
いざ!
どーもこんばんは
さてさて、本日のマッチレビューは2025明治安田J1リーグ第35節、京都サンガFC vs 鹿島アントラーズの一戦です!
【Jリーグをもっと楽しめる(かもしれない)、2025Jリーグ開幕ガイド作りました!是非お使いくださいませ!】
↓
【オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ!】
↓
大一番…それはスポーツを見ていればよく聞く言葉です。
例えば今日は夜にはプロ野球の日本シリーズもある。ファンとしてスポーツに触れる時、その言葉が耳を刺す瞬間は一年に何度か訪れます。
しかしプレーヤーの立場としてはどうでしょうか。自分がプレーヤーとして、この国のリーグチャンピオンを懸け、鹿島アントラーズという全てのJクラブが乗り越えなければならない壁に挑む。その試合は、この国のサッカーファンのすべての興味が注がれる、その試合のピッチでプレーする……そんな瞬間は人生で一度でも訪れる人の方が圧倒的に少ない。誰しもが子供の頃、夢で描いたようなシチュエーションが今日という日のピッチにはあります。このクラブがこれまでに迎えた大一番、それは昇格や残留といった形は違えども、どれもJ1リーグというカテゴリーを掴むためのゲームでした。今日は違う。これから紫の勇者達が挑むのはJ1リーグのチャンピオンを目指す為の闘いです。
語るべきことはもう多くありません。このシチュエーションは紛れもなく、今季の京都サンガというクラブが尽くした努力と献身、熱量に応えて与えられた最高の舞台です。思い出を、魂を、そして夢を……このスタジアムで共有する、そんな一戦になることを願っています。さぁ!クラブ史上最大の一戦へ!!!
両チームスタメンです。


前節湘南戦からはスタメンを3人変更しました。曺貴裁監督はエリアスと福岡慎平の復帰を示唆していましたが前節に引き続き欠場となっており、エリアスが欠場したここ数試合はCFに原大智を置いていましたが、今日は原を左WGにして長沢駿を中央で第30節清水戦以来の先発起用。また、鈴木義宜が出場停止となったCBには第26節東京V戦以来の先発となるアピアタウィア久を抜擢しました。そして福岡が欠場しているアンカーには今日は武田将平ではなく、夏移籍で加入してから初出場となる齊藤未月がこの大一番でサンガデビューです。古巣対戦となる須貝英大と平戸太貴も共にスタメンとなりました。
前節神戸戦では直接対決で0-0で引き分けた鹿島はベンチ入りメンバーの20名は神戸戦と同じメンバーをそのまま登録。その上で神戸戦では三竿健斗と組むボランチに知念慶を起用しましたが今日は船橋佑に戻しており、前々節G大阪戦と同じスタメンになっています。
本日の会場は京都府亀岡市、サンガスタジアム by Kyoceraです。
いざ!!!#京都サンガ#京都サンガFC pic.twitter.com/sT6guLrT9J
— RK-3 (@blueblack_gblue) 2025年10月25日
京都銀行スペシャルデーとして更新されるこの試合では先着1.2万人の観客にタオルマフラーをプレゼント。この企画も毎年恒例ですね…ありがたい話や。ゲストとして人力車の旅人にして太田岳志の大学時代のチームメイトでもあるクリエイターのガンプ鈴木氏が来場。漢検とのコラボ企画やハロウィン施策も行われるなど、様々なイベントが顔を揃えます。
なお、この試合では20353人の来場者数を記録。この数字は2024年第31節G大阪戦の数字を抜いてサンガスタジアム歴代最多かつ、西京極時代を合わせたクラブ史上でも歴代2位となる来場者数となりました!
現地観戦です!スポーツ観戦日記はまた…。
この試合もチケット完売。京都という街にサンガという熱狂を!!
ホームゲームでは3試合連続でコートチェンジした状況で始まった大一番。前半はサンガが主導権を握る展開となりました。
ロングボール主体でとりあえず前線に送りつつ、セカンドボールの争いや中盤でのデュエルをなるべく高い位置で行えるような状況にしながら、平戸とジョアン・ペドロのところで上手くボールを動かせるシステムを構築したサンガは18分、左サイドの原のパスを受けたマルコ・トゥーリオの折り返しに平戸がフィニッシュまで持ち込みますが得点には至らず。
鹿島も直後にはロングカウンター。レオセアラのサイドチェンジを受けて独力で突破したエウベルがシュートに持ち込みますが枠の上へ。とはいえ鹿島のカウンターに対してはアピアタウィアが見事な対応を見せつつ、さらにその裏を宮本優太がしっかりとカバーして上手く対処していました。
21分には原と長沢のパス交換から再びトゥーリオ→平戸の流れで決定機を作ったサンガでしたが、平戸のシュートはGK早川友基の正面に飛んでしまってゴールには至らず。32分にもペドロが角度の少ないところから強烈なシュートを放ちますがこれもGK早川が阻止。そのプレーで得たスローインからトゥーリオが放ったシュート性のボールに長沢が反応するも僅かに合わず、サンガは決めれそうで仕留めきれないもどかしい展開に…と思われましたが、歓喜の瞬間は早いうちに訪れました。
36分、宮本のサイドチェンジを左サイドで長沢が収めると、鈴木優磨のマークもあってペナルティーエリアに背を向けた状態ながら意表を突いたスルーパスを供給。走り込んだトゥーリオが巧みなステップワークでタイミングを翻弄しながら決め切ってサンガ先制!!クラブ史上2番目、サンガスタジアム by KYOCERA史上最多の観衆が詰めかけた熱狂空間が揺れる一打!
🎦 ゴール動画
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) 2025年10月25日
🏆 明治安田J1リーグ 第35節
🆚 京都vs鹿島
🔢 1-0
⌚️ 36分
⚽️ マルコ トゥーリオ(京都)#Jリーグ pic.twitter.com/yXmBGLsTGA
その後の決定機は特段ありませんでしたが、それでも前半はサンガが支配する形に。鹿島の攻撃もサイドからのロングカウンターに頼る形になり、ここに対してもチームとして「時間をかけるタイミング」「潰しに行くタイミング」をしっかり共有しながら対処。気迫とスタイル、智略をしっかり融合させたゲームを見せ、前半をリードで折り返します。
鹿島は後半から船橋を下げて知念を投入。前半の鹿島はサンガがロングボールを蹴った後のセカンドボールの取り扱いに苦慮する形になっていたので、そこに対してのテコ入れを図ります。
前半は培ったハイプレスのベースを活かしてロングボールのセカンドをすぐに回収して平戸やペドロに預ける、鹿島の選手が先にボールを触ってもコントロールできる前に広範囲のスペースをカバーした齊藤を中心に落ち着かせない流れを作れていましたが、人に強く当たれて、かつ弾いたボールを自らキープするところまで可能な知念の投入により、鹿島はサンガの連続性を遮断する事が出来るようになっていきました。
とはいえサンガも締めるところはしっかりと締めつつ、知念の存在で前半のように高い位置での連続性こそ発揮しにくい状況にはなりながらも、相手のクロスボールを跳ね返した後の速さは失っておらず、鹿島の圧力に押されながらも決定的な場面はそこまで与えずに試合を過ごしていきます。
64分には齊藤を下げて中野瑠馬を投入。少々分の悪い体勢からでも対面の相手を剥がして前を向く事が可能で、前線でのコンビネーションにも参加していける中野の投入によりサンガの前線は再び活性化。大枠として鹿島ペースでこそありましたが、鹿島が自陣でボールを持った時に培ったプレスの連続性を見せて鹿島の攻撃もなかなか繋がりにくい状況に追い込んだところから攻撃のポイントを作るような動きが再び出来るようになっていきました。
74分にはアピアタウィア、長沢、平戸を下げて麻田将吾、レオ・ゴメス、佐藤響の投入で須貝を左CBに組み込み中野とトゥーリオをシャドーにした3-4-2-1に変更するとGK太田のロングボールに抜け出した中野のキープからトゥーリオが決定機を迎えますが、コースを切った植田直通のぶろっくで阻止。
しかし鹿島も72分にエウベルとレオセアラを下げて松村優太と田川亨介、81分に三竿とチャヴリッチを下げて荒木遼太郎と徳田誉を送り込んでくると、特に背後へのアクションを起こしつつ前線でのプレス強度を発揮できる松村と田川の存在が再びサンガへの圧となって終盤の展開を迎えます。
86分には小池のパスが左サイドのスペースに出されると、佐藤との交錯を制した松村の折り返しに徳田が反応しますが、ここは宮本のスーパーディフェンスで阻止。アディショナルタイムにも鹿島は右サイドでのパス交換から田川のパスに再び抜け出した松村の折り返しに徳田が反転して狙いますが、またしても宮本がブロック。
大一番、これはクラブ史上最大の大一番………負け続けたクラブの歴史を大きく転換させるその瞬間は目の前まで迫っていました。目安を6分間としたアディショナルタイムが95分を過ぎ、知念のクロスを宮本がクリア。ルーズボールを回収した中野が抜群の推進力で左サイドの佐藤と連動して左サイドを突破するも、折り返しが相手に拾われて再び鹿島ボールに。そこから攻め込んだ鹿島の攻撃も一度はクリアしますが、クリアボールをキムテヒョンが拾ってロングボールを入れると、徳田が競り勝ったボールを田川が拾って松村へ。そして松村のクロスボール、スタジアムの時が止まり、唯一、一人だけ時間が動いていたかのように………。
最後の最後で執念の同点弾!
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) 2025年10月25日
鈴木優磨が鹿島を救う🔥
🎦 ゴール動画
🏆 明治安田J1リーグ 第35節
🆚 京都vs鹿島
🔢 1-1
⌚️ 90+6分
⚽️ 鈴木 優磨(鹿島)#Jリーグ pic.twitter.com/MZK8Pp4h0q
「鹿島らしさ」……その言葉はどこまでも抽象的で言葉にも出来ない代物ながら、腑に落ちてしまう何かがある……それを見せつけてくるような鈴木優磨の一撃。サンガは掌から勝点3が滑り落ち、3戦連続ドローで鹿島との勝点差は5点から変わらず。首位戦線から一歩後退となりました。
「鹿島らしさ」なんて、じゃあ何をもってしてそうなの?というか、言語化できない抽象的な表現だとは思う。
— RK-3 (@blueblack_gblue) 2025年10月25日
だからこそこの大一番で、言葉で表現できない鹿島らしさを突きつけられたような感覚でいる。得点者が他の誰でもなく鈴木優磨だった事も含めて……。 pic.twitter.com/4ytxeAgnTz
ゲームプランとしてはほぼ完璧だったと思いますし、特に前半は理想通りの展開まで持っていけたと思います。
それこそ前半戦で対戦した時の鹿島がそうでしたが…やはり鹿島がサンガ陣内でプレーする時間が長くなればなるほど、彼らは前線に圧倒的なタレントを揃えている訳で、単に押されているだけでなく蹂躙されるような展開になりかねないとも言えるんですね。一方で、鹿島の前線4枚はいずれも前で押し込んでいる状況、その局面でコンビネーションを発揮できる場面でこそ活きる4人でもあって、逆に言えば鹿島がロングカウンターを仕掛けるような展開になるとそこまでクオリティを発揮しにくくなる攻撃ユニットでもある。つまり彼らをクオリティ通りに輝かせるにはサンガ陣内で鹿島がボールを保持している時間を確保しなければならない。それは前々節G大阪戦、前節神戸戦でも露呈した部分ではありました。となると、ロングボールでなるべく早く前に付ける戦い方は元々多いサンガですが、この日に関してはいつも以上に、少々アバウトになってでも、鹿島の攻撃に要する距離を長くするという意味でロングボール主体で戦う理由がサンガにはあったと。
同時にサンガとしては蹴るだけ蹴ったところでセカンドボールを鹿島にキープされては何の意味もない訳で、競り合った後のシステムをしっかりと組む必要がありました。…とは言ってもそこに関しては元々サンガの得意なところではあるんですが、競り合った後のセカンドボールを回収してどこに付けるか、ましてやこの日は福岡慎平と鈴木義宜というチームのバランサー二人がいないだけにどうやってバランスを担保するのか…というところまで考えてシステムを組む必要があったんですね。
そこでサンガはインサイドハーフに平戸とペドロを置いてアンカーに齊藤を置いた訳ですが、この中盤の人選は前半の大きなポイントでした。普段はアンカーの福岡がバランスを取るので平戸やペドロも割と中盤の攻防に参加しているんですが、この日はどちらかと言えばそこには参加せず、むしろデュエルの出口を確保できるようなポジショニングに努めた。これにより、長沢にせよ原にせよ競り合ってすぐのセカンドボールを潰しに行ってボールを落ち着かせない状況を作った上でいつでも平戸かペドロにボールを預けられるシステムが出来ていましたし、どちらもボールを落ち着かせられる才覚があるので、鹿島陣内でのプレー時間を確保しながら競り合いに参加した長沢や原が攻撃に復帰できる時間も確保出来ていました。逆に、ある意味では普段の福岡や武田に近い立ち回りを平戸とペドロに求めた代わりに、アンカーの齊藤はこの2人をなるべく動かさない分のスペースを徹底的に潰しに行って、あらゆるデュエルを常に1対1+齊藤のような状況で戦えるように動いてくれた。要は表面的にはインサイドハーフの平戸とペドロにアンカーを福岡及び武田から齊藤に替えただけなんですが、役割としては平戸とペドロをWボランチにしてフリーマン的に齊藤を使うような形になっていて、これが抜群に機能しました。そこは平戸とペドロのスキルの高さと、何と言っても久々の試合がここまでの大一番という状況であれだけのプレーを見せた齊藤の殊勲だったなと。
バランサーの福岡がいない分、むしろ平戸とJPをWボランチ気味にして齊藤未月にはフリーマン的に中盤守備の加勢をやってもらうのは理には適ってる。
— RK-3 (@blueblack_gblue) 2025年10月25日
同時に、鹿島の攻撃はロングカウンターというかロングレンジは攻撃になる分、彼らもサンガの背後への長いボールを多用してくるようになる。特に鹿島は右サイドがシャドー的なチャヴリッチで左サイドがWG的なエウベルの組み合わせだったので、鹿島の左サイドに長いボールを入れて鈴木優磨との絡みも含めて突破していくような攻撃に傾倒していきましたが、裏抜けのアクションに対してアピアタウィアが悉く立ちはだかってくれた。鈴木義宜の出場停止という背景があったのでこういう言い方をするのは結果論的ではありますが、この試合は鈴木義宜や宮本と比べてもアスリート能力の高い彼ゆえに、背後へのボールを追って捕まえる作業を繰り返すこの試合は"彼に向いた試合"という部分もあったと思いますし、苦しい時期が続いた彼にこの舞台が与えられたという意味でも感動的なプレーでした。
その上でアピアタウィアも攻撃の起点になり得るプレーを見せ、同時にアピアタウィアが対応に走った時の宮本のカバーも素晴らしかった。試合後の鹿島の選手やスタッフのコメント、或いはSNSでの鹿島サポーターの投稿に多く見られたのは「前半は京都に付き合ってしまった」というフレーズでしたが、それは決して偶発的なものではなく、サンガがちゃんと鹿島が付き合うしかないような状況を自分達で作り、かつその戦い方によって生じるリスクに対してもケアが出来ていた。エースのエリアスに加えて、鈴木と福岡というバランサーが欠けた中では最適解以上のものを見せてくれていたと思います。
で、後半に入ると…前述の通り、鹿島の知念投入は大きなポイントでした。
おそらく鹿島としては、サンガのハイプレスをいなしながらゲームを作ることを目的として船橋をチョイスしたんだと思うんですよね。実際に保持時のゲームメイクは知念より長けていますが、鹿島にとっては保持のフェーズまで持っていかなかったのが前半だった。その押し込まれた展開で保持の状況まで持っていくことに関しては、競り合った後、相手選手とぶつかった後のボールをキープするところまで持っていける知念の方が有効でしょう。セカンドボールを知念が収めることができたおかげで鹿島はサンガの連続性を一度遮断する事が出来ましたし、その状況にさえもっていけばクオリティを発揮できる選手は多くいる…そこで巻き返してきたのが後半だったなと。
サンガもおそらくある程度時間限定起用のところがあった齊藤を下げて中野を投入してから、彼の持ち味でもある対面の相手を剥がして前への推進力を出す動きをポイントとして使えたことでカウンターの場面を作りやすくする、カウンターで攻め込んだ後に鹿島のビルドアップに対して良いプレスをかける事ができる流れを復活させた交代策は見事でしたし、鹿島の圧が強くなる中でも完全に押し込まれるような状態にはならないところでプレーできた。3バックに変更して1トップ2シャドーの関係を作った辺りも中野とトゥーリオというボールを動かせる選手の存在もあって上手く機能しましたし、理想的な前半から鹿島が巻き返してきた後半にも、基本的に良い対応はフルタイムでやれていたと思います。ただサンガがオープンな展開に引き摺り込んでいった中で、鹿島もそれに対応できる松村や田川の投入で殴り合う姿勢を見せてきたんですね。サンガも個のところではしっかりとファイトしてその後のカウンターに繋げるボールキープも出来ていまし、3バックに変更しても同じく土壇場で追いつかれたいくつかのゲームとは違って重心を低くしすぎない状態は保てていましたが、鹿島がパワープレー的な組み立てから保持のフェーズを作ろうとする攻撃の前に少しずつ歪みが生じ始めた。戦いの中で合理的な戦略を見つけていく、ある種の肉弾戦とは異なる意味でのストリートファイト的な考え方は、経験あるチームと個人の集団が為せる技でもあったのかな…と。最終的にはその繰り返しが同点弾に繋がってしまった訳で…。
「鹿島っぽい」「鹿島らしい」……それらの言葉はJリーグファンなら一度は耳にした事があるでしょう。その言葉は感覚としてはなんとなくわかる。把握もしている。しかしながら、それを言語化しようとすると何が正解なのかわからない。「勝負強い」「したたか」「勝ち方を知っている」…言語化した先にある言葉もどことなく抽象的で、Jリーグ界隈でカジュアルに使う言葉の割には「"鹿島らしさ"とはなんぞや?」は、鹿島のファンでさえも実は具体的な言語化はできなかったりする。それらしい用語の割に、それなりの納得感はあるけれど、すごく抽象的…それが「鹿島らしさ」というフレーズに抱いていた感情でした。
しかしながら、サンガのゲームだったはずなのに、鹿島に修正されたところを三度盛り返したはずなのに、いつの間にか圧力を感じている状況、そして最後に"象徴"たる選手が仕留めてみせた決定的な得点……ラストワンプレーで突きつけたその現実は、そのスコアラーが鈴木優磨だった事も含めて、言語化できない「鹿島らしさ」を突きつけて来たような気分でした。それはこの試合が終わって放心状態になっていた中で、唯一頭の中で考えられていた事だったというか…。
「鹿島らしさ」なんて、じゃあ何をもってしてそうなの?というか、言語化できない抽象的な表現だとは思う。
— RK-3 (@blueblack_gblue) 2025年10月25日
だからこそこの大一番で、言葉で表現できない鹿島らしさを突きつけられたような感覚でいる。得点者が他の誰でもなく鈴木優磨だった事も含めて……。 pic.twitter.com/4ytxeAgnTz
望む結果を得る為の割り切り方…そこはサンガが逃げ切る事、鹿島が追いつく事に於いて大きな差があったと思います。
この試合、結果的に中野の安易なプレー選択が同点弾に繋がった…という部分は、本人が試合後に泣き崩れていたという話もあるように、この試合の決定的なポイントだったと言わざるを得ないシーンではあったと思います。実際問題、あのシーンはもう少しキープできていれば試合終了でしたし、近くに佐藤もいたので中野が1人で複数選手を相手にしなければならない場面でもなかった。CKでも取れればゲームセットでしたから、そもそも1点リードをあそこまで維持できた事は中野の貢献が大きかったとはいえ、1-1になったシーンのきっかけが中野であった事は確かではありました。
ただ、このシーンの少し前…サンガは右サイドでCKを得た時にボールキープを試みましたが、最初は山田と福田、そこに原も加勢しようとしたにも関わらず、あまりにもあっさりと鹿島にボールを奪われてキープは失敗してしまった。その光景を見た直後でしたから、中野があの瞬間に「ここで時間稼ぎを試みたとしてキープできるのか?」という不安が過り、むしろキープより誰かに繋ぐ事方がセーフティかもしれないと考えた可能性は理解できたりもする。基本的にサンガは自分達のスタイルに対しては迷いはない。しかし、ただでさえ先制して逃げ切るよりも追いかけて後半勝負で逆転するような試合が多かった今季の流れも影響してか、これほどのビッグマッチで、これほどのプレッシャーの中で1点リードを守らなければならない状態の中で、目標やプランは共有できても正解は共有できていなかったというか、そもそも持てていなかったようには見えました。「いや、正解も何もボールキープすれば良かったじゃん」と言えばそう。しかしながら、ここで言う正解のは「大一番で極限状態かつコンマ1秒で判断を下さなければならない状態で迷いなく正解を出せるか?」というところでもある。よく言う"経験"とはそういう部分を補うものなのかなと。
他のどこでもない鹿島だった、他の誰でもない鈴木優磨だった。曺監督が試合後に語った「伝統の力、見えないところで押し込まれたところもある」というコメントは抽象的ではありながらも、もうそう表現するしかない…「強い」とか「上手い」とかよりも「凄み」を見せられたような気分でした。
勝利は目の前だった。確かに勝ち筋の上を走っていたし、何よりも誇るべきパフォーマンスだった。本当にこのチームは強くなった、優勝争いに値するチームだと感じさせてくれた。そうして辿り着いたこの大一番の相手が相手が鹿島アントラーズというこの国で最も結果を勝ち取ったクラブである事、鈴木優磨という今の鹿島のシンボルが点を取った事……それらを全てひっくるめて、このドローは悲劇としてあまりにも出来すぎていました。
間違いなくクラブ史上最大の大一番だったこのゲーム。ある意味で鹿島アントラーズという壁は、このクラブが一回り大きくなる為にぶち当たらなければならないものだったのかもしれない。結局のところ、最後は鹿島を倒さないといけない、鹿島を超えていかないといけない…少なくとも彼らにはそういう存在と認識されるほどの結果を残して歴史を積み上げたクラブな訳で。そう考えれば、この試合や今シーズンのサンガは試合後の曺監督の言葉に集約されているようにも思います。
必要な経験だったんじゃないかと思う。タイトなプレッシャーの中での試合は、クラブとして経験がない。これは必ず次つながる。言葉では経験不足ということになるが、経験不足は経験しないと不足分は補えない。今日の試合によって自分たちがステップアップできるように、残り3試合やらなきゃいけない。
「経験不足は経験しないと補えない」……それはクラブ、選手、そして昇格争いと残留争いで結果を残してきた曺監督にさえも当てはまること。同時に裏返せば、今年のチームはこれまでに足りなかった経験を得られるようなシーズンを過ごしている。そしてそれは他でもなく、サンガというチーム、その個人の努力と成長により、それぞれが自分達の力でその機会を掴んだ。この経験を得られる人間がこの世界にどれだけいるのか…これはクラブにとって必ず財産にしなければならないですし、残り試合で、或いは翌シーズン以降の終盤戦で、この経験を活かすシチュエーションまで何度も辿り着けるチームにならないといけない。他ならぬ鹿島はそれを繰り返して今がある訳ですから。そういう舞台の入口は、この試合のアディショナルタイムに開いた扉でもあるんだと思います。
次の2試合次第ではこの試合をクラブ史上2番目の大一番にできる可能性は残っています。今日が2025年というクラブ史の中での一つの思い出になるのか、黄金時代の草創期として語られる価値を残す悲劇になるのか。悲劇も、その悲劇に至るまでも、どれもこのクラブがこれまでの歴史の中で知らなかった世界。これまで昇格や残留など形は違えども「J1リーグにいる事」を目標にしていたチームが、初めて「J1リーグを獲る事」を目標に走った中で突きつけられた痛み。日本サッカーの歴史を振り返ると必ず辿り着く"悲劇"があるように、ドラマを辿れば出来すぎた悲劇がどこかにある。優勝争いをしたから、優勝争いのプレッシャーを背負ったからこそ得られた悔しさが血肉となるような勝利と日々を。日本サッカーがあの悲劇を教訓にのし上がったように…。
【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】
2025明治安田J1リーグ第35節
1位 鹿島アントラーズ(67)
2位 柏レイソル(66)
3位 京都サンガFC(62)
4位 ヴィッセル神戸(62)
5位 サンフレッチェ広島(59)
6位 FC町田ゼルビア(57)
7位 川崎フロンターレ(56)
8位 浦和レッズ(53)
9位 ガンバ大阪(53)
10位 セレッソ大阪(49)
11位 FC東京(45)
12位 アビスパ福岡(44)
13位 清水エスパルス(44)
14位 東京ヴェルディ(42)
15位 ファジアーノ岡山(41)
16位 名古屋グランパス(40)
17位 横浜F・マリノス(37)
18位 横浜FC(32)
19位 湘南ベルマーレ(26)
20位 アルビレックス新潟(23)
勝点差5で迎えた3位京都と首位鹿島の直接対決は京都がマルコ・トゥーリオのゴールで前半に先制したものの、ラストワンプレーでの鈴木優磨の得点により土壇場で同点に。京都と鹿島は10月の3試合を全てドロー、新潟に2点リードを追いつかれた神戸は2分1敗とこの3チームが10月で一勝もできなかった一方、今節は横浜FCに勝利した柏は10月全勝で首位鹿島との勝点差を1点にまで詰めています。なお町田は引き分けた事で優勝の可能性が消滅。ラスト3試合で優勝の可能性を残すのは1位鹿島〜5位広島までとなりました。
残留争いは土曜日の試合で17位横浜FMが勝利した事で、日曜日の試合開催となった新潟は試合前日の時点で降格が決定。新潟同様に日曜日に試合が行われた湘南は引き分けでも降格が決まる状況で敵地で福岡と対戦しましたが、アディショナルタイムのPKによる失点で敗北し降格が決定。新潟は2023年、湘南は2018年からのJ1生活に別れを告げる事となりました。同時に14位東京Vまでのクラブが残留を決めており、来季のカテゴリーが確定していないのは15位岡山〜18位横浜FCの4チームに。横浜FCは次節に降格が決まる可能性が生じています。
この試合の後の日本シリーズの記憶ねえもんな…。
ではでは(´∀`)