RK-3はきだめスタジオブログ

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やるべきこと〜パリ五輪男子サッカーグループD第1戦 日本代表 vs パラグアイ代表 マッチレビューと試合考察〜

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半田陸、あなたの世界はまだまだ広く続く。

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューパリオリンピック 男子サッカーグループD第1戦、U-23日本代表 vs U-23パラグアイ代表の一戦です!

 

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サッカー界にとって、オリンピックは必ずしもトップオブトップの大会ではありませんし、一人のサッカー選手のキャリアにとってゴールになり得る大会とは言えない……日本も含めた多くの国が様々な事情にとって難航するように、何より年齢制限が存在するように、その部分は決して否定のしようがない現実。欧州のビッグクラブになればなるほど、五輪に選手を派遣することに抵抗を示したり………オリンピックサッカーという競技は、その宿命と向き合いながら歴史を紡いできました。

それでもこの大会は、日本代表の前に「U-○○」がついた最後の大会であり、同年代の同じ世代感覚を持つ選手達が共にフィールドに出る最後の大会であって、なによりサッカー界にとってどういう立ち位置であれどもこの舞台はオリンピック。オリンピアンという称号に心が踊らないアスリートは存在しないはずです。今日、パリの地を踏む戦士達はその権利を選ばれた者達。オリンピックというフットボーラーが大人になる前の最後の関門として聳え立つ凱旋門を潜り抜け、サッカーに捧げた青春のクライマックスをパリで盛大に彩るための冒険が始まります!

両チームスタメンです。

 

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日本は直前の親善試合となったフランス戦からはスタメンを2人しました。フランス戦ではCFに藤尾翔太を起用しましたが、今日はこの世代のエースである細谷真大がスタメンに復帰。また、フランス戦では左SBで散髪してきた半田陸が負傷離脱となった事で、同ポジションには大畑歩夢が起用されています。バックアップメンバーもベンチ登録できるルールに変更されましたが、今日はあくまで正式メンバー18人を出場登録としています。

 

 

 

本日の会場はフランス、ボルドーヌーヴォ・スタッド・ド・ボルドーです。

 

 

ボルドーには1938年と1998年のW杯会場となったスタッド・ジャック=シャバン=デルマスがありましたが、老朽化の兼ね合いもあって2015年に新たなジロンダン・ボルドーの新たなる本拠地としてオープンしてこのスタジアムがオープンしました。その後はEURO2016や2023年ラグビーW杯で使用されており、日本代表は今日のパラグアイ戦と次のマリ戦が2試合続けてこのスタジアムでの開催となります。

スタジアムの外観は1000本を超える白い柱で覆われる構造になっており、これはギリシャ神殿の松林をイメージして造られました。ちなみにこのスタジアムを設計したジャック・ヘルツォークは2008年北京オリンピックのメイン会場となった北京国家体育場、そしてミュンヘンアリアンツ・アレナも手掛けた人物です。

 

 

最初の決定機は日本。6分に右からのCKを獲得すると、山本理仁のボールにニアサイドで関根大輝がヘッド。しかしシュートはGKフェルナンデスが好セーブ。

その後、14分には一度相手にピンチを作られたものの、基本的には日本が陣形をコンパクトに保ちながら両サイドの斉藤と平河がいつでも勝負に出られる、それが頓挫してもSBやインサイドハーフがフォローに入れる態勢をキープしながら試合を展開する事ができていました。

 

 

 

そういう優勢な試合運びを続けていた中で試合が動いたのは19分でした。内寄りのポジションで斉藤がフリーでボールを受けると敵を引きつけてから左サイドにスルーパス。走り抜けた大畑歩夢の折り返しを受けた三戸舜介がボールをしっかり収めてからフリーの条件で狙い済ましたシュートを決め切って先制!!

斉藤→大畑→三戸の流れの美しさもさることながら、エリア内で三戸にかかるプレッシャーを軽減させた細谷の相手DFをブロックする動き。チームとして完璧な流れでまず1点を奪います。

 

 

得点直後にも藤田のスルーパスに斉藤が決定機を作るなど日本ペースの時間は続き、更に25分には平河に対するワイルダービエラのプレーがVAR介入の末に一発退場!攻勢ムードに先制点、さらに数的優位も獲得するなど、ここまでは全ての風が日本の背中を押すような展開に。

しかし、そのプレーの際に平河が脚を痛めた事で途中交代。両翼の突破力はチームの中で一つの武器としていた事から、日本は理想的な展開の中で突如として大きな痛手を背負うことに。日本は平河を下げ、平河同様にこれまでは左での起用が多かった佐藤恵允を投入。

 

 

 

アクシデントもあった日本は、数的不利になったパラグアイがロングボールを多用するシンプルな攻撃を多用してくるもしっかりと攻撃の行き先にケアを怠らずにプレーして封殺。攻撃面ではパラグアイのプレスが緩くなった事でボールも落ち着いて回るようになって前半終了。

平河のアクシデントを除けば理想通りの45分を終えます。

 

 

後半はパラグアイがギアを踏み込むようにプレスの行き先を限定しつつ、限定したコースに対しては強度高く注力していくようにプレスをかけてきたことで、後半の立ち上がりはパラグアイに押される展開になっていきました。

実際に日本のビルドアップに対してパラグアイが狙いを絞り、行くところは行くことを徹底したようなプレスに日本は苦しみ、そこからのクロス攻勢や立て続けのセットプレーを前に日本は耐える時間が続いていましたが、日本は木村と高井の2CBがどちらかは当たる、そしてもう一人は中盤も引き込んでカバーに入るという良い守備の連動を見せて耐えていきます。

 

 

 

しかし耐える時間をしっかり耐えてパラグアイの鋭さがまた少し鈍り始めると、日本はまたサイドから陣地回復を図り前線に押し上げる…押し下げるというより、一度前に出るチームとしてのアクションに体力を注いだパラグアイを再び押し戻すようにサイドから押し込んでいきました。

その時点で何度かクロスからの攻撃でチャンスを作れていた中、63分には大畑のクロスを受けた斉藤が自ら抉る突破を見せてクロス。ファーサイドで待っていた三戸が頭で押し込んで追加点!!劣勢の時間もあった中で陣地を回復し、そしてパラグアイの心を折るような追加点!!更に日本は69分にも右サイドで持ち出した佐藤の折り返しを斉藤が落とし、走り込んだ山本のコントロールショットで3点目!!

 

 

大岩剛監督は3点目を取った後に川﨑颯太、藤尾翔太、荒木遼太郎を同時に投入すると、川﨑が得たFKを荒木が蹴って藤尾が合わせるあまりにも出来すぎたゴールで4点目。さらに完全に戦意を喪失したようなパラグアイを相手にやるべき事を徹底し続けた日本は87分にもカウンターから藤尾が押し込んでとうとう5-0!ゆ、夢のスコア…。

 

 

5-0になったとて最後までしっかりと集中力を保ち、最後はしっかりとゲームをコントロールして針を進める工夫も見せた日本。圧倒的、完璧なスコアと内容!これ以上ない形で日本は初戦を制しました!

 

 

 

素晴らしかった。初戦の振る舞いとして完璧でした。かつて国際大会の初戦でここまでの結果と内容を見せた大会は他に無かったと思います。5-0というスコアになったのは相手が退場した影響が大きいとはいえ、11人vs11人だった段階からしっかりと勝利に値するサッカーが出来ていましたし。

まず日本はコンパクトな陣形をキープしながら、最終ラインを常に高い位置に敷く状態をしっかりとキープしていました。基本的にパラグアイはキックオフ直後の0-0の状況では構えてくる事が予想されましたし、その上で高い位置にポイントを置きながら糸口をこじ開ける攻撃が出来ていた。WGがいつでも突破できる状態を作りつつ、バイタルエリアが結構余裕を持ってボールを持てるスペースが多かったので、そこで様々なアクションをしながらSBの攻撃参加を引き出す事も出来ていた。引いた相手をどう崩すかの簡単で、高い位置にポイントを置いて相手がもう出てこれないようにする……細谷の隠れたファインプレーを含め、1点目はまさしく理想的なゴールだったと思います。

WGや三戸は積極的に仕掛けようとする場面も多かったですが、パスコース然り取られた時のカバーやフォロー然り、SBやインサイドハーフが常にフォローにいた。攻撃時に必ず複数の選択肢を確保していた事も見逃せないポイント。基本的に大岩ジャパンは4-1-2-3でよく言うところの「6番・8番・10番」の役割分担をハッキリさせている事が特徴的なチームですが、ベンチスタートだった川﨑や荒木を含めてチーム立ち上げ時からほぼ同じメンバーなんですよね。動く選手・配球役・回収役のバランスが自然に回っていたのはコンセプトと練度の賜物でしょう。

 

 

もう一つ特筆すべきは後半開始から2点目を奪うまでの流れです。

後半開始からの15〜20分ほどは今日の日本で唯一と言っていい良くない時間帯でした。ハーフタイムは言うなれば流れを一度強制リセットできるタイミングですから、パラグアイがそこでしっかりとギアを入れつつ、プレスの掛け方を整理してきた。後半のパラグアイのプレスに対する対応は日本も拙いところがあったので、そこは今後に向けて改善していかなければならないポイントでしょう。ただ、日本が元々ロングボール対応を苦手とするチームだった…という事を踏まえた時に、フランス戦から続く今日のあの時間帯の守備とチームとしての振る舞いは秀逸でした。

相手がロングボール攻勢を仕掛けてきた時、放り込まれる事とそれによって押し下げられる事…理想で言えばそれさえも回避できれば一番良いのですが、それはそんなに簡単じゃないですし、おそらくこれまではそこを回避する意識が強いあまり、かえって状況を不利にさせていた部分はあったと思います。ただ今日は、放り込まれて押し込まれることはある程度仕方ないと割り切った上でどこを潰すのか、どこまではステイするのかの線引きと意思統一をしっかりやっていた。例えばロングボールの行き先にいるFWに対してCBの木村か高井は必ず潰しに行く。その上でもう一人のCBは後方をカバーし、中盤やSBの選手が近くをフォローする……そういう「誰がどこに行ったら自分はここに動く(自分は待つ)」という動きをチーム全体が実に自然にやれていました。その上で焦れずに機を待ち、パラグアイの鋭さが鈍ったところで反転攻勢に出ていく。チームとして一貫したその振る舞いは実に鮮やかでした。

考えてみたら、こういう展開はフランス戦でもありましたし、フランス戦でもしっかりとそういう対応を実現できていたんですよね。今日は選手からしても「フランスよりは対処しやすい」という感覚もあった事でしょう。最終的に5点も入りましたし、そういう大勝やゴールラッシュにフォーカスが当たる試合になりましたが、後半開始から2点目が入るまでの守備とチームとしての振る舞いは高く評価されるべきでしょう。

 

 

 

考えてみたら、大岩監督って「やるべきこと」という言葉を多用しているんですよね。メディアでもよく見られますし、TeamCamで配信されたチームへのミーティングでもその言葉を使用している。

今日の試合では試合序盤の引いてくる相手にどう仕掛けるかであったり、前述した後半開始から2点目に至るまでの振る舞いであったり、そして5点目の藤尾のゴール然り……今日の試合は個人とチームが、試合の状況や展開のその時々に応じて「今この状況でやるべきこと」を認識し、そして実践してみせた。「やるべきこと」大枠としてこのチームが持っているコンセプトであり、その中身を状況に応じてしっかりと詰めていく。以前ブログに書いたカタールW杯の日本代表にも通じる話ですが、そういうやり続けたアプローチがしっかりとピッチ、内容、そして結果に反映されたゲームでした。あっぱれ!

 

 

内村航平の認知をもらう三戸舜介

ではでは(´∀`)