RK-3はきだめスタジオブログ

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朱く、麗しく〜2024JリーグYBCルヴァンカップ決勝戦 名古屋グランパス vs アルビレックス新潟 マッチレビューと試合考察〜

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どっちも赤系統

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューは2024JリーグYBCルヴァンカップ決勝戦名古屋グランパス vs アルビレックス新潟の一戦です!

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

運命も、ドラマも、華々しいフィナーレも、それは栄光を掴み取る為に歩んだ道のりの上で、ふとした瞬間に巡り合うものなのでしょう。

ルヴァンカップ勝戦……クラブの数だけドラマや立場はあります。小さなクラブが自分達の手で作り上げた歴史の終着点として、常にプレッシャーにさらされる大きなクラブはその一つの到達点として。それぞれの立場にそれぞれの運命があり、それぞれのドラマがある。それがこの聖杯なのだろうと…。

 

 

サッカーもスポーツも不毛の地だった新潟の歴史を大きく変えたのは2002年日韓W杯の開催都市選考で周囲の予想に反して決選投票を制した事でした。その相手は奇しくも愛知県だった……1996年のあの出来事から県のスポーツの歴史が大きく変わった彼らの辿り着いた決勝の場所がこの試合だと思うと、不思議な奇縁、運命のようにしか思えない巡り合わせはあるのだろうなと。彼らにとって、聖杯を掲げて胸に星をつけることは彼らのアイデンティティが誰も想像しないところから始まった軌跡の全てを肯定する……運命を掴み取る瞬間を今、目の前に見据えています。

対する名古屋も、そのクラブ史は新潟とはまた異なる意味で激動の軌跡でした。注ぎ込んだ投資が空振るようにうまくいかなかったり、金があるだけと揶揄がされた事もあった。それでも長谷川健太を招聘し、苦しい成績の時期もありながらも若手を育てながら、英雄のラストシーズンに星を添えようとしている。そこに募るものは強烈な想いに他ならないでしょう。

歴史を創る者、歴史を紡ぐ者…そこにはそれぞれのドラマがあり、それぞれの軌跡があり、そして2つの結末がある。試合終了の笛が鳴る時、そのコントラストはどちらの色に染まるのか。秋の風物詩、聖杯を巡る運命の一戦です。

両チームスタメンです。

 

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両チームとも直近の試合は先週水曜日のJ1第35節。名古屋はG大阪に、新潟は東京Vに敗れた状態での決勝戦となりました。

名古屋は直近のG大阪戦からスタメンを2人変更。G大阪戦では出場停止だった三國ケネディエブスが先発に復帰し、今日は左CBに河面旺成を先発起用。G大阪戦で負傷退場した事から決勝出場が不安視されていた野上結貴も右WBで先発。GKと主将を務めるのは今季限りで退団が決まった絶対的守護神・ランゲラックです。ベンチにはパトリック、山岸祐也、キャスパー・ユンカーが並ぶ強力布陣となりました。

新潟は元々メンバーはローテーション的に替わっていることもあり、東京V戦からは7人入れ替えてきました。リーグ戦では名古屋ユース出身でもある小島亨介を正GKとして起用していますが、今日はルヴァン杯では常に出場してきた阿部航斗の方を先発GKとしてチョイス。東洋大学に在学中ながら特別指定選手として新潟で存在感を放つ稲村隼翔も決勝戦の出場が可能となり、CBとしてスタメン起用されました。

 

 

 

本日の会場は東京都新宿区、国立競技場です。

 

 

新国立競技場でのルヴァンカップ開催は今年で4回目。2020年大会から国立競技場での使用が再開され、2021年のみ埼玉スタジアムでしたがそれ以外は国立競技場での開催となっています。奇遇にも2020年は長谷川健太監督率いるFC東京、2021年は名古屋の優勝でしたね。来場者には限定パッケージのヤマザキビスケットのお菓子がプレゼントされる他、スタジアムグルメとしてヤマザキビスケット商品とのコラボメニューが発売されています。

今日の試合では62517人の入場者を記録。この数字は昨年の福岡vs浦和の決勝戦を塗り替え、歴代のルヴァンカップ史上最も多くの観客を集めた試合となりました。ちなみに昨季は名古屋のホームゲームとして名古屋vs新潟の試合が国立競技場で開催されており、この試合は名古屋のクラブ史上最多の入場者数を記録しています。

 

 

立ち上がりから名古屋と新潟の狙いが色濃く映し出される展開となりました。

名古屋は立ち上がりからハイプレスを仕掛けながらも、闇雲にボールを追う…というよりは新潟を押し下げていくようなボールの追い方をして、新潟のDFラインを押し下げながらかなり深い位置でGKを噛ませたビルドアップを余儀なくされるような状態を作っていきます。

しかし新潟も名古屋のハイプレスに対してサイドに長めのボールを一本入れて、そこから細かいパスワークで中央に切り込んでいくスタイルで攻撃。立ち上がりは名古屋のハイプレスに浮き足立つ場面もあった新潟でしたが、その攻撃ルートを作ってからは新潟がシュートシーンを多く作れるようになっていきました。

 

 

 

12分には右サイドにボールが入ったところから新潟が攻め込むと藤原奏哉が中に入れたボールを小野裕二がダイレクトでシュートを放つもGKランゲラックが好セーブ。13分にもクロスボールからエリア内での混戦が生じる決定機が起こり、新潟は14分には宮本栄治、27分には長谷川元希がシュートチャンスを作るなど、得点により近づいている気配があったのは新潟の方でした。

一方の名古屋もランゲラックの好セーブに阻まれた場面は多かったものの、新潟をギリギリまで押し込んだところでボールホルダーよりも受け手にアプローチをかけるプレッシングは起用しており、様相は名古屋と新潟のどちらの狙いが先に成就するのか…という展開に。

 

 

 

そしてそのアプローチが実ったのは名古屋の方でした。

31分、名古屋はプレスで押し込んで新潟が選手間の距離が広く、CBがSBのような位置にいる状態でGKを介したビルドアップをせざるを得ない状況に追い込むと、順序よくプレスをかけた名古屋はGK阿部のところに和泉竜司がアプローチをかけるとミスパスを誘い、この一瞬を見逃さなかった永井が冷静に仕留めて名古屋先制!名古屋でデビューし、FC東京時代には長谷川監督と共にルヴァンを制した韋駄天が遂に名古屋をタイトルに近づける一撃をゲット!

 

 

更に41分。名古屋はピッチをワイドに使ったビルドアップから一気に中央に圧縮させると、和泉とのパス交換から椎橋慧也の浮き玉のパスに走り込んだ稲垣祥が頭で落とし、走り込んだ和泉が鮮やかに相手をかわしてラストパス。新潟のお株を奪うような鮮やかなパスワークから最後はまたしても永井が決め切って2-0!

名古屋も新潟もある程度お互いのやりたい事、狙いとするサッカーを出せていましたが、しかしてその狙いをきっちり結果に結びつけた名古屋が2点のリードを持って後半へ。

 

 

後半は名古屋も2点リードを取った影響か、前半よりもハイプレスをかけるというよりは自陣でしっかりとブロックを組んで守るような形に切り替えてきたことで前半以上に新潟がボールを持って前進を試みる場面が増えていました。

その中で65分に松橋監督は宮本、太田、長谷川を下げて星雄次、長倉幹樹、ダニーロ・ゴメスを立て続けに投入。パスワークに加えて新潟はダニーロ・ゴメスのところでよりサイドを突破しに行くような姿勢を見せるようになっていきます。名古屋もカウンターの機会がゼロだった訳ではありませんが、新潟の最終ラインを押し下げる事で優位を作った前半と比較すると、新潟が最終ラインを常に高い位置で護持するようになった事で名古屋は前半に出せていたリズムを出せなくなっていき、後半はほぼほぼ新潟が名古屋陣内でアクションを起こす時間が続いていました。

 

 

 

71分、ダニーロ・ゴメスが右サイドを突破し、名古屋の守備陣2人を翻弄するようなボールタッチとステップワークでインスイングのクロスボールを供給すると、ジャンプ一発飛び出した谷口海斗がこれまで散々立ちはだかってきたランゲラックも反応しきれないヘディングシュートを叩き込んで新潟が1点返上!

雨が降りしきる国立競技場。新潟の反撃態勢に一気にボルテージが噴き上がる中で試合は終盤戦に突入していきます。

 

 

得点直後の新潟が谷口と小野を下げて小見洋太と奥村仁を投入。新潟が5人の交代枠を使い切るまでスタメンを引っ張っていた名古屋も75分に和泉を下げて山岸祐也、80分に永井と野上を下げて菊地泰智と中山克広を投入します。

しかし一度新潟に傾いた流れはもう止められず、日本海側から吹く風は名古屋のゴール前へ。それでもランゲラックという傘を持つ名古屋もボックス内での仕事は許さない守りを拾う。こじ開けきれない新潟のミドルもランゲラックがシャットアウトしながらアディショナルタイムへ。

 

 

 

アディショナルタイムは6分、その時間も5分を過ぎようとしていた頃。名古屋も新潟のクロスボールを懸命に跳ね返し続けていた中で右サイドからのクロスを両チームともに拾いきれなかった先に小見がフォローします。突破を試みた小見に対し、対応に行った中山が小見を引っ掛けてしまってPK判定!

決めればきっと延長戦。止めればきっと試合終了。まさしく全ては小見の右足、そしてランゲラックの全身に委ねられ……解き放たれたそのシュートはネットに刺さってゴールイン!!

 

 

新潟、妄想でも出来すぎな劇的な同点弾!

衝撃的な試合展開の末、優勝の行方は延長戦へ。

 

 

 

名古屋は延長戦開始と共に徳元と森島を下げて山中亮輔とキャスパー・ユンカーを投入。

新潟に傾いた流れを打ち消す狙いもあったユンカーの投入でしたが、延長線の頭を取ったのは名古屋でした。93分、山中のクロスボールをユンカーと山岸が立て続けに競り合い、こぼれてきたボールを中山が抑えの効いたシュートで3-2!!交代選手4人が得点に絡むと共に、PKを献上していた中山にとって名誉挽回の一撃!!

 

 

しかしドラマはまだ完結せず。

111分には今度は新潟。藤原の縦パスを受けた長倉がマークについた稲垣を見事に振り切って絶妙なスルーパスを送ると、フリーで一気に抜け出したのはまたしても小見洋太!究極の場面でランゲラックとの1対1を見事に制して流し込んだシュートは試合を再びタイスコアに戻す同点弾!!3-3!!!

 

 

スコアは3-3で90+30分、120分が終了。

試合の行方はPK戦へと委ねられることに。

 

 

 

両者の運命が分かれたのは2人目でした。

新潟の秋山、名古屋の稲垣とボランチの2人が共にPKを成功させると、新潟2人目の長倉のキックはゴールの右に消えてゴールならず。一方、名古屋の2人目は準々決勝広島戦でも2番手キッカーとして成功させたGKランゲラックが決め切って名古屋がアドバンテージを得ます。

その後は両者3人目と4人目、そして新潟5人目の小見が成功。決めれば名古屋の優勝という場面でボールに向かったのは、昨季は福岡の選手として優勝したものの、自身は試合中にPKを外してしまっていた山岸。

 

 

見事成功!!

この瞬間、名古屋グランパスがクラブ史上2回目となるルヴァンカップ制覇を達成しました!!

 

 

 

まあ…壮絶な試合でしたね。すごい試合でした。余韻さえもヒリヒリするような。素晴らしい決勝でしたね。

試合としては名古屋にしても新潟にしても、特に前半はお互いの狙い、互いのやりたい事が出ていて、その上で相手の態度に対してどうやって自分達のやりたい事や狙いを応用させていくか…というところがありました。まず名古屋はプレスの順序であったり誰を切るかの優先順位がしっかりと組まれていた。新潟はクリアをする意思は基本的に無い事を踏まえて、CBとGKの間隔が広い状態でパスを回す、パスコースが不安定かつ限定的になるような状況を名古屋がプレッシングで繰り出していました。逆に新潟は名古屋の圧をどうひっくり返せばいいのかというところで、WGになるべく長めのボールを一本通す事でそこからパスワークを発揮できるだけのスペースを作ろうとしていた。名古屋のプレスで新潟のビルドアップは少しずつ不安定になっていましたし、新潟も名古屋に長いボールを入れたところから攻撃のパターンを作れるようになっていた…みたいなところで、名古屋も新潟もこれまで自分達がやってきたことの下敷きに対戦相手を踏まえた応用を出せていたように思います。

その点で言えば、特に名古屋の先制点となったシーンは新潟のミスというよりは名古屋がミスを誘発させたようなシーンと表現すべきものでしたし、前半は特に「どっちが刺し切るか」という展開の中でチャンスを掴めなかった新潟と、張った伏線に新潟が掛かった瞬間を逃さなかった名古屋…みたいな構図だったなと。

 

 

 

逆に後半は名古屋が2点リードを奪った事でセーフティーにしたのか、あるいは純粋に前線の体力消耗だったのかは分かりませんが…前半よりも重心を後ろに下げて、前半のようなハイプレスはあまり行わなくなっていました。

それ自体は2点をリードして後半に入ったチームの戦い方としてセオリーに反するものではなくベターなやり方ではあるんですが、新潟が弱さを露呈するシーンはやっぱり最終ラインが低い位置でボールを回さなければならない状態に追い込まれる事でしたから、新潟の弱点が表面化する場面が名古屋がラインを下げたことで自然と少なくなっていった。新潟もそのタイミングを利用して、後半からは意図的に最終ラインをハーフェーライン前後に護持するようにしていましたし、そこのポジションさえ獲得できれば、ボールの動かし方に定評のある新潟はセカンドボールさえ回収できれば攻撃を展開していける。そこは名古屋にとって誤算であり、新潟も劣勢の中で焦らずに状況を見れていたなと思います。

 

 

その点で興味深かったのは、名古屋も新潟も相手や状況をよく見てプレーできていたと思うんですよ。ただその見る角度と言いますか、解釈が少し違っていた。交代カードの使い方がわかりやすい例でしたが、そこがこの試合の妙味だったのかなと。

新潟は名古屋以上に今、この瞬間にあるピッチの状況を俯瞰的に見た動き方をしていました。名古屋のプレスに対する回避策であったり、名古屋が少し構えてきた時に最終ラインを一気に上げてそれをキープしようとする姿勢であったり、松橋監督が早い段階で5枚の交代カードを使い切ったり。そこをチームとしても個人としても的確に捉えてプレーしていたと思います。それは新潟としてプレーモデルが確立されている証左でしょうし、ここを剥がす為の方策、そこからコンビネーションをどう繋げていくか。その状況状況に対する答えを自分達でしっかりと出せていました。それはこれまで一貫したスタイル、一貫したイメージの下で同じビジョンを描きながらここまで積み上げてきた賜物だろうなと。

逆に名古屋の場合、今現在の現象というよりも90分、ないしは120分というロングスパンでの試合と状況を捉えていました。前半の新潟に対するプレスの掛け方は伏線みたいなものだったと思いますし、本来なら2-1になった時点でパトリックを前線に入れるだとか、延長になった時にパトリックとユンカーを同時に入れるとかそういう事も考えると思うんです。しかし、そこで敢えて動かずにスタメンを引っ張る…逆に言えば、2-2の状態でユンカーとパトリックを投入してしまって、もし逆転されたらベンチから強くプッシュできるような交代策は残っていない。選手はともかく、リーダーは常にバッドコースを辿った場合の事も考えて采配をする必要がありますから。長谷川監督が会見で「90分で勝たないといけない試合だった」と言っていたように名古屋としては90分でケリをつけるべき展開だったのは否めませんが、策を打つというよりも常に繰り出せる策を残した状態でプレーし続けた姿勢は長谷川健太という監督の長期的なチーム作りにもリンクするような熟練のマネジメントでした。

試合を縦軸で解釈した名古屋と横軸で解釈した新潟。この対比はそれぞれが良さを出したというところを踏まえて、この試合を語る上で非常に面白いポイントだったなと思います。

 

 

素晴らしい試合でした。

名古屋のプロフェッショナルとしての取り組みやプランニング…新潟の決勝に限らずずっと前から続いていたストーリー性と、まるでそれをなぞるようなドラマチックな決勝戦。満員の国立競技場は、雨すら誰かが仕組んだ演出の一部なんじゃないかと思うほどに美しい決勝戦でした。

名古屋は前任のフィッカデンティ体制が秀逸な結果を残していた事もあり、これまでの実績を踏まえても長谷川健太は外野からは結果を強く求められていた一方、クラブから求められていた仕事は結果以上に選手やコーチングスタッフの育成・底上げだったと思います。そこの乖離や認識のギャップで批判される事も多かった。名古屋で長谷川監督が求められていたことはガンバやFC東京で求められていたことよりも清水時代に求められていた事の方が近かったように思うんですよね。そんな中で、中谷進之介や長谷川監督が抜擢して育てた藤井陽也までが抜けた今季に三國ケネディエブスを辛抱強く起用してブレイクさせ、自身も選手を育成させる一方で自身が今までやってこなかった戦術的なアプローチを導入するなど、自分も変わる姿勢を見せながら決勝まで、そして優勝まで辿り着かせた手腕はまさしく彼の真骨頂だったんじゃないかなと。そういう意味では、成績は世間のイメージや長谷川監督の過去ほどじゃなくても、クラブとしてのオーダーは満たしてくれたとして続投判断をしたクラブの姿勢も踏まえてプロフェッショナルな戴冠だったように思います。グランパスおめでとう!

 

 

 

【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】

 

2024JリーグYBCルヴァンカップ決勝

名古屋グランパス3(5PK4)3アルビレックス新潟

 

 

2024JリーグYBCルヴァンカップ

優勝:名古屋グランパス(3年ぶり2回目)

準優勝:アルビレックス新潟

ベスト4:横浜F・マリノス川崎フロンターレ

ベスト8:サンフレッチェ広島FC町田ゼルビア北海道コンサドーレ札幌ヴァンフォーレ甲府

 

 

うなぎ食えうなぎ

ではでは(´∀`)