抽選会──それはまるで、麻薬のような興奮を覚えるイベント。
W杯で味わえるのが熱狂や恍惚とした喜びであるならば、抽選会で得られる興奮はスリル。感覚としてはもはやパチンコに近いです。
明日、そして半年後の全てを委ねるという意味でも。
4年前のことを覚えているでしょうか。
グループFの第4枠、日本か、韓国か。
日本人も韓国人も、どちらも同じ事を思った事でしょう。
「呼ばないでくれ…!!」
日本「サウスコリアって言え!」
韓国「ジャパンって言え!」
えらいひと「サウスコリア」
日本「ああああああああ(歓喜)」
韓国「ああああああああ(絶望)」
さてさて、オーストラリア戦の勝利でなんとかカタールW杯の出場を決定させた日本代表。
しかしW杯関連の話題はまだまだ止まりません。4月1日25:00(4月2日1:00)より、2022FIFAワールドカップカタール大会の抽選会が行われます。
全ての出場国にとって、或いは全てのチケットホルダーにとって、その全てを決めると言っても過言ではない運命の第一歩…W杯に繋がるこのイベントには、試合とは異なるドキドキがいつもありますね。
そして誰もが望む事はただ一つ。死の組に入る事、それだけは避けたいと。
一方、抽選会が一番盛り上がり、そして当事者ではないファンが一番見たいのは死の組である事も事実。残留争いと一緒ですね。高みの見物ならこれほど楽しいものはないぞと。
という訳でですね、今回のブログでは新三大、21世紀のFIFAワールドカップを震撼させた死の組を選び、それを振り返っていきたいと思います。
筆者がリアルタイムで見たW杯はドイツW杯からでございまして。あまり昔過ぎると少し実感として持ちにくい部分があるので、今回は21世紀以降(日韓W杯以降)のみを対象とさせて頂きます。
↓
【本命か最人気か…偶然には出来すぎたカタルシスグループ爆誕】
#1 2022年日韓W杯のグループF
1位 スウェーデン
2位 イングランド
3位 アルゼンチン
4位 ナイジェリア
第1戦
アルゼンチン1-0ナイジェリア
第2戦
アルゼンチン0-1イングランド
スウェーデン2-1ナイジェリア
第3戦
スウェーデン1-1アルゼンチン
ナイジェリア0-0イングランド
W杯史上初の共催となった日韓W杯だが、それは即ち、本来なら第1ポッドに入らないであろうチームが2つも第1ポッドに入るという事でもあった。その結果生まれたグループFはW杯史上の中でも最も過酷なグループと言っても過言ではない。更に言えば、単なる強豪が固まったグループというだけでなく、そこに至るまでのドラマや因縁も含めてあらゆる要素が揃い過ぎたグループで、このF組が日本開催だった事に狂喜乱舞した日本人が多数いたのは想像に難くない。
マルセロ・ビエルサ率いるアルゼンチンはフランスと並んで優勝候補本命と目されており、第2ポッドに回ったとはいえ、イングランドもデイビッド・ベッカムを筆頭に「イングランド史上最強」とも称される豪華な顔触れが揃っていた。何より、前回大会となるフランスW杯ベスト16でのアルゼンチンvsイングランドの試合はベッカムの一発退場などでも知られる世紀の激闘で、そのリベンジマッチという意味でもこの試合が札幌ドームで行われた事は歴史的な事柄だったと言える。そして残りの2チームもヘンリク・ラーションとフレドリック・リュングベリという当時のワールドスター2人を擁するスウェーデン、フランスW杯ベスト8かつ、アフリカ最強として当時のウイニングイレブンで最も使われたチームの一つだったナイジェリア…抽選会前によくシュミレートする「最恐の組み合わせ」がまさに実現したのだった。
結果としては、そのアルゼンチンとイングランドの直接対決が大きなポイントとなる形になった。アルゼンチンは初戦でナイジェリアに勝利しながらもイングランドに敗れ、最終節はスウェーデン相手に圧倒的に攻めながらも1-1のドロー。優勝候補本命の旅路は宮城スタジアムの曇天の下で終わった。
【開催国涙目!どうしてこうなった……】
#2 2010年南アフリカW杯のグループA
1位 ウルグアイ
2位 メキシコ
3位 南アフリカ
4位 フランス
第1戦
南アフリカ1-1メキシコ
ウルグアイ0-0フランス
第2戦
フランス0-2メキシコ
第3戦
フランス2-1南アフリカ
メキシコ0-1ウルグアイ
開催国は必ず第1ポッドに入るルールになっており、それは比較的優位なグループに入れるという事を意味する。2006年ドイツW杯まで「開催国は必ず決勝トーナメントに進出する」という流れがあったが、そこにはこの制度の恩恵は少なからずあった。
当然、南アフリカもそれを期待していたはずなのだが……抽選の結果、彼らのグループAはポッド1として考えられる最悪の組み合わせにほぼ近い結果に。開幕戦こそメキシコと引き分けて、開催国の初戦無敗記録こそ守ったが、続くウルグアイ戦は0-3の完敗。最終節こそニコラ・アネルカとレイモン・ドメネク監督の確執に端を発するボイコット騒動などの内紛で壊滅状態となったフランスに勝利したが、開催国として初めてグループステージ敗退の憂き目に。開催国としてはちょっと気の毒なグループだった。
【"草刈り場"の反逆…アップセットは突然変異!】
2014年ブラジルW杯のグループD
1位 コスタリカ
2位 ウルグアイ
3位 イタリア
4位 イングランド
第1戦
イングランド1-2イタリア
第2戦
イタリア0-1コスタリカ
第3戦
イタリア0-1ウルグアイ
元々この大会はイタリアやイングランドの他にも、フランスやポルトガル、オランダといった国がポッド2になっていた事もあり、抽選会前から死の組が続出すると言われていた(実際にA・B・Gグループもなかなかの死の組になった)。更にチーム数の都合により、抽選でイタリアが下位ポッドに移動という緊急事態が発生し、あろう事かウルグアイとイングランドのグループに入ってしまう。ウルグアイ、イングランド、イタリア…この3チームのうちのどこかがグループステージ敗退という状況に、リアルタイムで大きな衝撃が走った。
そして全員の感想は「コスタリカお気の毒」というところだった。実際、誰もがこの時点でコスタリカは草刈り場、極端な話、コスタリカ戦で何点差で勝てるかが勝敗を左右するとまで言われていた。しかし蓋を開けると、コスタリカは初戦でウルグアイに逆転勝利を収めるという衝撃的なスタートを切る。続くイタリア戦も1-0で勝利し、まさかの2連勝という誰もが予想だにしなかった展開でコスタリカが衝撃の一抜けを達成したのだ。その後コスタリカは、ベスト16でもギリシャをPK戦で倒し、ベスト8ではオランダにPK戦で敗北。PK戦は記録上引き分け扱いになるので、草刈り場と称されたコスタリカは無敗のまま大会を去ったのである。
2連勝のコスタリカの突破と2連敗のイングランドの敗退が早々と決まったので、イタリアとウルグアイと直接対決に残る一枠は委ねられた。ウルグアイが1-0で勝利して2位通過を決めたこの試合こそ、ご存じ第三次スアレス噛みつき事件の試合であり、この試合から4ヶ月の出場停止を喰らう事となった。
さぁ、今回はどんなドラマが生まれるのでしょうか…。
抽選会、ツネ様も行くのね。
ではでは(´∀`)