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前編のブログで書いた五輪代表監督の法則と傾向に基づき、五輪代表監督に選ばれる可能性のありそうな人材をリストアップしていきます。
【五輪代表監督の法則】(前編を参照)
①既にアンダー世代の代表監督、ないしはA代表のスタッフとしてJFA所属で指導を行っている
②J2クラブの監督として昇格経験がある
③Jクラブの監督としてタイトル獲得経験(J2優勝を含む)がある
④J1で3位以内に入ったことがある
⑤オリンピックの時点で年齢が50代前半以下
・①に該当する人物か、②〜④のうち2つを満たす人物がこれまで選任されている
・⑤は必須条件ではないものと思われるがこれまでの監督はいずれも⑤に該当しており、少なくともベテラン監督は呼ばない傾向。
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【オリンピック 男子サッカー代表監督の傾向と法則から浮かび上がる選出される可能性がありそうな人物リスト】
#1 大岩剛(続投)
現職:U-23日本代表監督(2021.12〜)
上記の該当条件:①③④
生年月日:1972年6月23日
過去の監督経験:鹿島アントラーズ(2017.5〜2019)、U-18日本代表監督(2021.4〜12)
監督としての主な実績:J1リーグ準優勝(2017:鹿島)、ACL優勝(2018:鹿島)、クラブW杯4位(2018:鹿島)、天皇杯準優勝(2019:鹿島)、AFC U-23アジアカップ優勝(2024:U-23日本)、パリ五輪ベスト8(2024:U-23日本)
選手としての日本代表経験:3試合0得点
★AFC年間最優秀監督賞(2018:鹿島)
まず大前提に、辞任や成績不振による解任でない限りは監督続投というよりも「現監督も後任候補の1人」として選択肢をテーブルに残すべきだと考える。その点で言えば、大岩監督も後任監督の一人として捉えるべきだろう。実際にスポニチの報道では「大岩監督の続投もある」と書かれていたし、何より今大会は選手招集の可否などで直前の変更や調整、擦り合わせを強いられるようなケースが多く、歴代の五輪代表監督でも負担は多かったように思う。その中であれだけのチームを作ったマネジメント能力を見れば「次も大岩監督で行きたい」という案が出る事は不自然とは思わない。
とはいえ、基本的に五輪代表監督は監督業の観点でもいわゆる到達点とは言えず、実際に五輪代表監督を2期連続で務める人物は日本のみならず世界的にも殆どおらず、大岩監督の心中がわかる訳でもないが、基本的に多くの監督は「クラブチームで腰を据えて指導をしたい」と考える人間が多い。実際に大岩氏も暫定的にU-18日本代表監督を務めていた頃、当然パリ五輪代表監督の候補者になっていた中で舞い込んだガンバ大阪の監督就任オファーがある程度進んでいたという話もあり(最終的には破談)、受諾するかどうかはともかくオファーがゼロという事は考えにくい。そもそもメンバーが総入れ替えになる以上、続投で得られるメリットは小さくなるので可能性としては低いだろう。
#2 船越優蔵
現職:U-19日本代表監督(2023.10〜)
上記の該当条件:①⑤
生年月日:1977年6月12日
過去の監督経験:JFAアカデミー福島U-14(2015-2020)、U-17日本代表(2020)、JFAアカデミー福島(2021)
現在U-19日本代表監督を務めている為、いわば現時点でのロサンゼルス五輪代表監督という位置付け。来年開催予定のU-20ワールドカップ及びその予選となるU-20アジアカップは船越監督体制で挑む予定で、いずれにせよロサンゼルス五輪の監督が正式に決まるのはその後という事になる。2015年からJFAでアカデミー世代の仕事に携わっており、今回のパリ五輪世代で言えば三戸舜介は教え子の一人。
U-19/20代表監督からの昇格で言えばアトランタ五輪の西野監督が前例としてあり、女子なら現在の池田太監督はそのルートで監督に昇格しているが、近年では同様の立場にあった内山篤監督、影山雅永監督はいずれもU-20W杯をもって退いている為、現時点では船越監督もU-20W杯で退いた上でJFAの育成に残るかJクラブに移るかの選択になりそう。ただJFAの宮本恒靖会長とはU-17日本代表とガンバ大阪でチームメイトであり、意思疎通のラインが確立されている事は協会と現場の双方にメリットがある。ちなみに伝説のFW・エムボマのガンバ時代の思い出は「宮本、船越と行った寿司屋で船越と大食い競争をしたら負けた事」。
#3 鬼木達
現職:川崎フロンターレ監督(2017〜)
上記の該当条件:③④⑤
生年月日:1974年4月20日
監督としての主な実績:J1リーグ優勝(2017,2018,2020,2021)、ルヴァンカップ優勝(2019)、天皇杯優勝(2020)
大岩監督の後任について報じたのは現時点でスポーツ報知とスポニチの2紙だが、両紙が見出しにその名前を持ってきた事実が物語る通り、純粋に考えれば鬼木監督が最有力候補と考えるのが自然といえる。
特に「コーチから監督に就任」「前任者が築いたペースに現実的なエッセンスを投入してチームを優勝に導いた」「そこから黄金期を築いた」という点は森保監督のキャリアと比較して類似性を持って語られる事が多く、加えて五輪代表監督就任直前の森保監督と同様に、鬼木監督もそろそろ川崎でのキャリアにピリオドを打ちそうな気配が漂っている事を踏まえれば鬼木ジャパンが最もベターな選択肢として考えられ、そもそも今のJリーグで最も実績を残した監督であると考えればしっくりくる事は間違いない。
一方でアジアや国際舞台での勝負弱さに懸念が残る事は確かで、ACLの不審という点に限れば森保監督も同様ではあったが、森保監督時代の広島と鬼木フロンターレを比較すると事情は異なる。ACL優勝経験を持つ大岩監督選出の際には「アジアでの経験」も重要視されていた背景があり、そこをJFAがどう判断するか。
#4 長谷部茂利
現職:アビスパ福岡監督(2020〜)
上記の該当条件:②③
生年月日:1971年4月23日
過去の監督経験:ジェフユナイテッド千葉(2016.7-12※代行)、水戸ホーリーホック(2018-2019)
監督としての主な実績:J1昇格(2020福岡)、ルヴァンカップ優勝(2023福岡)
★J1リーグ優秀監督賞(2023福岡)
近年の日本人監督で最も評判の良い人物の一人で、スポニチはあくまで鬼木監督を本命視した上で大岩監督の続投、船越監督の招聘と並べる形で名前を出していた。5年に一度昇格しては降格するプロセスに苛まれていた福岡を就任1年目で昇格させ、そこから3季連続残留。特に2023年にルヴァンカップを制した事、2022年以外は一桁順位でフィニッシュさせた事は偉業と呼ぶ他ない。クラブの拡大路線を含め、今の福岡の姿は10年前には正直想像できなかった。
J2クラスと思われていたクラブをJ1に引き上げ、かつJ1でちゃんと戦えるクラブに育て上げた…という点で言うと、過去の五輪代表監督で言えば手倉森監督に近いケースだと言える。守備組織構築には定評があり、実際に福岡では就任1年目から結果を出した。そう考えると、確かに妙案の一人と考えられる。
#5 名波浩
現職:日本代表コーチ(2023〜)
上記の該当条件:①②
生年月日:1972年11月28日
過去の監督経験:ジュビロ磐田(2014.-2019.6)、松本山雅FC(2021.6-2022)
監督としての主な実績:J1昇格(2015磐田)
選手としての日本代表経験:67試合9得点
現在の日本代表コーチ。A代表のコーチが五輪代表監督に転身する例としては日韓W杯後にアテネ五輪の代表監督に就任したの山本昌邦監督のケースがあり、そもそも2026年以降のA代表がどういう体制になるかにもよるが、2026年W杯後に五輪代表監督に転身する可能性は考えられる。名波コーチは五輪は出場していないがW杯には出場経験があり、代表監督やコーチにW杯や五輪の出場経験者を据える循環を構築したい意図はJFAは持っていると思われる。
ただ、代表コーチとしての名波コーチは現時点である程度上手くやっているように思うが、監督実績が乏しいのではなく芳しく無かったところはやはり懸念材料となる。
#6 横内昭展
現職:ジュビロ磐田監督(2023〜)
上記の該当条件:②(1)
生年月日:1967年11月30日
過去の監督経験:U-24日本代表監督(2020.7-2021.8)
監督としての主な実績:トゥーロン国際大会準優勝(2019 U-23日本)、J1昇格(2023磐田)
★J2リーグ優秀監督賞(2023磐田)
今季は磐田の監督を務めている。カタールW杯までは森保ジャパンのヘッドコーチとして活動していたが、当時は森保監督がA代表と五輪代表を兼任していて日程が被る事が多かった為、そういう時の五輪代表では横内コーチが代行監督として指揮を担っていた。
監督代行としてトゥーロン国際大会など海外遠征もこなしていたので実務的には五輪代表監督経験者に近いものがあり、現に2021年のU-24日本代表監督は契約上は横内監督になっている(東京五輪本戦のみ森保監督が指揮を採るという形態になっていた)。いわゆる仕事の内容と流れは把握している事もあり、監督としても磐田の昇格に成功。候補に名前が挙がってくる可能性はある。
#7 吉田孝行
現職:ヴィッセル神戸(2022.6〜)
上記の該当条件:③④⑤
生年月日:1977年3月14日
過去の監督経験:ヴィッセル神戸(20117.7-2018.9,2019.4-6)、V・ファーレン長崎(2021.1-5)
監督としての主な実績:J1リーグ優勝(2023)
昨季の優勝監督ではあるが世間的な評価が高いとは言えず、現在の成功は「神戸の戦力に助けられているだけ」とする意見の方が多い。実際に第2期の神戸と長崎では明確に失敗に終わった事は確かであり、イニエスタを実質的な構想外とした判断は優勝した今となっても未だに賛否が割れている。
ただし、2022年6月からの神戸での第3次政権以降の働きはやはり評価されるべきところで、代表とクラブチームの性質の違いを踏まえた時、神戸でやってきた戦力の運用と整理の部分が評価されるという考え方はあり、その点ではパリ五輪の大岩監督に通ずるものもある。いずれにせよ就任は2025年夏以降になる為、24-25シーズンのACLで結果を出してくればリストに載る可能性はあるかもしれない。
#8 黒田剛
現職:FC町田ゼルビア(2023〜)
上記の該当条件:②③
生年月日:1970年5月26日
過去の監督経験:青森山田高校(1994-2022)
監督としての主な実績:J2リーグ優勝(2023町田)
2024年のJ1リーグで良くも悪くも最もホットな人物と言える。躍進と論争を巻き起こす姿は、まさしく今季最大の主役であり、そして今季最大の悪役でもある。いずれにせよ、おそらく今季の町田はここからどれだけ低迷してもトップ5は確実だろうし、ここから優勝したら偉業と呼ぶ他ない事は間違いない。
2シーズンというよりも2シーズンをそれぞれ単年で見た町田のチーム造りと、青森山田でやってきたマネジメントを踏まえると、むしろクラブチームよりも代表チーム的なマネジメントをしているような印象は強く、特に今季の町田はそれがより顕著なチームだとも思う。青森山田で長年監督を務めた事からアンダー世代への接し方も踏まえている事もポイントだろう。ただ、今季の町田へのバッシングは正義中毒的に感じるものが多い一方で、黒田監督は黒田監督で軽率なコメントが少なくないように思うので、そこは代表監督としてリスクになり得る部分ではある。
【「前編:五輪代表監督の法則と傾向について」から読む】
ではでは(´∀`)