RK-3はきだめスタジオブログ

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深緑に一筋〜ACLE 24/25 決勝戦 アル・アハリ・サウジ vs 川崎フロンターレ マッチレビューと試合考察〜

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さあ!

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューAFCチャンピオンズリーグElite 2024/25 決勝戦アル・アハリ・サウジ vs 川崎フロンターレの一戦です!

 

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ここ数年というスパンであればともかくここ10年のJリーグという意味であれば、最も成功したJリーグクラブは川崎フロンターレでしょう。そこには多くの選手を輩出した実績があり、魅惑のスタイルで彩った興奮があり、そしてJリーグ史上のくくりで語られるべき黄金期という時代があった。それは誰もが認めるべきところでしょうし、あの時代の川崎フロンターレはJクラブが望む"ほぼ"全てのものを一時代で取り切ってしまった。そういうチームでした。

しかしそれが"ほぼ"であったという事………川崎にとって何よりの鬼門だったのがこの大会だった。黄金期を謳歌し、Jリーグ史上最強にすら数えられた時代の川崎でさでアジアの軍門に散り、時として勝ち上がってきた別のJクラブに斬られた事さえあった。何をどうしても届かないアジア制覇……それは輝かしい栄光の時代に置き忘れたほのかな未練だった事と思います。

 

それでも川崎は今年、長きに渡る一時代にピリオドを打って新監督を8年ぶりに迎え、新たなシーズンに挑み、いよいよファイナルまでやってきました。

対戦相手はアル・アハリ・サウジ。このACLエリートという大会は大会のプレミア価値自体はサウジアラビアの尽力により拡大されましたが、一方で「彼らの為の大会」というニュアンスの強い大会になってしまいました。砂漠の砂嵐かのように吹き荒れた彼らのムーブメントに抗うのは魂か、知略か、或いは矜持か。おそらく今日の川崎は誰よりも自分の為に、自分達の為に、そしてそれ以外の多くの人間の想いをのせてピッチに踏み込むことになるでしょう。フロンターレというクラブが積み重ねた歴史のパズルはあと一つの勝利で埋まり、それは彼らの努力の証明と、Jリーグの歴史が編み上げた矜持を示すことにも繋がる。今、日本のサッカー史に残されるような一戦が始まります!

両チームスタメンです。

 

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川崎は準決勝アルナスル戦からは先発5人を変更しましたが、その5人は元々準々決勝のアルサッド戦から入れ替えた5人をそのまま戻した形になるので、メンバーとしてはアルサッド戦と同じ11人という事になりました。山口瑠伊、高井幸大、丸山祐市、三浦颯太、山本悠樹、マルシーニョの6人はサウジアラビアでの3試合に全て先発しています。長谷部茂利監督は福岡の監督として優勝を果たした2023年のルヴァン杯以来、監督キャリア2度目のファイナルです。

レッドブル・ザルツブルクでUCLベスト16進出経験を持つマティアス・ヤイスレ監督率いるアルアハリはスタメン変更は無く、準々決勝のブリーラム戦、準決勝のアルヒラル戦と3試合続けて同じ11名をスタメンに選んできました。このうちエドゥアール・メンディはチェルシーで、リヤド・マフレズはマンチェスター・シティで、ロベルト・フィルミーノはリバプールUEFAチャンピオンズリーグの優勝経験を持っています。

 

 

 

本日の会場はサウジアラビア、ジッダのキング・アブドゥッラー・スポーツ・シティです。

このスタジアムでは2023年のクラブW杯では決勝戦浦和レッズvsマンチェスター・シティの試合などが行われるなどサウジアラビアで開催されるサッカー大会の決勝戦会場として定着しつつあり、サウジアラビア代表のホームスタジアムとしても重宝されていてW杯予選の日本戦も過去3回の予選で連続して開催。WWEやボクシングの興行にも使用されるなど、現在のサウジではリヤドに位置するキング・ファハド国際スタジアムと共に重要なイベント拠点となっています。ちなみにスタジアムの所有者は世界最大の石油会社として有名なサウジアラムコです。なお準決勝のアルナスル戦に引き続き、川崎市内の109シネマズ川崎ではライブビューイングも実施されています。

そしてこのスタジアムを本拠地としているチームはアル・イテハドと、そしてもう一つが他でもないアル・アハリ・サウジです。完全アウェイという意味ではアルナスルと戦った川崎の準決勝マリノスの準々決勝とは比較にならないでしょう。スタンドが湧き上がる快感もあれば、静まり返るスタンドで自分達だけが湧き上がる快感もある。川崎はその瞬間に辿り着けるでしょうか。

 

 

 

 

早々にチャンスを作ったのはアルアハリでした。開始5分にトニーが強烈なシュートを放つと、直後にはマフレズの蹴ったCKのこぼれ球をアルジョハニがシュートに持ち込んでシュートチャンスを迎えますが、いずれもGK山口瑠伊のファインセーブで阻止。

川崎も11分には左サイドでボールを受けたマルシーニョが突破を試みて決定機を迎えますが、シュートは僅かに枠の右へ。川崎は左サイドのマルシーニョに繋ぎ、マルシーニョのところで対峙するDFを剥がして中央に食い込む形で攻撃のリズムを作ろうとしていました。

 

 

 

やはりアルアハリは隙を見せると一瞬で鋭いチャンスまで持ってきて、イバニェスなど守備陣の積極的な攻撃参加も絡めながら実際にトニー辺りが強烈なシュートを放ってくるような場面もありましたが、川崎も全体的には上手く組織された守備で対峙できており、アルアハリが継続的な攻撃を仕掛けるような時間帯にはしないシステムをチームとして組めていました。

32分にはマフレズのロングスルーパスに抜け出したアルジョハニがあわや決定機という場面を迎えますが、ここは準決勝でもスーパープレーを見せた佐々木旭がスーパーカバーで見事に阻止。

 

 

 

しかし35分でした。

左サイドでガレーノがボールを持つとアリオスキがオーバーラップの仕草を見せた事で川崎守備陣の意識がややサイドの大外へ。しかしガレーノはフィルミーノに戻すとリターンを受け、ガレーノがそのまま右脚一閃。これが決まってアルアハリざ先制。

更に直後の42分、三浦颯太が治療でピッチから離れて10人になっていたタイミングで右サイドに流れていったフィルミーノが一時的に左SBに入っていた脇坂を振り切ってクロスを入れると、このボールに攻め上がってきたケシエが合わせてアルアハリが追加点…。

 

 

三浦はプレー続行不可能となり、佐々木を左にスライドさせた上で右SBにファンウェルメスケルケン際を投入。前半アディショナルタイムには脇坂が直接FKを狙うも枠の左へ。

前半はある程度プラン通りに進められていた川崎でしたが、閃光のような鋭さから2得点を奪われてしまい、重いビハインドを持って後半へ。

 

 

川崎は後半からエリソンを下げて山田新を投入。57分には左サイドで佐々木とマルシーニョとのパスワークから脇坂がインスイングのクロスボールを入れますが、良いタイミングで飛び込んだ山田のヘッドはミートしきれず。

その後も川崎は65分に山本と家長を下げて大関友翔と伊藤達哉を投入して反撃に出ると、川崎はミドルサードの高い位置でボールを動かせるような状況にはチームを持っていけるようになり、そこに対して人数をかけた攻撃もできる状況にはなっていきましたが、アルアハリも2点リードゆえにしっかりとブロックを組んだことでそこからなかなかアタッキングサードまで侵入できない時間が続きます。

 

 

 

川崎がボールを握りながら攻撃機会を伺い続ける時間が続く中で76分、78分には立て続けに伊藤がミドルを放つもそれぞれ僅かに枠を捉える事がでにず。84分には河原を下げて山内日向汰を投入すると、88分には大関と山内が関与して山田が抜け出す決定機を迎えますが……割って入ったイバニェスにカバーされてゴールならず。

 

 

 

なんとか川崎も最後の最後までこじ開けるためのルートを模索しますが、固く閉ざされたアルアハリの新緑の壁に刃を刺し切ることはできずに試合終了。

サウジアラビアの地で継続と変革を両手に持って挑んだフロンターレの挑戦は悲願には届かず惜しくも準優勝に終わりました。アル・アハリ・サウジは3年前の2部リーグ降格を乗り超え、クラブ史上初のACL制覇です。

 

 

試合の入りとしては決して悪くなかったと思いますし、先制するまではむしろ川崎は理想に近いゲームの進め方が出来ていたと思います。

守備時には得意の4-4-2ブロックを組みつつ、ボール保持の際には展開力のあるWボランチと脇坂の3人で持ち上がりながら左サイドにポイントを作る。そこでマルシーニョが突破するなり折り返すなりの選択肢を持ちながら真ん中に戻す…といった具合に攻撃のルートとポイントを作ることは出来ていました。ただ、左でマルシーニョがアクションを起こした時に食い付いてくれたのがアルナスルならば、今日のアルアハリはそこでなかなか食い付いてくれませんでしたし、焦れずに対応してきた。マルシーニョもそこから自力でよく行ったなと思いますが、エリソン、脇坂、家長の選択肢が変えてしまうような守備をアルアハリがしてきた事がまず一つのポイントでした。

守備に関しては……正直なところ、どうしようもなかったところはあったのかなと。特に先制点の場面ですね。大外に走ったアリオスキの動きに一瞬DFラインが気を取られてガレーノがフリーになった瞬間はあったとはいえ、守備としての隊列が崩れたほどの隙ではなかったですし、その一瞬であのクオリティのシュートを見せられてしまっては…。2点目に関しても、三浦が負傷退場して10人になったタイミングで、一時的な措置として脇坂が左SBに入っていた瞬間をフィルミーノに狙われ、逆にフィルミーノのポジションにケシエが入ってきた。あれが左SBが脇坂になっていることを踏まえてあの攻撃をしてきたのならば恐ろしい話ですし、そもそも川崎のゾーン守備に対し、フィルミーノがフリーマン的に動きつつ、フィルミーノがサイドに流れればボックスにケシエが入っていくシステムをしっかりと作っていたのは見事な意思疎通ぶりでした。後半の川崎は山田や大関、伊藤の投入で相手守備陣を撹乱する、飛び出したケシエの背後を狙うなど工夫は見られましたが、イバニェスとデミラルがCBを組むアルアハリの4バックはあまりにも崩れなかった。どうしても寄せ集めになりがちなサウジ勢で、あれだけの組織性を構築してきた選手の遂行力と監督の手腕には脱帽する他ない…それが正直な感想です。

 

 

 

基本的に私はACLはなるべく日本勢に頑張ってほしいと思う中で、私はガンバファンゆえ…今回ばかりは川崎かマリノスが優勝するとガンバのACL2が無くなる立場だったので両手を挙げて応援できなかったところはあったんですが、今回のレギュレーションで、あれだけの旋風というより全てを巻き込んで視界を遮った砂嵐のようなサウジ勢と、その舞台になったかのようなACLで川崎が舞う姿は痛快そのものというか、胸をすくような感覚や気持ちよさ、感銘を勝手ながら抱かせてもらいました。

彼らの歴史には、その最盛期にも埋められなかったピースがあった。日本では最強でもアジアでは勝てない……少なくとも彼らはアジアでは勝てないチームでは決してなくなった、シルバーコレクターと呼ばれた時代から始まった彼らの栄華があっただけに、この銀賞が彼らにとってまた新たな始まりになる……新時代の始まりに相応しい勝利と、礎として糧になる敗北を手にした川崎がここから長谷部体制でどんな時代を築くか。そこに他サポながら期待したいと思います。素敵な冒険、本当にお疲れ様でした。

 

 

…そして。

今回のACLは様々な意味で"現実"を突きつけてきたと思います。この大会方式も然り、サウジ勢のタレント性しかり、そして川崎やマリノスがこの大会で受け取る賞金額が桁違いに増大したこともその現実の一部といえば一部なのでしょう。川崎の躍進にカタルシスがあったのは、ある種の理不尽を乗り越えたという要素も大きかったでしょうし、日本勢…というより非サウジ勢はこれからその理不尽と戦い続けなければならない。不条理さ、納得のいかなさはこれから常に抱えながら戦う舞台になっていくことは容易に想像できます。

一方で、アルナスルは戦術的に未整備な印象はありましたが、アルアハリな戦術的にもすごく整備されていて、純粋に「これヨーロッパリーグなら上の方に行くんじゃないか…」と思わされるだけのチームだった訳ですが、そもそも彼ら自身がそういうチーム、そしてそれ以上のチームを目指している。それ即ち、ある意味では……川の水が海に流れるように全ての選手の目標とゴールが一方的に欧州の一部クラブに流れるような時代を変えられるチャンスがあるとしたら今のサウジだけで、そのゲームチェンジの可能性に賭けてJリーグ勢がそれに乗っかる…というのも無い話では無かったりする。若くして欧州に巣立ち活躍した選手をどれだけ早い段階で戻してチート外人のように使えるかとか、少なくともサウジはACLを欧州に対しての訴求力向上に使おうとしている訳で、そのムーブでACLにも視線が注がれている間に「魅力的な転職先」としての訴求力と知名度Jリーグクラブが高められるかどうか…とか。これからの日本勢は、理不尽と夢物語の狭間をもがきながらこのトーナメントで頭を抜け出さなければならない……川崎の健闘とはまた別軸のところで、色んなことを考えさせられる、色んなことを考えなければならないACLになったんじゃないかなと思います。

 

 

 

【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】

 

 

AFCチャンピオンズリーグ Elite 2024/25 サウジアラビアラウンド

《準々決勝》

アル・ヒラル7-0光州FC

アル・アハリ・サウジ3-1ブリーラム・ユナイテッド

横浜F・マリノス1-4アル・ナスル

川崎フロンターレ3EX2アル・サッド

《準決勝》

アル・ヒラル1-3アル・アハリ・サウジ

アル・ナスル2-3川崎フロンターレ

《決勝》

アル・アハリ・サウジ2-0川崎フロンターレ

 

 

優勝:アル・アハリ・サウジ(サウジアラビア)

準優勝:川崎フロンターレ(日本)

ベスト4:アル・ヒラル(サウジアラビア)、アル・ナスル(サウジアラビア)

ベスト8:ブリーラム・ユナイテッド(タイ)、アル・サッド(カタール)、光州FC(韓国)、横浜F・マリノス(日本)

 

 

またサウジ館行きそびれた!

ではでは(´∀`)