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カオスに取り憑かれて〜Jリーグが急に中断期間に入っちゃったから印象に残るシーズンを振り返ろう企画・第7回(後編) 2018年残留争い〜【2018年J1最終節特集】

2020年2月25日、Jリーグは開幕戦とルヴァン カップを1試合ずつ終えたタイミングで新型コロナウィルスの影響により、3月15日までのJリーグ主催全公式戦を延期する決定を発表した。

 

 

事情が事情である為、こうなってしまった以上中止はやむを得ない。ただ、同時にJリーグファンにとってはやっとシーズンが始まったのに、またもオフシーズンのような状態に、退屈な日々に戻った事も確かである。そこで…昨年のリーグ閉幕前に5回連載していた過去のJリーグの印象的な優勝争い・残留争い・昇格争いを振り返る企画を一時的に再開しようと思う。中断期間の暇潰し程度に使ってもらえれば幸いである。

今回取り上げるのは2018年の残留争い。前々シーズンという事でまだ記憶に新しいだろうか。この年は所謂「オリジナル10」と呼ばれる強豪だったり、オリジナル10では無くともタイトル獲得経験豊富な強豪、資金力と戦力を豊富に持つチームなどが相次いで低迷…残留争いに巻き込まれていったどころか、予想外の刺客まで残留争いの鍵を握り始めた一年だった。各媒体などで多く見られた「史上最もハイレベルな残留争い」という矛盾したフレーズがしっくり来てしまう程だった2018年シーズンを振り返ったのが前回だったが、想像以上に長くなった為2部構成としてしまった。今回はその後編である。このページに先に辿り着いた方は是非前編から読んで頂きたい。

 

 

第24節終了時点順位表

1位 サンフレッチェ広島(52)

2位 川崎フロンターレ(46)(※5)

3位 FC東京(41)

4位 北海道コンサドーレ札幌(38)(※5)

5位 ヴィッセル神戸(36)

6位 セレッソ大阪(36)

7位 鹿島アントラーズ(36)

8位 ベガルタ仙台(35)

9位 浦和レッズ(32)

10位 ジュビロ磐田(32)

11位 清水エスパルス(31)

12位 柏レイソル(29)

13位 名古屋グランパス(28)(※5)

14位 湘南ベルマーレ(27)(※5)

15位 横浜F・マリノス(26)

16位 サガン鳥栖(25)

17位 ガンバ大阪(21)

18位 V・ファーレン長崎(21)

 

※1 台風の影響により湘南vs川崎、名古屋vs札幌が延期された為、上記4チームは消化試合が1試合少ない。

 

 

 

後半戦

 

一部試合数の少ないチームもあったが、遂にJ1は残り10試合という段階に突入した。前述の名古屋が磐田を6-1で蹴散らした第25節、まずはACL圏内を争う札幌と神戸の直接対決で、好調だったはずの神戸はポドルスキの退場もあって1-3で敗れてしまう。順位はまだ7位だったが、ここが泥沼の始まりだった事を彼らはまだ知らなかった。戦前の予想に反して健闘は見せたが、ここに来て6試合未勝利と地力の限界が見え隠れし始めた最下位長崎は、14位湘南との直接対決をこれまた1-3で落として未勝利記録を7に伸ばしてしまう。

 

一方、この第25節から2つの名門の明暗がくっきりと分かれる事になった。

第24節終了時点では勝点で最下位長崎と並ぶ17位に位置していたガンバは首位広島追撃の為には負けられないここ5試合で4勝1分の2位川崎との試合に挑む。明らかにガンバの劣勢が予想された試合だったが……この日のガンバには大きな希望が一つあった。

 

今野泰幸が復帰したのである。

 

川崎対策として、今野と遠藤のダブルボランチを敷いた3バックで川崎を迎え撃ったガンバは新加入FW渡邉千真のゴールなどで2-0で勝利。ガンバにとって「今野復帰」というカードはある種、最後の切り札のようなものだった。今野を復帰させても勝てないのなら、その時に信じるべきものは奇跡と他チームの失墜のみだと…。だがその最後の切り札で勝利を掴んだガンバはここから怒涛の快進撃を見せる事になる。

 

もう一つ、ここから負のメインキャストに躍り出たのが柏だった。

加藤望監督就任以降、柏の結果と内容が著しく悪化していった事は既に指摘されていた。実際私は7月に神戸と柏の試合を観戦に行ったが、この日が初先発だったイニエスタのプレーに酔いしれると同時に「想像以上の柏の酷さ」には小さくない衝撃を受けたほどだった。前任の下平隆宏監督体制では、当初掲げた目標とは大きく離れたが辛うじてチームとしての機能は保たれていた。しかし監督交代後、それすら失い機能不全に陥っていたのだ。ここまでは前半戦の貯金でなんとか誤魔化していたが、ここから名古屋、鳥栖マリノス 、ガンバ辺りが勝点を一気に積み上げ始めた事で柏は一気に窮地に陥る。第25節、アウェイで残留争い真っ只中の15位マリノスと対戦した柏だったが完全に主導権を握られ続けて1-3の完敗。特にDF陣の自滅から決められたゴールは柏の現状とこれからを暗示しているようなゴールだった。

 

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この頃、J1で残留を争うチーム、そしてそのファンやサポーターは例年以上に真剣……いや、切羽詰まった眼差しでJ2の順位表を見ていた。第25節終了後、代表ウィークの間にJ2は第32節が開催されたが、その時点でのトップ5の順位表が以下になる。

 

1位 FC町田ゼルビア(60)(※2)

2位 松本山雅FC(60)

3位 横浜FC(55)(※2)

4位 東京ヴェルディ(55)

5位 大分トリニータ(54)

 

※2 台風の影響で試合が延期された為、この時点での消化試合が1試合少ない。

 

相変わらずカオスな昇格争いが繰り広げられたが、この年は少し違う事情があった。

第32節終了時点で首位に立っているのは町田。即ち、もしこの段階でシーズンが終われば町田と松本がJ1に昇格する事になる。通常ならば。…だが、町田はJ1昇格に必要なJ1ライセンス(※3)を有していなかった。それが何を生むかというと、もし町田が自動昇格圏内である2位以上に入った場合、町田の順位を昇格制度に於いては空席とする事で昇格枠は2.5枠から1.5枠に減る事になる(※4)。すると必然的にJ1からJ2に自動降格するのは最下位のみとなり、16位が自動残留、17位がプレーオフ参戦という形になるのだ。要するに、町田が2位以内に入れば「最下位にさえならなければいい」状況になる。

この年のJ1は史上稀に見る混戦っぷりだった。結局毎年、最下位はどこか1チームが逆独走状態になる。だが2018年にその枠だろうと予想された長崎が想像以上の健闘を見せ、残留も現実的な可能性として残せていた事がより一層混戦に拍車をかけていた。もはや予測不可能に陥った残留争いを戦うチームにとって降格枠そのものが減る事の意味がどれほど大きいか……。優勝争いはプライドを持って戦うものであったとしても、残留争いではプライドなんて言ってられない。J1残留争いに巻き込まれたファンやサポーターが町田の応援を始め出したのである。

 

※3 Jリーグクラブライセンス制度により、J1で戦う為にはチームとしてJ1ライセンスを取得している必要がある。2018年の町田は2019年度のJ1ライセンスを持っておらず、J2ライセンスしか有していなかった為、J1昇格条件を満たしたとしてもJ1昇格は出来ない事になっていた。要するに、町田がJ2を1位で終えた場合はJ2優勝のタイトルだけが与えられる事になる。尚、町田は2019年に2020年度からのJ1ライセンスを取得している。

※4 この年の町田のようなケースでは順位を繰り上げる措置は取られず、町田が1位か2位でシーズンを終えれば単に町田の順位の自動昇格チームを空席とする事で自動昇格枠と自動降格枠が1つ減る形になる。逆に町田が3〜6位でシーズンを終えた場合は、本来4チームで行うプレーオフを町田の順位分を空席として3チームで行う事になる為、昇降格の枠自体に変更はない。過去に2014年にはJ1ライセンスを持たない北九州が5位に入った事で3位千葉、4位磐田、6位山形の3チームでプレーオフが行われた事もある。

 

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代表ウィークも終わって第26節が始まる。

7連勝中だった名古屋は次勝てば残留争いとは本格的におさらば……という状況で最下位長崎と対戦。しかしここで長崎が牙を剥いて意地を見せる。名古屋の絶対的エースであるジョーに2ゴールを許しながらも、逆に長崎は鈴木武蔵ハットトリックを達成して4-3で乱打戦を制して勝利を収めたのだ。そして16位鳥栖は首位の広島を高橋祐治のゴールで1-0で下し、今野に続いてファン・ウィジョもアジア大会から復帰したガンバは神戸に逆転勝利。16〜18位の下位3チームが揃って勝利した事で、名古屋は残留争いから抜け出すチャンスを失ってしまう。加えて、下位3チームが勝利した中で残留を争う柏、マリノス、湘南の3チームが揃って敗れた事で残留争いは更に意味のわからない方向へと転がり出した。清水に2-3で敗れた柏がいよいよ降格圏である16位に転落したのだ。

第27節、勝点で並ぶ柏と鳥栖が直接対決を迎える。試合は1-1で迎えた後半、柏が立て続けに決定的なシーンを迎える。しかしそこにGK権田修一が立ち塞がり、88分にはクリスティアーノ山崎亮平が連続で放ったシュートすらいずれも防いでしまう。柏と鳥栖の痛み分けに終わった直接対決が更に大きな痛手を背負う事になったのは同第27節にガンバ、更には長崎まで勝利を収めた事だった。これにより、15〜17位までの勝点が30で並ぶという事態に陥る。

 

2018明治安田生命J1リーグ第27節

柏レイソル1-1サガン鳥栖

2018年9月22日15:03@三協フロンテア柏スタジアム

柏得点者:瀬川祐輔(40分)

鳥栖得点者:金崎夢生(52分)

 

第27節終了時点

11位 ジュビロ磐田(33)(※5)

12位 横浜F・マリノス(32)

13位 湘南ベルマーレ(32)(※5)

14位 名古屋グランパス(31)(※5)

15位 サガン鳥栖(30)

16位 柏レイソル(30)

17位 ガンバ大阪(30)

18位 V・ファーレン長崎(27)

 

※5 台風で試合が延期された為、磐田、湘南、名古屋はこの時点で消化試合が1試合少ない。

 

順位争いは更に混沌とし始めた。11位磐田から17位ガンバまでの間に7チームが勝点差3よ中に収まってしまう。同時に、15位鳥栖から最下位長崎までの勝点差も僅か3に縮まっていた。こうなると更に町田の結果も気になり始める。この年は台風で延期になった試合が例年以上に多かった事で一見試合数の少ない磐田、湘南、名古屋は有利にも見えるが、試合数が少ない事をポジティブに捉えられるのは勝点3を見込める可能性の高い上位チームだからこその話であってそれが下位チームに当てはまる訳ではない。湘南に至ってはルヴァン杯で勝ち進んでいた影響もあって過密日程に更なる拍車がかけられていた。

 

 

第28節、ホームに首位広島を迎えたガンバは一進一退の攻防を繰り広げられた末、終盤にファン・ウィジョが決勝ゴールを決めて1-0で勝利を収める。この勝利でずっと1位を走っていた広島を首位から引き摺り降すと同時に長らく留まっていた降格圏からの脱出にも成功した。続く第29節のセレッソとの大阪ダービーではウィジョを出場停止で欠く苦しい状況だったが、代わりに先発起用されたアデミウソンの芸術ループで2試合連続のウノゼロ。7連勝が止まって再び名古屋が失速し出した頃、今度はガンバが5連勝と大型連勝に突入するのだ。マリノスもここに来て磐田、仙台、札幌に3連勝。それぞれ12位と11位にまで順位を上げ、第30節に控える直接対決で「どちらが残留争いを抜け出せるか」という戦いに挑む事になる。

 

 

第29節で柏が広島相手に3-0の快勝を果たして降格圏を脱し、鳥栖は湘南との直接対決を0-1で落としてマッシモ・フィッカデンティ監督の解任に踏み切る程の窮地に陥った頃、このタイミングで残留争いには再び2チームのキャストが加わる。

 

第21節磐田戦、ポドルスキのパスからイニエスタがゴールを決めたシーンでは誰もが神戸の明るい未来を予想した事だろう。神戸はつい最近まで優勝争いとまでは行かずとも好調を維持し、上位を争う事は出来ていたはずだった。だが第24節マリノス戦で久保建英のJ1初ゴールなどで0-2の敗戦を喫すると第26節ガンバ戦ではイニエスタが負傷退場。試合後には吉田孝行監督が解任される。後任にはファン・マヌエル・リージョ監督が就任したが、ビザの都合で林健太郎コーチが代行で指揮を執った浦和、鹿島との試合はそれぞれ0-4と0-5で無惨な敗戦を喫してとうとう5連敗。リージョ監督の初陣となりイニエスタも復帰した第29節でも、最下位長崎相手に勝ち切れずにドローに終わりじわじわと残留争いに加わるハメになった。

もう一つが前年で6位まで躍進した名波浩監督率いる磐田である。この年の磐田はまるで呪われたかのような一年だった。ギレルメの暴行事件(※6)に始まり、主力に怪我人が続出。それでも中断期間の時点では8位に付けていたのだが、6試合勝利から遠ざかるなど夏終わりから一気に坂を転がり始めた。第25節、6連勝中だった名古屋との試合前に「名古屋をもう一度残留争いにぶっ込む」と語るほどの意気込みはいつしかある種のフラグに陥り、1-6で大敗した試合後に名波監督自身が語ったように文字通り「目標を残留にシフトしなければならない」状況になったのだ。第29節、そんな磐田とは対照的に北川浩也とドウグラスのツートップを軸に躍進を見せていた清水との静岡ダービーで今のチーム状態の差をまざまざと見せつけられるかのように1-5の惨敗を喫し、いよいよ磐田は15位まで叩き落とされる。

 

※6 5月2日の第12節横浜FM戦の77分、2枚目の警告で退場となったギレルメは激昂し横浜FMのMF喜田拓也横浜FM側のスタッフに対して暴力行為を働いた事でJリーグから退場処分の分を含めて計7試合の出場停止処分を受けた。試合後には名波浩監督、翌日には木村稔社長が謝罪したが、この事は翌日に地上波のニュース番組などでも取り上げられるなど大きな話題となる。ギレルメは期限付き移籍中の身であったが、その後5月15日に双方合意の上で期限付き移籍契約の解除が発表されている。

 

第29節終了時点

10位 横浜F・マリノス(38)

11位 ヴィッセル神戸(37)

12位 ガンバ大阪(36)

13位 湘南ベルマーレ(35)(※7)

14位 柏レイソル(34)

15位 ジュビロ磐田(33)(※7)

16位 名古屋グランパス(32)(※7)

17位 サガン鳥栖(30)

18位 V・ファーレン長崎(28)

 

※7 台風の影響で試合が延期され、この時点で磐田と湘南は1試合、名古屋は2試合消化試合が少なかった。

 

代表ウィークを挟んで行われた第30節でもいくつか鍵となる試合があった。残留争いに於いて、金曜日に柏vs名古屋、土曜日にガンバvsマリノス、日曜日に長崎vs磐田の直接対決が組まれていたのである。

フライデーナイトJリーグとして行われた柏と名古屋の一戦は名古屋が勝てば再び柏と降格圏入れ替わりになるという状況の中、名古屋のランゲラックと柏の負傷離脱している中村航輔の代わりに入った桐畑和繁の両GKが好セーブを連発して一進一退の攻防となるが、前半のうちに名古屋が前田直輝のゴールで先制に成功すると、前半戦であれだけ守備が崩壊していた名古屋はGKにランゲラック新加入の丸山祐市、そして夏に柏から移籍してきた中谷進之介を中心に柏の猛攻に耐え凌ぐ。柏は77分に高木利弥がこの日2枚目のイエローカードを受けて退場となり万事休す。この結果名古屋が再び降格圏を脱出し、柏は鳥栖と磐田の結果を待つ事になった。

 

2018明治安田生命J1リーグ第30節

柏レイソル0-1名古屋グランパス

2018年10月19日19:33@三協フロンテア柏スタジアム

名古屋得点者:前田直輝(35分)

 

土曜日、フィッカデンティ監督を解任して下部組織で監督を務めていた金明輝監督を昇格させた鳥栖は敵地で仙台との試合に挑む。雷雨の為に46分中断するなどのアクシデントもあったが、鳥栖フェルナンド・トーレスのゴールなどで得た2点のリードを追い付かれる苦しい展開を強いられながらも最後はジョアン・オマリのゴールで勝ち越しに成功し、この勝利で柏を抜いて自動降格圏を脱出する事に成功した。

鳥栖の1時間後にキックオフしたガンバとマリノスの一戦はガンバは5連勝、マリノスは3連勝と好調の中での一戦だった。残り試合や残留争いに絡むチームの数を考えると、この2チームにとっては「勝てば事実上残留争いを脱出出来る」と言える意味を持っていたのだ。前半、ガンバはマリノス対策として3バックを敷くが、仲川輝人に先制点を許してビハインドで前半を終える。だがこの3バック作戦でビハインドになる事はある程度織り込み済みで、後半にファン・ウィジョを投入して4バックに戻したところからが本番だった。71分にウィジョのゴールで同点に追いつくと、85分には細かいパス交換から抜け出した藤春廣輝のクロスに小野瀬康介が飛び込んで逆転弾。前半の大スランプが嘘のように盛り返したガンバ……夏から就任した宮本恒靖監督の下で整理された守備が今野泰幸、ウィジョの復帰で完成し、もはや手の付けようのない「ゾーン」に突入したガンバが6連勝を達成して残留をほぼ確定的なものにしてみせたのだった。

 

明治安田生命J1リーグ第30節

ガンバ大阪2-1横浜F・マリノス

2018年10月20日15:03@Panasonic Stadium Suita

G大阪得点者:ファン・ウィジョ(71分)、小野瀬康介(85分)

横浜FM得点者:仲川輝人(36分)

 

土曜日の夜、いよいよ笑えない状況に追い詰められた神戸は首位の川崎と対戦。一時は3-1と2点リードを奪った神戸だったが、43分に家長昭博に1点を返されるとそこからは完全に川崎ペース。バルサ化を目指していた神戸がまるで「自分達がやろうとしている事」のようなサッカーを川崎に繰り広げられた結果、3-5で敗れて残留争いから抜け出せない。

日曜日、名古屋と鳥栖の勝利で暫定ながら17位に転落した磐田は敵地で最下位の長崎と対戦した。試合は一進一退の攻防が続く中、どちらも好機を活かし切る事が出来ずに0-0のスコアレスドローに終わる。ただし、前述のJ2町田の状況次第で降格枠が減る可能性を踏まえれば、最下位長崎に詰められずに済んだ磐田にとっては意義のある勝点1とも言えた。順位も勝点を1積み上げて15位とし、延期分の試合でルヴァン杯を制した湘南との残留争いを直接対決を制して順位を13位にまで戻す事に成功する。

 

2018明治安田生命J1リーグ第30節

V・ファーレン長崎0-0ジュビロ磐田

2018年10月21日16:03@トランスコスモススタジアム長崎

 

2018明治安田生命J1リーグ第28節延期分

ジュビロ磐田1-0湘南ベルマーレ

2018年10月30日19:03@ヤマハスタジアム

磐田得点者:川又堅碁(34分)

 

 

残留争いに絡むチームが余りにも多過ぎたせいで、いつからか始まった直接対決のオンパレードは一向に終わらない。前節柏との直接対決を制して一気に残留を決めたい名古屋だったが、名古屋はホームでルーカス・ポドルスキが2ゴールを挙げた神戸に8試合ぶりの勝利を献上して敗戦を喫する。同時刻、柏が首位の川崎に完敗を喫し、マリノスFC東京に敗れて再び残留争いに飲み込まれ始めたが、逆に磐田は2位広島相手に2点差を追いつき、ラストワンプレーのPKを小川航基が沈めて劇的勝利を収めて16位との勝点差を6に広げた。

翌日、町田の動向を問わず自動降格となる最下位の長崎は16位鳥栖と激突する。長崎はここまで神戸、磐田と残留を争うライバルに対して勝ち切れずいよいよ崖っ淵に追い込まれていた。逆に鳥栖にとっては、前日に柏が敗れた事でこの試合に勝てば17位柏と18位長崎を突き放す事ができ、少なくとも自動降格の可能性は一気に減る。どちらにとっても、そしてこの試合の行方は他チームにとって大きな鍵を握った。試合は前半から一進一退の攻防が続く中、60分には鳥栖の趙東建のシュートをGK増田卓也が弾いたところ、原川力が体ごと突っ込んで先制点を奪う。その後長崎は怪我から復帰した鈴木武蔵を投入して猛攻を仕掛けるが、その前にはやはりGK権田修一が立ち塞がった。大一番を制したのは鳥栖。逆に長崎はこれで16位以上が厳しくなる。

 

明治安田生命J1リーグ第31節

サガン鳥栖1-0V・ファーレン長崎

2018年11月4日16:04@ベストアメニティスタジアム

鳥栖得点者:原川力(60分)

 

続く第32節、鹿島がACL決勝に出場した関係で前倒しで柏vs鹿島の試合が行われた。この時点で17位柏と16位名古屋の勝点差は1だったが、名古屋が同時刻に行われたセレッソとの第28節延期分の試合で勝利を収める。柏は鹿島相手に一度は逆転したものの、結局この日もマネジメントのミスが響いて再逆転を許し、ACLの為に控え主体の鹿島に打ち合いの末敗れていよいよ17位以下に王手がかかった。そしてこの試合の後、柏は加藤望監督の解任と岩瀬健コーチの監督昇格を発表する。

残りの8試合は全て11月10日に行われた。この試合ではガンバと神戸には残留が確定するチャンスがあった。ガンバは14位湘南、神戸は15位鳥栖とそれぞれ直接対決を控えていたからである。遠藤保仁Jリーグ通算600試合出場となったこの試合、ガンバはファン・ウィジョのゴールを守り切って8連勝(※8)を飾り残留を確定させる。一方、イニエスタフェルナンド・トーレスの直接対決という事で世界的に注目された一戦はスコアレスドローに終わり、残留は決まらずとも神戸には大きな勝点1、鳥栖には痛い勝点1となった。

 

 

そして勝たないと17位以下(※9)が確定する長崎は3連勝の後の2連敗で残留が決まりそうで決まらないマリノスとの直接対決に挑む。試合は74分、伊藤翔のゴールで勝負を決めたマリノスが1-0で勝利。この結果により長崎は17位以下が確定し、長崎の運命は町田に委ねられる事となった。

尚、この第32節では優勝争いに決着が付いた。首位川崎はセレッソに1-2で敗れたものの、2位広島も仙台に0-1で敗れた事で2連覇が決まった。一時期は広島が首位を独走していたが戦術パトリックと呼べる戦い方を攻略され出してからは手詰まりとなり、仙台戦での敗北で連敗は5、未勝利は7にまで伸びた。この7試合の中でその時点で残留争い真っ只中にいたチームに対して4敗も喫した事…これは広島にとって致命傷であり、同時に残留争いを引っ掻き回す要因にもなった(※10)。

 

2018明治安田生命J1リーグ第32節

V・ファーレン長崎0-1横浜F・マリノス

2018年11月10日14:03@トランスコスモススタジアム長崎

横浜FM得点者:伊藤翔(74分)

 

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※8 ガンバは第33節でも長崎に勝利した事で最終的に連勝はクラブタイ記録となる9連勝まで伸びている。

※9 前述の通り、町田がJ2で2位以内に入れば降格枠が減って17位は自動降格では無くプレーオフに進む事になる。第32節終了時点で長崎には17位の可能性が残されていた為、例年ならば「降格決定」と表現されるが上記の理由によりこの時点では「17位以下が確定」と表現されていた。

※10 第26節鳥栖戦、第28節G大阪戦、第29節柏戦、第31節磐田戦の4試合。特に鳥栖は広島戦前の時点で16位、G大阪と柏は広島戦の前の時点で17位だった。

 

第32節を終えると、J1は再び代表ウィークに伴う中断期間に入る。しかし残留を争うチームは中断期間を中断期間として捉える事はできなかった。

 

J2の最終節、そう、町田の行方である。

 

 

 

J2最終節

 

第41節終了時点

1位 松本山雅FC(76)+20

2位 大分トリニータ(75)+25

3位 FC町田ゼルビア(75)+18

4位 横浜FC(73)+18

5位 東京ヴェルディ(70)+15

6位 アビスパ福岡(69)+16

7位 大宮アルディージャ(68)+16

 

FC町田ゼルビアvs東京ヴェルディ

モンテディオ山形vs大分トリニータ

松本山雅FCvs徳島ヴォルティス

 

最終節を前にした段階でJ1自動昇格圏内の可能性を残すのは1位松本〜4位横浜FCまでの4チーム、プレーオフに関しては7位大宮まで可能性が残されていた。松本は勝てば自力でのJ2優勝と昇格が決定。大分も3位町田とは得失点差に開きがあった事から、勝てば自力での昇格はほぼほぼ決まると見ていい状況だった。4位横浜FCは勝利が絶対条件。その上で上位3チームの結果を待つ事になる。

無論、J1で残留を争うチーム…特に17位以下が決まった長崎と15位以上が絶望的になった柏が気になるのは町田の動向である。町田が2位以内に入る条件は、町田が勝利した場合は松本か大分のどちらか一方でも引き分け以下に終われば良い。引き分けた場合でも松本の2点差以上の敗戦、大分の敗戦、横浜FCの引き分け以下のうち2つを満たす事で2位以内に入る事が出来る。仮に町田が2位以内に入った場合、降格枠が減って17位がプレーオフとなるので16位以上が残留ラインとなり、その瞬間マリノス、神戸、磐田の3チームの残留が確定。逆に町田が3位以下で終わると、その瞬間に既に17位以下が決まっていた長崎のJ2降格が確定するのだ。

試合は11月11日14:03、全会場同時にキックオフを迎える。

 

「#FC町田ゼルビア熱烈応援J1連合」なるハッシュタグSNS上で流行したり、最終戦には町田市立陸上競技場にJ1下位チームのサポーターが応援に駆けつけるなど残留争いチームの期待を一身に背負う事になった町田だが、彼らも彼らでJ1に上がらない事は承知の上で最後に優勝という形で伝説を残そうと気概に燃えていた。最終節はプレーオフ出場を目指すヴェルディとの「東京クラシック」となり会場には1万人を越す観衆が訪れる。松本が引き分けていた事で町田は勝てば2位以内に入る状況が続いたが、こちらもプレーオフ進出の為に負けられないヴェルディは右サイドからのクロスに抜け出した林陵平ループシュートを決めて先制に成功する。82分、町田はセットプレーの流れで前線に残っていた酒井隆介の折り返しに大谷尚輝が決めて追い付き、アディショナルタイムにはそれまでリードしていた大分も追いつかれた事で「勝てば優勝」のシチュエーションが出来上がるが後一点及ばずに試合は1-1で終了。町田の順位は4位に終わった事で降格枠に変更はなく、そして高木琢也監督の下で初のJ1で戦力的にも劣る中で大健闘を見せたものの、長崎のJ2降格がこの瞬間に決定した。

 

明治安田生命J2リーグ最終節

FC町田ゼルビア1-1東京ヴェルディ

2018年11月11日14:03@町田市立陸上競技場

町田得点者:大谷尚輝(82分)

東京V得点者:林陵平(76分)

 

2018年J2順位表

1位 松本山雅FC(77)

2位 大分トリニータ(76)

3位 横浜FC(76)

4位 FC町田ゼルビア(76)(※11)

5位 大宮アルディージャ(71)

6位 東京ヴェルディ(71)

7位 アビスパ福岡(70)

 

※11 J1ライセンスを有していない町田がプレーオフ圏内に入った為、2018年のプレーオフは3位横浜FC、5位大宮、6位東京Vの3チームで行われる事になり、これにより3位横浜FCは1回戦をシードされる方式になった。

 

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第33節

 

第32節終了時点

11位 横浜F・マリノス(41)+2

12位 ヴィッセル神戸(41)-8

13位 ジュビロ磐田(41)-10

14位 湘南ベルマーレ(37)-6

15位 サガン鳥栖(37)-6

16位 名古屋グランパス(37)-8

17位 柏レイソル(33)-12

 

第33節対戦カード

湘南ベルマーレ(14位)vs浦和レッズ(6位)

セレッソ大阪(8位)vs柏レイソル(17位)

サンフレッチェ広島(2位)vs名古屋グランパス(16位)

サガン鳥栖(15位)vs横浜F・マリノス(11位)

清水エスパルス(7位)vsヴィッセル神戸(12位)

ジュビロ磐田(13位)vs北海道コンサドーレ札幌(4位)

 

状況を整理すると、まず17位の柏はセレッソに敗れるとその時点で降格が決定する。勝利か引き分けの場合ならば湘南、鳥栖、名古屋の3チーム全てが柏の第33節の結果より悪く終われば今節での降格決定は回避出来た。要するに、柏が勝利すれば湘南、鳥栖、名古屋が3チームとも勝利した時にのみ今節の降格が決まり、どこか一つでも勝利を逃せば最終節に希望を繋ぐ事が出来る。湘南、鳥栖、名古屋にはまだ自動降格の可能性も残されており、勝点で並んでいる以上今節で残留が確定する事も無かった。

 

一方、マリノス、神戸、磐田の既に16位以上(=自動降格の回避)は決まっている3チームは非常に優位な状況ではあった。この3チームが第33節で残留を決める為の条件は2つ。自分達が負けない(勝点1は確保する)事、そして湘南、鳥栖、名古屋のどこか1チームでも勝利を逃せば残留は確定する事になっていた。

だが、仮に神戸が引き分けて湘南、鳥栖、名古屋の3チームとも勝利した場合の勝点はそれぞれ42と40という事になる。これだけ見ると数字の上では逆転が可能に見えるのだが、最終節では試合前の時点で勝点で並ぶ湘南と名古屋の直接対決が組まれていた。そうである以上、少なくとも湘南と名古屋が最終節で共に勝点3を取る事は無いし、どちらかが勝てばどちらかは勝点0になるからマリノス、神戸、磐田を抜く事は無い。そもそも、勝点41で並ぶこの3チームが16位に落ちる為には勝点37で並ぶ3チーム全てに抜かれる必要がある。その為に必要な条件は【マリノス、神戸、磐田の2連敗+鳥栖が2試合で勝点4以上を獲得+第33節で湘南と名古屋が勝利した上で最終節は引き分ける】…この3つの条件を揃えた上での得失点差勝負という非常に難易度の高いものだった(※12)。その為、この時点でマリノス、神戸、磐田の3チームが降格する可能性は相当低くなっていた……はずだった。

試合は11月24日、14:00に各会場同時にキックオフを迎える。

 

※12 ただし、横浜FMの得失点差はこの時点で+2となっていて他の残留が決まっていないチームとは大きく差が空いていた。横浜FM、神戸、磐田は勝点で抜かれて16位に落ちる可能性は消滅していた以上、横浜FMが16位に落ちるケースとしては横浜FMが2試合連続大敗する事、湘南と名古屋が共に第33節で大勝する必要があったので、この時点で横浜FMの残留はほぼ決まっていたと言っていい。

 

なんとしても勝利しなければならない柏は敵地、ヤンマースタジアム長居に乗り込んでACL出場の可能性を僅かに残すセレッソと戦った。前節に敗れた時点で加藤望監督を解任し、岩瀬健コーチを監督に据えて奇跡に望みを繋ごうとした柏はこの一戦で意地を見せる。

森保一監督率いる日本代表でも常連になりつつあった伊東純也を筆頭に中村航輔クリスティアーノ、中山雄太、江坂任鈴木大輔などJ1でも屈指のタレント集団が躍動し、53分には中山雄太の豪快なミドルシュートがゴールに突き刺さって先制点。更に58分には伊東純也の折り返しを江坂任が冷静に流し込んでリードを広げると、84分には伊東純也のパスからクリスティアーノが決めて3-0。今までの不振が嘘のような完璧な試合をセレッソ相手に披露した柏はまずは自分達の絶対条件を果たした。

 

明治安田生命J1リーグ第33節

セレッソ大阪0-3柏レイソル

2018年11月24日14:03@ヤンマースタジアム長居

柏得点者:中山雄太(53分)、江坂任(58分)、クリスティアーノ(84分)

 

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これで少なくとも勝点37の3チームのうち一つでも勝利を逃していれば今節での降格は回避出来る。残留争い中のチーム達である以上、3チームが揃って勝利する可能性は高くはないはずだった。

 

 

 

 

 

 

…しかし、他会場から届く結果は柏の希望を粉々に打ち砕く。

 

 

 

 

 

 

湘南はシーズン終盤にかけて一気に調子を上げていた浦和との試合に挑んだが、梅崎司菊地俊介のゴールで2点をリードする事に成功する。90分を通じて浦和にシュートを21本打たれるなどの猛攻を受けるが最後の最後でDF陣がしっかり耐え切って浦和の反撃を1点で抑え、ホーム最終戦を勝利で飾った。

5連敗中と大不振の真っ只中とはいえ、それでも2位につけている広島のホームに乗り込んだ16位名古屋は広島に先制点を許すも、直後にジョーの個人技術の高さを見せつけるようなゴールで同点に追いつくと、更に5分後には小林裕樹が鮮やかなミドルシュートを決めて前半のうちに逆転に成功する。チームとして最悪の状況に陥っていた広島にここから巻き返すだけの力は既に残っておらず、名古屋もきっちりと自分達で勝利を掴む。

マリノスとの直接対決に挑んだ鳥栖は前半に伊藤翔に決められて苦しい展開を余儀なくされる。しかし負傷明けの金崎夢生を53分に投入したところから流れは一変。71分に金崎がPKを沈めて同点に追いつくと、78分には高い位置でのボール奪取から最後は「神の子」フェルナンド・トーレスが鮮やかな逆転ゴールを挙げてベアスタを熱狂の渦に巻き込んだ。チーム事情から本来得意なプレー以上の事を求められた影響もあって、ここまで大きな活躍を出来ていた訳ではなかった世界のスーパースターは彼の最大の魅力であった勝負強さを発揮しチームが一番ゴールを欲しい時にチームにとって一番大事なゴールを決めてみせる。2-1のまま試合終了の笛が鳴り響いたベアスタには文字通り歓喜に包まれた。

 

明治安田生命J1リーグ第33節

湘南ベルマーレ2-1浦和レッズ

2018年11月24日14:03@Shonan BMWスタジアム平塚

湘南得点者:梅崎司(20分)、菊地俊介(56分)

浦和得点者:興梠慎三(77分)

 

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明治安田生命J1リーグ第33節

サンフレッチェ広島1-2名古屋グランパス

2018年11月24日14:03@エディオンスタジアム広島

広島得点者:柏好文(36分)

名古屋得点者:ジョー(39分)、小林裕樹(44分)

 

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明治安田生命J1リーグ第33節

2018年11月24日14:03@ベストアメニティスタジアム

サガン鳥栖2-1横浜F・マリノス

鳥栖得点者:金崎夢生(71分)、フェルナンド・トーレス(78分)

横浜FM得点者:伊藤翔(29分)

 

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…そう、湘南、鳥栖、名古屋の3チームが全て勝ってしまったのである。この年一番とも言える出来でセレッソに3-0で勝利したものの、この瞬間優勝候補にすら挙げられていた柏のJ2降格が決まってしまった。岩瀬監督の初陣でもあったこの試合……「もっと早く手を打っておけば」…それは柏サポのみならず、第三者として見ていたJリーグファンも同じ感想を抱いた。

 

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自動降格となる2枠は埋まり、残すところはプレーオフに進む事になる16位を巡る争いだ。引き分けでも残留の決まる磐田と神戸はそれぞれ札幌、清水と好調を維持していたチームとの対戦となった。

磐田は12分にオウンゴールで失点すると、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の下で今やACL出場圏を争うようになっていた札幌相手に苦しい試合展開を強いられてしまう。結局最後は札幌に追加点を奪われて0-2で敗北。ホーム最終戦で残留を決められなかった。

神戸はこの土壇場で未だに語り継がれる程の大乱戦を演じる事になる。1-1で前半を終えると、神戸は後半に古橋享梧と三田啓貴のゴールで3-1とリードを2点に広げる。だが事件はここから始まった。主審がこの試合のコントロールに苦戦していた事から最初から荒れ気味の展開にはなっていたが、83分に藤田直之が2枚目のイエローカードで退場してからその流れは一気に加速する。清水が1点を返して2-3で迎えたアディショナルタイム、追加時間の取り扱いを誤った結果(※13)アディショナルタイムが18分50秒まで伸び、しまいにはウェリントンが暴力行為を働いて退場(※14)、乱闘騒ぎにまで発展してしまう。試合も104分(=後半59分)という訳の分からない時間にGK六反勇治に決められた同点に追いつかれた神戸だったが、後味の悪い試合ではありながらも3-3で勝点1を獲得した事で残留は確定させた。

 

明治安田生命J1リーグ第33節

ジュビロ磐田0-2北海道コンサドーレ札幌

2018年11月24日14:05@ヤマハスタジアム

札幌得点者:オウンゴール(12分)、三好康児(76分)

 

明治安田生命J1リーグ第33節

清水エスパルス3-3ヴィッセル神戸

2018年11月24日14:04@IAIスタジアム日本平

清水得点者:河井陽介(39分)、ドウグラス(87分)、六反勇治(90+14分)

神戸得点者:藤田直之(26分)、古橋享梧(52分)、三田啓貴(62分)

 

※13 当初アディショナルタイムは4分と発表されていたが残り30秒の段階で清水MF河井陽介と神戸DF橋本和接触、両者とも頭部からの流血が確認された事で試合は5分間中断してから再開された。アディショナルタイムでは中断した時間で時計を止めて残りの30秒を消化した時点で試合終了となるはずが、柿沼享主審は試合が中断していた5分間をそのまま「アディショナルタイムアディショナルタイム」として追加してしまった事により試合時間が一気に延びる。更にその5分間の間に今度は清水DF立田悠悟も負傷で中断し、その際にもアディショナルタイムアディショナルタイムを加算した事でアディショナルタイムが約19分に及び、そもそもゲームコントロールも上手くいっていなかった事から両チームのフラストレーションを爆発させるに至り最後の乱闘に繋がってしまった。

※14 3-3になった90+15分に警告を受けた事に端を発した乱闘の仲裁に入ったGK六反勇治を投げ飛ばした行為に対しての退場処分。だがこのウェリントンの行為に対しては「絶対にやってはいけない行為」とした上で、※13でも書いた理由から同情の声も多く寄せられていた。

 

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最終節

 

第33節終了時点

12位 横浜F・マリノス(41)+1

13位 ジュビロ磐田(41)-12

14位 湘南ベルマーレ(40)-5

15位 サガン鳥栖(40)-5

16位 名古屋グランパス(40)-7

 

最終節対戦カード

鹿島アントラーズ(3位)vsサガン鳥栖(15位)

川崎フロンターレ(1位)vsジュビロ磐田(13位)

名古屋グランパス(16位)vs湘南ベルマーレ(14位)

 

第33節の結果により神戸が残留を決めた為、最終節に降格の可能性を残すのは12位マリノスから16位名古屋までの5チーム。17位柏、18位長崎は順位が確定していたため自動降格の可能性は無いが、5チームのうち1チームがJ2プレーオフを勝ち抜いたチーム(※15)とのこの年から復活した入れ替え戦に挑む事になった。

13位の磐田は首位川崎とアウェイで戦わなければならないが、負けさえしなければ残留が決まる上に、負けたとしても鳥栖が敗れるか名古屋vs湘南でどちらかが勝利すれば残留が決まる。この年のACLを制した鹿島に挑む15位鳥栖も状況としては磐田とほぼ同じで引き分け以上で残留決定、敗れても名古屋vs湘南でどちらかが勝利した時に得失点差、総得点での勝負に持ち込まれる(※16)。

直接対決となった14位湘南と16位名古屋に関しては、まず既に名古屋を得失点差で上回っている事から湘南は引き分けでも残留が決まる。要するに名古屋以外のチームは引き分けでもOKという状態だった。逆に名古屋は勝てば自力で残留を果たせる反面、敗れた場合は鳥栖が大差で敗れる必要があり、引き分けた場合は鳥栖か磐田のどちらかが敗れる必要があった(※17)。名古屋は2017年はJ2での戦いを余儀なくされてJ1復帰1年目だったが、2016年の最終節…同じ会場で名古屋をJ2に突き落としたチームこそ、この日の対戦相手でもある湘南だった(※18)。2年前に味わった屈辱を同じ場所、同じ相手に受ける訳にはいかない。

悲壮な最終決戦が12月1日14:03に幕を開ける。尚、マリノスは数字上は16位転落の可能性を残していたが現実的な可能性はこの時点でかなり薄くなっていたので(※19)、当ページでは磐田、湘南、鳥栖、名古屋の4チームを対象に進めていく。

 

※15 この時点ではプレーオフ準決勝開催前であった為、横浜FCか東京Vのどちらと対戦する事になっていた。

※16 湘南と鳥栖は得失点差が-5で並んでいた為、より大差で敗れた方が16位に落ちる事になる。同じ点差で敗れた場合は総得点で順位が決まるが、湘南の総得点36に対し鳥栖の総得点は29なので、その場合は鳥栖が16位に落ちる事が濃厚だった。

※17 磐田が敗れて名古屋vs湘南が引き分けた場合はこの3チームの勝点が並ぶ事になるが、試合前の時点で磐田が得失点差で劣っていた事からこのケースであれば名古屋は残留出来る事になって磐田が16位になる。

※18 2016年の最終節で16位だった名古屋は既にJ2降格が決まっていた17位湘南とホームで対戦したが1-3で敗れて降格が決まっている。

※19 横浜FMが16位に転落する為には横浜FMが敗れた上で名古屋vs湘南が引き分けに終わる事が前提になる。その上で名古屋を得失点差で下回る為には総得点でも横浜FMが5点上回っている以上、横浜FMが9点差以上で敗れる必要があった。磐田が敗れた場合でも得失点差勝負となるが、磐田の得失点差は試合前の時点で-12だった事から更に現実味に欠けるので、横浜FMの残留は事実上確定と言える状況であった。

 

 

磐田、鳥栖の試合は前半は膠着状態だったが、パロマ瑞穂スタジアムで行われている直接対決は前半から動いた。「ルヴァン杯を制したのに降格」なんて不名誉だけはなんとしても避けたい湘南は前半から躍動し、19分には金子大毅のクロスを菊地俊介が難しい角度ながらしっかり合わせて先制点を奪う。同点に追いつくチャンスは作りながらも追いつかない時間が続く名古屋に対し、37分にはオーバーラップした山根視来がGKランゲラックに倒されてPKを獲得すると、これを梅崎司が冷静に決めて2点をリード。引き分けでもOKの湘南はこれで残留に大きく近付き、同時に名古屋はいよいよ崖っぷちに追い込まれた。それぞれ上位チームとのアウェイゲームに臨んだ磐田と鳥栖の2チームは前半をスコアレスで終える。

 

前半終了時

鹿島0-0鳥栖

川崎0-0磐田

名古屋0-2湘南

 

13位 湘南(43)-3

14位 磐田(42)-12

15位 鳥栖(41)-5

16位 名古屋(40)-9

 

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崖っぷちの名古屋。風間八宏監督は後半、相馬勇紀を下げて前田直輝を投入する。すると試合はここから一気に動いた。名古屋が攻め込むようになると、67分には秋山陽介のクロスがエリア内の混戦を誘ってPK獲得に繋げ、このPKをジョーが確実に決めて1点を返す。すると今度は和泉竜司のクロスが湘南DFのハンドを誘ってこの日2個目、湘南も合わせて3回目のPK判定を勝ち取ると、ジョーが自身シーズン24点目となるゴールを決めて名古屋が試合を振り出しに戻して残留の可能性を復活させた。

県立カシマサッカースタジアムでは前半終了時点で名古屋が0-2で敗れていた事から負けなければOKという状況になった鳥栖と、引き分けでも来季ACL出場権を手に出来る鹿島(※20)がセーフティーな戦い方を選択し始めた頃、今度は等々力競技場での試合の勢いが加速し始める。

 

※20 ACL出場圏内争いも2位広島、3位鹿島、4位札幌の間で混戦となっていたが、最終節は広島と札幌が直接対決だった事もあって鹿島は引き分け以上で3位以上を確定する事が出来た。

 

磐田はチャンピオンチームを相手に前半は優勢に試合を運んだがそこで点を取り切る事が出来ず、一転して後半は川崎の攻撃力を見せつけられる形で劣勢を強いられた。嫌な流れを変えるべく、負傷明けだった中村俊輔を下げて松本昌也を投入するとこの采配が的中する。試合も終盤に突入した78分、スローインを受けた川又堅碁ポストプレーから松本が抜け出してクロスを送ると、これに飛び込んだのは夏に川崎から移籍してきた大久保嘉人。かつて川崎のエースだった男が等々力で磐田の残留を手繰り寄せるゴールを決めると、一目散にゴール裏の磐田サポーターの下へ駆け寄って喜びを爆発させる。

引き分けでも残留が決まる磐田は83分に大久保を下げて守備的MFのムサエフを投入し、試合を終わらせに入った。しかし、その直後のコーナーキック中村憲剛がボールを上げるとこれに奈良竜樹が頭で合わせて川崎が同点に追い付く。

 

90分経過時点

鹿島0-0鳥栖

川崎1-1磐田

名古屋2-2湘南

 

13位 磐田(42)-12

14位 湘南(41)-5

15位 鳥栖(41)-5

16位 名古屋(41)-7

 

試合は各会場アディショナルタイムに突入し、等々力もカシマも瑞穂もドローの状態でラストの攻防を迎える。前述の通り、両者ともに引き分けでも目標を達成出来る鹿島と鳥栖はリスクを冒す事はせずに互いに0-0で試合を終え、これにより鳥栖が残留を確定させた。

2点差を追いついた勢いで逆転勝利を掴みたい名古屋。このまま行くと名古屋の16位が決まる為に勝ち越しゴールは何としても必須だったが、当然ながらこのまま終われば残留出来る湘南はブロックを固めてくるので中々崩す事が出来ない。2点ビハインドを振り出しに戻す粘りは見せたものの逆転ゴールまでは届かなかった名古屋。瑞穂に試合終了の笛が鳴り響いた時、これで残留が決まった湘南の歓喜の輪の横で名古屋は他会場の結果を待つ事になる。

 

残留争いの行方は川崎と磐田の試合に全て委ねられていた。

守備を固め始めたタイミングで追いつかれるという流れとしては実に悪い形になった磐田だが、このまま川崎の攻撃に耐え切れば残留が決まるのも事実。アディショナルタイムにはMF田口泰士を下げてDF櫻内渚を投入して勝利に等しい引き分けを勝ち取る為の策を尽くし、アディショナルタイム4分が経過する瞬間までのカウントダウンに突入する。

 

試合はラスト1分を切る。最終節を勝利で飾りたいチャンピオンチームの攻撃が続く。

 

 

 

 

 

 

ラスト30秒、登里享平の縦パスを受けたのはこの年のMVPを獲得する事になる家長昭博だった。家長がDFを振り切ってペナルティエリア内に侵入してグラウンダーの速いクロスを入れる。

そのボールにはFW知念慶が飛び込んで来ていた。このボールさえ掻き出せば試合が終わる、残留が決まる……その想いで何とかカバーに入り、何とかボールに追い付いたキャプテン大井健太郎の脚に当たったボールが向かった先は残留では無く自陣ゴールの中だった。ベンチに下がった大久保が感情を露わにし、目の前の光景に名波監督が思わず膝を突く。磐田がゴールを決めるには力や気力以前にもう物理としての時間さえ残っていなかった。

等々力に笛が鳴り響き、磐田の選手が崩れ落ちた数十秒後…磐田敗北の報を受けた名古屋陣営がまるで優勝したかのように喜びを爆発させる。残留争いを最後の最後で勝ち抜き、この日も24ゴールを挙げて得点王に輝いた元ブラジル代表のジョーは安堵感で人目を憚らず涙を流す。2年前は同じ会場で既に降格が決まっている湘南に道連れにされる格好となった名古屋だったが、この日ばかりは共に残留を決め、名古屋陣営と湘南陣営が共に残留を祝い合う感傷的な空気に包まれていた。

 

明治安田生命J1リーグ最終節

鹿島アントラーズ0-0サガン鳥栖

2018年12月1日14:03@茨城県立カシマサッカースタジアム

 

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明治安田生命J1リーグ最終節

川崎フロンターレ2-1ジュビロ磐田

2018年12月1日14:03@等々力陸上競技場

川崎得点者:奈良竜樹(83分)、オウンゴール(90+4分)

磐田得点者:大久保嘉人(78分)

 

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明治安田生命J1リーグ最終節

名古屋グランパス2-2湘南ベルマーレ

2018年12月1日14:03@パロマ瑞穂スタジアム

名古屋得点者:ジョー(67分、75分)

湘南得点者:菊地俊介(19分)、梅崎司(37分)

 

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2018年のJ1リーグ

 

1位 川崎フロンターレ(69)

2位 サンフレッチェ広島(57)

3位 鹿島アントラーズ(56)

4位 北海道コンサドーレ札幌(55)

5位 浦和レッズ(51)

6位 FC東京(50)

7位 セレッソ大阪(50)

8位 清水エスパルス(49)

9位 ガンバ大阪(48)

10位 ベガルタ仙台(45)

11位 ヴィッセル神戸(45)

12位 横浜F・マリノス(41)

13位 湘南ベルマーレ(41)

14位 サガン鳥栖(41)

15位 名古屋グランパス(41)

16位 ジュビロ磐田(41)

17位 柏レイソル(39)

18位 V・ファーレン長崎(30)

 

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優勝争いでは前半戦では広島が独走していたが、広島は終盤戦で6連敗を含む9戦未勝利に陥った事で川崎が追い抜いて2連覇を果たした。ACL圏内には序盤は出遅れたものの、2018年のACLを制した鹿島が過密日程を戦い抜いて3位に滑り込んでいる。

残留争いは柏と長崎が自動降格、磐田は前年度までなら自動降格だったが、2018年からは入れ替え戦が復活した事で東京Vとのプレーオフに最後の望みを懸ける。12位横浜FMから16位磐田まで5チームが勝点41で並ぶという史上稀に見る大混戦だったが、結局第25節で【磐田1-6名古屋】というスコアになってしまった事がそのまま得失点差という形で両者の運命を分ける事になってしまったのだ。

 

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基本的に、J1では勝点40を取れば残留は堅いとされている。しかし16位の磐田は勝点を41積み上げており、当然これはJ1が18チーム34試合制になった2005年以降、降格圏内のチームとしては最多かつ現時点で唯一40点台に乗せたチームであり、これまで降格チームの最多勝点だった2012年に16位で降格した神戸の勝点39を抜いて過去最高となった。17位柏の勝点39という数字も、17位チームの勝点としては2012年にガンバが記録した勝点38を抜いて最多であり、最下位長崎が記録した勝点30という数字も最下位チームとしては過去最多かつ最下位チームとして初めて30点台に乗せたチームになっている(※21)。

 

※21 この記録は2019年に最下位の磐田が勝点31だった事で更新されている。

 

磐田にしても柏にしても、一つ歯車が狂えばここまでの事になるか……と、Jリーグの恐ろしさの全てを詰め込んだようなシーズンがこの年のJ1だった。これは下位争いだけでなく上位争いにも同じ事が言える。

2018年のJ1チームは大きく分けて2つに分けられた。「前半戦は好調だった(orそこまで不調でも無かった)が後半戦で大失速したチーム」「前半戦で出遅れたが後半戦で一気に巻き返したチーム」の2つである。神戸と仙台は前者、鹿島、浦和、マリノスは後者だろうか。そしてその中でも露骨にそれが当て嵌まったのが前者なら広島、FC東京、磐田、柏、後者ならガンバと名古屋、ラスト5試合を3勝2分で乗り切ったも入れていいかもしれない。ガンバに至っては前半戦は最下位も珍しく無かったが、第25節から9連勝を達成した事で順位は半分より上の9位、勝敗も14勝6分14敗のイーブンに戻す程の波だった。

要するに、この年は安定した力を見せつけたチームが殆ど居なかった。ガンバの9連勝や名古屋の7連勝のようにどこかで特大ブーストを仕掛けたり、広島や磐田、柏のように大ブレーキがかかったり。年間を通じて好調で居続けたチームは結局のところ川崎と札幌くらいだった。それを踏まえればこの年の王者が川崎だった事は自然というか当然の流れだったのかもしれない。

 

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その後…

 

16位に終わった磐田は翌週にヴェルディとのプレーオフに挑んだ。試合までの1週間を名波浩監督らは「地獄の一週間」とも表現したが、プレーオフではJ1とJ2の力の差を見せつけて残留に成功している。

 

2018J1参入プレーオフ決定戦

ジュビロ磐田2-0東京ヴェルディ

2018年12月8日14:04@ヤマハスタジアム

磐田得点者:小川航基(41分)、田口泰士(80分)

 

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だが翌年は開幕から不振が続き2度の監督交代を敢行。フェルナンド・フベロ監督体制になったシーズン終盤は巻き返したが、結局最後は最下位で降格を余儀なくされた。一方、2019年はJ2のステージで戦う事になった柏はネルシーニョ監督を再招聘。前半戦は苦しんだが夏頃からは本来の実力を発揮して11連勝を達成し、J2優勝を果たして1年でのJ1復帰を果たした。

最終節まで降格の可能性があった他の4チームは、湘南、鳥栖、名古屋の3チームは翌シーズンも再び最終節まで残留争いを余儀なくされている(※22)。最終的に湘南が16位となり、プレーオフで徳島に引き分けて何とか残留を決めた。

一方、事実上残留が決まっていたとはいえ最終節まで確定はしていなかったマリノスは、この年の終盤には確実に方向性が見えつつあったアンジェ・ポステコグルー監督のサッカーを継続し積極的な補強も敢行。その結果、2019年シーズンはこの年に撒いた種が開花して16年ぶりのリーグ優勝を果たす事になる。

 

※22 ただし名古屋に関しては得失点差の関係上、最終節の段階で残留は事実上確定していた。

 

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結局のところ、Jリーグを一言で表すとやっぱり「カオス」という言葉に尽きる。中断がいつまで続き、いつからJリーグが帰ってくるのかはまだわからない。が、帰ってきたその時はきっと当該サポには胃の痛いカオスがまた帰ってくる事だろう。今はその時を待つしかない。