RK-3はきだめスタジオブログ

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伝説完結〜2023-24 UEFAヨーロッパリーグ決勝戦 アタランタ vs バイヤー・レヴァークーゼン マッチレビューと試合考察〜

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レヴァランタ

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューUEFAヨーロッパリーグ勝戦アタランタ vs バイヤー・レヴァークーゼンの一戦です!

 

 

 

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「伝説のチャンピオン」という言葉は彼らの為にあるのか……今シーズン、レヴァークーゼンが歩んだ道のりは思わずそう言いたくなってしまうほどの道のりでした。一体誰がバイエルン・ミュンヘンを止めるのか、そもそもバイエルンを止められるクラブがいるのかどうかとすら言われた彼らの一強時代を、それもバイエルンですら成し遂げたことのない無敗優勝という形で成し遂げた彼らは、全ての公式戦で無敗をキープしながら遂にシーズン最終戦までやってきました。シャビ・アロンソという若き偉大なる指揮官に率いられたチームは準決勝のローマ戦もそうだったように年に一度あるかどうかのような劇的な勝ち方を繰り返しながらここまで来た……彼らは今、ヨーロッパリーグを制する事でその伝説を完結させようとしています。

そしてそれはアタランタも然りと言えるでしょう。2部優勝を除けば1963年のカップ戦しかタイトル経験のないクラブは、長きに渡ってセリエAとBを行き来し、残留をシーズン最大の目標とするイタリアの有象無象のクラブの一つに過ぎませんでした。しかし2016年にジャン・ピエロ・ガスペリーニが就任してからクラブは一変。ダイナミックな戦術で次々と若手選手がヒットしていき、気が付けば彼らは欧州カップ戦に出るのが当たり前のチームになっていきました。レヴァークーゼンが無敗でELを制する事で伝説が完結するならば、アタランタは誰も想像などできないほど飛躍したここ10年ほどの伝説の完結をこの一戦に懸けている。それぞれが抱えた伝説は最後にどのようなクライマックスを見せるのでしょうか。

両チームスタメンです。

 

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本日の会場はアイルランド、ダブリンのダブリン・アリーナです。

 

 

アイルランド政府が公費の半数ほどを負担する形で建設されたスタジアム。アイルランドラグビーも盛んな国ですので、このスタジアムの収容人数が5万人である事はアイルランドのファンから「キャパが少ない」との批判させることもあるんだとか。海外を含めて著名なアーティストのアイルランド公演の会場として使われる事も多いですね。

10-11シーズンのヨーロッパリーグ勝戦の開催経験もあり、その時はFCポルトとブラガの対戦でしたが、優勝したポルトはリーグ戦を無敗優勝かつ国内カップ戦を含めた三冠を達成したというどことなくレヴァークーゼンと似た道のりを辿っていました。また、2011年にプレシーズンマッチとして行われたダブリン・スーパーカップでは、当時長友佑都が所属していたインテルガスペリーニ監督が率いて試合を行っています。

 

 

序盤のリズムを掴んだのはアタランタでした。レヴァークーゼンは自陣ではボールを持てるもののハーフェーラインを超えたところからはなかやか攻撃のリズムを掴むことが出来なかった一方で、アタランタは素早くサイドに振ったところからの連動性で攻撃のスピード感を出しながら自分達のペースに持ち込もうとしていました。

12分、左サイドからのコーナーキックからのルーズボールを右サイドでコープマイネルスが回収するとインサイドで受けたザッパコスタが右サイドから侵入。グラウンダーの折り返しがファーに向かうと、DFの背後からヌッと抜け出したルックマンが流し込んでアタランタ先制!

 

 

アタランタの先制後はレヴァークーゼンも押し込む時間が続いていましたが、レヴァークーゼンのシュートチャンスはスタニシッチがキーパー正面に放ったシュートくらいのもので、立ち位置の妙もあって工夫は見せながらもアタランタのマンツーマン仕様のディフェンスを前にアタッキングサードを攻略しきれません。

26分、レヴァークーゼンは自陣でのビルドアップからGKコバールのロングフィードをアドリが頭で落としますが受け手と呼吸が合わずにアタランタボールに。そしてこのボールを拾ったルックマンがカットインでDFをかわしてミドル一閃!!アタランタ追加点!!

 

 

 

ボール保持は常にレヴァークーゼンが握っており、ポジショニングもワイドを取る人間、インに入る人間の間でパスを出し入れしながら攻撃の試行錯誤を繰り返しますが、アタランタの連動したプレスはレヴァークーゼンのプレーエリアを着実に押し下げながら自然とレヴァークーゼンアタッキングサードにボールを入れられないような状況を構築していました。結果的に前半はアタランタも決してチャンスは多くなかった一方、ほぼ理想通りの守備でレヴァークーゼンはほとんどチャンスを作る事が出来ず前半終了。アタランタ2点リードで後半へ。

 

 

レヴァークーゼンは後半からスタニシッチを下げてボニフェイスを投入し、ボニフェイスを最前線に入れた上でフリンポンを一列下げた形で後半へ。対するアタランタはコラシナツが負傷により交代を余儀なくされ、代わりにスカルビーニが投入されます。

ただ、後半も試合の大勢は前半と大きくは変わらず、むしろアタランタレヴァークーゼンに対してよりマンツーマンとリトリートを使い分けながら攻撃はカウンターに振り切ったセーフティーなやり方を選択した事でレヴァークーゼンは前半と同じ苦境がより深刻化しており、中央は固める、サイドは取り切るような守り方を徹底したアタランタを前にレヴァークーゼンはギャップをなかなか捕らえきれません。

 

 

 

それでも選手交代を通じてレヴァークーゼンは前線の躍動感を生み出し、人に対するアプローチで消耗の否めないアタランタに対して少しずつ前線への圧力をかけられるようになった事で押し込めるようになっていきました。

しかしアタランタも最終ラインが焦れずに対応した事でレヴァークーゼンミドルシュート以外飛ばせない状況は変わらないまま迎えた75分、レヴァークーゼンは左サイドでのパスワークがアタランタ守備網に引っかかると、ボールを奪った途中出場のパシャリッチが持ち運んでスカマッカへ。最後はスカマッカのパスを受けたルックマンが叩き込んで3-0!ルックマンはUEFAカップ時代を合わせても一発勝負の決勝で初めてハットトリックを達成した選手という事に!

 

 

レヴァークーゼンに対し、アタランタは最後の最後までやるべき事、チームとしての守備戦術を徹底しながら時計の針を進めてタイムアップ。レヴァークーゼンが一年をかけて築いた伝説に終止符を打ったのはアタランタが8年かけて築いた伝説の集大成でした!アタランタ優勝おめでとう!!!!

 

 

 

なんと言いますか、今日というよりもガスペリーニ大勢でずっとそうなんですけど、アタランタは大風呂敷を広げた上でそこにきちんと凡事徹底のようにきめ細かに縫っていったようなチームで、それを今日の決勝でもレヴァークーゼンに対して発揮したなと。

アタランタはやはり原則としてはマンツーマンですので、そこでポジショニングは意識しつつも流動的にプレーしながらギャップとズレを突いてくるレヴァークーゼンの攻撃との噛み合わせは最初はレヴァークーゼン有利に働くかな…と思う部分はあったんですけど、まずレヴァークーゼンを上手くサイドに逃がして、ボールホルダーに対して2人がかりで、そしてタッチラインを味方に使うようにしながらボールホルダーをしっかりと閉じ込めるようなプレスのかけ方は見事でした。マンツーマンで2人来るという事は必然的にどこかがフリーになる訳ですけど、ちゃんとボールホルダーを追いながらフリーになったスペースへのコースはきっちりと消していく。それを文字通り90分に渡って一度も乱れる事なく完璧にやってのけた。そこはもう、やった選手もやらせた選手も天晴れとしか言いようがないです。その上でカウンターに際してもシンプルに前につける事、前線の選手がワイドに開く左右に加えて中央にもちゃんと人が走る事でレヴァークーゼンの守備陣はそこでカバーかチャレンジかに戸惑いポジションを見失う。凡事徹底で生み出す連鎖反応がこの試合のアタランタは常に意図的に起こしていたなと。

後半に関しても、若干アタランタの運動量が落ちていた部分は少なからずあったと思いますが……それゆえにパシャリッチが途中から入ってきたことの効果も大きかった。前半はシンプルに前に出したところから人数をかけていった部分がありましたが、後半は他の選手がそこまで余力がなくなった分、元気なパシャリッチがフォローと推進の両方をやってみせた事で前半の連動性を体力が落ちてからも担保出来たのだろうと。3点目なんかは典型的なシーンでしたね。後ろは集団としてのタスクを全員で徹底的にやらせて、逆に前線は個人としてのタスクをハッキリさせる。ルックマンやパシャリッチの使い方しかり、そういう組織性を築いたところはもうガスペリーニの怪物っぷりがよく出たチームビルディングだったと思います。

レヴァークーゼンが今季成し遂げた偉業は誰もケチをつける隙なんてないですし、つけようと思うサッカーファンもいない事でしょう。一つの黒星が23-24レヴァークーゼンの価値を下げる事はない。ただ今日の試合に関しては、優れたチーム戦術を持つ両チームという前提の上でそれを一発勝負の大局的なゲームメイクに落とし込む術は海千山千のセリエAで高アベレージを残し続けているアタランタが一枚上手でした。彼らはまだ監督も含めてここがピークではない選手達も多いでしょうから、苦い経験もまた肥やしとして欲しいところです。

 

 

 

さて、アタランタ

今回の決勝はいかんせんレヴァークーゼンが驚異的な軌跡を辿ってファイナルまで辿り着いたという背景がありましたから、それゆえにこの決勝は「レヴァークーゼン伝説の完結」という主語で語られる事が多かったと思います。ルックマンが3点目を取った時、カメラが真っ先に抜いたのがルックマンでもガスペリーニでもアタランタサポーターでもなくシャビ・アロンソだった事はそれを物語るワンシーンでしょう。

ただ、アタランタにとっての10年前はこんな景色を想像する方が無理のある状況でした。ガスペリーニ自身もインテルでの失敗を経たパレルモでの低迷で終わった監督扱いされる事もしばしばあった。そんなアタランタガスペリーニの巡り合わせから8年、セリエAセリエBを行き来し、毎年のように残留だけを目標に掲げていたチームは欧州の中でも独自戦術と若手育成の定評を持つクラブとして欧州コンペティションの常連となり、そして今日、ここまで辿り着いた。この戦いはレヴァークーゼンアタランタか、どちらの伝説を完結させるかという戦いでもありました。ここに至上の栄光を掴んだアタランタのストーリーと努力に最大級の賛辞を贈りたいです。

 

 

 

【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】

 

2023-24 UEFAヨーロッパリーグ

優勝:アタランタ(イタリア)

準優勝:バイヤー・レヴァークーゼン(ドイツ)

ベスト4:オリンピック・マルセイユ(フランス)、ASローマ(イタリア)

ベスト8:リバプール(イングランド)、ウェストハム・ユナイテッド(イングランド)、ベンフィカ(ポルトガル)、ACミラン(イタリア)

 

 

来季のレヴァークーゼンどうなるんだろか

ではでは(´∀`)