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びっくり降格枠チームのJ1昇格メソッド〜広島、柏、FC東京、G大阪と磐田、C大阪は何が違ったのか〜

クリスマス(棒読み)

 

どーもこんばんは

 

最近は妬む気持ちも無くなってきましたね

 

さてさて、今回のテーマはJ2リーグの戦い方にまつわるものです。

 

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世界で稀なほどに順位が読めないと言われているJリーグでは「まさかJ2に落ちると思っていなかった」チームの降格というものが他国リーグに比べて頻繁に起こりがちです。

そしてそのようなチーム達はJ2での戦いの末、1年でJ1復帰を果たすのみならずJ2降格がかえってチーム力強化の一助になったチームもあれば、1年での復帰さえも逃したチームがあったりして、結構明暗がくっきり分かれるところでもあります。

まずここで、J1が18チームになった2005年以降で「びっくり枠」と言われたチームをおさらいしましょう。( )の数字はその後、J1復帰を達成した年で、赤く着色しているのは1年でのJ1復帰を果たしたチームです。

 

2005年 東京ヴェルディ(2007)

2006年 セレッソ大阪(2009)

2007年 サンフレッチェ広島(2008)

2009年 柏レイソル(2010)

2010年 FC東京(2011)

2012年 ヴィッセル神戸(2013)、ガンバ大阪(2013)

2013年 ジュビロ磐田(2015)

2014年 セレッソ大阪(2016)

2015年 清水エスパルス(2016)

2016年 名古屋グランパス(2017)

 

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このうち、広島はJ1復帰1年目からACL出場圏を獲得するなどJ1で躍進し、柏は史上初のJ1復帰即優勝を達成。G大阪に至ってはJ1復帰即三冠というトンデモ成績を達成し、FC東京はJ2在籍中の2011年の天皇杯を制しています。また、1年での復帰は果たしていないもののC大阪もJ1復帰1年目では2回ともACL出場圏を掴んだ事から「J2に一旦落ちる事でチームをレベルアップさせられる」という風潮すら生まれました。

 

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ただそれでも、J2のレベルが著しく向上した近年では広島、柏、FC東京G大阪、神戸がぶっちぎりで1年でのJ2優勝とJ1復帰(神戸はJ1復帰のみ)を成し遂げた一方、清水と名古屋は1年での復帰こそ果たしたものの清水は最終節にギリギリでの逆転昇格、名古屋はプレーオフと苦しみ、磐田やC大阪のJ1復帰は一度阻まれた事がありました。

口で言うほど簡単には達成出来ない「1年でのJ1復帰」。果たしてJ1復帰を余裕で決められるチームと苦しむチーム、J2残留を喫するチームの差、そしてその後J1で躍進出来るチームになる為のポイントは何なのか、という事を個人的な考えで考えていきたいと思います。

 

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鍵を握るのが「戦力編成」というポイントです。J2に降格すれば「主力の流出」という言葉が囁かれるようになり、当然のようにその話題で持ちきりになって、今の柏がそうであるように連日メディアでは「草刈り場の危機!?」なんて記事が上がりますよね。

ただ実際のところ、そもそもびっくり枠と言われるようなチームは一定の資金力がある事から主力に対しては複数契約を結んでいるケースが多く、引き抜くとなれば必然的に移籍金が発生する為、J1に居てもどの道起こりうる海外移籍を除けば実際に草刈り場になる事はそんなに多くありません。近年で主力が大量流出したのはJ2降格よりもクラブのゴタゴタの方が前面に出た名古屋くらいでしょうか。

 

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例えばG大阪が降格した時だとしたら「ガンバがJ2落ちたから遠藤獲るチャンスやん!」なんて画策したところで、じゃあ遠藤の移籍金と年俸を保証できるクラブがJ1にどれだけあるのか?という話なワケで。

当時の今の時代背景もある為、2005年の東京Vと2006年のC大阪はこれから出す例と同一には語れませんが、まず「意外と大量流出は避けられる」というのが一つのポイントです。

次に鍵を握るのが「戦力補強」という点なのですが、実はここが「びっくり枠」でJ2に降格したチームが間違えやすいポイントになります。

 

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J2というのは非常に難しいリーグで、昇格なんて出来そうもない戦力のチームが上位に躍進してくる事もチラホラあるなど、2007年の東京Vのフッキのような異次元クラスの選手でも擁していない限り、個人能力のみでは勝てないリーグになります。それに加えて、対J1チームの勝ち方と対J2チームの勝ち方は異なるものなので、まずそこに慣れる必要がある訳です。

即ち、勝つ為にはチームとして習熟度や組織としての完成度が非常に重要になってきて、これは戦力を保持していれば手放しでも解決するような問題ではありません。J2降格時にG大阪長谷川健太、清水が小林伸二といった、所謂「手堅い」と言われる監督を招聘したのはその点を理解していたからと言えるでしょう。

 

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そもそも何故「びっくり枠」と呼ばれるかを考えると、その答えは「J1でも結構な戦力を有していたから」という事が真っ先に言えます。

それで草刈り場にもなっていない事を考えると、その時点で目立った補強をしなくてもJ2の中では群を抜いた戦力を持っている事になるのです。即ち、昨年の戦力をベースに補強は補充程度に留めて、シーズンの夏場くらいから若手が台頭してくる事に期待するのがJ1復帰に向けて合理的かつ、J2でのシーズンを世代交代やチーム強化の意味でも有効に使う事が出来る方法として最適と言えます。

個人的には、この部分を見誤って積極補強を敢行した事が磐田とC大阪が1年でのJ1復帰に失敗した要因の一つだと思っていて、磐田に至っては戦力値は2013年よりも上なんじゃないか?と思うほどでした。ですがレギュラークラスの戦力を多く迎え入れるという事は、J2での勝ち方に慣れる前にチーム本体をまず慣れさせなければならず、限られたシーズンの中で大きな手間が増えてしまう事になります。

 

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結果的にプレーオフの末に1年で昇格こそしましたが名古屋にも同じ事が言えて、「大改革」とも言える戦力編成になった名古屋も自動昇格圏は逃してしまいました。

逆に、J2をチーム強化に有意義に使う事が出来たとされる広島、柏、FC東京G大阪はそんなに大胆な補強はしておらず、序盤戦のスタメンはそこまで昨シーズンと大きな変化があった訳ではありません。要はこのようなチームの場合、大型補強はかえって逆効果にもなりかねないのです。

 

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また、「J2なら勝てるやろからシーズン頭から若手使いまくっていくで!」というチームも定期的に現れますがこれも間違いで、むしろシーズン序盤こそベテランなど経験のある選手を登用するべきと言えます。

昨シーズンのベースがある事も重なって、その方がチームは上手く回り、そして順を追って少しずつ若手と入れ替えて行くのがベストで、いきなり若手を大量投入すれば、前述のようにJ2での勝ち方の前にチーム内での順応に苦しみ、その間に出遅れる事になりかねません。

これは2013年のG大阪が実に良い例なのですが、前半戦は2012年とそんなに変わらないメンバーで戦い、そしてシーズンが終わる頃には「あれ?何か気付いたら世代交代出来てる…」みたいな感じになっていて、結果的に2013年シーズンが進むに連れて出場機会を増やした選手達が2014年、2015年の好成績の軸ともなりました。

 

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広島や柏に関しても、前年度の後半から選手を若手に入れ替えつつあった事、その流れで広島はミハイロ・ペトロヴィッチ、柏はネルシーニョを続投させた為、広島も柏も序盤戦から若手の成長と成績を両立させる事が出来ました。「J2に降格した」というだけで監督交代を断行するクラブが少なくなったのは間違いなくこの2チームの影響が大きく、そもそも崖っぷちのタイミングで指揮を執り始めたネルシーニョは別にしても、降格した2007年を通年で指揮したにも関わらずペトロヴィッチを続投させた当時の広島フロントの判断は英断だったと言えるでしょう。そしてそこで築いたスタイルが後の躍進に導いたのは周知の通りです。

びっくり枠とは言えども、降格候補には挙げられてはいた程の戦力だった清水は苦戦はしたものの分類としては此方の成功例に当てはまると考えられ、この年辺りから多くの出場機会を得た北川航也や白崎凌兵、松原后といった面々が今のチームの柱となっている事がその例と言えるでしょう。

 

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逆に磐田とC大阪、そして名古屋は入れ替えすぎた戦力を馴染ませる事にまず時間を要し、そうなれば終盤戦になればなるほど昇格が危うくなって「若手なんて使ってられるか!」みたいな状況に陥るハメになります。

それはそれで現実的な好判断だったと思いますが、名古屋なんてプレーオフでは風間サッカーとは対極の戦術シモビッチとかやってましたしね。

 

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例外は2013年の神戸と2014年に昇格に失敗した2015年の磐田です。今述べた広島、柏、FC東京G大阪「現状路線を継続しながら少しずつ変化を加え、結果を残した上でJ1でも好成績を残せるチームを作る」というやり方でしたが、神戸と磐田は「守備を安定させて強力な外国人を前線に置く」という1番シンプルなJ1昇格メソッドを用いました。これには「成長とか改革とか世代交代とか言ってられない。まずはJ1に上がらなければ何も始まらない」という考えから開き直ったところがあると思います。

これはこれで正しい考え方、正しいプランだと思いますし、2014年の磐田と2015年のC大阪、そして2017年の名古屋が陥った失敗の要因はJ2を甘く見て、全てを同時進行に進められる、誰でも柏やガンバの例を再現出来ると考えてしまって、現状認識も出来なければ冷静な判断も開き直る事も出来なかった事でしょう。

 

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びっくり枠として2019年をJ2で戦う事になった柏はネルシーニョ監督の再任を発表しました。

ネルシーニョ招聘を柏で築いたJ2→J1への成功体験、また現実的なチーム作りは2010年に証明したようにJ2を安定した成績で乗り切ってJ1での戦いに繋がる事が出来る、という考えで再招聘に踏み切ったのなら期待出来ると思います。

ただ、これがフロントの何の気無しの単純に成功体験にすがりにすがったリバイバル的人事であれば、柏の道は前途多難な道のりになってしまうかもしれません。

 

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結局のところ何が言いたいかと言うと、サッカークラブである以上理想は持つべきものです。

ですが理想を過信する事は人間としてもクラブとしても自殺行為で、そしてJ2は決してゲームのように過信した理想を体現してくれるような甘い場所ではなく、誰しもが2010年の柏、2013年のG大阪になれる訳ではありません。

2008年の広島や2011年のFC東京も含め、彼らは理想と現実を見極めた上でやるべき事を果たしたからこそ躍進があった訳で、いくら降格が意外と言われても最後に二兎を得る為には一兎ずつじゃないと得られない事を自覚する事が1年での復帰の絶対条件です。

 

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メソッドとかタイトルに付けてみた自分のイキリ具合に酔ってる。

ではでは(´∀`)