勝候補国のノルマと野望がぶつかり合う"潮目"、それこそがベスト16なのです!!

それゆえにベスト16ではこれまで、多くの名勝負が生まれてきました。躍進を狙うダークホースの勢いとベスト16で負けてはいけない優勝候補国に募るプレッシャーがぶつかる事で、ベスト16はある意味最もイーブンな状況でもあるんです。そして時として、優勝候補同士が潰し合う時もある……繰り返します。W杯で1番面白いのはベスト16です。という訳で、今回はベスト16企画として、過去のW杯のベスト16からジャイアントキリング編】【優勝候補国を追い詰めたせめぎ合い編】【優勝候補国潰し合い編の3つのテーマに分けて、5試合ずつ過去の激闘を振り返っていきたいと思います。

 

 

※極端に昔の大会は感覚がわからない部分があるので、1990年代以降からのセレクトになります。

 

 

 

カタールW杯観戦ガイド更新中!是非覗いてください!

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

自称・当ブログ的カタールW杯テーマソング

 

 

 

ジャイアントキリング編】

 

#1 ピクシー伝説…ユーゴスラビア最大の、そして最後の輝き

1990 FIFAワールドカップイタリア大会

スペイン1EX2ユーゴスラビア

1990年6月26日17:00@スタディオ・マルカントニオ・ベンテゴディ(ヴェローナ)

スペイン得点者:サリナス(83分)

ユーゴスラビア得点者:ストイコビッチ(77分,92分)

 

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その類希なるタレント性から「東欧のブラジル」と称されていたユーゴスラビア代表だったが、国内情勢の悪化の影響は多民族が混在する代表チームにも大きな影響を及ぼしており、チームとして常に困難な状況に曝されていた。そんな中で監督を務めたイビチャ・オシムは、運命に翻弄されるかのように揺れ動くチームと選手を守る事に努めてチームを組み立てていくと、元々才能溢れる選手は多かったチームはオシムの下で一致団結し、徐々に完成されたチームとしての姿を見せ始めた。

タレント集団と目されたコロンビアを下して進んだベスト16で対峙したのはスペイン。当時のスペインはメジャータイトルを獲得出来ておらず"永遠の優勝候補"という不名誉な異名がついていたが、とはいえ優勝候補の一つである事は確かだった。そんな試合でユーゴスラビアは長い時間を0-0で推移すると、77分にピクシーことドラガン・ストイコビッチがW杯史に残る美しいトラップからゴールを決めて先制する。直後に追いつかれて試合は延長戦に持ち込まれたが、その延長戦でもストイコビッチは魔法のようなFKを決めてスペインを倒した。そしてこれが、旧ユーゴスラビア代表にとってメジャーコンペティションで最後の勝利となった───。

準々決勝でマラドーナ擁するアルゼンチンに敗れたが、10人の数的不利でPK戦までもつれ込んだユーゴスラビア代表への評価は大いに高まり、続くEURO1992では優勝候補にすら名を挙げられた。しかし、このW杯以降、国内情勢は悪化の一途を辿り、遂にはユーゴスラビア崩壊にまで繋がってしまう。文字通り、ピクシーが魔法をかけたあの日のピッチが、ユーゴスラビアのラストダンスの舞台になってしまった。

 

#2 マラドーナの影を追って

1994 FIFAワールドカップアメリカ大会

ルーマニア3-2アルゼンチン

1994年7月3日13:35@ローズボウル(パサデナ)

ルーマニア得点者:ドゥミトレスク(11分,18分)、ハジ(58分)

アルゼンチン得点者:バティストゥータ(16分)、アベル・バルボ(75分)

 

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2大会連続で決勝に駒を進めていたアルゼンチンが目指すものは1986年メキシコW杯以来の優勝以外に他ならなかった。そんな中、前回大会後に薬物問題で代表から離れたディエゴ・マラドーナが1993年に代表復帰を果たすと、前回大会から共にプレーするクラウディオ・カニーヒア、新星のガブリエル・バティストゥータと形成する前線は輝きと破壊力を増し、予選リーグでギリシャとナイジェリアに連勝した事はアルゼンチンの強さを強く印象付けるものだった。しかし、ナイジェリア戦後のドーピング検査でマラドーナに陽性判定が出てしまい、マラドーナは事実上の大会追放処分を下される。ここからアルゼンチンは壊れる形となり、最終戦でもブルガリアに敗北。3位で通過したベスト16に待ち受けていたのが伏兵・ルーマニアだった。

ダラスからロサンゼルスへの中2日での移動を強いられたアルゼンチンは序盤から積極的に攻撃を仕掛けたが、20分までに3点が決まり、試合は2-1の1点ビハインドのまま推移していく。そして後半、英雄を失い混迷を極めるアルゼンチンを地獄に叩き落としたのは、「東欧のマラドーナ」と呼ばれたルーマニア史上最高の選手、ゲオルゲ・ハジだった。アルゼンチンも1点を返したが、混迷は勢いの前に余りにも無力だった。

前回大会で初の決勝トーナメント進出を果たしていたルーマニアは初のベスト8進出となり、準々決勝は敗れたが、スウェーデンPK戦までもつれ込む激闘を演じている。しかしルーマニアは続く1998年フランスW杯でもベスト16入りを果たし、欧州の中でも地位を築いたように見えたが、21世紀に入ってからは混迷の時代に突入し始めた。

 

#3 旋風は続く

2002 FIFAワールドカップ日韓大会

スウェーデン1-2vセネガル

2002年6月16日15:30@大分スタジアム

スウェーデン得点者:ラーション(11分)

セネガル得点者:アンリ・カマラ(37分,104分)

 

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日韓W杯が初めてのW杯出場となったセネガルは、間違いなくこのW杯の主役の一つだった。開幕戦で、当時黄金期を謳歌していたフランスを撃破。続くデンマーク戦ウルグアイ戦も引き分けに持ち込んで決勝トーナメントへと駒を進めた。しかし、ウルグアイ戦が3点リードを同点に持ち込まれる試合展開だった事もあってその勢いは翳ったのではという展望もあった。対するスウェーデンもグループステージ突破を意外性を持って受け止められていたが、それはアルゼンチンとイングランドが同組にいたからであり、実力だけ見ればベスト16は元々妥当と思われていた。

大分で行われた試合は開始早々にセットプレーからラーションが合わせてスウェーデンが先制。出鼻をくじかれた形のセネガルとなったが、しかし37分にアンリ・カマラが味方のシュート性のクロスに合わせて前半のうちに同点に追いつく。ダークホースのセネガル、死の組を生き抜いたスウェーデン…勢いはどちらもあった。試合はVゴール方式の延長戦に突入する。どちらかが点を取れば試合が終わるこのルールの中で、スウェーデンはアンデシュ・スヴェンソンが巧みなターンから右脚を振り抜いたが…シュートは無情にもポスト直撃。その9分後、右サイドでボールを受けたアンリ・カマラがカットインで切り込むと、彼の放ったシュートは威力はなくも絶対に取れないコースへ。この瞬間に両者の運命は決した。ちなみにこの試合には現セネガル代表監督のアリュー・シセ、そして当時はまだ世界的には無名だったズラタン・イブラヒモビッチも出場している。

セネガルは準々決勝で同じくダークホースと言われたトルコと対戦。大阪長居スタジアムで行われたこの試合では、逆に延長戦でイルハン・マンスズのゴールにより、Vゴールで繋ぎ止めた冒険はVゴールによって終わった。しかし日韓W杯でのセネガルは今なお、W杯大番狂せの代表格として扱われている。

 

#4 歓喜を包む熱と謎

2002 FIFAワールドカップ日韓大会

韓国2v-1イタリア

2002年6月18日@大田ワールドカップ競技場

韓国得点者:ソル・ギヒョン(88分)、アン・ジョンファン(117分)

イタリア得点者:ヴィエリ(18分)

 

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日韓共催となった2002年日韓W杯。それまでW杯出場経験は豊富に持ちながらも一度も勝利した事の無かった韓国だったが、世界的名将フース・ヒディングに導かれたチームは、圧倒的ホームの大声援を受けてグループステージでポーランドポルトガルを撃破。首位でD組を突破していた。しかし、優勝候補のイタリアがグループステージで大苦戦した事で2位通過となり、韓国は1位通過のベスト16としては厳しい対戦相手とぶつかる事となる。

開始早々に獲得したPKをブッフォンに防がれた韓国は、18分の段階で不振に喘ぐアズーリの中で唯一絶好調だったクリスティアン・ヴィエリにCKからヘディングシュートを決められて先制を許す。その後は一進一退の攻防が続く中で、ヒディング監督はFWの選手を次々と突入し、実質的に2-4-4とも言える形になる大胆すぎる采配で逆転を狙った。すると試合終了間際、クロスボールへの対応を相手DFが手間取ったところに詰めたソル・ギヒョンのゴールで韓国が遂に同点に追いつく。延長戦では互いに決定機を得たが、PK戦まであと3分…というところでクロスボールをアン・ジョンファンが頭で合わせて決勝点。韓国は文字通りのW杯フィーバーとなり、アン・ジョンファンは韓国に留まらず、日本でもスーパースター的な人気を誇る事となった。

……といった具合に、表面だけをなぞれば美しいジャイアントキリングである。しかしこの試合は"4強神話"と呼ばれる韓国の大躍進の中で最も有名な試合であると同時に、20年経った今も残る遺恨を残したいわく付きの試合ともなった。というのも、この試合、そして続く準々決勝のスペイン戦は余りにも不可解な判定が多すぎた事で話題になっていた。この試合の代表的なもので言えば後半のザンブロッタへのタックルとマルディーニへの暴行、延長戦でのトッティの退場とトンマージのゴール取り消し辺りか。この試合の余波は大きく、イタリアとスペインでは未だに定期的に新聞で特集記事が組まれるほどであり、特にこの試合の審判を務めたバイロン・モレノは一夜でその名前を世界に轟かせてしまった。一応付け加えれば、当時の韓国は間違いなく強いチームであり、ヒディングの采配も見事だった反面、何かを疑うしかない試合だったのは多くの人が認めるところだと思う。

 

#5 刹那の輝き

2018 FIFAワールドカップロシア大会

スペイン1(3PK4)1ロシア 

2018年7月1日17:00@ルジニキ・スタジアム(モスクワ)

スペイン得点者:OG(12分)

ロシア得点者:ジューバ(41分)

 

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開催国となったロシアだが、ソビエト連邦時代はW杯やEUROでの結果を残していたものの、それ以降は2008年のEURO以外はさしたるインパクトも残せないまま、開催国として戦うW杯の刻を迎えた。それだけに開催国として決勝トーナメントに進めるかどうかも心配されたが、開幕戦でサウジアラビアに5-0で圧勝を飾ると、続くエジプト戦も内容を伴った試合展開で勝利。しかし最後のウルグアイ戦には敗れて2位通過となり、決勝トーナメントでは一発目からスペインと激突する事に。スペインもスペイン自体が過渡期であり、W杯開幕前日に監督交代劇が発生するなどゴタゴタは続いていたが、それでもスペインはスペインだと思われた。

早い段階でスペインはCKからオウンゴールで先制に成功。しかしそこからはロシアも反撃に出て、前半終了間際にはジェラール・ピケのハンドにより獲得したPKをアルテム・ジューパが決めて同点で前半を終えた。それでもスペインはベンチスタートとなっていたアンドレス・イニエスタを突入きてから一気に攻撃のギアを入れる。だがロシアもGKイゴール・アキンフェエフがビッグセーブを連発。ホームの大声援を背になんとか守り抜き、試合はPK戦に突入。ロシアが全員成功させたのに対し、スペインは3人目のコケがアキンフェエフに止められ、そして5人目…イアゴ・アスパスのキックはアキンフェエフの逆を突いたが、伸ばした脚に触れて前に弾き返したその瞬間、8万人をも内包したルジニキスタジアムには轟音にも似た歓声が鳴り響いた。

今思えば、前回大会がロシアだったというのも時の流れの速さを感じる。この試合に行った訳ではないが、私自身がロシアW杯はロシアに観戦に行った事もあって、あのW杯は美しい思い出として残っている。ロシアの躍進も、あの大会の思い出も、全てが刹那の輝きのような時間だったのかもしれない。

 

 

優勝候補国を追い詰めたせめぎ合い編

 

\ピクシーっ、オレ!/

ではでは(´∀`)