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甲子園をどうしても中止するしかなかった3つの理由

やたらと深爪になる。

 

どーもこんばんは

 

さてさて、夏の全国高校野球選手権が中止される事になってしまいそうです。

 

www3.nhk.or.jp

 

このブログを書いている今は5月20日の14時を少し過ぎたところなので正式発表はされていませんが、夕方からは会見も予定されているようですし、中止は既定路線になっていると考えていいでしょう(追記:ブログ更新したタイミングで中止が発表されました)。報道自体は少し前から出ていて、開催を求める署名活動が行われた際には賛否両論も出ていました。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

夏の甲子園といえば、今や「部活スポーツ」の範疇を超えて日本という国の夏・お盆の風物詩と化した感もあります。それは一部で既に報じられているように…というか言われずともそうだろうなって感じですが、アマチュアスポーツではぶっちぎりで経済的損失が大きいという点も物語っていますね。春のセンバツが中止になった時点で、甲子園球場近くの宿泊施設の経営がかなり傾いた…なんて話も聞くくらいですから、夏の甲子園となればその影響は更に甚大です。

 

感情的な事を言えば、今年の高校3年生は本当に気の毒だと思います。インターハイも中止になった以上それは野球部員に限らず、各スポーツ夏の全国大会に出る為に3年間を捧げ、そもそも部活の為に高校を選んだ人もいるはずで、大学の推薦やプロ・実業団云々の話を考えても、彼らにとって今回の新型コロナウィルスに関しては「余りに理不尽な誤算だった」と言えるでしょう。

しかしそれでも中止にしなければならなかった、中止にするだけの理由はあった事が今回の決定に繋がったのです。中止という決定を通達された選手達には迂闊にかけるべき言葉もわからない一方、一意見として中止に対して「賛成」「反対」を問われたら「賛成」と答えるしか無い…というのが現状でもあります。

実際、プロ野球は6月や7月の開幕を検討している事を踏まえると、8月開幕の甲子園は無観客でさえあれば試合開催そのものは可能かもしれません。ただ、これはこの後に挙げる理由にも共通してくる事柄ではありますが、現状を踏まえると「試合」は開催出来ても「大会」を開催する事は困難であると言わざるを得ないからです。

 

理由を突き詰めると結局はそこに行きついてしまいますが、バッサリ「コロナ禍だから」「第2波来るかもしんないから」と斬り捨てるのもアレなので、「それでも甲子園を中止しなければならなかった理由」を3つに分けて書いていこうと思います。

 

目次

①予選のスケジュールが組めない。

②試合前、試合後の対策を各部活でするのが困難。

③日本中の各地域から大人数が来るという事と、その上で日本中の各地域に大多数が帰るという事。

 

 

 

①予選のスケジュールが組めない。

 

ご存知の通り、夏の甲子園は「各都道府県で予選大会を行う」→「各都道府県で優勝したチームが全国大会へ」という流れになります。各都道府県によってスケジュールは多少変わりますが、当初は8月10日に予定されていた甲子園の開幕に向けて、それぞれ6月下旬〜7月下旬くらいを目処に日程を消化するのが通例です。

 

ある時期から夏の高校野球が余りにもショービジネスと化した事で見落とされがちですが、高校野球は基本的にはあくまで「部活」であり、本来はあくまでも「学校活動の延長」というポジションに位置します。平日に公式戦が行われる場合は公式戦の為に学校を欠席扱いにならずに休める公休の取得も出来ますが、それも結局は生徒側が学校側に申請する形になっている訳で、部活の為にその高校を選んだとしても「部活<学校」の構図を覆す事は出来ません。

現状、コロナ禍により母体とも言える学校のスケジュールも大きく変わりました。緊急事態宣言が解除されつつある現在では6月なり9月なり、或いは夏休みの短縮なりで学校の再開を検討され始めていますが、それらのスケジュールを甲子園に合わせて組み立てる事なんて出来る訳無いですし、そうなると本大会はおろか、予選なんて差し込むスケジュールが無くなってくるのです。全国の高校生は野球部よりも野球部では無い人間の方が圧倒的に多い訳で、学校が始まっても無いのに野球部の大会だけ始まるという構図にも疑問を持つ人は多いでしょうし、「高校野球の前提」にある問題をクリアできない以上、予選も含めた大会の開幕が出来ないのです。

それこそ、学校の再開時期は各都道府県の感染状況などによって一律ではありませんから、地域毎に予選開催方式も大きく変わります。その部分での公平性がぐちゃぐちゃになる…というのも理由の一つでしょう。

 

 

 

 

②試合前、試合後の対策をするのが困難。

 

「三密」の観点で言えば、基本的に接触プレーの少ない野球は団体競技の中では比較的ソーシャルディスタンスを確保できる競技ですし、無観客でもいいから…的な声はそこから来ている部分もあると思います。実際、プロ野球は甲子園の開幕予定日よりも早い段階からのリーグ開幕を検討している訳で、プロなら良くてなぜ甲子園は?的に思う人もいると思います。

その理由は主に2つです。

 

 

 

一つ目は各高校に求められる対策の問題です。

例えば国も競技も違うので一概に比較出来ませんが、既にリーグが再開されたドイツ・ブンデスリーガでは様々な対策が練られた超厳戒態勢の中で試合が行われました。それが今の高校野球に出来るのか、という話で、それは試合開始の2時間前後にとどまる話でも無いのです。

 

高校の部活は会社では無いので、その資金には限りがあります。甲子園出場を決めた高校がOBに寄付金を募るのはその典型的な例と言えるでしょう。超の付く強豪校ならまだしも、それは片手で数えられるかどうかくらいで、多くの高校は全国大会費用の問題に直面します。甲子園の位置する兵庫県を始め、近畿地方の学校なら日帰りでも行けるでしょうが、問題は宿泊を伴う遠方の高校です。

試合を開催するには移動時からホテル滞在時までの全てで三密への対策が求められます。むしろ試合中の方が何とかなる可能性はあっても、問題は試合の前後です。チーム自体が一つの企業でもあるプロはなんとかここをクリアする事が出来る一方、単体では営利組織では無い部活にそれを求めたところで応えられるだけの体力があるかと言われれば微妙で、野球に力を入れている事が内部に対しても前提となっているような私学ならまだしも、公立高校なら特に甲子園に出たからといって野球部だけに予算を集中投下できる、求められる感染対策をするにあたって生じるコストを賄える高校ばかりではないのです。高野連が援助するにしても限りはあるでしょうし、学校側も予算の追加投入はしたとしても、その額や比率によってはただでさえ受験や授業の遅れを被っている他の生徒やその父兄からすれば「野球部をそこまでなぜ厚遇する?」という話になるでしょうし。そういった意味で足並みが揃わない、統一基準を全ての高校が満たせる保証がないのです。

 

第2波が来るにせよ来ないにせよ、楽観的に見積っても少なくとも秋までは全ての場面において三密を回避する為の行動は絶対的に求められるでしょう。しかし遠方から甲子園に遠征してくるチームにとって、三密を避ける事を踏まえて行動するとするとこれまでに無かったコストが一気に嵩み、全校生徒の大多数を占める非野球部の生徒との兼ね合いも踏まえると、その要求に応えられない現状があるのです。

 

 

 

③日本中の各地域から大人数が来るという事と、その上で日本中の各地域に大多数が帰るという事。

 

前述の②ともリンクしてくる話ですが、夏の高校野球兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で全試合を行う大会方式になっています。無観客で行うとしても、ベンチ入り選手18人にマネージャー、監督を含めた引率者などを含めると25人前後の人数が各都道府県から兵庫県に移動してくる形になります。開会式、及び大会1回戦が行われる第1週目には、チームに帯同する人数を25人とすると25人×出場49校で約1225人が兵庫県西宮市に一気に押し寄せる事になるのです。

言い方は悪いですが、1225人もいれば誰かが「ジョーカー」である可能性は十分にありますし、そもそもこれを書いている時点ではまだ緊急事態宣言発令中である兵庫県で誰かがウィルスを貰ってしまう確率もグンと上がります。そして何より問題なのは、最終的にはこの1225人がそのまま各都道府県に帰るのです。要するに、第2波をある程度抑えられたとしても、夏の甲子園クラスターどころか第2波を勃発するポイントになる可能性を現時点で否定できず、甲子園そのものが新たなウィルス培養施設みたいになってしまう可能性さえあるのです。

 

加えて、対策をしようにも高校野球には②のような事情があってそれを十分に出来ないのです。確かに、この為に3年間をかけた球児達に罪は無いので「諦めろ」と斬り捨てるのは酷でしょう。迂闊に「気持ちはわかる」というのも憚ります。しかし、他に言葉を探すとしても「仕方ない」という言葉しか浮かばないんです…。

 

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ただ、単位としては…高校球児というよりも今年の高校3年生すべて、という面で見るべきかもしれません。インターハイの中止で人生が多く狂った生徒もいるでしょうし、受験しかり、各学校行事しかり。