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【ブラボー日本代表】スペイン戦の勝因考察〜後編・29年前のトラウマと4年前の後悔で繋ぐ物語〜

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みなさまこんにちは。

ドイツ戦コスタリカ戦でやったように、先日、スペイン戦の勝因考察なるブログを書きました。

しかし、ポイントを4つに絞ったところ、想像以上に前半2つだけでなかなかの尺を使用してしまうという事態が発生した事につき、結局今回は前編・後編制にしようとさせて頂く形になっております。

つきましては、こちらの前編の方から先にお読み頂けますと嬉しい所存。冒頭の狂った文字列は決してバグではございません。あなたのスマホは正常です(元々壊れてた場合は知らん)

 

 

…という訳で後編書き進めていきます。

 

ドイツ戦コスタリカ戦の考察

 

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…はい、という訳で今回もポイントで挙げていきます。

 

①対スペインとしての5バックと前半の劣勢(前編)

②パーフェクトチームの崩壊と、逆襲に必要な"段差"と"起承転結"(前編)

③耐久戦を生き抜いた2つの鍵

④全てに繋がる出来過ぎた物語

 

※書いてたら想像以上に長くなったので、当ページでは後編という事で③と④についてのみ書いております。①と②はこちらから。

 

 

 

③耐久戦を生き抜いた2つの鍵

 

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ドイツ戦もそうだったように、今の日本は構えて守る時の守備のクオリティは相当高いと思います。スペインがドイツほど畳み掛けてくるスタイルでは無かった部分はありますが、この試合展開ながらゴール期待値は日本の方が高かったというデータもあるように、本当に崩されたシーンは失点のシーンと終了間際にダニ・オルモがフェラン・トーレスとワンツーで抜け出した場面くらいでしたし。シンプルに跳ね返す力もそうですし、吉田を守備の軸として焦れずに耐える事も出来る。ドイツ戦にしてもスペイン戦にしても、シュートは結構エリア外からミドルを打たれたようなものが多かったと思うんですよね。要は、崩されないディフェンスは日本は相当強い。それは偶然ではなく、前編で書いた2ゴールを含めて、ある程度再現できるものとして考えられると言っていいと思います。

今思えば、それこそ森保監督はドイツとスペインが同居した時点で「前半は耐えて後半ドーン」というゲームプランを考えていたからこそ、6月のブラジル戦でそのやり方がどこまでハマるかを試していたような気はしますし、実際にブラジル戦で構える守備で一定の成果は得られた事が、ドイツ戦やスペイン戦に繋がる森保監督の手応えになっていったように思います。

 

 

 

…少し話ズレましたね。

要は、1点ビハインドを負ったスペインは、単なるドン引きではなくちゃんと統率されたかなり高いレベルの守備網をどう崩すのかという問題に迫られた。異常なパニック状態を経てスペインとしての一応の落ち着きは割と早く取り戻していたとはいえ、彼らにとっては予期していないシチュエーションだった中で、ビハインドを追う為の猛攻を仕掛ける必要が出てきた。そこでルイス・エンリケ監督は68分にジョルディ・アルバとアンス・ファティというスペシャルな選手を左サイドに2人突っ込んできました。

 

一つ目のポイントは言うまでもなくここ。もう方々で散々言われていますが、ここで見せた森保監督の采配です。森保監督はスペインの選手交代を見るやいなや、鎌田を下げて冨安を投入し、伊東をシャドーに上げた上で冨安を右WBとして起用しました。もうこの冨安采配のタイミングの妙と、それによってスペインの切り札を完全無力化したこの采配の効果はみなさん語り尽くしていますし、最後に森保監督の采配の文脈として触れたいのでここでは深掘りはしませんが……運命って奇妙で面白いなと思ったのは、例えば冨安のコンディションが万全ならおそらくこの交代は出来なかったじゃないですか。おそらく先発したでしょうし。それは遠藤のクローザー起用も同じで。そこのタイミングというか、そういう運命というのはなかなか味わい深いものだな…と。

 

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で、もう一つの鍵は70分の三笘のカウンタードリブルのシーンですね。Jリーグファンは2020年の川崎vsマリノスを思い出した方も多いのでは。あのシーンは守備固めに於ける二つ目の鍵でした。

スペインからすれば、あの三笘のドリブル突破によるカウンターは相当脳裏に焼き付いたと思います。これが守備固めに於いてどういう影響を及ぼすかと言うと、日本がカウンターで刺す手段を提示した事で、スペインは無理な攻め方が出来なくなるんですよね。スペインがそれを実際に考えていたかどうかは別としても、無理なハイラインやパワープレーなど、ビハインド時の猛攻を仕掛ける上でのリスキーなシフトがやりにくくなる。だって三笘にあんな感じで3点目を取られるリスクをどうしてもDFは考えてしまうから。ましてや、三笘だけどうにかすればいいとか三笘をサイドに追い込めばどうにかなるんじゃなくて、三笘のカウンタードリブルの速度に浅野が呼応できていた事も大きかった。浅野のシュートはヒットしませんでしたが、伊東もそこに呼応していた訳で、あの三笘のドリブル突破と味方がそれに付いていける事を見せられてしまうと……あの三笘のカウンターはプレー自体のファンタスティック感は勿論、日本がこれから守り切る上で、スペインへの牽制として大きな意味を持っていたと思います。

 

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ただいずれにしても、やっぱりスペインな訳ですよ。一瞬でも隙を見せれば確実に突いてくる。その相手に対して本当によくやってくれました。上で書いたような守備の選手はもちろん、それは前の選手も同じで。攻撃面がフォーカスされますが、実は献身的というだけでなく守備のセンスも光る堂安は、5バックがリトリートで守る中でバイタルエリアでのプレッシングを常にかけ続けたし、伊東や浅野もプレスで貢献しつつ、堂安よりは少し高めの位置に残る事でスペインを牽制するような攻撃モーションも見せた。そして三笘は…あのアセンシオが右サイドでカットインした時、誰もがあの夏に途切れた夢の残像をあそこに見たと思うんです。そして三笘は当時、その残像に触れる舞台にも立てなかった。そんな三笘がアセンシオのシュートをブロックした場面はやっぱり痺れました。

そういう物語性で言えば吉田もそう。あの終了間際、日本は首位でも1点取られれば即首位でした。いくらブロックを組めど、アセンシオのミドルシュートは時として理屈の全てを破壊してくる。落ちた上にワンバウンドしたボールを前に弾いた権田のセーブは文句無しに素晴らしかったですが、そこにフェラン・トーレスが思いっきり突っ込んできた…。そこで吉田の脚が伸びた……かつては「集中力の欠如」なんてことも言われたCBは、誰もが一瞬エアポケットに落ちたような瞬間に、最も大事なエリアに脚を伸ばしていた。あれもまた、ゴールシーンと同時に永遠に語り継いでいくべきプレーでした。コスタリカ戦での事があったから、余計にその事を強く感じましたね。ましてや彼は長谷部誠から主将の座を受け継いだ立場で、吉田と長谷部は公私共に親しいだけに、長谷部の苦悩や魂にも近いところでずっと触れてきた。東京五輪の総括として書いたブログでも書きましたが、ああいう魂を血脈と呼ぶのかな、という気もしています。

 

 

そしてその、物語性の最たる例が森保監督を取り巻くストーリーでした。

 

 

 

④全てに繋がる出来過ぎた物語

 

1993年10月28日、カタール、ドーハ……あの場所で起こった出来事は、長きに渡って日本サッカー界の脳裏にずっと焼き付いていました。

史上初の外国人監督となったオフトの下で、日本が初めてヨーロッパ的な組織的なフットボールを目指し、Jリーグバブルに背を押されながらW杯出場に手をかけたあの頃、オフトの秘蔵っ子的存在で、日本に「ボランチ」という言葉を浸透させたとも言われていたキープレイヤーの一人…それこそが森保一でした。彼は自分の頭上を超えたボールがゴールに吸い込まれたあの時からホテルまでの記憶がない……「(人生の中で)これ以上の悲しい思いをすることはないだろうな」とまでの思いをドーハで突きつけられた男が、29年の時を経てドーハで、あの時届かなかったW杯を監督として戦った…。戦術的な話とは逸れますけど、やっぱりその…森保一にまつわるストーリー性に触れておきたいです。

 

試合後の会見で、終盤…他会場のコスタリカvsドイツの動向的に、同点に追いつかれたら敗退が決まる状態でアディショナルタイムに突入した時についての質問が森保監督に投げかけられていました。

 

森保一監督:「(Q.終盤もう一つのカードの状況は把握してらっしゃったと思います。ドーハの悲劇はよぎりましたか?)最後の1分ぐらいの時に私もドーハの記憶は出てきました。ちょうどその時に、選手が前向きにボールを奪いに行っていたところで、時代は変わったんだなと。選手たちが新しい時代のプレーをしてくれているな。試合中に、あと1分30秒ぐらいの時に思いました」

テレ朝news「時代は変わったなと…」森保監督 最後の1分によぎった“ドーハの悲劇”

 

1点を取られたら2-2のドローで夢がすり抜けていく…その状況でオーバーラップしてくる残像と、それを更に追い越す選手の動きは、森保監督からすればこの29年間の日本サッカーの歴史が早送りで流れていくような感覚を覚えたような気はします。

時代は変わった……今回の26名の代表選手のうち、ドーハの悲劇の時点でこの世に生まれていた選手は半分にも満たない10人しかおらず、実際に観ていたかどうかはわかりませんが、あの試合の諸々の背景を理解して観戦できる年齢だったのはせいぜい川島永嗣くらいでしょう。この世代は、もうアジアへのコンプレックスは知らない。変わりゆくスタンダードは日本サッカーの成長そのものでした。それをあの現場で、彼の経験の上で体感したと思うと………。

 

 

 

そして森保監督の物語性で言えば、もう一つ歴史の血脈を感じさせるところがありました。

2018年7月2日、ロシア、ロストフ…森保監督はあの試合で、あのベンチからあの光景を見ていました。そして彼にはあのベルギー戦で、なかなか拭えない一つの後悔があったと。

 

ロシア・ワールドカップが終わったときに森保さんから聞いたんですけど、2-0でリードしていたベルギー戦で相手がパワープレーをしてきたと。ベンチでどうする、どうすると相談している間に追いつかれてしまった。森保さんは、植田直通を入れて5枚にして跳ね返しましょう、と西野さんに提案できなかったことを悔やんでいました。ただ、その一方で、ベンチの指示を待つのではなく、ピッチ内で問題を解決できるようにならないと、ベスト8、ベスト4を狙うのは難しいとも思ったと、森保さんは言っていたんです。

森保ジャパンのこと全部聞いた-みぎブログ

 

森保監督はスペイン戦で、どこかのタイミングで冨安健洋を投入するプランは持っていました。しかし彼は日本代表というチームではCBの選手でしたし、ましてや、前半の時点でCBの3人が全員イエローカードを貰っていた。ましてや吉田の警告判定は中々厳しいものだったがゆえに誰かが退場してしまう可能性は大いにある。その為、冨安投入は前提としても、森保監督は誰を下げるべきかで悩んでいたと言います。

そんな中で、スペインはファティとアルバというスペシャルな選手を2人、左サイドに並べてきた。スペインがここから攻撃の破壊力を生み出そうとしているのは明白だった。そこで森保監督は、全ての迷いから解き放たれるかのように右WBとして冨安を送り込んだ……あの時、植田の投入を進言出来なかった自分への後悔は今日の決断へと変わり、そして結果に昇華させた。日本人監督と外国人監督はそれぞれのメリットとデメリットがあって、どちらが良いかを一概に断じる事は出来ません。ただ、こういう文脈を、物語を紡ぎ、その過去を決断に変えることが出来る…それは日本人監督が、この国の歴史に常に触れて生きてきた事で出せる強みなのかな…とも思いますし、今大会の日本代表はチームビルディングを含めて、その妙味が存分に出たのではないでしょうか。

そう、この3試合は…もう、極論で言えば敗れたコスタリカ戦を含めて、本当に美しい物語でした。新しい景色を見ることは、この血脈をまた一つ紡ぐこと。ドイツ人のデットマール・クラマーによってこの国がサッカーを教えられたことも、ドーハで負ったトラウマも、スペインという国の背中を追いかけたことも、ロストフでベルギーの背中を追う事しか出来なかったあの14秒も、そしてドーハのトラウマを歓喜に変えた事も……全てがこの国のサッカーの軌跡に於ける血脈で、いつの時代の代表もその上に成り立っている。美しいだけじゃない歴史の美しさを、この3試合で見た気がしました。

 

 

 

…さて、では クロアチア戦の事も話しましょうか。予想スタメンはこんな感じ。

 

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正直なところ、仮にクロアチアに勝ってブラジルと戦う事になったとしても、試合前のアプローチや設定を考える上で最も難しいのはこのクロアチア戦だと思います。

基本的に日本にとってクロアチアは格上の相手です。ただ、 クロアチアはドイツやスペインほど自分達のやり方で勝ちに来るわけじゃないし、じゃあコスタリカのように専守防衛で臨んでくる訳でもない。クロアチアはなかなか全方位的なチームなんですよね。なので、日本がボールを持てる展開になるのかならないのかも、試合開始の笛が鳴るまでわからない部分が結構あって。そう考えると、日本にとってはよりオーソドックスな形と言うべき4バックスタートになる可能性の方が高いのかなと。

また、コスタリカ戦の考察ブログでも書きましたけど、今の日本代表は何人かメンバーを変える事が別にターンオーバーを回している事にはならないという強みを持っていると思います。それを踏まえれば、途中から堂安や三笘を投入した時の爆発力を持たせるべく、スタートは相馬で引っ張る…みたいなプランもあるのかな、と考えています。酒井をスタメンで使えるなら堂安-久保の東京五輪ラインで伊東をリザーブスタートにする形も少しあるかな、と思いましたが。また、個人的には上田はここでもうワンチャンスあるんじゃないかとも見ています。また、これまでの起用傾向からすると、練習に復帰したとは言えども酒井がスタートから出る事は少し予想しにくいというか。そうなってくると、伊藤はCBの控えとしても計算出来るだけに、冨安を右SB起用してくる可能性もあるのかなと。

 

 

 

ともかく、今の日本は歴史を追いかける立場ですが、ここで勝てばその立場は変わり、歴史が日本代表を追いかけてくる立場になる。そして何より、クロアチアともW杯での因縁がある……本当に全てが出来すぎた映画のように揃った舞台で、どんなカタルシスを見せてくれるのか…どんな結末であれ、我々もその歴史の一部としてこの瞬間を目撃できる事に感謝しながら、ベスト8への挑戦を見届けたいです。

 

 

ではでは(´∀`)