さてさて、今回も前回に引き続き、20年前の日韓W杯のハイライト企画です。
フランスvsセネガルの開幕戦からドイツvsブラジルの決勝戦まで、日韓W杯がどういう流れで進み、どういう経緯で結果が出たのか…を、当時のスター選手や勢力図も踏まえながら振り返っております。
前回がA〜D組の韓国ブロック編でしたので、今回はE〜H組の日本ブロック編です!
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【グループステージ日本ブロック編】
【グループE】
1位 ドイツ(7)
2位 アイルランド(5)
3位 カメルーン(4)
4位 サウジアラビア(0)
【主なスター選手】
[ドイツ]
GK1 オリバー・カーン(バイエルン・ミュンヘン)
GK12 イェンス・レーマン(ボルシア・ドルトムント)
MF8 ディートマー・ハマン(リバプール)
MF13 ミヒャエル・バラック(バイヤー・レヴァークーゼン)
[サウジアラビア]
[アイルランド]
DF3 イアン・ハート(リーズ・ユナイテッド)
[カメルーン]
DF8 ジェレミ・ヌジタップ(レアル・マドリード)
FW10 パトリック・エムボマ(サンダーランド)
【主なブレイク選手】
[ドイツ]
FW9 ミロスラフ・クローゼ(カイザースラウテルン)
DF21 クリストフ・メッツェルダー(ボルシア・ドルトムント)
[アイルランド]
GK1 シェイ・ギヴン(ニューカッスル・ユナイテッド)
FW10 ロビー・キーン(リーズ・ユナイテッド)
【後にスターになった選手】
[カメルーン]
優勝候補の常連としてお馴染みのドイツだが、この時は谷間世代的な印象が若干強く、予選でも大苦戦を強いられていた事で前評判はあまり高くなく、優勝予想に上げる人も多くはなかった。しかし、アイルランド・カメルーンと同居した事で敗退すら予想されていた中で蓋を開けると、初戦のサウジアラビア戦でなんと8-0という記録的なスコアで圧勝。8-0の事を「サウジスコア」と称するネットスラングの由来はこの試合である。続くアイルランド戦こそ終了間際の失点で勝点を落としたが第3戦ではカメルーンに勝ち切り、クローゼというニュースターも誕生しながら盤石の首位通過を決めた。
2位争いはシドニー五輪の優勝メンバーを多く揃えたダークホース候補で、大分県中津江村でのキャンプにより注目度も高まっていたカメルーンと、ポルトガル・オランダと同居した欧州予選を2位で通過したアイルランドの争いとなったが、アイルランドはドイツに対して終了間際のロビー・キーンのゴールで勝点1を拾ったのに対し、カメルーンはドイツに0-2で敗れたというドイツ戦の結果がそのまま反映される形でアイルランドが2位で通過。アイルランド史上最高の選手であるロイ・キーンが、大会直前にチームを追放されるトラブルがあったながらも見事なパフォーマンスを見せた。サウジアラビアは衝撃のドイツ戦に始まり、屈辱の3戦全敗で1得点も挙げられなかった。
なお、第3戦のカメルーンvsドイツの試合ではイエローカードが16枚提示され、これは今でもW杯最多記録タイである。退場者はカメルーンとドイツにそれぞれ一人ずつ出た。
【グループF】
1位 スウェーデン(5)
2位 イングランド(5)
3位 アルゼンチン(4)
4位 ナイジェリア(1)
6月2日 アルゼンチン1-0ナイジェリア@茨城
【主なスター選手】
[アルゼンチン]
FW7 クラウディオ・ロペス(ラツィオ)
DF8 ハビエル・サネッティ(インテル・ミラノ)
FW9 ガブリエル・バティストゥータ(ASローマ)
MF11 ファン・セバスティアン・ベロン(マンチェスター・ユナイテッド)
[ナイジェリア]
DF6 タリボ・ウェスト(カイザースラウテルン)
MF10 オーガスティン・オコチャ(パリ・サンジェルマン)
[イングランド]
DF5 リオ・ファーディナンド(リーズ・ユナイテッド)
MF7 デイビッド・ベッカム(マンチェスター・ユナイテッド)
MF8 ポール・スコールズ(マンチェスター・ユナイテッド)
FW10 マイケル・オーウェン(リバプール)
[スウェーデン]
FW11 ヘンリク・ラーション(セルティック)
【主なブレイク選手】
[イングランド]
【後にスターになった選手】
[アルゼンチン]
[イングランド]
MF18 オーウェン・ハーグリーヴス(バイエルン・ミュンヘン)
MF19 ジョー・コール(ウェストハム・ユナイテッド)
[スウェーデン]
FW21 ズラタン・イブラヒモビッチ(アヤックス・アムステルダム)
W杯史上最恐と評しても過言ではない死の組。予選での苦戦からポッド1を逃したとは言え、新旧世代の融合で充実したスカッドで日本に乗り込んできたイングランド、ラーションとリュングベリという2人のスーパースターを擁した北欧の強豪スウェーデン、1996年アトランタ五輪を制覇した面々が円熟期に突入し、当時のウイイレ大人気チームでもあったナイジェリア……そこにマルセロ・ビエルサが率いる、フランスと並んで優勝候補筆頭と目されたアルゼンチンが組み込まれた。何より歴史的な因縁を持ち、前回大会ではW杯史に残る死闘も演じたアルゼンチンvsイングランドのカードがグループステージで実現するサプライズに抽選会の時点で衝撃が走った。
その因縁の対決が札幌ドームで実現したのは第2戦。バティストゥータのゴールで初戦を制したアルゼンチンは勝てば突破を手中に収められる状況だった。しかしこの大会のメインキャストであり、そして4年前のアルゼンチン戦への悔恨を誰よりも持つベッカムがオーウェンが獲得したPKを沈めて1-0で勝利。初戦でイングランドと引き分けたスウェーデンがナイジェリアを下した事でイングランドとスウェーデンが共に勝点4となり、勝点差3のアルゼンチンは1試合で一気に崖っぷちに追い込まれる。
曇天の宮城スタジアムで行われた最終戦、勝利が絶対条件のアルゼンチンは前半からスウェーデン相手に猛攻を仕掛け続けるが、得点を取らないまま後半に入るとアンデシュ・スヴェンソンに直接FKを叩き込まれて失点。終了間際にオルテガのPKが阻まれたところをクレスポが押し込んで同点に追い付くがあと一歩及ばず。スウェーデン同様に引き分け以上で突破が決まる他会場のイングランドはナイジェリア相手にそのタスクを完遂し、フランスとアルゼンチンという優勝候補の二大巨頭が共にグループステージで散るという衝撃の展開を迎えた。
【グループG】
1位 メキシコ(7)
2位 イタリア(4)
3位 クロアチア(3)
4位 エクアドル(3)
6月13日 メキシコ1-1イタリア@大分
【主なスター選手】
[イタリア]
GK1 ジャンルイジ・ブッフォン(ユベントス)
DF3 パオロ・マルディーニ(ACミラン)
DF5 ファビオ・カンナヴァーロ(パルマFC)
FW7 アレッサンドロ・デル・ピエロ(ユベントス)
FW9 フィリッポ・インザーギ(ACミラン)
FW10 フランチェスコ・トッティ(ASローマ)
DF13 アレッサンドロ・ネスタ(ラツィオ)
GK22 フランチェスコ・トルド(インテル・ミラノ)
[クロアチア]
MF8 ロベルト・プロシネツキ(ポーツマス)
MF10 ニコ・コヴァチ(バイエルン・ミュンヘン)
[メキシコ]
FW10 クアウテモク・ブランコ(レアル・バジャドリード)
【主なブレイク選手】
[クロアチア]
FW18 イビツァ・オリッチ(NKザグレブ)
[メキシコ]
DF4 ラファエル・マルケス(ASモナコ)
【後にスターになった選手】
[イタリア]
DF23 マルコ・マテラッツィ(インテル・ミラノ)
前回大会3位メンバーが多く残っているクロアチア、決勝トーナメント常連のメキシコ、W杯初出場だが南米予選をブラジルより上位で突破したエクアドルなど地味にキツいグループだったが、当時はイングランドでもスペインでもなくイタリアのセリエAこそが世界最高峰のリーグと目されていた時代。攻撃から守備までスーパースターを揃え、名将ジョヴァンニ・トラパットーニを満を持して招聘したイタリアが本命に揺るぎはなく、注目はイタリアに次ぐ2位争いに集中した。しかしグループGは予想外の推移を見せる。
初戦でエクアドルに勝利したイタリアとメキシコに敗れたクロアチアという構図で迎えた第2戦、前半にネスタを負傷退場で失ったイタリアは後半にヴィエリのゴールで先制するも、73分に新星・オリッチに同点弾を決められると、76分にはラパイッチに決められて一気に逆転を許す事態に。終了間際にはインザーギが同点ゴールを決めたかと思われたが、先制点の前のヴィエリのゴールに続いてオフサイドと判定されて敗北。クロアチアは3分間の鮮やか過ぎる逆転劇で望みを繋いだ。
イタリアは最終戦で後の日本代表監督ハビエル・アギーレ率いる既に突破を決めていたメキシコと対戦。イタリアは前半に先制点を許していよいよ本格的に崖っぷちに追い込まれたが、戦術的な理由でベンチに降格していたデル・ピエロが88分に同点ゴール。前々日のフランス、前日のアルゼンチンに続いてイタリアも…という事態が寸前まで迫ったが、土壇場で急死に一生を得た。一方、勝っていれば突破出来たクロアチアは2連敗中のエクアドルにW杯初勝利を献上して敗退。エクアドルも最後に意地を見せた。
尚、前述のクロアチア戦でネスタに代わって入ったマテラッツィは2失点に絡み、実況を担当した北川義隆氏に「全ての敗因はマテラッツィから生まれました」ととんでもないド畜生なこと言われるなど猛批判に晒されたが、4年後のドイツW杯ではMVP級の働きで優勝に貢献した。
【グループH】
1位 日本(7)
2位 ベルギー(5)
3位 ロシア(3)
4位 チュニジア(1)
6月4日 日本2-2ベルギー@埼玉
6月9日 日本1-0ロシア@横浜
6月14日 ベルギー3-2ロシア@静岡
【主なスター選手】
[日本]
[ベルギー]
FW7 マルク・ヴィルモッツ(シャルケ04)
[ロシア]
MF8 ヴァレリー・カルピン(セルタ・デ・ビーゴ)
FW10 アレクサンドル・モストヴォイ(セルタ・デ・ビーゴ)
【主なブレイク選手】
[日本]
[ベルギー]
DF16 ダニエル・ファン・ブイテン(オリンピック・マルセイユ)
ポッド1ながらイングランドやポルトガルなどと同居する可能性があったことを思えば、日本にとってグループHの抽選はこの上なくラッキーだったのは間違いない。だが、この抽選をラッキーだと捉えていたのは他の3国も同じで、そういう意味ではまた別種の難しさがあるグループとも言えて、いわゆる"本命なき戦い"とでもいうような様相を呈していた。当時のベルギーは親善試合でフランスに勝利するなどインパクトは残したがあくまで欧州の中堅国というポジションで、むしろスペインリーグのスターを2人擁したロシアの方が予想としての人気は高かった。
日本は初戦でベルギーと激闘の末に2-2のドロー。貴重な勝点を手にし、翌日の試合ではロシアがチュニジアに対して順当に勝利を収めた。第2戦、ロシアは突破に王手をかけた状態で日本と戦う形になったが、日本はここで稲本のゴールを決勝点に1-0で記念すべきW杯初勝利を挙げ、一躍グループHのトップに躍り出る。第3戦では日本はチュニジアと、2位のロシアは3位のベルギーと戦い、4チーム全てに突破の可能性が残される状況となった。そんな中で日本は、森島寛晃が挙げた自身が所属するセレッソ大阪のホーム・長居スタジアムでのゴールと中田英寿のW杯唯一のゴールで2-0で勝利し、堂々の首位通過を果たす。同時刻、お互いに「勝てば突破」という状況で静岡で行われたベルギーとロシアの試合は、1-1で迎えたラスト12分から両チーム合わせて3ゴールが生まれる激動の展開を見せ、3-2でロシアを振り切ったベルギーが2位に滑り込んだ。
次回、決勝トーナメント編に続く!
知り合いがイングランドvsナイジェリア観に行ってた事を10年くらい経ってから知った。
ではでは(´∀`)