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東口順昭という男

 

 

西野朗が率いてガンバ大阪というチームは、常に欠点が守備と言われ続けていた。

 

サッカーダイジェストなどのサッカー媒体がオフシーズンになるたびに行われる補強戦略的な記事において、常にガンバの補強ポイントはゴールキーパーと書かれるほどに。

ただ、GKはそのポジションの特異性もあって正GKクラスが移籍する事は頻繁には起こらないし、仮に起これば2014年のJリーグのように玉突き移籍続出、キーパー大シャッフルのような状態になる。

そんなガンバが、その2014年に獲得したGKが東口順昭である。

 

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西野体制で正GKを務めた松代直樹にしても藤ヶ谷陽介にしても、優勝を争うチームの正GKとしてどうなのか、という点においてはまだしも、一部で言われているほど実力が最初からダメダメなGKという訳ではなかった。

ただ、西野体制は圧倒的な攻撃力の反面、守備を疎かにしがちな部分はあって、守備戦術は宮本恒靖山口智といったクレバーなディフェンスリーダーの統率に委ね切る形で、後は加地亮明神智和など、守備の個人能力の高い選手にほぼ任せるような形であった。

 

当然最終的にしわ寄せはGKにくる。

前述の2人はダメダメなGKではなかったが、スーパーなGKという訳でもなかった。

ガンバの守備はもはや、スーパーなGKが来なければ解決しないような状態であった。

 

そして2012年、間違いなく大きな神通力を持っていた西野朗監督の退任と同時に守備の統率を一任されていた山口智が退団。

これに伴いセンターバックで獲得した今野泰幸山口智のそういう役割を担えるタイプではなかったため、守備は崩壊の一途を辿る。

藤ヶ谷は耐え切れずにミスを連発し、「ガヤる」という造語まで生まれ、そのまま降格してしまった。

 

 

 

降格した2013年、長谷川健太監督の就任と同時にガンバの守備はかなり改善された。

しかし再びJ1に挑むにあたって、GKはどうしても獲得しなければいけない。それもガンバの歴史を変えれるようなスーパーなGKを…

 

そこで獲得したのが、かつてガンバ大阪ジュニアユースで家長昭博安田理大らとプレーし、本田圭佑とともにユースへの昇格を逃した東口順昭だった。

 

   

彼も挫折経験から相当な努力を重ね、アルビレックス新潟でも2度の大怪我を乗り越えてガンバに帰ってきた。Jリーグにおいて今ほど絶対的な存在ではなかったが、アジアカップ以後のザックジャパンでも何度か招集されている。(ちなみに東日本大震災チャリティーマッチの伝説のカズゴールの時に日本のGKだったのも東口。)

 

長谷川体制のガンバは守備戦術を徹底して植え付けたので、東口が代表で不在だった試合でも示したように、藤ヶ谷でも安定したプレーは十分にできていた。

それでも、攻めの比重を減らした分、攻められる時間も増えたガンバにおいて、欠けていたピース、数年前から探し続けていたピースこそが東口順昭という男だった。

 

2014年の7連勝を決めた川崎戦、2017年のホームFC東京戦、彼のお陰で勝ちを掴んだ試合は数え切れない。特に2015年のチャンピオンシップ浦和戦での活躍は日本サッカー史に間違いなく残る活躍っぷりで、今なおガンバファンの心に残り続けているし、浦和ファンにとってはトラウマにすらなっているかもしれない。

 

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キーパーとしての確かな技術だけでなく、その気迫こもったプレーはガンバファンの心を一気に鷲掴みした。

 

4月の大阪ダービーでは前半で負傷退場の憂き目にあった東口だったが、あの時の選手、そしてスタジアム全体は「東口のために勝ちたい」という気持ちで1つになっているようだった。

そう思わせてくれるような貢献をこれまでガンバにしてくれていたのだから、当然だろう。

 

   

それだけにガンバファン、そして新潟のファンは彼のタイミングの悪さというものを、本人以上とは言えないけれど自分の事のように悔しがっていた。

 

新潟時代、ザックジャパンで3月のチャリティーマッチ、6月のキリンカップに連続した招集され、代表定着の兆しが見えていた矢先に全治8ヶ月の大怪我を負ってしまう。その離脱の感に、ザックジャパンのGKは川島永嗣西川周作権田修一の3人で固まってしまっていた。

 

その後ガンバに移籍し、ブラジルW杯以降は代表に定着したが、川島・西川という既に出来上がっていた序列をなかなか崩し切れず、川島がスランプで代表から外れていた時期はそのまま西川が正GKの座を射止めていた。

その西川が浦和で大スランプを迎えていた中で訪れたアジア最終予選のアウェイUAE戦、当時のハリルホジッチ日本代表監督は西川を外し、東口をスタメンで起用する事を決めていたという。上でも述べた、2017年のホームFC東京戦の直前の事だ。

 

この試合の東口もまさしく神がかっていた。

後半、大久保嘉人のPKをストップ。そのこぼれ球に顔面から突っ込んだ結果、ゴールは守ったものの負傷してしまい、UAE戦の出場は叶わなくなる。しかもその試合でスクランブル的に出番を得た川島はMVP級の活躍を見せ、守護神の座に返り咲いていた。

 

そんな中で東口を襲ったのが大阪ダービーでの負傷だったから、最高に気持ちいい勝利を掴んだ後でもどこかみんながスッキリし切れていなかったからだった。

これまであれだけ、ガンバの為に力を尽くしてくれた東口が、彼にとって人生で1番大きな舞台に上がらなくなるとなれば、あまりにも辛すぎる...

 

しかしそれでも、東口という不屈の男は帰ってきた。

そして復帰戦となった横浜戦では、自分の存在を見せつけるかのような大活躍...

W杯メンバーに無事に選出され、ガンバファン全員がとても喜んだのは言うまでもない。

 

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今の日本代表の正GKは川島永嗣である。

フランスの所属クラブは降格してしまったが、川島個人のプレーは悪くなかったし、実績なら日本で川島以上と呼べる選手はいないし、それ自体に文句はない。

 

だけど叶うのなら、W杯の舞台で、ピッチで躍動する東口を見てみたい気持ちはとても強くある。

宇佐美にしても東口にしても舞台は出来上がった。

もう1つ先のステージに突き進む姿を見れたら、もうそれだけでロシアW杯を見る価値はあったんじゃないかと、個人的には思ってしまう。

 

 

 

ではでは(´∀`)