【UEFAvsビッグクラブ全面戦争!】欧州スーパーリーグ構想に反対したい理由〜スーパーリーグ構想が呼び起こす懸念…FIFAワールドカップのWBC化と、ピラミッドが2つ出来る事の弊害〜

前回のブログではどちらかといえばスーパーリーグ側を擁護というか、UEFAとの関係悪化、対立の歴史、力関係の面で一連の流れは自然だった……みたいな事をブログにて書きました。

 

 

とはいえ、前回のブログで書いたのは「『UEFAが完全なる正義でスーパーリーグが一方的に悪』みたいになっているのは違う」という話であって、私自身もスーパーリーグについては反対です。

ですが、反対の理由は大きく分けると2つあって……よく言われている中小のクラブが云々、という問題とすら次元が違うと思っています。

 

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【反対理由その1:サッカーの地位が落ちる】

 

今、世界中に最も浸透しているスポーツがサッカーである事は明白です。

日本やアメリカでは最もスポーツ紙の一面を割く野球はヨーロッパではマイナースポーツである一方、イギリスなどではサッカーに次ぐ人気を誇るとも言われているクリケットは日本では完全にマイナースポーツ。世界中どこでも人気競技トップ3に入るようなスポーツって、本当にサッカーのみなんじゃないでしょうか。ワールドカップの視聴者数はオリンピックすら超えると言いますし。

私が欧州スーパーリーグ構想に反対する理由は大きく言えばサッカーの地位が落ちる事、そして細かく言えば「ワールドカップWBC化」への危惧です。

 

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その為にはまず、なぜ、どうしてサッカーだけがここまで全世界をカバーするような人気を誇っているのか、そしてFIFAワールドカップWBCとの違いは何か、を考える必要があります。なぜサッカーがここまでグローバルなスポーツとして参加する事が出来たのか、その理由は他でもなく、FIFAの存在です。

何かと悪評が多く、好きか嫌いかで言えば嫌いな人の方が圧倒的に多いであろうFIFAですが、サッカーという競技が今のポジションにいるのはFIFAの存在が全てと言っても過言では無いです。厳密に言えば「FIFAというシステム」こそがサッカーをここまで拡げた…と。

 

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私自身は野球ファンでもあるので、あまり貶めるような形にはしたくありませんが、その理屈を説明するには野球の国際大会、WBCとの対比が一番わかりやすいです。

もちろん文化や風土といった理由もあるのですが、野球が余り世界で発展しなかった理由としては「メジャーリーグ(MLB)だけがあまりにも発展しすぎた」という部分があります。サッカーがイギリスで生まれて欧州に伝わり、当時欧州諸国の植民地だった南米に伝わった事で欧州と南米の各国が独自の発展を遂げたのに対し、野球は完全にアメリカで生まれ、アメリカで育ち、アメリカで拡大化していき、そしてその象徴がMLBでした。

 

こうしてMLBが野球界のピラミッドの頂点に立った訳ですが、一つのリーグがピラミッドの頂点に立つ事は野球の世界進出面では大きな足枷になったと言わざるを得ません。だって、MLBこそが世界最高の舞台な訳で、世界一を決める試合はMLBの最終ステージ「ワールドシリーズ」になるのですから。この構図が余りにも早く固まってしまったのです。

一応サッカーで言うFIFAに当たる国際野球連盟(IBAF)は存在しましたが、MLBが進化しすぎた事でMLBを頂点としたものとIBAFを頂点としたものと、事実上2つのピラミッドが存在する状態になっていました。結局、資金難に陥ったIBAFは2011年にMLBから資金援助を受ける事で存続。現在は国際ソフトボール連盟と統合した世界野球ソフトボール連盟として活動していますが、前述の経緯から現在は2つのピラミッドではなく完全にMLBの下に位置しており、「一国のリーグ>中立組織」という歪な状態に陥っているのです。

 

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前置きというか前提の説明が長くなりましたが、本題はここからです。

現在、野球世界最強国を決める大会として認知されているワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ですが、この大会の主催って中立機関じゃなくてMLBなんですよね。そしてMLBが絶対すぎるが故にMLB>WBCという原則をMLB自体が持っていて、サッカーの代表戦と違って招集に対する拘束力が一切ありません。その為、WBCが近づく度にメジャー組を招集できるかどうか問題が勃発しますが、日本代表にメジャーリーガーを招集したいとなったところで「◯◯は大事な選手だから怪我されたくないし、そもそもなんで日本の好成績の手助けをせなきゃならんの?」という理屈が通ってしまうんです。MLB主催だから。そしてMLBアメリカのアメリカによるアメリカの為の大会と化している割には、アメリカの選手やファンも「MLB>WBC」の原則を持っているので、WBCという大会そのものステータスが大会開催中の日本で感じるほどあまり上がってこないし、世界にも広まらない。結局名実共に世界最強を決める戦い=アメリカ最強を決めるワールドシリーズになってしまうので、世界に訴求するのに一番売うってつけな国際大会の意義が最初から薄くなってしまっているんです。

 

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一方、サッカーの場合は母国イギリスのみならず、前述のように欧州各地や欧州の植民地だった南米でそれぞれ独自の発展を遂げていた(=野球みたいにアメリカがぶっちぎった状況じゃなかった)ので、世界一を決める為の世界規模の試合の必要性が高まり、同時にそれを実現する為、各地に散らばったサッカーチームをまとめる為の中立組織が必要でした。そこでフランス、ベルギー、デンマーク、オランダ、スペイン、スウェーデン、スイスの7ヵ国でサッカーの統一組織「FIFA」を早いうちに(=どこかが追いつかないほど台頭する前に)築き上げ、紆余曲折の末に唯一にして最大のサッカー単独世界大会、FIFAワールドカップを1930年に成功させたのです。

 

サッカーの場合、成功の要因はFIFAを明確なピラミッドの頂点に置くシステムを早くに構築した事が成功の要因でした。UEFAチャンピオンズリーグを筆頭に、各連盟や各協会がそれぞれの主催大会を毎年行いますが、このシステムを構築できたおかげで「FIFAワールドカップ」という大会をナンバーワンかつオンリーワンの存在にする事が出来たのです。

このお陰でサッカー界はワールドカップを中心にすべてのカレンダーを作り、ワールドカップという絶対的な存在がある事で世界共通の訴求力を生み出しました。

近年はグローバル化の波の中でサッカービジネスも肥大化していき、前回のブログで書いたようにUEFAの影響力を欧州ビッグクラブが上回りつつありました。それでもW杯も同時に上がっていたのは、FIFAを頂点としたピラミッドの下にビッグクラブを含む諸々の団体がいるお陰で下から押し上げる形が出来た、その事によってピラミッドの頂点が更に輝いたからです。

例えば、FIFAがオリンピックにフル代表を送り込ませないのはこの価値を守る為であり、逆に五輪フル代表を送り込める女子サッカーは「オリンピックの金メダルとW杯の優勝ってどっちが偉いの?」というジレンマに直面しています。

 

https://youtube.com/shorts/VanhRolUEcU?feature=share

 

じゃあ今の欧州スーパーリーグ構想はワールドカップにどんな影響をもたらすか。

UEFAスーパーリーグに参加した選手の代表参加、即ちW杯出場を禁止する方針を発表しています。勿論言葉通りに受け取れば、世界トップクラスの選手がW杯に出られないのでそもそも大会自体の価値が落ちるとも考えられますが、これに関しては恐らくスーパーリーグ構想が軌道に乗っても、或いは軌道に乗ればむしろ代表活動からの締め出しは回避されると思います。

ですがスーパーリーグ自体が、FIFAを頂点とした現在のサッカーピラミッドに対して「ビッグクラブを中心にもう一つの新しいピラミッドを作ろう」というもので、多分彼らはスーパーリーグこそ世界最高の大会としてプロモーションするだろうし、名はともかく実の部分はそういう印象になってしまうでしょう。ピラミッドが2つある事はサッカーのみならずありとあらゆる部門でマイナス要素が多く、どちらにせよ、世界最高のコンペティションが2つになってしまうのです。

これって結局上で挙げたWBC問題と一緒で、何が世界一なのかわからない、或いはW杯よりもビッグクラブが揃うスーパーリーグの方が世界最強だよね☆的な状況に陥る訳です。世界に広がりきらなかったスポーツと同じで、世界最高の大会が2つある事は2つが2つともトップレベルに育つ事はまずない。相討ちがオチです。サッカーにとってオンリーワンかつナンバーワンだったW杯の地位が低下する事……それはサッカーそのものの地位が低下する事に繋がり、今まで築いてきた影響力を失う事になりかねません。スーパーリーグが軌道に乗ったところで共倒れの可能性は高いと思います。当然、チャンピオンズリーグやW杯はビッグクラブの選手を失う事でクオリティの低下は避けられなくなりますからね。だからこそ、私はこれまでスーパーリーグ構想はあくまで脅しだと思っていたんですが……。

 

 

 

【反対理由その2:たぶん飽きる】

 

…ごめんなさいね、急に雑な投げやりな理由になって。

いくら欧州スーパーリーグ構想は反対だって言っても、なんやかんやで初年度は相当な利益を出すと思いますし、多分私もすごくキャッキャして見ます。なんやかんや言っても。「ひょえー!バルサ今週はシティとペップダービーかよ!来週はクラシコかよー!」みたいな感じでね。キャッキャして、毎日のようにマッチレビュー書いたりして。

……でもねぇ、早くて2年目、遅くて3〜4年目には正直、たぶん飽きると思います。ワタシ。

 

元ドイツ代表でかつてレアル・マドリードアーセナルでプレーしたMFメスト・エジル(フェネルバフチェ)はTwitterでこう語りました。

 

子供達はスーパーリーグではなくチャンピオンズリーグとワールドカップの優勝を夢見て成長します。

ビッグゲームは毎週ではなく、年に1〜2回しか行われないからこそ楽しいのです。全てのサッカーファンにとって(スーパーリーグを)理解する事は本当に難しい事です。

 

個人的な感情で言うなら、このエジルのツイートで言うところの2つ目の部分…「The enjoyment of big games is that they only happen once or twice a year, not every week.(ビッグゲームは毎週ではなく、年に1〜2回しか行われないからこそ楽しいのです。)」の部分が一番自分の感覚に近いというか、しっくりきました。

W杯が筆頭として、チャンピオンズリーグの面白さが何かと言えば、それは普段のリーグ戦では戦わないビッグクラブ同士が激突する事、要するにリーグ戦と照らし合わせた時の「非日常」こそがCLの魅力なんです。該当ファンには失礼な言い方になりますが、18-19シーズンの準決勝はバルセロナvsリバプールトッテナムvsアヤックスの組み合わせだったのですが、私は海外クラブに特定の好きなチームは持っていないのでリバプールが優勝してもトッテナムが優勝しても良かったけれど、正直バルサアヤックスのどっちかは勝ってくれと思いながら観ていたのを思い出します。これは15-16シーズンなんかにも同じ事が言えますが、CL決勝の同国対決ってあんまり好きじゃないんですよね……非日常に日常が持ち込まれる気がして。多分18-19の時、似た理由でバルサ、もしくはアヤックスを応援していた人は少なくないと思います。

……詰まるところ、スーパーリーグ構想が現実になった場合、例えばバルサvsマンCだとかレアルvsユーベだとか、そのようなカードが非日常から日常になる。要するに、スーパーリーグは非日常を日常に変えようとしていると。そうなると高い確率でマンネリ化を引き起こし、何年目からかは視聴者が離れ、視聴者が離れればスポンサーも放映権も失いかねない。スーパーリーグは最初の1年は大成功で莫大な利益も得て華々しく幕を開けるでしょうが、そこからは右肩下がりになっていくんじゃなかろうか…と。

そうなってからUEFAに戻りたいと言ったところで戻れないでしょうし、戻れたとしても相当足下を見られる事は避けられないでしょう。そもそも、ビッグクラブを失ったUEFAがその時にどうなっているかも不透明。最終的には反対理由その1で挙げたように共倒れの未来に向かって進む可能性が高い…と思っています。

 

 

 

前回のブログでも言ったように、これまでのスーパーリーグ構想、そしてそれが実現した時の代表戦や各リーグ・大会からの締め出しはビッグクラブ側とUEFAにとっての「核」のようなもので、これまでずっと冷戦状態の最中にいました。どちらかが悪という訳ではなく、スーパーリーグにもUEFAにも問題はあるので、どうにか良い妥協点を見つけて欲しいとは思っていましたし、今回の正式発表もUEFAに対する最後通牒のようなものだと見ていました。ですが核は使用され、スーパーリーグ参加クラブは欧州クラブ協会から次々と脱退を宣言。これは冷戦が戦時中に変わったことを意味しており、どちらかが折れる事でしか決着をつけられない状態になってしまいました。もうここから残された結末は二つ。「UEFAが勝つ」か「スーパーリーグが勝つ」のみです。

 

 

スーパーリーグが正式発表されたのは現地時間の4月18日でした。最終的にどんな結末を迎えるにしてと、この「4.18」はサッカーの歴史を大きく揺るがす革命が起こった歴史的な一日として語り継がれていくことでしょう。ボスマン判決やテクノロジーの導入など、サッカーの歴史に於いて重要なキーポイントとなる瞬間はこれまでもいくつかありました。ですが今回のように、サッカーの権力構造さえも揺るがすような事件はもはやいつ振りかとか言われてもわからないレベルです。これほど規模の革命が起きれば、それが成功しようが失敗しようが、何らかの影響は世界に残ります。それだけはサッカーやスポーツに限らず、歴史が証明しています。

 

もしサッカーの歴史で教科書を作るとすれば、この4月18日に起こった出来事は50年後、100年後、サッカーという概念が続く限り載り続ける事は間違いありません。世界中のサッカーファンは岐路に立たされていると同時に、今、この瞬間、まさに教科書の中にいるのです。今はもう、こうなった以上は行末を見守るしかない。サッカー史上最も重大な日を、これからの顛末を、歴史の証人として見届けましょう。