
2025年、各大陸王者に開催各枠を加えた7チームで行われたこれまでのクラブW杯とは一線を画す実質的な新大会、FIFAクラブワールドカップ2025がアメリカでその歴史の幕を開けた。
記念すべき第1回大会は来年のW杯決勝も行われるメットライフ・スタジアムにて、チェルシーが最新のチャンピオンズリーグ王者であるパリ・サンジェルマンを3-0で下して優勝。1チームしか受け取ることの出来ない「初代王者」という栄誉を掴み取った。日本からは浦和レッズが唯一出場し、結果こそ3戦全敗に終わったものの、この大会に辿り着いた事自体が名誉であり、得難い体験だったことは言うまでもない。
さて、ところで今回のFIFAワールドカップは前述の通り、これまで同じ名前で開催されていた同大会とは全く別の新しい大会であり、FIFAにとっては革命的な事業と言える。
開催時期は毎年12月から4年に一度の6〜7月開催に変更。出場チームは7チームから32チームに大幅に拡大され、大会開催期間も2週間から1ヶ月へと倍増した。各国の細かい大会の有無やシーズンの移行、コロナ禍に代表される単年の措置はあったが、世界のサッカーカレンダーにここまで大きな変更がもたらされたのは2000年前後に各大陸でカップ・ウィナーズ・カップをチャンピオンズリーグの下位互換大会に置き換えて以来の事だと思う。厳密には拡大されたクラブW杯は2000年に一度開催されているがその時でさえ8チームだった。32チームのクラブが集う大会が誕生した事はサッカーのカレンダーの中で革命的な出来事であると言う他ない。
思えばこの大会はFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長の肝煎りのようなところがあり、彼がFIFA会長に就任してから事ある毎に提唱され、あれは本当にやるのかどうか二転三転した末に今回の開催まで辿り着いた。そんな大会が幕を閉じた今、FIFAクラブワールドカップ2025は果たして成功だったのか、失敗だったのか。第1回大会で感じたポジティブなところ、ネガティブなところを振り返りながら、FIFAの意図と目論見について考えてみたい。
【FIFAクラブワールドカップは恒久的な大会になれるのか?今大会で見えたメリットとデメリットと、今後の改善すべき点を考察する】
③"機会提供"というクラブW杯の確かなメリット
④少なからず生じた集客問題の要因と、それをどう捉えるか
⑤クラブW杯は恒久的な大会になるのかどうか?その為に改善すべきこと
⑥新クラブW杯の狙いはアメリカ型スポーツへのシフト?(※後日Noteにて更新予定)
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③"機会提供"というクラブW杯の確かなメリット
このクラブW杯に於ける最大のメリットは間違いなく"機会の創出"であり、そして"機会の提供"だと言える。
CWCが恒久的な訴求力を示せるかどうか、大会史の中での物語を紡げるかどうかに於いて今日の準決勝は大きな分岐点よ。
— RK-3 (@blueblack_gblue) 2025年7月9日
今日のムバッペに関する因縁やストーリー性は通常のW杯では起こらない現象だから。ここでどんなストーリーを織りなすかがこの大会のプレゼンスを左右すると言っても過言じゃない。
もちろんそれは観客の観戦機会という意味もある。純粋にビッグクラブとの対戦やそれに挑む非欧州クラブの構図というファンがサッカーゲームで遊んでいたような対戦を見せてもらえることは一つ。同時に、チアゴ・シウバを巡るチェルシーvsフルミネンセとキリアン・ムバッペを巡るパリ・サンジェルマンvsレアル・マドリードが実現した準決勝は、"古巣対決"という通常のW杯では存在しない概念を見せてくれる機会となった。古巣対決にも前者のようなレジェンドとの再会というタイプ、後者のような因縁と怨念に満ちたタイプもある。特に前者は通常のUEFAチャンピオンズリーグでも実現しないものも多いだけに、この通常のW杯に存在しない概念をクラブW杯という舞台で見せてくれる事は大きな価値と言えるだろう。
だが観客の観戦機会以上に、選手やクラブへの目標の提供…という意義は、代表チームのW杯には存在しない概念という意味合いでも非常に強く、大きいのではないだろうか。
欧州のビッグクラブは度々アジアやアメリカ地域にプレシーズンツアーに出かけてその土地のクラブと対戦しているが、親善試合と公式戦では意味も価値も大きく異なる事などわざわざ説明する必要もないだろう。そして1990年代までは非欧州クラブ、非南米クラブとそれ以外の大陸が公式戦で戦う機会は存在しなかった。そこで2005年より当時のトヨタカップを拡大した6大陸トーナメントとしてスタートしたのがクラブW杯だった。実際、Jリーグ勢では浦和レッズがACミランとマンチェスター・シティ、ガンバ大阪がマンチェスター・ユナイテッド、鹿島アントラーズがレアル・マドリードと対戦し、柏レイソルとサンフレッチェ広島もサントスFCとリーベル・プレートという南米を代表するクラブとの対戦経験を得る事となる。
だが基本的にこれまでのクラブW杯に出場するチームは「クラブW杯に出たい」のではなく「公式戦の舞台でレアルやバルサと試合をしたい」というところを目標に置いている事を踏まえると、実際にクラブW杯に出たとてその門戸は開いていながら、リアリティーを持った目標として捉えられたクラブはほとんどいなかったんじゃないかと思う。レアルやバルサのようなチーム、即ち欧州王者と戦うならば、まずは大陸大会を制した上で、クラブW杯で最低でも準決勝に進まなければならないという微妙に高いハードルがある。Jリーグ勢は比較的そこのハードルは突破してきた歴史があるのでリアリティーを持てるようになったと言えるが、例えば韓国のクラブはACLを制覇してもクラブW杯準々決勝で敗れる事が多く、欧州王者と対戦できたのは2010年の城南一和のみだったりして、オセアニア王者は結局いつも1試合で企画の途についていた。そんなの「そりゃ準決勝までに負けたことが悪いんだろ」と言えばそれまでではあるのだが、そういう背景があるがゆえにクラブW杯に対して「欧州王者への挑戦権を得られる大会」という認識を持てているのは日本勢、メキシコ勢、あとは中東の金満クラブとエジプトのアル・アハリだけなんじゃないかと感じることがある。旧式のクラブW杯が大会そのものの価値よりも欧州王者との対戦する価値が重視されている事を思えば、クラブW杯は「目指すべき目標」というよりも「大陸大会を制したオマケ」みたいな感覚で捉えている国が多いんじゃないか、という印象を受ける。そうなった国は次第に大陸大会そのものよりも国内リーグを最優先するようになり、他ならぬJリーグもACL制覇から遠ざかっていた時代には「日程が苦しくなるだけのACLを捨てる」という判断をするクラブが少なからず存在していた。
その点、拡大されたクラブW杯であれば、4チーム×8グループのグループステージ制で行われる為、もちろん全てのクラブがわかりやすいビッグクラブと対戦できるかどうかは運次第なのだが──少なくとも欧州クラブとの試合が1試合は保証されている。要は大陸大会で好成績さえ残せばビッグクラブと戦える訳で、多くのクラブにとってクラブW杯に対してリアリティを持った目標と呼べるようになった。
なんやかんや言っても物事の原動力は目標と夢である。これは別に綺麗事を言いたいのではなく、計画とは目標や夢から逆算する形で立てられるからだ。同時に、同じリーグを戦うクラブがそういうビッグクラブと戦う姿を見て抱く嫉妬もあるだろう。
人間は夢に背中を押され、嫉妬に引っ張られて前に進む。クラブW杯を目指す意義に様々なクラブがリアリティーを持つ事で、多くのクラブがクラブW杯から逆算した目標を構築するようになり、各大陸大会に取り組む意識や意欲も変わってくる。新クラブW杯による機会創出は目標を生み、シャンパンタワーの上からシャンパンを垂らすように各クラブや選手の意識や取り組みに波及効果を期待できる。それによって各大陸のチャンピオンズリーグが盛り上がりを見せて、ピラミッドの下段をもっと高くしようという観点での意義は大いにあるだろう。そういう意味では、この大会で最も意義深いゲームと呼ぶべきは予選リーグのバイエルン・ミュンヘンvsオークランド・シティだったと思う。
とはいえ、この機会創出の論に関しては欧州勢にとってメリットが少ないというか、彼らにとって「非欧州勢に付き合わされている」と考えてしまう気持ちは理解できない訳じゃない。それこそ前編で書いた問題を踏まえれば尚更である。それこそ観客への機会提供であれば自分達のツアーで収入を得てプロモーションを張る方が遥かに利益がある訳で。
ただし、現在のサッカー界は強烈なインフレーションの渦の中にいる。それは放映権料も然り、そして選手の給与面も然りだ。バイエルン・ミュンヘンで会長を務めるカール・ハインツ・ルンメニゲは大会期間中、過密日程への不満に対して「彼らの不満は理解できる。しかし、選手たちとエージェントもこの状況の一端を担っている。彼らは常に給与の引き上げを要求し、クラブをさらなる収益追求に駆り立てた。その資金はどこから来るのか。より多くの試合をすることだ」というコメントを残していたが、基本的に"敵役"と見做されがちな経営サイドから発せられたこの言葉は重く受け取れられるべきだろう。サッカー界の主な収入は入場料・スポンサー料・放映権料の3つがあるが、その全てが試合に係るものであると考えた時、給与面のインフレーションが今もまだ頂点ではないというのならば、彼らもこの"機会提供"に付き合う義理は持っているとも考えている。もちろん、一定の折り合いはつけていくべきだとも思うが…(この手の話はNote編で細かく書いていくつもりです)。
④少なからず生じた集客問題の要因と、それをどう捉えるか
結局のところ、大事なのはクラブW杯という大会がどこまで客を呼べたのか…というところに尽きる。
正直なところ、全体的に集客は苦戦したと言うべきだと思う。中継を見ていた多くの人は「思っていたより客が少ない」という印象を受けた人は多いのではないか。ただ、苦戦の定義に関しても様々な角度で考えるべきでもある。
準々決勝以降は空席が目立つという印象はそこまで強くなかったが、グループステージに関しては「スタンドガラガラじゃない?」という印象は確かに目に飛び込んできやすいものだった。
グループステージの欧州ビッグクラブの試合以外でスタンドが埋まっている感覚を感じたのはマイアミやシアトルのようにホームタウンでそのまま試合を行えたクラブか、そもそも収容人数が2万人前後の会場で行われた試合くらいだったと思う。そのビッグクラブにしても3試合全てで完売に近い数字を出したのはレアル・マドリードだけで、パリ・サンジェルマン、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティでさえも空席が目立つ試合は一部にあり、特にチェルシーvsロサンゼルスFCというビッグクラブvs開催国のクラブの試合が7万人規模の会場に2万人しか入らなかった事実はFIFAもさすがに危機感を覚えただろう。2万人前後の会場で行われた試合にしても、来場者が1万人を超えない試合は4試合もあった。
大前提に、こういう大会には"集客を望みにくいカード"というものは最初から存在する。
今大会最少の3412人の客入りとなった蔚山vsマメロディの試合はその典型ではあるのだが、ここに関しては全ての国際大会が共通して抱えている悩みだろう。基本的には開催国の試合とわかりやすい強豪やスーパースターのいるチーム以外は全てそれに該当すると言える。そういうカードでも当たり前のように満員にできるのはせいぜい通常のサッカーW杯くらいなもので仕方ないと言えば仕方ないところではあるのだが、少なくともFIFAがこのクラブW杯を通常のW杯級のプレゼンスを持つ大会に育てる意思を持つ以上、この問題は解決しなければならないのだ。
今回のクラブW杯で動員が伸び悩んだ要因の一つには「アウェイ客を見込みにくい」というものがある。
例えば日本代表が戦う通常のW杯と今回のクラブW杯に出場した浦和を比べるとする。熱量の個人差はあるにしても、基本的に日本人のサッカーファンはどこのクラブを応援していようとも日本代表のファンを兼ねる事になる。つまりそんな日本代表が他国で行われるW杯に行くとすると、アウェイ客として浦和のサポも行くし、ガンバや京都のサポも行くし、鹿島やマリノス、川崎に広島等々……アウェイサポーターとして観戦に訪れる客層の幅が単純に広くなるのだ。一方、今回の浦和をわざわざ現地まで観に行った"浦和以外のクラブのサポ"はゼロとは言わないがほとんどいないと思う。いたとしても浦和サポの家族友人の付き添いか、アメリカ在住の日本人かや偶然にも試合日に旅行や仕事でアメリカに滞在していた人くらいだろう。
要は一般論的に考えて「同じ日本勢としてテレビ観戦では浦和を応援する」けど「わざわざその為にアメリカまで行くガンバサポがいるか?」という話で、日本の全サッカーファンがアウェイ客の対象となり得る通常のW杯に対し、その対象が1クラブに留まるクラブW杯では来場可能性のある人数が少なくなってしまう…という事になる。こと浦和に関してはちょっとレベチな動員力を見せてきた事が世界でも話題になったが、その"大前提"なるものはどのクラブが出ても同じ状況が生じる…という事である。そうなると、やはり重要なのは如何に開催国の中立客…つまり今回であればアメリカ人及びアメリカ在住者に対して「如何にして蔚山vsマメロディのような試合に金を払って観に来させるか」をもっと突き詰めていかねばならない…という事である。
一方で、今大会の集客に関してはアメリカ開催という事を踏まえると「むしろよく頑張った」と捉えてもいい部分はある。
そもそもアメリカはあまりにも国土が広く、その上で物価が高い。それゆえに開催都市間の移動は選手が背負う移動負担に加えて、観客サイドからすれば重い交通費とその都度ホテルを変える滞在費の不安も生じてくる。これはどのW杯でも生じる悩み事ではあるが、アメリカはそれが体力面でも費用面でもワンランク上の問題になってしまうのだ。例えば浦和はシアトル→シアトル→ロサンゼルスという最初の2試合を同会場で行ってから移動という日程だったので比較的恵まれた工程だったが、同じ組のリーベル・プレートのようにシアトルからロサンゼルスに行ってもう一度シアトルに戻るという日程を組まれてしまうと悩み事はより大きくなる。グループステージ3試合、決勝まで観るなら7試合をセットで観に行くハードルは特に高いという側面はあったと思うし、これが来年の通常のW杯ならどのみちチケットは売れるので大きな痛手にはならないが、まだ途上の今大会では結構な要因になっていたような気はする。
なによりアメリカでのサッカー人気は日に日に上がっているとはいえ、まだNFL(アメフト)、NBA(バスケ)、MLB(野球)、NHL(ホッケー)ほどではない。今大会の開催会場は2万人規模のコンパクトなスタジアムと収容人数が6〜8万人の超大型スタジアムの両極端な構成になっており。通常のW杯でも6万人以上の規模の会場の割合は多くても30%くらいだが、今大会では半分以上がその規模の会場だった。しかし前者がMLS(サッカー)のチーム用に造られたタイプのスタジアムだったのに対し、後者のタイプのスタジアムは全て元々サッカーではなくNFL(アメフト)のチームが使用するスタジアムという背景がある。それゆえにMLSのチームの多くは2万人規模のスタジアムを新設するか、NFL用のスタジアムを借りて一部スタンドを閉鎖した状態で使用する事で空席を無くしている運用が多いという現状があるのだ。
具体例を挙げれば、グループステージのボカ・ジュニアーズvsベンフィカの試合で集めた55574人は十分過ぎるほど大入りと呼ぶべき観衆なのだが、試合会場のハードロック・スタジアムが75000人収容という事もあって空席が目立ってしまうという不条理なケースも発生していた。その点も踏まえると多くの試合でアメリカのサッカー市場に見合わない規模の会場を多く用意してしまった点は否めないが、空席感の印象の割には健闘したという考え方もできる。
⑤クラブW杯は恒久的な大会になるのかどうか?その為に改善すべきこと
FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は今大会終了後に「世界のクラブサッカーの黄金時代が始まった」という言葉で大会の成功を表現した。実際、前述したような空席問題はあったとはいえ1ヶ月の会期で1試合平均39557人の観衆を集め、広告収入や放映権料も大きなものを得られた訳で、今大会を成功と表現する事に違和感は無い。
当然ながらインファンティーノ会長は次回以降の大会開催にも意欲的な姿勢を見せており、通常のW杯と共にクラブW杯も2年に一度に変更して、毎年何かしらのW杯がある状態を狙っているのでは?とも囁かれている。2年に一度計画の実現性はともかくクラブW杯拡大はインファンティーノ会長にとって肝入りの施策であり、実際に開催に漕ぎつけた本大会で一定の成功を収めた。継続開催を目指そうとする事は自然だろうし、FIFAとしては通常のW杯のサテライト大会ではなく通常のW杯と同じ規模の大会を目指しているのだろう。
しかしその為には何より、大会のバリューをもっと上げていくような改善はしていかなければならないし、その為には選手やクラブ、或いはファンにとってのプレゼンスを向上させていかなければならない。
まずは何より、クラブや選手がより意欲的に取り組める環境を整える事だ。それは過密日程との兼ね合いの調整や休養の確保もそうだが、前編で書いたように移籍期間との兼ね合いもある。
今大会ではチェルシーに所属していたノニ・マドゥエケが決勝直前にチームを離脱してアーセナルに移籍したようなケースが起こった。言うなればこれはマドゥエケにとってクラブW杯の決勝よりも新チームへの1日も早い合流の方が大事だった、その方が優先順位が上だった…という事になる。これはまだ、欧州クラブやそこに所属する選手にとってクラブW杯のプレゼンスが高くない事を大きく表した出来事だったと言えるだろう。それこそ移籍選手で言えばレアル・マドリードからACミランへの移籍が決まっていたルカ・モドリッチなどはクラブW杯を現チームでのラストゲームと公言して参加していた一方で、マンチェスター・シティからナポリへの移籍が決まっていたケヴィン・デ・ブライネは不参加を5月時点で公表していた。本人が望めば恐らくシティは参加させただろうしナポリも承諾したと思うが、怪我のリスクを踏まえて出場を断念した事は、それこそWBCのメジャーリーガー出場可否問題に通ずる部分がある(WBCの話についてはこちらのブログを参照)。
またレアル・マドリードやインテル・ミラノなどのクラブは24-25シーズン終了と共に監督が退任しており、実質的にクラブW杯が新体制のプレシーズンというような形にもなってしまった(インテルは監督が引き抜かれた格好になったので少し事情は異なるかもしれないが)。これにより、本来大会に参加するチームは「24-25の集大成」のような形であるべきなのだが、一部のチームにとっては「25-26シーズンに向けた準備段階」にならざるを得なかったという事で、その部分でのモチベーションの差異は当然生じていたと思う。
大会のプレゼンスを高める事、選手やクラブになるべくクラブW杯に集中してもらう為には、まずこの部分の手当てから必要だろう。出場クラブにとって大会の位置付けの足並みを揃える為には、まず何よりも今大会ならあくまで24-25シーズンのチームで挑めるような環境を作らなければならない。新シーズンの開幕を後ろ倒しにする事で出場クラブに休養とチーム造りの時間的猶予を与えるだとか、大会期間中の出場クラブは移籍市場の対象外とするルールを加えるだとか。FIFAがこの大会を本気で恒久的なものにしたいのならば、それぐらいの特例も盛り込んでこの大会に集中できる状況をシステムとして保護する必要がある。
また、上段では「空席問題はアメリカのハコがデカすぎる事も一因」とは書いたが、それでも空席のスタジアムというものはやっぱり見栄えが悪い。世の中にはエキストラを雇ってでも行列をつくる店が時としてあるように「この店は空いていない」と示す事そのものが宣伝になったりもする訳で、つまりはその逆は…という事である。
現に他ならぬアメリカのMLSでは、おそらく現在のMLSなら3万人前後の動員力は持っていると思うが、NFLが使用する超大型スタジアムで空席を生んでいたようなクラブが新しくスタジアムを計画する際には大抵2万人規模のスタジアムで建設している。3万人という数字は6万人のスタジアムなら半分も売れ残っている事になるが、2万人のスタジアムなら1万人がチケットが取れないスタジアムとなるのだ。それこそ初期のJリーグにもそういう部分が少なからずあったように「チケットが取れない」という事自体が宣伝になり、その事実そのよのが「いつでも買えるチケット」を「プレミアムチケット」に変え、いわば"チケット争奪戦が起こるような大会"としてプレゼンスを高めていくし、今の時代なら「プレミアムチケットを手にした私」がSNSの拡散素材として十分にプロモーションになり得るだろう。それこそ現在開催中の大阪・関西万博が序盤の客入りはそれほどでも無かったところ、徐々に人気と混雑が伝えられるほどに動員を伸ばしていった様子を想起してもらえるとわかりやすい。その部分はサッカーの本質ではないかもしれないが、スポーツビジネスに於いては本質と呼ぶべき部分である。
前段が長くなったが、要するに会場設定の工夫は次回大会以降でやるべき事だと思う。もちろん通常のW杯のように現行のシステムで全試合が満員になる事がベストではあるが、チケットを取れないような状況を作っていく為にはその工夫は重要なポイントだ。
旧クラブW杯の一部試合やオリンピックサッカーのグループステージで採用されていたような2試合券の導入も一手だと思うが、個人的にはセントラル開催で行われた2022年のACLのシステムに倣う事も面白いと思う。あの大会ではグループ毎に開催都市が固定され、その都市が大型会場と小規模会場の2会場を用意し、グループで最も集客を見込めるホームチームがいた場合はそのチームの全試合を大型会場になるべく固定していた。
仮に日本で開催するとした場合、浦和が出場権を獲得した場合に埼玉スタジアムが自動的に充てられるような調整は今大会もされていたがそれだけではなく、例えばグループBの開催地は横浜で固定しておき、その上で欧州ビッグクラブをポッド1に割り当てて、ポッド1に入ったクラブの3試合はいずれも7万人規模の日産スタジアムで開催、その他の3試合はサイズダウンする1.5万人規模のニッパツ三ツ沢球技場で行う…とか。厳密に一都市でなくても、大規模枠で国立競技場、小規模枠でフクダ電子アリーナみたいに近隣エリアの2会場でもいい(あくまで例えの話なので規格とか設備面とかのツッコミは入れないでね)。
現段階では、どんなカードでも「W杯」という名前の持つブランド価値でチケットが完売する通常のW杯と異なり、例えば蔚山vsマメロディのようなカードでは観客を集めにくいし、実際に4桁の来場者数で留まったゲームが4試合もあった。前述したようにアウェイ客の来場は通常のW杯と比べて不利でもある為、現状のニーズに対する当面はそういう"調整"みたいな部分は入れていくべきだろう。誤魔化していると言えば誤魔化しているのかもしれないが、そういう調整で空席を減らし、チケットを取れない大会というイメージを作っていく事は重要な事である。
いずれにしてもFIFAはこの大会を恒久的なものにしたい意図は強いはずで、少なくともインファンティーノ会長の期間、或いはインファンティーノ会長に近い人物が会長の座にいる限りは、新クラブW杯の拡大に対して本気で取り組む事は確かだろう。彼らにとって、自分達と反目するような立場の会長が就く時にはクラブW杯の存在が当たり前になっているような状態を目指しているはずで、その為にも次回大会、次々回大会でちゃんと右肩上がりの成長や大会毎に前回大会からの改善を提示していく事が重要になる。
クラブW杯に対する賛否は色々あると思う。純粋に機会創出を歓迎する立場の人もいれば、疲労負担の増大を危惧して反対する立場の人もいる。純粋にビジネスとしての成功、懸念の側面でスタンスを決める人もいるだろう。いずれにしても確かな事は、この新クラブW杯の誕生はFIFAにとっても数十年に一度の革命的な出来事だという事である。そもそも通常のW杯にしても、その他の定着しているあらゆる国際大会にしても、回を重ねる毎に大会を見て憧れた子供達が選手として参加する循環を辿りながら歴史と未来に定着していった。一つ一つの課題を解消していきながら、プレゼンスを示す大会として育っていってほしい。
…だからこそ、これは通常のW杯もそうだが、2年に一度の開催は負担以前に大会そのものの希少感を損なう結果にしかならないようには思うのだが…。
【①そもそもクラブW杯は成功?失敗?②選手の負担問題とクラブのジレンマから読む】
【⑥新クラブW杯の狙いはアメリカ型スポーツへのシフト?は後日Noteにて更新予定】
ではでは(´∀`)