RK-3はきだめスタジオブログ

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なぜWBCはサッカーW杯になれないのか、そしてそうなる為にどうしていくべきか。【第3回 WBCがW杯のようになるには②】

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【目次】

なぜWBCはW杯になれないのか…歴史的背景と構造的な要因

確実に高まりつつあるWBCの価値

WBCがW杯のようになるには

 

 

 

MLBをどう動かす?/大会日程の不平等性をどう考える?/1次ラウンド組み合わせの人為的な決定から読む

 

・開催日程をどうする?

3月という大会開催時期も常に議論の対象となってきた。

基本的に野球のシーズンは通年制であり、秋春制の野球リーグはあまり聞いた記憶がない。欧州も基本的にはその形だ。日本にしてもアメリカにしても、多くの国のリーグが基本的に3月下旬〜4月上旬に開幕し、シリーズ戦を含めて大体10月後半〜11月初旬を目処に閉幕する。つまり3月開催のWBCはシーズン開幕前の時期に行われる事になる。このスケジュールは、例えば大体週1〜2試合くらいのペースで9〜10ヶ月のシーズンを過ごすサッカーのような競技に対し、野球は週6試合ペースの日程を半年くらいに凝縮したスケジュール感覚を持っており、1年をかけて一定のペースで試合を消化するのがサッカーなら、毎日に近いペースで半年程の日程にギュッとまとめる分オフが長めに設定されているのが野球という感覚だろうか。つまり元々一定感覚でスケジュールが組まれているサッカーはある程度中断させるタイミングが取りやすいが、野球はスケジュールが凝縮される形になっているので、オールスターのように1週間程度ならともかく、WBCのように1ヶ月近い中断期間となると「どこで中断させるのか?」という問題が生じてくる。それゆえにWBCの開催時期は開幕前か閉幕後に設定する必要が出てきて、実際にWBCは開幕前の開催が通例である(プレミア12は閉幕後)。

ただそうなると、WBC出場選手はシーズンに向けた身体づくりやコンディション調整を1ヶ月前倒しで行う必要が出てきて、それに伴いシーズンに入った後に極度のスランプや負傷に見舞われるリスクが実際に生じているという側面があり、選手がWBC辞退を選択する背景には開幕前のコンディション調整の難しさも要因として挙げられる。一方、閉幕後にWBCを設定すると、各国のポストシーズン終了から大会までの期間に1ヶ月近いバラつきが生じて混乱を招く可能性も出てくるので、現状は開幕前か閉幕後の二者択一で前者を選んでいるのが実情と言えるだろう。

それゆえに「シーズン途中の6〜7月頃の開催であれば各選手がシーズン仕様のコンディションが整ったタイミングで出場できる」という意見は以前から出ていたが、その為には各国のリーグ戦を中断する必要が出てきて、自国のリーグ戦を最優先としたいMLBとしては承服できない条件だったと言える。ただ、今回は特にアメリカ側からも「開催時期を変えてくれれば…」という意見が出るようになった。ここに関しては前回に書いた話と同様の話になるが、アメリカの中でWBCの価値が向上し、以前のように「シーズンを中断してまでやるほどではない大会」から「シーズンを中断してでも取り組むべき大会」へとスタンスが変化しつつある表れと言えるだろう。最終的にはMLB側がこの風潮の変化を汲んでくれるかどうかなのだが、直近なら2029年や2031年のようにサッカーW杯も夏季オリンピックも無い年の6〜8月を目処に大会を設定できるようになれば、将来的に「夏のビッグスポーツイベント」としての位置に入っていける可能性はあるかもしれない。

そういう意味では2028年のロサンゼルス五輪はMLBも協力する意思を示しているので、ここで良い感覚を掴めればWBCのシーズン中の開催の後押しにもなるとは思う(逆も然りと言えばそうなんだけど)。

 

 

 

・開催国をどうする?

 

WBCの開催地には色々な考え方があると思う。

現在のWBC開催地は3〜4ヶ国に跨る形で開催されている。原則として開催希望国を募り、そのプロセスに基づいて開催国を決定しているが、実質的にアメリカと日本及びアメリカでの決勝戦を含む大会終盤はアメリカ開催というところはほぼ固定されており、残りの1〜2会場が大会毎に異なるという形態で行われている。

 

 

 

日本人としては常に日本開催がある事はありがたい。だが、将来的にはそれこそ各種W杯やオリンピックのように大会毎にどこかの国で、それも分散開催ではなく1ヶ国に絞って開催出来たら…と思う気持ちはある。

とはいえ、特に日本やアメリカのような国のWBCの味方はどうしても「自国代表が優勝できるかどうか」に集約されがちで、そういう国が毎回WBCの開催国になると、若干大会そのものに慣れてしまう現象が少なからずあるようには思う。尤も今大会に関しては台湾からの観客が多く訪れて東京ドームを満員にし、台湾はちょっと別枠としても、1次ラウンド最終戦の韓国vsオーストラリア戦も3万人を越える観衆が詰めかけるなどそれ以外の試合でも一定以上の導入を記録したところは参入に賛否のあるNetflixの功罪における功の部分はあるだろう。アメリカもWBCの価値向上に伴い、若干WBCに慣れつつあった日本やアメリカの野球ファンもどこか新鮮な気持ちでWBCに向き合えている事が今大会の収穫ではあったし、それ自体はポテンシャルとして捉えられるべき事なのだが、上述しているような現象はWBCどうこうというよりも一般論として存在しているものだとも思っている。逆に言えば、日本やアメリカ以外の一つの国でWBCを開催する日が来たとすれば、それこそが大会の一つの到達点を表すんじゃないか…という将来的な期待、願望がある。

例えば今大会で大躍進を見せたイタリアだったり、成長著しいイギリスやチェコだったり、或いはWBC予選の開催経験があるドイツであったり……いつか欧州のどこか1ヶ国でWBCを開催してみて欲しい。個人的には、サッカーW杯にしても元々サッカー強豪国として知られる国で開催するW杯もよりも、開催国がそこまでサッカー強国ではない国で行われたW杯の方が"W杯として"盛り上がると思っている。日韓・南アフリカ・ロシア・カタールでのW杯には、フランス・ドイツ・ブラジルでのW杯には無かったものがあった。他国の選手があれだけ「オオタニ、オオタニ」と言ってくれていたように、侍ジャパンが欧州で試合を行うとすればそれは、欧州の野球ファンにとって「滅多に見れない大谷のいる日本の試合」みたいな感覚になるだろうし、アメリカならジャッジ、ドミニカならソト、ベネズエラならアクーニャが俺が国に一堂に会する……それこそ日韓W杯をリアルタイムで経験した日本のサッカーファンなら、その感覚に置き換えるとどれだけの興奮か理解できるのではないだろうか。

WBCと日韓W杯やラグビーW杯の日本開催を比べて思い返してもらえればわかりやすいが、強豪国の自国開催はどうしても「自国が優勝できるか否か」にフォーカスされてしまうが、そうでない国はそれ以外のフォーカスポイントを作る事ができる。それが既にそのスポーツが行くところまで行った国以外で大会を開催するメリットだ。サッカーW杯はそのブランド力が強大すぎるがぬえに比較しようがない部分があるが、記憶に新しい2019年のラグビーW杯が、世間のラグビー人気が必ずしも昂っていた訳ではないにも関わらず日本に関係のない試合でもあれだけ観客を集めたのは「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」のキャッチコピーに代表されるように、2019年ラグビーW杯という大会の稀有性を強調出来たところが大きい。

 

とはいえ現実的には……現実的な問題として、今WBCをイタリアやチェコで単独開催しても、興行として大会が成立するかどうかは正直難しいところがある。そもそも野球界の課題は、それこそW杯や五輪を開催できる市場規模を持つ国に野球が拡がりきっていないところが挙げられている訳で、WBCが「アメリカ主導の日本頼み」と捉えられる事もあるのはそれが所以だ。個人的には大谷、ジャッジという現役最強ではなく野球史に名を遺すような選手がバリバリやっているこの時期にそれが出来たら…と思っていたが、現実的にそれはまだ厳しい。まだ当分は現行方式がベターという他ないだろう(アメリカか日本で集中開催という選択肢はあるかもしれないが)。

とはいえ、もちろん野球の世界的な人気がもう少し醸成される事が大前提ではあるのだが、そうなった暁にWBC自体を持ち回り制にしてしまえばその稀有性は訴求力になってくると期待している。繰り返すが次回大会からそれを実現する事は現在の規模感では現実的ではないだろうが、今大会でWBCは一定のポテンシャルを示したとは言えるし、実際にMLBはロンドン興行を成功させた実績もあるがゆえに全く芽のない話でもないと思う。MLB主催の大会なのにわざわざアメリカ以外でやる理由あんのか?という見方もできるが、そもそもWBCの目的の一つに"MLBのプロモーション"があるならばこそ、元々東京やソウル、ロンドンなどで一部試合を開催しているMLBからすれば"ちょっと長めの○○シリーズ"みたいな感覚で意外と抵抗はないかもしれない。そういうWBCが実現した時に、WBCは国際大会として一つの完成を見ると思う。

 

 

 

……もしくは逆に、完全に会場を固定してしまうことも一つかもしれない。
基本的にアメリカ開催分の会場は各大会で違う会場が使用されているが、日本会場は福岡ドームでの開催となった2013年大会の1次ラウンドを除いて全て東京ドーム開催で固定されており、2013年も2次ラウンドは東京ドーム開催だった為、東京ドームは過去6回のWBC全てで開催地となった唯一の会場として知られている。2023年大会の際、初めて当時WBCに挑んだチェコ代表のハジム監督は大会前の会見で「2006年の大会を見たが、死ぬまでに東京ドームでチェコの試合ができればと思っていた。夢のようだ。」と語っていたが、例えば仮にその時の会場が京セラドーム大阪だったとしたら、それは「2006年に夢見た東京ドーム」では無いのだ。そう考えると、ハジム監督の感慨はずっと東京ドーム開催で固定していたたからこそ与えられた感慨だとも言える。

つまるところ、固定するならいっそアメリカ開催の決勝戦会場も固定してしまう事は一つのブランディングにはなるんじゃないか、とも思う。高校野球の阪神甲子園球場や、或いはテニスのウィンブルドンのようにどこか一つWBCの聖地を作り、そのスタジアムを目指す事を大会のテーマにする……と。それこそWBCの決勝は2大会連続でマイアミのローンデポ・パークで行われたが、もし次回大会もローンデポ・パークを会場とすれば「マイアミを目指す」「母国の代表選手としてマイアミで戦う」というストーリーや夢を作りやすい。今大会の韓国代表が「マイアミに行くぞ!」をチームスローガンとして繰り返していたように、そういう設定は目標としてわかりやすかったりもするのだ。別に必ずしもマイアミじゃなくてもいいが、マイアミでもロサンゼルスでもニューヨークでも、どこか一つの場所を目指すという大会設定にする事はグローバル化の波の中で弊害にもなってきたアメリカを頂点に確立されたシステムを逆に活かす方法の一つかもしれない。往年の「アメリカに行きたいかー!」じゃないけれども。

 

 

 

…という訳で、現実的な問題も諸々を考えて次回大会の方式を自分が決められるとしたら、多分こうする。

 

・開催国はアメリカ2会場と日本2会場or日本1会場+韓国or台湾で1会場の4会場

・アメリカブロックかアジアブロックかだけ人為的に決定し、その中で抽選で組み合わせを決定

・大会時期はどうにか7月にやれるように頑張る

 

 

 

とにもかくにも、2017年大会をきっかけにWBCは違うフェーズに突入し、前回と今回の大会はその事を象徴する大会になった。特に今大会で、日本戦以外も大入りを記録した事実はそれを如実に物語るものだろう。きっかけとなった2017年がアメリカの優勝だったことを思うと結局はどうやってもMLB時代というところは否めないが、なんやかんやで大会自体が成長している事、そして欧州勢も意欲的になりつつあり、着実に発展しつつある事は示してくれたのが第1回大会から20周年を迎えた2026年大会だった。

次回大会が2029年なのか2030年なのかは定かではないが、ロサンゼルス五輪を挟んで次回大会は行われる。WBCという大会のポテンシャルは今回はかなり濃く発揮できただけに、次の大会に対してどうアプローチしていくのか。その時に野球のグローバル的な展開はどう拡がっているのか。MLBがどこまでWBCを世界最大の大会として育てていく意欲を示してくれるのか。その辺りは非常に重要になってくる。

それでもファンの記憶の中にWBCの思い出の一つ一つが積み重なり、紆余曲折ありながらも20年大会を続けたことで、これから出てくる野球選手はいずれもWBCを見て育ったかつての少年達なのだ。野球ファンの一人としてこの大会には切に成長して欲しいと願っている。

第1回から読む

 

 

ではでは(´∀`)