RK-3はきだめスタジオブログ

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残酷な煌めき〜AFCチャンピオンズリーグ2023-24 決勝第2戦 アル・アインFC vs 横浜F・マリノス マッチレビューと試合考察〜

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GLAYさん30周年おめでとうございます!!

 

どーもこんばんは

 

 

さてさて、本日のマッチレビューAFCチャンピオンズリーグ2023-24 決勝第2戦、アル・アインFC vs 横浜F・マリノスの一戦です!

 

 

 

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浦和レッズが初めてアジアを制し、翌年にはガンバ大阪がそれに続いたのは2007年から2008年の出来事でした。浦和はACミラン、ガンバはマンチェスター・ユナイテッドプレシーズンマッチのジャパンツアーではない公式戦の舞台で対峙するようになり、南アフリカW杯後の海外大量進出に繋がる世界との急接近はその影を表し始めていた頃、2000年代中頃から劇的に変わり始めたJリーグの勢力図は新たな形で定着しつつありました。

この時期、その変わりゆく勢力図に取り残されるかのように…いつの日か「古豪」と呼ばれ始めたのが東京ヴェルディジュビロ磐田、そして横浜F・マリノスでした。程度の差で言えばJ2降格も経験したヴェルディや磐田と比べればマリノスは遥かに踏みとどまれている立場ではありましたが、かつての常勝軍団はかつて自分達にとってのカモに過ぎなかった浦和やガンバがマリノスが本拠地とする日産スタジアムのピッチで世界に近付いていく傍らで、名だたるビッグクラブとプレシーズンマッチの機会だけやたら与えられていた事にある種の皮肉めいた感覚を覚えていたファンもいる事でしょう。

 

 

それでもマリノスJリーグの中でも前例のなかった経営体制を取り入れ、批判や逆境に曝され、冷酷とすら捉えられるような別れも経験し、ブランドだけが残っていた10〜15年前の姿に実を取り戻し、この舞台まで辿り着きました。

対戦相手はアル・アインFC。UAE屈指の強豪であり、アジアでもその存在感を誇示し続けているクラブですが、ACLに於ける今季の彼らはサウジアラビアという脅威によって一転アウトサイダーとしての立場に追いやられた。それでもクリスティアーノ・ロナウド擁するアル・ナスルを、そして連勝世界記録を止めてここまで来た。思えば彼らはACLが現行制度になってから最初の王者であり、現行制度で行われる最後のACLを制せば彼らに取ってこれほど甘美なストーリーは無い。マリノスにしてもアル・アインにしても、それぞれの叶えるべきストーリーが存在する訳です。

今や優勝争いのメインストリームにいる状況が当たり前、かつてJリーグファンが恐れた強いマリノスはその復活物語を完成させようとしています。かつての黄金時代でさえ知らなかった景色に手を掛けたトリコロールは、その戴冠を手にするところまで上り詰める事ができるかどうか。第1戦を鮮やかな逆転勝利で制して頂きに王手をかけたその指は、そこに最後の力を込めることができたのでしょうか。

両チームスタメンです。

 

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マリノスは直近のリーグ戦となる土曜日のFC東京戦からはナム・テヒと渡邉泰基を植中朝日と畠中槙之助に変更した2人を変更。2週間前に行われた第1戦からはエドゥアルドのところに上島拓巳、ナム・テヒのところに渡辺皓太を起用し、インサイドハーフ第1戦で得点を決めた2人を並べる形となりました。第1戦で負傷退場となったエドゥアルドがベンチに復帰した一方、ナム・テヒと渡邉は怪我により欠場となっています。

 

 

 

本日の会場はUAEアル・アインのハッザーア・ビン・ザーイド・スタジアムです。

 

 

2014年に完成した、コンパクトなサイズながらもモダンで綺麗なスタジアム。夜には発光することで幻想的なビジュアルを醸し出す外観はヤシの木をイメージとした膜パネルでできており、スタジアム名はUAE大統領のムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンの弟にちなんでいます。

2017年と2018年のFIFAクラブワールドカップと2019年のAFCアジアカップの試合会場としても使用されており、2017年と2018年には同大会に参加した浦和と鹿島が、2019年のアジアカップでは日本代表がこのスタジアムで試合を行なっており、特に2019年のアジアカップでは「事実上の決勝戦」とも称された準決勝日本vsイラン戦の会場となり、日本は3-0でイランを下して決勝進出を決めた思い出の地でもあります。

なお、横浜市内の映画館ではライブビューイングも実施されているとの事。

 

 

立ち上がりからマリノスにとっては苦しい試合展開となりました。

第1戦の前半ではマリノスが敵陣でボールを握り、それに対してアルアインがカウンターを刺してくるような展開で推移していましたが、アルアインは良い意味でビハインドにも関わらず0-0のような戦い方を見せており、攻め込むというよりもマリノス陣内での守備を強く意識したような形で試合に入ってきました。ボールへのチャレンジャーとカバーの役割を明確にさせる事で、マリノスはボールは持てるけど4バックより前に進めない、喜田拓也や渡辺皓太といった中盤の選手がフォローに落ちざるを得なくなればその分チームとして後ろに重心がかかり、3トップがそれぞれ孤立状態になっていきます。

マリノスはそういう状況が続いていたがゆえに、状況をとりあえず打開する為にロングボールを入れようとも中盤と前線の間の間延びしたエリアに入り、ラインを上げたタイミングでそれをアルアインに回収され、そこからのショートカウンターアーリークロスで常にマリノス守備陣が追う形での守備を強いられる苦しい連鎖が試合の中で発生していきます。

 

 

 

8分、アルアイン陣内から入ったロングボールの軌道で両チームの選手が交錯してルーズボールになったところを上手くパラシオスに入れ替わられるとそこからUAEが一気にアタッキングサードに侵入。ラヒミがドリブルで持ち運んでから放ったスルーパスに抜け出したナデルはGKポープと1対1の場面を嘲笑うかのようにヒールで落とし、最後はラヒミがフィニッシュ。アルアインが鋭い攻撃と鮮やかなアイデアで早々にスコアをタイに戻します。

 

 

マリノスもヤン・マテウスにボールが入った時はカットインを駆使して気配のある攻撃を見せる場面はあったものの、全体的にはアルアインの守備のやり方とそこからのスピーディーな攻撃と遅攻の使い分け方が上手く、マリノスは後手を踏む展開が続いていました。

33分、サイドチェンジをカットされるとアルアフハビがニアサイドへアーリークロス。抜け出そうとしたラヒミと畠中槙之輔のエリア内での交錯がVARの末に畠中のファウルと判定されてマリノスにPK。これをロメロがGKポープにコースを読まれながらも決め切ってマリノスはリードが一転、ビハインドを強いられる事に。

 

 

それでもマリノスは40分、ややアバウトなボールの応酬ながらも連続してプレスをかけていき、最後はボールを奪い切ったヤン・マテウスがエリア内に侵入。巧みな切り返しとエロいと言わざるを得ないようなコントロールショットでゴール!!マリノスがすぐさま試合を振り出しに戻し、試合は全くのタイスコアに!

 

 

しかしマリノスにまたしても試練が訪れたのは前半終了間際でした。

マリノスは同点直後にはアンデルソン・ロペスらに何度かチャンスが訪れましたが、みたびの試練は唐突に訪れました。左寄りの位置でボールを収めたパラシオスが中央にパスを出すと、それまでの展開もあってかやや左寄りの中央に密集したマリノス守備陣を嘲笑うようにパク・ヨンウがド中央へスルーパス。抜け出したラヒミとエリア外に出て対応しようとしたGKポープが交錯し、判定はポープのレッドカード。

 

 

FWのエウベルを下げて第2GKの白坂楓馬を投入したマリノス。スコアは同点に戻しましたが数的不利を背負う形で後半へ。

 

 

マリノスは後半から植中朝日を下げて榊原彗悟を投入し、中盤での運動量と機動力を担保しようと試みます。

ただ後半はアルアインは基本的に前半と同じ守備のスタンスからスタートし、必然的にボールの出しどころが一つ減った状況のマリノスはよりボールを前に進めなくなり、そうこうしているうちにアルアインマリノス陣内でボールを持ってプレーできるような時間は増えていました。

 

 

 

するとマリノスは63分に畠中が負傷退場というアクシデント。エドゥアルドとの交代により、ポープの退場といい予定外のカードを2枚も使う状況になってしまいます。同じタイミングで喜田拓也を下げて山根陸も投入。

しかし決壊の時は遂に訪れました。67分、右サイドからアルアインの波状攻撃を受けたマリノスは途中出場ラバのクロスこそ上島拓巳が跳ね返すも、こぼれ球を拾ったラヒミが永戸勝也を完璧にかわしてフィニッシュ。

 

 

78分には最後の交代カードでマテウスを下げて宮市亮を投入。アンデルソン・ロペスを頂点に置き、スピードのある宮市から強引にでも活路を見出そう試みました。

しかし……一度崩れた流れは止まらずマリノスは完全に瓦解。マリノスはまともなチャンスを作れないままアルアインに支配されて4点目、そして5点目……。

 

 

 

アディショナルタイムにはアンデルソン・ロペスにようやく決定機を提供しましたが、最後は相手DFのスーパークリアに弾かれてゴールならず。1-5……UAEの地まで辿り着いた尊い軌跡の末はあまりにも残酷な結末となりました。マリノス、準優勝。AFCチャンピオンズリーグという名前になってからの初代王者だったアルアインは、その最後の大会であの時以来の優勝を果たしました。

 

 

マリノスにとってはただただ苦しい試合でした。

基本的にマリノスは試合の主導権を握るにしてもオープンな展開になるにしても、強力なWGとそこに追随する中盤の押し上げを踏まえた自分達の攻撃パターンを繰り出せる状況を前提に設計されたチームです。実際に第1戦ではそういう戦い方ができていましたし、今日はホームのアルアインが1点を追う立場で、彼らが前がかりにプレーするなら後者のような展開に持ち込めるシナリオは持っていたように思います。

しかし意外にもアルアインは、上で書いたようにビハインドを意識しない戦い方を仕掛けてきた。アルアインは元々タレントも揃っているチームですが、その上でマリノスにスピードを出させないことの重要性を分析、あるいは第1戦の肌感覚でしっかりと理解していた。その上でまずは相手を止まった状態でビルドアップさせること、パスコースを消して中盤を降りさせること、中盤と3トップを間延びさせること、そしてそこにボールが入った時に確実に仕留めること……このフェーズの連動に無駄がなく、しかもそれで早い時間に先制点を取れた事でマリノスをパニックに陥らせた。ましてやアルアインの左サイドで何度も脅威となるような場面を創出した事でマリノスの守備陣はそっちに警戒が行くようになっていましたし、それがポープの退場につながる場面を生んだ側面もあって…。もう試合そのものがそういうシステムになるように早い時間帯で固められてしまった、その上でマリノスは立て直す術を見出せないまま数的不利を被った……マリノスが立て直す術を持てなかった以上、マリノスはもう耐えてワンチャンスを狙うしかなかったでしょうし、耐えていた牙城が崩れればこうなる事は「なるようになった」としか言えない側面はあったように思います。

 

 

それでもマリノスがこの1年で歩んだ軌跡には経緯しかありません。

川崎フロンターレヴァンフォーレ甲府にも言える事ですが、今大会で決勝トーナメントに進んだチームはJクラブが前例をほぼ有していない状況でのチームビルディング、編成、マネジメントを求められていました。マリノスに関しては監督交代もありましたし。そんな中で苦しい展開でもどうにか勝ち切ってここまで来た物語は讃えられるべきものであって、準決勝までの軌跡を自身に、決勝の屈辱を肥やしにこれから生きていくしかない。過去は良いものも悪いものも歴史に溶ける訳ですから、変えようがない過去もこれからの材料にするしかない。そもそも、決勝のショックはそう簡単に拭えるものではないでしょうが、後味が苦いだけで準優勝は本来ハッピーな戦績です。横浜F・マリノスの選手、スタッフ、関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。

 

 

 

【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】

 

AFCチャンピオンズリーグ2023-24

優勝:アル・アインFC(UAE)

準優勝:横浜F・マリノス(日本)

ベスト4:アル・ヒラルFC(サウジアラビア)、蔚山現代FC(韓国)

ベスト8:アル・ナスルFC(サウジアラビア)、山東泰山(中国)、アル・イテハド(サウジアラビア)、全北現代モータース(韓国)

 

 

次回、ACLEにつづく!

ではでは(´∀`)