RK-3はきだめスタジオブログ

気ままに白熱、気ままな憂鬱。執筆等のご依頼はTwitter(@blueblack_gblue)のDM、もしくは[gamba_kyoto@yahoo.co.jp]のメールアドレスまでご連絡お願いします。

全兎追え。〜2026年北中米W杯を終えての雑感と日本代表の云々〜

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20260723080635j:image

 

北中米W杯観戦ガイド作りました!W杯情報に予想や試合の考察、日本代表や過去のW杯を振り返るコンテンツなど多数の読み物を揃えております。是非お使いくださいませ!

 

Jリーグをもっと楽しめる(かもしれない)、2026/27明治安田Jリーグ開幕ガイド作りました!是非お使いくださいませ!

 

2026年W杯の当サイト的テーマソングを勝手に作りました。

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ!

 

 

 

 

日本代表の監督交代の歴史を振り返ると、その都度に"無いもの"をピンポイントで追いかけていたように思う。

 

 

 

トルシエの戦術が「選手の個性を消している」と言えば、個性の発揮を重視したジーコを据えた。
ジーコがあまりに自由すぎたと判断すれば、稀代の戦術家と叫ばれたオシムを招聘した。

病に倒れたオシムの跡を継いだ岡田武史の下で迎えた南アフリカW杯は日本サッカーの窮地を救うほどの成功だったが、守備一辺倒の戦い方に危機感を覚えて攻撃サッカーで鳴らしたザッケローニを招聘した。他に名前が挙がった候補はペケルマン、ペジェグリーニ、ビエルサ。ペケルマンはどちらかと言えばタレントに合わせた戦術を選択するタイプだが、ザックを含めた他の3人はその志向が顕著だった。

そこまで"攻撃的"にこだわり、かつW杯までの道のりでは十分にその目的を具現化させたザックがW杯本戦で躓けば、今度は「W杯経験のある監督ないとダメだ」とアギーレを呼んできた。想定外の事情でアギーレの解任を余儀なくされた後にハリルホジッチを招聘したのも、基本的にはザック退任時の後任監督人事の方針が引き継がれた格好と言えるだろう。

 

 

しかし無いものを追いかけ続けた日々の結果、日本代表で決勝トーナメント進出を果たしたのは、自国開催だったトルシエを除けば上で挙げたような事情ではない理由で選んだ日本人監督のみだった。
個性を求めてジーコを呼べばトルシエの時の規律を失い、攻撃性を求めてザックを呼べば岡田武史の時の粘り強さを失い、規律と経験を求めてハリルを呼べばザックの時の攻撃力を失っていた。

誤解のないように付け加えるが、それはまだ当時の、世界のサッカーに於ける後発勢力としての日本サッカーが持つ体力、地盤の弱さを考えた時に、最もベターな選択だった事も間違いない。何より、国外の知見が明らかに足りない時代に歴代の監督が自分の哲学を日本サッカーに遺していってくれた事は確かで、例えばハリルが遺したものは今の日本代表にも大いに活きている。彼らを招聘した判断、そして彼らの果たした仕事が今の日本代表の土台に息づいている事は、誰の"好き"と"嫌い"を盾にしてもゆるぎない事実であり、財産だ。だがいずれにしても、日本サッカーはずっと、今足りない一兎を今持ち合わせている一兎を放してまで追いかけていた事になる。

 

 


スペインとアルゼンチンが激突した決勝戦、日本代表監督の森保一はNHKとDAZNの生中継に部分的に出演し、日本代表活動への支援と声援に関する感謝、そして決勝戦や大会の考察についてのコメントを述べた。

そこで語った言葉は……残念ながら「スペインを目指すべき」という見出しに乗ってどこか一人歩きしてしまった印象を受ける。だが実際にDAZNでのコメントを聞くと、それは今大会で個人的に特に今大会に顕著に表れていたように感じている"W杯のそもそも論"のような話だったように思う。森保監督は「その国の固有のプレーモデルを持つ重要性」の話の中で解説の内田篤人氏に「育成も含めたスペインのサッカーをどう評価しているか」と問われた時にこう答えていた。

日本が目指すべきところとしては、スペインのサッカーの技術力を発揮していく部分は日本に合っているところかなと思います。

ただ、ポゼッションの巧さだけをフォーカスするのがスペインのサッカーかと言うと全然違って。スペインが失点1できている要因は、今日も攻め続けている時のリスク管理で、後半にアルゼンチンがワンチャンス狙いのカウンターを仕掛けてきた時にカウンタープレスでほぼほぼ止めているんですよ。そういう守備のところもちゃんとやれて、切り替えのところもハードワークして、しっかりと相手の攻撃の芽を摘むとかっていう基本的な局面局面での地味なことをやった上でのあの技術力だという事を日本も目指していくべきかなと思いますね。

 


今大会、ベスト8まではサプライズやダークホースと呼ぶべきチームがいくつか出現した。だが同時に話題となったのは、史上初めてベスト4の顔触れがFIFAランキングそのまま上位4チームだったというところである。

スペインで言えば伝統的に受け継がれるポゼッションサッカーが前提にあり、アルゼンチンで言えば絶対的な神から逆算してチームづくりを進めたように、各国が"肝"をどこに据えるのかはチームによって異なる特性だろう。だが4強に入ったチームは主題がそれぞれ異なるだけで、個も戦術も戦略も、パワーもスピードもテクニックも、そして守備も攻撃も全部を異次元のレベルで備えていた。これまで「あれが足りない」「これが必要」と散々言ってきたが、その答えはある意味ではどこまでも本末転倒なものである。「結局、全部必要」なのだ。
W杯の歴史を紐解けば、黄金世代と優秀な監督の力が噛み合って奇跡のベスト4を果たしたような国がいくつかある。しかし同時に、その躍進を思い出に衰退していった国が歴史の中で少なくない。同時にそのような国の殆どが決勝までも辿り着けていない。21世紀のW杯は今回で7回目だが、その14チームのうち初めての決勝進出を果たしたチームは2010年のスペインと2018年のクロアチアの2チームしかいない。目標が「一度でいいからベスト4を獲る」なら即効性のあるやり方がもしかしたらあるのかとしれない。だが時間がかけてでも将来的に優勝を望むのならば、日本は地道にでも常に最低基準を更新していくような日々を続けていかなければならない。

「トーナメントで勝てないから、W杯の結果トーナメントで勝ったことのある監督を」では、これまでの前任の否定から始まるチームづくりと変わらない。「戦術的なトレンドに沿った監督を」では、4年もあればトレンドなんていくらでも変わる。そもそもスペインのポゼッションスタイルはデラフエンテ監督が仕込んだ訳ではない。リオネル・メッシという神はスカローニ監督が育てた逸材ではない。だがデラフエンテもスカローニも、誰よりもその文脈を理解し、時代に左右されない普遍的な土台を継承しながら、時代に沿った新しいものを取り入れている。その時々の不足点をインスタントに補ったり、その時々のトレンドを追いかけても意味はない。ジャンプで一瞬だけ高いところに顔を出せても、土台の上に乗って高いところを見続ける者には敵わないのだ。スペインだって1950年のブラジルW杯で4位に入ってから、タレントは揃ってるしレアルもバルサも強いのに、2010年南アフリカW杯で優勝するまでベスト4にすら入れずに"永遠の優勝候補"だと揶揄された時代が続いていた。だがその混迷の中でも、彼らは時代に振り回されずに、継承するべき土台をしっかり継承して、常に最低基準を高めていく努力を続けてきたから今がある。
その意味で、吉田麻也がブラジル戦後に語った言葉は実に示唆的だった。

 

「チームは生き物なので、アップダウンは絶対にある。ただ、この8年間はアップダウンの『ダウン』が本当に少ない。森保さんがきちんと基準を設定して、規律をしっかりと作り上げてきたことで、選手たちがやるべきことを理解しているのが大きいんだと思います。その作り上げた基準は、仮に監督が代わったとしても継続しなければいけないし、仮に外国人監督が来てもその文化は維持していかなければいけない。その上で、それ以外の部分をプラスアルファ成長させていかなければいけない。今までだと監督が代わって、ザックさん(アルベルト・ザッケローニ)の時、ハリルさん(ヴァイッド・ハリルホジッチ)の時、ジーコさんの時など、それぞれやり方が変わっていましたけど、自分たちのこのやるべき形の基礎の部分はすごく力強く根づいてきているので、そこから上物をしっかり建てていくところに入るのかなと思います」

「日本のいいところを継承していき、ヨーロッパで得た経験をそこに付け加えていく。その作業の繰り返しだと思うんですよね。だから近道はないし、多くの選手がこういう緊張感のある現場で毎日プレーして、毎週試合をしていく。その上で日本代表の試合に関与していく。これをずっと積み重ねていくしかないですね」

あと一歩、しかしブラジルとの差は歴然……涙の吉田麻也が見つめた激闘と日本代表の未来

 

W杯で優勝する為に必要なものは何か?そう聞かれた時の言葉は抽象的で本末転倒だが、結局は「全部」なのだ。

トーナメントに強いだとか、先述のトレンドに精通しているとか、そういう要素を一人の監督をスペシャリストとして呼ぶことは一兎を追う事に過ぎない。個人も、プレーモデルも、戦略も、マネジメントも、メディカルから雑務までを含めたスタッフ力も、環境を整える為のノウハウも、そして未来のW杯に繋がる為の育成システムも、二兎どころか全ての兎を追いかけるように過ごしていかないとW杯優勝には辿り着けないのだ。少なくとも今回、日本代表が監督以下現場のスタッフ陣とJFAで連動して行ったのはそういうマネジメントだったと思うし、結果では遠く及ばなかったが、そういう意味では確かに"いつか"の優勝を目指すチームだったと思う。

2018年、西野朗から森保一への監督交代は、日本代表の歴史の中で初めて"継承"と"継続"を目的とした監督交代で、だからこそ西野朗は森保一をロシアに向かうチームに入閣させた。アジアカップを最後に退任するのか、はたまた2030年まで指揮を執っているのかはわからないが、後任候補の名前を見る限りはその路線は維持するものだと予想できる。黄金世代と名将が噛み合ってセンセーショナル躍進を遂げたかと思えばパッとしない日々に戻る国が少なくない中、21世紀の7大会で5度も決勝トーナメントまで進んだ日本代表のアベレージは後発勢力としては明らかに稀有な事例だ。それは常に日本代表が最低基準を引き上げ続けていくマネジメント、育成をしているからこそだろう。時間がかかってでも、今抱えている兎を放さないように、一兎ではなく全ての兎を追わなければならない。「全ての兎を捕まえたチームだけが優勝する」…今回のスペインの優勝はその事を示すもので、その事が今大会が示したものならば、スペインの優勝はFIFAランキングの順位以上に極めて妥当な結果だったと言える。だから森保監督は「スペインを目指すべき」と言ったんだと思う。「結局、全部出来ないと優勝できない」という意味で。それはある意味、前回大会でポゼッションを突き詰め過ぎたチームを突き破った張本人だからこその感想だったのかもしれない。

「世界との距離は遠い」とはよく言うけど、日本かつてその文言で指した"世界"の中には飛び込んでいる。でもその世界の中でも高い壁があり、後はその高みに向かう為の土台を丁寧に積み上げなくてはならない。それは前述した吉田の言葉を借りると、まさしく「近道はない」という事なのだろう。

 

 

 

とにもかくにも皆様、関係者の皆様は言わずもがなとして、我々サッカーファン、いち視聴者としてもハードな1ヶ月でした。言ったら中0日だもんな。テレビ見るの。自分も含めて1ヶ月と少し、お疲れ様でございました。

 

今大会はすごく複雑な大会でした。

3ヶ国も初めて。こんなに時差があるのも初めて。聞いたことないルールもいっぱい出てきたし、バログンも試合に出たし、サッカーとビジネスがややこしく絡み合う……アメリカらしいと言えばそうだねど、W杯としてはとにかく複雑なW杯だった。だからこそ「結局全部強いチームが勝つ」という一番シンプルな結果がラストシーンに据えられたのは、W杯の本質から離れかねないとされたW杯でサッカーの本質らしい結末だったような気がします。
今回は今大会の総括の雑感みたいな感じで書きましたが、森保ジャパン8年間の考察みたいなものは追々書こうと思いますので(さすがにJリーグ開幕までには書きたいけど…)、NoteなりXなりブログなりをフォローしてもらえたらと。

改めましてW杯お疲れ様でした。また4年後、日常の先に待っている非日常で会いましょう。

vsオランダの試合考察

vsチュニジアの試合考察

vsスウェーデンの試合考察

vsブラジルの試合考察

 

次のW杯ってなんて呼んだらいいの…?

ではでは(´∀`)