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情だけでは動けない現実〜エミリアーノ・サラ氏の移籍金問題の件〜

大寒波辛い…。

 

どーもこんばんは

 

 

 

さてさて、冬の移籍市場も終わり、後半戦に向けての戦いが始まりつつある欧州サッカーですが、このブログをご覧の皆様は恐らく既にご存知の方が多いでしょう…非常に悲しいニュースがありました。フランス、リーグ・アンで活躍したアルゼンチン人FW、エミリアーノ・サラ選手が航空事故でお亡くなりになられたというニュースです。

 

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改めて経緯を説明すると、FCナントに所属していたサラ氏は、冬の移籍市場により1月19日にナントからイングランドプレミアリーグカーディフ・シティへ21億円の移籍金で移籍する事が決定。これはカーディフのクラブ史上最高額となる移籍金だったとの事。カーディフのユニフォームを持つサラ氏や、ナントのチームメイトに別れの挨拶をするサラ氏の写真もTwitterなどに投稿されていました。

 

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しかし事態が急変したのは1月21日、ナントからカーディフに向かう為に登場した小型飛行機がイギリス海峡で消息不明となってしまいます。

翌日22日から現地の警察による捜索が行われたものの手がかりは見つからず、24日には生存の可能性は極めて低いとして捜索打ち切りが発表されます。

その後、寄付金が集まった事などによって捜索が再開され、2月3日に機体と1名の遺体が見つかり、2月7日に収容された後、遺体がサラ氏である事が確認されました。

 

 

 

サッカー界は悲しみに暮れ、各試合会場ではそれぞれに哀悼の意を示す行動がとられたりしています。FCナントは2月9日に、サラ氏が背負った9番を永久欠番にする、とも発表しました。

しかし現在、それと同時に現在勃発しているのが、サラ氏の移籍金に関する問題です。

 

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現在(2月10日)時点での経緯としては、3回の分割払いで支払う事になっている1回目の移籍金がまだ支払われていない事から、ナントがカーディフに1回目の移籍金を要求しているという状態です。カーディフ側の立場としては、契約を尊重しつつも、事故の原因、責任の所在などがはっきりしてから払いたい、という事らしいのですが、一方でこのまま支払いが滞る事になれば、FIFAによって勝ち点剥奪や移籍活動の制限など、何らかのペナルティを課される可能性も浮上しています。

 

 

 

「そもそも人が一人亡くなっているのに、金で揉めるのは不謹慎」という意見も気持ちとしては確かに理解出来るのですが、そうも言ってられないのはナントにしてもカーディフにしても、マンチェスター・シティパリ・サンジェルマン等のように大金をポンポン出せるようなクラブでは無く、むしろ21億という金額が明日を左右すると言っても過言ではないかもしれないくらいに規模が小さいクラブであるという事です。

この件について語るには、まず両チーム共にそういう背景がある、即ち両者共に今この話をする事が不謹慎だと分かっていても、ある程度の結論を急がないといけない事情があるという事、カーディフがクラブ史上最高額の移籍金を更新したという事実が示すように、この2チームにとって「21億円」という金額はそれほどまでに大きいという事を前提とする必要があります。

 

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まずナントの側からすれば、サラはエースストライカーとして文字通りチームに無くてはならない存在でした。そもそも「サラを売却するかどうか?」を巡ってフロントと、元日本代表監督で現在はナントの監督を務めるヴァイッド・ハリルホジッチが揉めに揉めたという事実が示すように、それだけサラはナントにとって必要な戦力で、クラブレコードともなる21億円という大金を提示された為、移籍やむなしという形になったという事実と経緯があるのです。

要は、このまま「お金の話をするのは…」という理由で移籍金を諦めれば、世界から賞賛の声は得られるでしょうが実際にナントに残るのは「エースストライカーを失った」という事実だけで、ナントのような小さいクラブには死活問題といえる大金が、代償を払ったのみで得られないまま残留争いを戦わなくてはならないという事になってしまいます。

 

 

 

それはカーディフにとっても同じで、現在プレミアリーグで残留争いを強いられているカーディフは残留に向けての起爆剤として獲得したのがサラでした。同じプレミアの強豪クラブなら大した金額では無くても、カーディフのようなクラブにとって21億円は相当無理をしたとも言える金額です。

また、今回の事故は色々な報道があって、最終的な責任がどこにあるのか、という事がまだはっきりしていないので、保険などがどう適用されるのかの判断がしにくいとの事。ですのでカーディフとしては移籍金の支払いを保留している状態で、ただ21億円を失っただけ、という事にもなりかねない為に慎重になっていますね。

 

 

 

…で、結論から言えばカーディフに非がある…とまで言うつもりはありませんが、言い分としてはナントの方が正しく、ナントの要求は当然と言えるのは間違いないでしょう。

サラは結局、カーディフで試合に出る事は叶わなかった訳ですから、カーディフが出し渋りたくもなる気持ちは理解出来ます。ですが、サラがカーディフが活動をする事は叶わなかったとはいえ、それでも移籍契約自体は成立している訳ですし、そもそもその言い分が通るのであれば、極論である事を承知で言わせて貰うとナントからすれば「移籍が成立しなければ、そもそもこうはならなかった」という言い分も成立する事になる以上カーディフが支払い義務から免れる事は出来ず、カーディフの主張する「保険が降りるかどうかを待ってから払う」という主張は「まず払った上で、保険で補填出来るかどうかを考えてくれ」という話であって、サラの移籍金を払うかどうかと、サラに関しての保険が降りるかどうかは切り離して考えるべき、というのが妥当と思われます。

 

 

 

Twitterやら掲示板を見ていると色々な意見がありますね。勿論日本語のものしか見れていないし、それも全部のツイートや書き込みを見れる訳ではないのですが、見た感じではこのブログでの見解と似たような見解が多いように感じます。

その他に見受けられる意見としては、まず「ナントも移籍金を譲歩するべき」という意見がちょこちょこありました。が、これについてはナント側からすれば「21億円だったからこそ売った」という前述した事情がある為、ナント側からすればある意味で1番受け入れ難い提案となるかもしれません。

その他にはカーディフが移籍金を支払った上で、ナントがサラの遺族や基金に全額寄付するべき」というものが複数ありますが、これも無いでしょう。前述しているようにナントもカーディフも財政に余裕なんて無いクラブで、もしナントが全額寄付を行えば賞賛は得るでしょうが現実に残るのは代償を払ったという事実のみです。そもそも、サラの契約は「サラが移籍した場合、ボルドー(サラが元々居たチーム)も移籍金の半分を受け取る」という契約になっている為、単にナントとカーディフだけの問題でも無くなっている事も一因です。

 

 

 

もう一つ、FIFA(或いはUEFA)が移籍金を肩代わりするべき」という意見もあります。上で挙げた2つの意見よりは可能性はあるかもしれませんが、これも可能性は低いでしょう。

これでFIFAなりUEFAなりが払えば、それは所謂「例外」という事になります。そして例外を認めるという事はこれから先、どこからどこまでを例外とすれば良いのかがわからなくなり、確かに今回の事例は例外に値しても良い事例ではあるかもしれませんが、例外を認めれば今度どこで何を持ち出されるか分からないし、どこからどこまでを例外とするかの基準を設けないとならなくなる、そしてその都度例外の基準を設けると、今度はルールなどの意味が全く無くなって無力化してしまう…それがFIFAUEFAの本心だと思うので、FIFAUEFAが特例を認める可能性も極めて低いと考えられます。

 

 

 

今回の件で多くの選手が哀悼のメッセージや行事を行ったり、個人で再捜索の寄付をした選手も多くいるように、選手個人のサッカーファミリーの連帯感は強く感じる機会にもなりました。一方で、多額のお金と組織が絡んだ時に性善説を貫き通す事は自分達の首を絞める事にもなりかねません。これは誰しもが逃れられない現実で、その現実と事実、契約に基づけば、シンプルに契約通りにカーディフがナントに移籍金を支払う、これで決着させなければいけない事案ではないでしょうか。

なんにせよ一つ確実なのは、今回の事故以降契約の際には「不慮の事態が起こった時の移籍金の取り扱い」という条項が加えられる事でしょう。

 

 

 

散々不謹慎とも言える話をしましたが、それでも何よりも確かなのは全員がショッキングな気持ちは持っているという事。今回のブログで書いたのは、その感情とは割り切らないといけない部分もあるよね…という事で、その気持ち自体には誰しも嘘はないでしょう。

エミリアーノ・サラ選手の御冥福をお祈りします。

 

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