RK-3はきだめスタジオブログ

気ままに白熱、気ままな憂鬱。執筆等のご依頼はTwitter(@blueblack_gblue)のDM、もしくは[gamba_kyoto@yahoo.co.jp]のメールアドレスまでご連絡お願いします。

理想へと向かって〜2025明治安田J1リーグ第38節(最終節) 京都サンガFC vs ヴィッセル神戸 マッチレビュー&試合考察〜

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20251209222907j:image

 

ブレイクスルーを走り抜け

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューは2025明治安田J1リーグ最終節(第38節)、京都サンガFC vs ヴィッセル神戸の一戦です!

 

2025年のJリーグを振り返る記事をまとめたページを開設しました。随時更新していくので是非!

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ!

 

 

 

開幕戦で岡山に負けた時、今日という立ち位置を想像できたでしょうか?

広島に0-5で負けた時、今日という立ち位置を想像できたでしょうか?

熊本とのPOでどうにか生き残った時、今日という立ち位置を想像できたでしょうか?

千葉で昇格を決めたあの日、今日という立ち位置を想像できたでしょうか?

J2という泥濘に肩まで身体を沈めていたあの頃、今日という立ち位置を想像できたでしょうか?

 

2002年の5位…それはこのクラブにとってアンタッチャブルレコードとさえ思われた記録でした。サンガはJ2に埋もれた日々の中で、そしてJ1では残留という最も最低限ながら壮絶な目標を取るべく邁進し続けた日々の中で、その日は思い出としまい込むようにJ1に残ることだけを考えてきた。しかしJ1という狂気の空間で足掻く時間はチームを大きくし、曺貴裁という稀代の名将が育て上げたこのチームは、あの2002年さえ見れなかった優勝争いという世界に初めてその身を投じ、こうして今、初めて2002年のあの記録に挑もうとしています。

もうJ1に戻れないんじゃないか。その呪縛は2021年に解いた。

上がってもすぐに落ちてしまうんじゃないか。その不安も気が付けば4年目で、5年目を迎えようとしている。

優勝争いなんて想像もできなかった。それが今こうして、この場所にいる…。

ブレイクスルー、そう掲げたシーズンの完結が、この場所決まります。

両チームスタメンです。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20251209214207j:image
f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20251209214202j:image

 

サンガは1-0で勝利した前節横浜FC戦からの先発変更は1人のみ。中盤を平戸太貴から松田天馬に変更し、基本的に今季はWGでの出場だった松田がスタートからインサイドハーフで起用されるのは今季初となります。前節から復帰した米本拓司も引き続きベンチに入っています。

リーグ戦では5戦未勝利かつ4戦連続ドローという難しい状況が続いている神戸は0-0で引き分けた前節FC東京戦からはサンガ同様にメンバーを1人のみ変更。武藤嘉紀をベンチスタートとした上でWGに広瀬陸斗をスタメンに戻し、エリキもベンチメンバーに名を連ねています。退任が決定している吉田孝行監督にとってはリーグ戦の最終戦となりました(試合の2日後に清水エスパルスの監督に就任する事が発表)。

 

 

 

本日の会場は京都府亀岡市サンガスタジアム by Kyoceraです。

 

 

JALのスポンサーデーとしてそれにちなんだイベントも複数行われる最終節。シーズンも最終戦ですので、SANGA LIFE LABの京都駅出張販売、SANGA COREのサンクスセールなどが実施される他、試合前には「京都新聞 2025 京都サンガF.C. 特別号」が限定販売されます。

第35節鹿島戦、第36節横浜FM戦に次いでチケット完売です。昨季前半までは観客動員の伸び悩みに苦しんでちたサンガでしたが、今季はチームの好調にも比例するように多くの観客がサンガスタジアムに詰めかけました。アウェイチームに頼らない動員を達成する事は今季は叶った。これからは日常から満員が続くような日々を作り出していく…その一歩目は間違いなく今年のチームは築けたと思います。さあ、2025年最後の祭りを!

 

 

 

 

開始3分、いきなりエリアスが放ったオープニングシュートをGK前川黛也が攻守で弾くファインプレーから試合は始まります。

試合としてはサンガが押し気味に試合を進めていきました。肉弾戦的な展開も多くなる神戸との試合ゆえに局面でのデュエルを勝ち切ったところからのショートカウンターを撤退。20分にもボール奪取からボールを受けたエリアスが単独で持ち込んで強烈なミドルを放つも、シュートはまたしてもGK前川が阻止。

 

 

 

神戸も20分過ぎになると少し大迫勇也にボールが収まるようになり、26分には大迫がボールをキープしたところか、右に展開。井手口陽介がシュートに持ち込むも今度はGK太田岳志がしっかりキャッチします。

それでも基本的にサンガペースのゲームであることには違いありませんでしたが、35分には福岡のロングボールが誘った混戦をエリアスが拾ってスルーパス。抜け出したマルコ・トゥーリオが決定機を迎えますが、またしてもGK前川に阻まれてゴールならず。エリアスには直後にも角度のないところから狙いますが、今日は前川が再三に渡ってサンガの攻撃を弾き続けるなどサンガにとってもどかしい展開に。

 

 

 

しかし38分、エリアスのシュートに対する前川の顔面セーブで得たCKをエリアスがフリック気味に逸らしたボールはファーサイドへ。そのボールに反応したトゥーリオがグラウンダーの鋭いシュートを仕留めて遂に前川撃破!トゥーリオの神戸戦4戦4発となる一撃でようやくサンガ先制!

 

 

収支押し込む形でプレーし続けたサンガ。タレントも揃い、どこか解き放たれるような躍動はサンガのリードを伴って後半へ。

 

 

後半のファーストチャンスは神戸でした。クロスボールに対し一度はエリア内での混乱が発生すると、こぼれ球に反応した永戸勝也の鋭いシュートは今季の象徴でもあるGK太田がファインセーブ!サンガもリズムを取り戻し、54分には原大智がエリア内で粘ってシュートコースをこじ開けますが、またしてもGK前川の無双っぷりは止まらず。

 

 

 

神戸は57分に宮代、広瀬、井手口を下げてエリキ、武藤嘉紀、鍬先祐弥を3人同時に投入。70分には酒井高徳のロングボールから右サイドの深い位置でボールを持った佐々木大樹が繋いで鍬先が折り返し、エリキが詰めて決定機。しかし鈴木義宜とGK太田が素晴らしい対応を見せてどうにか攻撃を阻止します。このプレーの後で神戸は酒井を下げて飯野七聖を投入。

すると77分でした。GK太田のゴールキックを原が競り合いエリアスがトゥーリオへ。トゥーリオからのリターンを受けたエリアスが相手DFをかわしてかわしてかわしてシュート!黄金のシーズン、そのファイナルを飾るにこれほど相応しい終わりはない!!!!

 

 

サンガは終盤に佐藤響、奥川雅也、米本拓司、山田楓喜とタレント性のある控えメンバーを続々投入。これまでのサンガに存在しなかった厚みを見せ、チームとしてうまく試合を進めながら試合終了!

神戸との直接対決を勝利したサンガは2002年の5位を上回る3位というクラブ史上最高順位でフィニッシュ!優勝こそ逃したものの…誇るべき、誇らしい成績を叩き出してシーズンを終えました!なおサンガは来季の百年構想リーグで優勝した場合、もしくは鹿島・柏・町田のいずれかが百年構想リーグを優勝かつ神戸・広島・町田がACLEを優勝しなかった場合がACLEに、町田が百年構想リーグを制した場合はACL2出場権を獲得する事になります。

 

 

 

試合後の会見で曺監督が「何より今日の試合は内容が良かったと思います」と誇りましたが、実際にサンガのスタイルであったり、曺監督下でベースとなるサッカーは、劣勢と時間が長かった前節横浜FC戦と比較してもよく出ていたと思います。

基本的にサンガがやりたい事は曺監督就任時から一貫してハイライン・ハイプレスでしたし、攻守の切り替えというよりもシームレスなサッカーを目指していました。とはいえ2022年と2023年はそれ一辺倒な部分があった事からハマる試合とそうでない試合があり、2024年前半は後者が主だった事からチームとしての微調整を加えていった結果が2024年の前半であり、そして2025年だった。つまり今季のサンガの躍進は「相性の良い相手には勝てる。相性の悪い相手にはどうにもならない」だったのが「相性の良い相手には勝てる。相性の悪い相手にもそれなりにやれる」に昇華したところだったんですね。それこそ前節横浜FC戦は後者のパターンで結果に繋げた良い例でした。

それに対して神戸は、サンガにとっては元々相性の悪い相手ではないんですよね。リスクもありますが、ある程度プレスの応酬でやりあえるタイプの相手でもある。だからサンガとしては本来のベースであるハイラインからのショートカウンターという展開を繰り出しやすかった。前半なんかは特にそうで、中盤やサイドラインでのデュエルを制したところからショートカウンターを何度も繰り出して行き、それが頓挫すればまたトランジションのところで潰しに行く。連続性はこのチームの生命線ですので、そこと攻撃へのリンクを上手くやれた事、加えて福岡が縦や横に対してスペースを創出できるようなポジショニングを取りつつ、トゥーリオとエリアスがある程度のところまで独力で前進してくれた事で、サンガの得意なシステムみたいなものを早い段階から試合に定着させられた事はこの試合の鍵でした。

 

 

 

後半に関しては神戸がわかりやすく大迫勇也にボールを当てつつ、佐々木や途中から送り込まれた武藤、エリキといった選手がシャドー的に抜けてくる事を捕まえきれずに難しい展開になりましたが、そこでもなんとか固めるべきところを固めて耐え凌いでいましたし、今季はビハインド時もリード時も早めに交代カードを切っていく事が多かった一方、この日は最初の交代が福田を下げて佐藤を入れた79分とかなり遅かった。その辺りはサンガとしては、神戸ペースではありながらもチャンスを作れていない訳ではなかったですし、特に今季は「後半に強いサンガ」と目される一方で守りに入った最終盤に追いつかれる展開もそれなりありましたので、なるべくサンガとしてのペースは変えないように務めていたのもポイントでした。

特にこの部分は重要なところで…思い返せば第3節。開幕から1分1敗でアウェイの神戸戦を迎えたサンガは1点リードのラストワンプレーで追いつかれてしまった。あの時はサンガが未勝利だったという焦りもあったのかもしれませんが、そういうシーズンスタートがあった中で同じ相手と戦い、同じ選手が先制点を取って、今度は押されず、引きすぎずに耐えながらも攻め手を伺い、そして2点目を取り切って勝った事は、このチームの年間の成長を象徴するような結果になったんじゃないかなと思います。

 

 

 

総括連載みたいなものはまた年末年始に追々書いていくとして、今シーズンの簡単なまとめをば。

これは去年の総括ブログでも書いたことなのですが、個人的には曺貴裁京都というチームのサイクルは2024年をもって一周したと思っていました。なので降格すれば1年半J2なので2025年は曺さんで行ってもらいたいけど、サイクルは一回りしたからハーフシーズンを使って新体制を発足させるのもありなんじゃないか、と。一方で、もし曺貴裁京都のサイクルが"2周目"を走れるのなら、それを見てみたい気持ちも素直にある…と。

そんな中で迎えた2025年シーズン。開幕戦こそ不安しかないゲームとなりましたが、続く浦和戦からは内容面ではポジティブなゲームを見せてくれた。曺貴裁体制で培ったベースを基に、今年は微調整ややれる事を増やす幅の拡張がテーマのシーズンでしたが、そこにいたサンガは見たいと思ってた"2周目の曺貴裁"でしたし、それはおそらく曺監督にとっても自分の歴史の中で知らないフェーズだったんじゃないかと思います。優勝争いに負けた事が不安ではなく実力なのであれば、優勝争いを戦えた事も偶然ではなく実力。少なくともサンガは優勝する権利は掴めなかったけど、その争いに手をかける権利は持っていた。それに値するチームだったという事。それはサンガの歴史の中で体感してきたように、多くのチームが望めば叶うものではない境地なんです。

 

岡山との開幕戦の後、広島に0-5で負けた時、熊本との入れ替え戦でなんとか生き残った時、千葉で昇格を決めた時、曺監督の就任が発表されたあの時、J1がサンガにとって"帰る場所"とは思えなくすらなっていたあの頃、今日という立ち位置を想像できたでしょうか?

2002年の5位…それはこのクラブにとってアンタッチャブルレコードとさえ思われた記録でした。J2に埋もれた日々の中で、そしてJ1では残留という最も最低限ながら過酷な目標を掴むべく邁進した日々の中で、2002年は思い出としまい込むかのようにJ1に残ることだけを考えてきた。しかしJ1という狂気の空間で足掻く時間はチームを大きくし、いつしかJ1の4年目という初めての領域に到達した曺貴裁率いるチームはあの2002年さえ見れなかった優勝争いという世界に初めてその身を投じた。そして最後に、伝統を受け継ぐものが満身創痍で押し込んだあの一発で鹿島アントラーズという壁に阻まれた……それぇも曺さんが「経験不足は経験しないと補えない」と語ったように、誰にとっても初めての旅路を走った日々の先で鹿島アントラーズという壁に触れた事、でも越えられなかった、その2つはどちらもこのクラブの財産にしていける事が今年のサンガが掴み取った権利ですし、好き嫌いは人それぞれにあったとしても、その価値は誰がどんな言葉を使っても決して揺るがないものです。

今季のみならず、そもそもここまでJ1に残り続けていること自体がクラブにとって見たことのない景色でした。そして見たことのない景色は、見たことのある景色を重ねる度に増えていく。その繰り返しでクラブは大きくなるものだと思っています。

試合後のDAZNに映るあるサポーターが掲げたプラカードに書かれていた「2025 楽しかった」という言葉、とにかく今はその気持ちでいっぱいです。

 

 

 

選手、スタッフ、関係者の皆様、1年間お疲れ様でした。3位ですので、ここは川﨑颯太が開幕前のデジっちで叫んだ予言めいた一言で締めましょう。1、2、サンガー!!!

 

 

2戦連続横浜

ではでは(´∀`)