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大事なものは近くて遠く、遠いようで近い〜J1昇格プレーオフ決勝戦 東京ヴェルディ vs 清水エスパルス マッチレビューと試合考察〜

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そして伝説へ──

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューは2023J1昇格プレーオフ決勝、東京ヴェルディvs清水エスパルスの一戦です!

 

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いよいよ始まったドラマと確定した戦いは、Jリーグ30周年の今年にあまりにも感情を煽る舞台を用意してきました。国立競技場という聖なる場所、東京ヴェルディ清水エスパルスというオリジナル10の名門……この国のサッカークラブで最も伝統のある緑とオレンジが国立の空の下で瞬く時、そこには歓喜と悲劇の2つしか残されていません。

ある意味ではヴェルディと清水は対照的軌跡を辿ってこの地にいます。ヴェルディは今、この地にいる事が今季が良いものであった証左でもありました。なかなか具体的に昇格を現実の可能性として描ける瞬間が多くはなかった彼らにとってはまさに上昇気流。ある意味ではプレッシャーが素直に昂りとなる立場だと思います。対する清水はシーズン前の展望もその後の顛末も、本来であればこの試合に出ている事自体が彼らにとって成功とは言い難いという現実が横たわっています。それでも今日のプレーオフ決勝は対戦相手、試合会場、アニバーサリーイヤー…例年のプレーオフ決勝とは比較にならない舞台。フットボーラーとして、ここまで生と死を感じるようなゲームは短いサッカー選手としてのキャリアで数度ほどしかないはずです。

舞台は整いすぎるほど整いました。もう2度とないと思えるほどに揃ったこのシチュエーション。この舞台が完成したその時、国立競技場は何色に染まっているのでしょうか。両チームスタメンです。

 

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ヴェルディは準決勝の千葉戦からのスタメン変更はなし。ベンチメンバーも加藤蓮を山越康平に替えた以外は同じで、登録メンバーも18名中17名を千葉戦と同様のメンバーで構成しています。

リーグ終盤はほぼ固定メンバーで通していた清水は、準決勝山形戦のみ右MFに岸本武流を先発させていましたが、今日は山形戦は左MFで起用した中山克広を右に、左MFにはカルリーニョス・ジュニオを戻した従来通りのスタメンになっています。ただしGKは守護神・権田修一が負傷により欠場した為、山形戦同様に大久保択生を起用しています。

 

 

 

本日の会場は東京都新宿区、国立競技場です。

 

 

2019年以降はJ1クラブとのプレーオフもあったので「J1昇格プレーオフ」という形態で開催される事自体が6年ぶりではありますが、国立が昇格プレーオフ決勝の舞台となるのは2013年の京都サンガFCvs徳島ヴォルティス以来。ただしこの時は中立地開催として行われていましたが、今回は東京ヴェルディのホームスタジアムとしての国立開催となりました。ヴェルディは準決勝は味の素スタジアムで戦ったものの、決勝戦には国立という舞台をチョイス。ヴェルディは7月の町田戦が新国立で初めての試合となりましたが、ホームとして新国立を使用するのは今日が初めて。旧国立を含めれば2014年5月3日のFC岐阜戦以来となっています。また、清水は年に一回新国立でのホームゲームを戦っているので、アウェイゲームとしての新国立での試合は初めてです。

Jリーグは今年で30周年。思えば、Jリーグ開幕に先駆けて開幕したナビスコカップ第1回の決勝戦国立で行われたヴェルディvsエスパルスのカードで、開幕から4シーズンのうちの3シーズンが同じカード、同じ国立での試合でした。ヴェルディにとって初めてのタイトルは国立でのエスパルス戦であり、エスパルスにとって初めてのタイトルも国立ヴェルディ戦だった。Jリーグ30周年のクライマックスにあまりにも出来すぎた舞台は当時望んだ未来ではなかったとしても、極上の感慨をファンに生んでくれるはずです。

 

 

序盤の出足が良かったのは清水でした。清水の攻撃は乾がちゃんとボールを持てるかどうかが全て…なところがありますが、その点で言えば今日は最終節水戸戦等とは異なりスムーズに乾がボールを持てる場面が多く、そこからサイド攻撃と連動しながら清水が押し気味に試合を進めていきます。8分には山原怜音の右CKにカルリーニョス・ジュニオがドンピシャで頭で合わせるも僅かに枠外。

 

 

 

ただ序盤はラインがずるずる下がりかねないような状況に陥っていたヴェルディも、時間経過と共にラインをイーブンに戻せるようになっていくと清水のビルドアップに対してプレスが効くようになり、そこからはヴェルディにもチャンスが次第に生まれ始めていきます。

プレスが効き始めると乾へのケアも出来るようになってきて、ヴェルディはボール奪取後はサイドに展開してそこから攻撃を敢行。対する清水は乾にボールが入りにくくなった分、こちらも両サイドから、より縦のパワーを出そうとするようなアプローチ。しかし序盤の清水の攻勢を経てからは全体的にヴェルディの守備が上手く嵌まる形になっていました。

 

 

 

ただ30分辺りからは再び清水が攻勢。29分にはセットプレーのこぼれ球を乾がフリーで合わせる決定的な場面を迎えるもゴールならず。前半終了間際にも中山克広が右サイドをドリブルで抉って折り返す決定機を迎えるも、ヴェルディも最後のブロックはしっかりと維持してゴールを許しません。

どちらのリズムの時間もあった前半は0-0で終えます。

 

 

後半は勝つしかない清水がより一層攻め込んだ事で、ヴェルディにもカウンターのスペースが生まれる形になるオープンな試合展開となりました。

48分には清水はボール奪取からカルリーニョスが持ち運び、最後はチアゴサンタナのヘッド。逆にヴェルディは51分には宮原和也のミドル、57分には齋藤功佑が立て続けにチャンスを得ますが、いずれも守備陣の粘りや枠を逸れるなどしてお互いに決定的なチャンスを活かし切れません。

 

 

 

すると均衡が遂に動いたのは63分でした。

60分にカルリーニョスを下げて北爪健吾を投入した清水は、その北爪が右サイドでボールを受けた浮き球のボールをエリア内に供給。このボールを巡る中山と森田晃樹の競り合いの結果は森田のハンドと判定されて清水がPKゲット!これを昨季のJ1得点王、チアゴサンタナが冷静に仕留め切って勝つしかない清水が先制!!

 

 

このままいけば敗退、しかし1点でも取れば事実上のリードを再び手にするヴェルディは失点直後に齋藤を下げて新井悠太を投入。対する清水も中山と山原を下げて岸本武流と吉田豊を投入してサイドの強度を維持しようと努めます。

ただ、PKによる失点というダメージは思いの外大きかったのか…ヴェルディは攻め込みこそするものの「このままいけば昇格」の状況が一気に「このままいけば敗退」の状況に化した精神的な焦りがピッチ上に反映されたかのように精度を欠くようになり、清水を脅かすような攻撃が前半や後半の序盤ほど出来なくなっていきました。そんな中でヴェルディは74〜81分までの間に綱島悠斗、平智広、山越康平、長谷川竜也を次々と投入。対する清水は83分に原輝綺とエース・乾を下げて神谷優太と北川航也を投入します。

すると少しずつヴェルディが心の落ち着きを取り戻すようになったのか、攻撃面で精度を再び見せてくるようになってきました。89分、中央でボールを持った森田が右サイドに展開すると、これを受けた宮原和也が左足でクロス。これを僅かな隙間に走り込んだ染野唯月に特大の決定機到来。しかしここはギリギリで身体を払った高橋祐治のスーパーディフェンスでどうにか難を逃れます。

アディショナルタイムは8分、守れば清水、取ればヴェルディ。耐えるか、斬るか。一度は壊れた試合の流れを取り戻したかのようなヴェルディの猛攻。92分の森田のミドルも僅かに枠を逸れ……。

 

 

 

しかし"その瞬間"は突然訪れました。とにかく前にボールを蹴り出してボールをキープした清水は93分、吉田豊が左サイドにボールを蹴り出しますが、キープを試みた神谷がヴェルディのチェックに捕まってボールロスト。中原輝が蹴り出したボールは鈴木義宜の背後を抜けた染野へ。カバーに入った高橋の足は……かたや奇跡、かたや無情。次の瞬間、審判の指が差したのはコーナーフラッグではなくペナルティスポット!!

 

 

 

ヴェルディPK獲得!!!!

 

 

 

キッカーは染野。

時間はまだ数分残っていたとしても……決まれば清水に取り返せる気力はないだろうし、外せばヴェルディがもう一発を取れる気力もない……それを画面を見つめる誰もが肌感覚で抱いていた刹那、染野のキックがGK大久保の手を弾いて超え───

 

 

 

 

東京ヴェルディ、16年ぶりのJ1昇格!!!!!!

 

 

 

 

 

 

壮絶な試合でしたね。すごかったです。いやー、すごかった。やっぱり他人事なら面白いですね、プレーオフ。もう当事者なら胃が持たない。胃が持たないよ……。

試合に関しては、やはり清水は乾をどう介して試合を回していくか…という中で、概ねヴェルディのプレスをかわして押し込むことは出来ていたと思います。ヴェルディも今日は明確にハイライン・ハイプレスというよりは、ある程度のラインを保ちながら乾へのケアをしてきた。清水は水戸戦の前半で乾をケアされ過ぎて詰まった経験も踏まえてなのか、チームとしてヴェルディに押し下げられた時間はあったものの、先制点に繋がったPKのようにマークが乾に向く分幅をとりながらポケットを…という場面の創出は見られていたと思います。そういう意味ではお互いに基本設計の戦い方に一手間を加えた構図でこの試合に向かった結果、そこの攻防ではやや清水が優勢に運んでいたように思いました。

ただ…コンディションや試合展開を踏まえれば秋葉忠宏監督の采配ミスというには酷だとは思いますが、結果的に乾を下げたことで清水はカウンター時のボールの行き先を見失ってしまったように思います。それで清水がクリアボールの行き先がアバウトになってきたところに、失点後は我を失っているようにすら見えたヴェルディのハイプレスが襲いかかった。なんというか、誰が見てもわかりやすい清水の中心がいなくなってヴェルディがある種正気に戻ったような試合にも見えたんですよね。そういう意味では乾を失って迷える清水エスパルス状態になったところで、タイミング自体は乾が下がるより少し前だったとはいえ…ヴェルディがアタッカーではなくボランチやDFを本職とする選手を次々と投入していたは、清水の行き場を失った逃げ球を回収して次の攻撃に繋がる上で大いに効いていた。最後のPKにしても…判定の云々はともかく、私も比較するのが失礼なレベルとは言えサッカーをやっていた時はDFやってたものですから気持ちはわかるんですよ。ただあそこで行ってしまった判断しかり、それに至る前に神谷が全くボールをキープできなかったところしかり、少しずつ歯車がヴェルディの心音に近い周り方をした歪に清水が耐えられなくなっていたように見えました。

 

 

さて、ヴェルディおめでとうございます。

一応私、京都サンガFCのファンをやらせてもらってる訳ですよ。フクダ電子アリーナで見たあの光景を思い出しました。ああ、長かったなぁ…みたいな。でもヴェルディの方が長いですし、例えば千葉や京都、大宮が「昇格できそうな戦力・規模・金があるのに出来ない」と言われていた中で、2009年からのヴェルディはそれさえもなかった。クラブ消滅の危機さえあった訳で、過去以外のほぼ全てを失ったと言っても過言ではない状況までこのクラブに堕ちた。千葉や京都が「上がれない」と嘆く中で、彼らはそのステージにさえ立っていませんでした。

 

 

ただ、その中でも彼らは伝統ある育成組織だけはずっと回し続けていましたし、言い方は悪いですが、長年かけて丹念に育ててきた金のなる木を目先の金のために伐採する事は決してしなかった。その木が産み落とした多くの選手は決してヴェルディに長くいる事は無かったけれど、彼らの活躍でヴェルディはずっと育成の名門であり続けましたし、今日のピッチにもヴェルディで育った選手が多くプレーした…彼らがいなくなっても、ずっと育てている金のなる木はまた新たな選手を輩出する。その連鎖はずっと繰り返していました。

大事なものは近くて遠く、遠いように見えて意外と近い。ヴェルディは過去以外の全てを失う中で、そこだけは常に守り続けていた。遠回りになっても最も近い財産を抱え続けていた事。それが今日と今年の歓喜の下に土台して活きている。本当に遠回りでしたが、今日はそれが遂に報われた日だったのでしょう。この感覚は2007年の昇格とも違うはずです。本当におめでとうございました!!

 

 

 

【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】

 

【2023J1昇格プレーオフ】

《準決勝》

清水エスパルス0-0モンテディオ山形

東京ヴェルディ2-1ジェフユナイテッド千葉

《決勝》

東京ヴェルディ1-1清水エスパルス

 

明治安田生命J2リーグ最終順位

★→J1昇格

▼→J3降格

1位 ★FC町田ゼルビア(84)

2位 ★ジュビロ磐田(75)

3位 ★東京ヴェルディ(75)

4位 清水エスパルス(74)

5位 モンテディオ山形(67)

6位 ジェフユナイテッド千葉(67)

7位 V・ファーレン長崎(65)

8位 ヴァンフォーレ甲府(64)

9位 大分トリニータ(62)

10位 ファジアーノ岡山(58)

11位 ザスパクサツ群馬(57)

12位 藤枝MYFC(52)

13位 ブラウブリッツ秋田(51)

14位 ロアッソ熊本(49)

15位 徳島ヴォルティス(49)

16位 ベガルタ仙台(48)

17位 水戸ホーリーホック(47)

18位 いわきFC(47)

19位 栃木SC(44)

20位 レノファ山口FC(44)

21位 ▼大宮アルディージャ(39)

22位 ▼ツエーゲン金沢(35)

 

 

緑、オレンジ、緑…

ではでは(´∀`)