RK-3はきだめスタジオブログ

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情念と執念〜2024明治安田J1リーグ第34節 名古屋グランパス vs 北海道コンサドーレ札幌 マッチレビューと試合考察〜

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新幹線ウキウキセット

 

どーもこんばんは

 

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さてさて、本日のマッチレビュー明治安田J1リーグ第34節、名古屋グランパス vs 北海道コンサドーレ札幌の一戦です!

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

札幌にとっての夏以降は地獄から這い上がれるかどうかの旅路でした。少なくとも今、札幌は最悪の状況からは脱している。しかしてそれでも危機的な状況には変わりがない。彼らにとっての残り試合はまさしくブレイブメンロードのような日々ですが、その鉄骨を渡る権利を獲得したのも他でもない彼らの巻き返しによるものです。その意地を第38節まで繋げる為のサバイバルはまだまだ真っ最中です。

対する名古屋は先日、ルヴァン杯準決勝にて横浜FMを下し、ルヴァン杯の決勝進出を決めたアゲアゲモードで試合に挑むことができる状況となりました。リーグ戦の順位は上も下も何か大きなものが懸かっている訳ではない立ち位置の名古屋でしたが、ここにきて勝ち取った大きな目標を前に加速状態で突っ込んでいきたいはず。そしてなんと言ってもこの試合はクラブレジェンドの特別な試合ですから、そこにかける想いには強烈なものがある事でしょう。

情念と執念…豊田スタジアムにて交差する2つの魂は最後にどちらに転ぶのでしょうか。両チームスタメンです。

 

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マリノスは直近のルヴァン杯からはスタメンを3人変更。3-4-2-1と3-4-1-2を使い分けていますが、今日は森島司をトップ下に永井謙佑と山岸祐也を2トップに置く形。中央での起用が多い菊地泰智は今日は右WBでスタートしています。豊スタラストゲームのランゲラックももちろん先発です。

札幌は前節G大阪戦からスタメンを2人変更しました。今日の札幌は大﨑玲央をアンカーに置いた3-1-4-2を採用しています。前節は契約上の理由で出場できなかった鈴木武蔵が復帰し、前節鈴木の代わりに抜擢されて結果を残した白井陽斗と2トップ。右CBには髙尾瑠が負傷退場した第30節東京V戦以来の先発になりました。

 

 

 

本日の会場は愛知県豊田市豊田スタジアムです。

 

 

名古屋のホーム最終戦は第37節鳥栖戦となっていますが、この日は昨年に引き続き豊田スタジアムラリージャパン2024が開催される関係上、豊スタを使用できずに岐阜メモリアルセンター長良川競技場にて試合が行われます。即ち、この試合は今年の豊スタでの最終戦ということになりました。なおこの試合で33587人の来場を記録した事で名古屋の2024年のホームゲーム来場者は562716人となり、クラブ記録を更新しています。

同時に今季限りでの退団を表明しているミッチェル・ランゲラックにとっては、ホーム最終戦自体は第37節ですが慣れ親しんだホームスタジアムではこれがラストゲーム。その為、来場者には「ミッチのハンドサイン」と称したグッズと記念ブックレットが配布され、場内もランゲラックの7シーズンを讃える装飾を実施。試合後にはランゲラックの退団セレモニーが実施されます。ちなみに同日には豊田市挙母祭りも開催。駅前では行進が見られましたね。

 

 

この日は現地観戦でした!

今年は名古屋に用事が多かったのでグランパス戦が上手いこと被らないかなー…と思っていたんですが、ようやく被ったと思ったらまさかこんなメモリアルな試合になるとは…。スポーツ観戦日記はまた後日!

 

 

前半は概ね名古屋がボールを握ってアクションを起こそうとする時間が続いていましたが、基本的にはどちらが主導権を握っている展開という訳でもなく、慎重な狙いを持って入った札幌に対して名古屋が攻めあぐねる展開で試合が進んでいきました。

名古屋はボールを保持しながら、それが速攻気味であれ遅攻気味であれ、森島司に当てたところから相手DFとのズレを永井謙佑と山岸祐也が突いめいくように動き出す、それに森島やWBが絡んでいくことで流動性とダイナミズムを起こして崩そうとしていたものの、今日は名古屋の攻撃の核となる前線3枚と札幌の3バック+大﨑玲央のブロックに上手く噛み合ってしまう形になり、崩す余地となるようなスペースを見出せない時間が続きます。

 

 

 

守備でリズムを作って名古屋に仕事をさせていなかった札幌は攻撃機会がそこまで多いわけではありませんでしたが、いざ攻撃のフェーズに入ると大﨑を配球役としたところから駒井か青木のどちらかがフォローに入った上で、そのフォローに行っていない方と白井がスペースにアクションを起こす、鈴木が前線でポストプレーができる状態を作る、その上で両WBがサイドのスペースを狙う…というように、個々のタスクを踏まえた上で連鎖的な動きができていました。

35分、実際に大﨑の縦パスから始まった攻撃は名古屋の守備にも阻まれて何度か攻撃を作り直す形になったものの、作り直す時にはしっかりと人数をかけていた札幌は右サイドに展開し、近藤友喜がサイドを抉るドリブル突破。ファーサイドにグラウンダーのボールを入れると、ニアサイドで鈴木が潰れて最後は駒井が押し込んで札幌先制!

 

 

狙いとする攻撃が札幌の前でほとんど出せなかった名古屋と、逆に自分達の狙いが攻守ともにバッチリはまった札幌。

前半は札幌が1点リードで終えます。

 

 

名古屋は後半から永井を下げてキャスパー・ユンカーを投入。

前半の名古屋は前線3枚はシンプルな裏抜けかポケット、WBはサイドを狙う意識が強かったですが、後半は山岸もユンカーも一気に裏を狙うというよりは少しサイドにも流れるような動きを見せつつ、逆に徳元悠平と菊池泰智は2トップと入れ替わるように中に斬り込むアクションを見せるようになった事で、札幌の守備と完全に噛み合ってしまっていた状況から少しずつ脱するようになっていきます。

それがまさしく形になったのが58分。ボールを持った椎橋慧也に対してユンカーがCBを連れて少し降りると、その背後を菊池が捉えてラインブレイク。しかし菊池のシュートはファーポストに阻まれ、こぼれ球に反応した山岸のシュートも枠は捉えられず…。それでも名古屋は少しずつ打開策を見つけ始めていました。

 

 

 

66分には森島→菊池と繋いで左サイドに展開し、徳元がクロス。ファーサイドに入ったクロスを山岸が菅大輝を引き連れながら潰れて空けたスペースに稲垣祥が走り込みますが、ギリギリでカバーに戻った菅のブロックの末にクロスバーに直撃。

直後、名古屋は徳元を下げて山中亮輔、札幌は青木と菅を下げてスパチョークと中村桐耶を投入。後半の名古屋の流動的な攻撃に対し、前半ほどパターンを明確に守るだけでは対処できなくなってきた札幌。70分には稲垣のロングスルーパスに抜け出したユンカーがGK菅野孝憲との1対1を制したか…に見えましたが、シュートは今度もファーポスト。名古屋は枠に3度弾かれ、札幌にはまだツキの残りを感じさせる展開に。

 

 

 

前半とは少なからず異なる守備の組み方を迫られた札幌はその後、馬場晴也、宮澤裕樹荒野拓馬を立て続けに投入。ユンカーや山岸にスルーパスを出してくる稲垣や菊池のところをどうにか教えるべく、彼らの投入によって少し前線のプレス強度を強める、奪ったところから速攻というよりも前に持ち出すことでボールを自陣から遠ざかる戦い方を選択します。

すると83分には右サイドでボールを収めた鈴木からボールを貰おうとした近藤を三國ケネディエブスが倒してしまい、三國はこのプレーで2枚目のイエローカードにより退場。そして最大のハイライトは87分、ここまで耐えに耐えた札幌は左サイドからのスローインの流れでスパチョークが相手を差し切ると、抜け出したパク・ミンギュの折り返しを鈴木が仕留めて勝負有り!

 

 

終盤は数的優位の影響と、前がかりになる名古屋に対して札幌の守備がハマったことでむしろ札幌にとって理想的なアディショナルタイムのような状態になっていました。

そして試合は終了。札幌が2-0で勝利し、ブレイブメンロードの真ん中できっちりとポジションを取れる勝点3をゲット!一方、名古屋はレジェンドの豊スタラストゲームを白星で飾ることはできませんでした。

 

 

 

危機的状況とは常に焦燥感を生むもので、札幌からすれば前節G大阪戦がその最たる例だったんだろうとは思いますが、ある意味では「焦燥感が一周回るとかえって冷静になる」みたいなよくある話が今日の札幌だったように思います。それだけ今日の札幌はチームとしてプランを上手く組み、遂行していた。前半なんてゲームプランに対してパーフェクトなゲームだったと思いますし、後半はパーフェクトな展開では無かったからこその微調整が光った。見事なゲームでした。

基本的に今日の札幌は3バックとWBのところでしっかりと5レーンに1人ずつ人がいる状況を使っていました。対する名古屋の攻撃は基本的にトップ下の森島に当てて、そこからその前にいる2トップが相手守備陣のズレを生むようなムーブを起こすわけですが、ここで名古屋の前線3枚を中央の3レーンで上手く捕まえる形になったので、永井や山岸にパスが出てポケットに走られても、その段階でしっかりと左右のCBが潰せた。レーン守備でゾーンの意識を徹底して持ちながら、いざボールが入ったらそこはこれまでやってきたマンツーマン守備をしっかりと実践する。それをうまく組み合わせた事で、連動して崩していきたい名古屋が常に単体で勝負しなければならない状況ができていました。

ただそれを徹底すると攻撃時の重心が下がってしまいそうなものですが、そこで効いていたのがインサイドハーフに入っていた駒井と青木でした。この2人は札幌がボールを奪った時にはIHというよりも3ボランチの両脇のような動きでビルドアップの出口となり、そこでボール保持の流れを作れれば、今度は逆に2シャドーのように前線に食い込んでいく。駒井と青木のミドルゾーンでの上下動は、いつもより重心を下げていた札幌がボールを奪った時に守備→攻撃に移行するフェーズをすごく助けていましたし、そこによりアクションを起こしていけるタイプの白井と、前線でボールを収めることのできる鈴木の2トップがすべて機能的に連動していた。選手間のタイプに個人のタスクを落とし込んで、それを雑に上手く連動させていたのはお見事でした。

 

 

後半は名古屋のアプローチ変更も上手くやっていたと思います。

永井ほどの機動力とスプリント力はない分、スローモーションな動きでピッチを浮遊するユンカーを投入したことで、ユンカーは対面の相手を引き連れるようにして降りたり、サイドに流れたり、そうしたら今度は右WBの菊池が中に入り込んでくる動きを見せた。左サイドの山岸も前半は永井、後半はユンカーに合わせた動きをしていましたし。これにより、前半は綺麗に整理されていた縦のレーンの左右がクロスするような状態になってしまったので、58分の決定機がそよ象徴的なシーンでしたが、例えば菊池が入ってきた時に左CBのパク・ミンギュが行くべきなのか左WBの菅大輝がいくべきなのか…が揺らぐ状況になっていました。実際に名古屋はそこからポストに当たるシーンを3つも作ったわけですから、後半の攻め方の変化は功を奏していたと思います。

ただ札幌もどうにか一番苦しい時間を、ラッキーもあったとはいえどうにか頑張って耐えた後、宮澤をアンカーにした3バックとの4人はしっかりDFラインを護持した上で、荒野を投入して中盤でのプレス強度を一気に上げた、パスの供給源となっていた稲垣や菊池に入る前段階を潰しに行こうとしたシフトチェンジは面白かった。あの時間帯は名古屋も前がかりになっていましたからコントロールも少し粗くなっていましたし、1点リードのチームの戦い方としては少しリスクがあったかもしれませんが、引いたまま対峙してもまたインサイドを抜けられる可能性はあった訳で、それならば稲垣や菊池にパスが入る前の空間を突く方が札幌が主導権を奪い返せる可能性は高かった。そういう意味までは終盤の札幌は2つのリスクを天秤にかけた選択からしっかりと決断を下し、その決断をピッチ上の選手達がしっかりと正しいものにしてみせたような格好になったんじゃないですかね。ゲームプランを完璧に遂行した事も見事でしたし、それが怪しくなってきたタイミングでリスクを天秤にかけた決断を下す事ができた。どこまで執念じみていて、それでいてすごくクレバーな勝利だったと思います。ナイスゲームでした。

 

 

帰りの山本屋と味仙混みすぎ

ではでは(´∀`)