RK-3はきだめスタジオブログ

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新たなる"完璧"へ〜UEFA EURO 2024 決勝戦 スペイン代表 vs イングランド代表 マッチレビューと試合考察〜

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クライマーーーーックス!!!

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューUEFA EURO 2024 決勝戦スペイン代表 vs イングランド代表の一戦です!

 

 

 

RK-3 UEFA EURO 2024観戦ガイドはこちらから!

 

昨年夏のマンチェスター・シティ&バイエルン・ミュンヘン観戦日記

 

一昨年夏のパリ・サンジェルマン観戦日記

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ

 

 

 

 

1ヶ月にも及ぶ激闘の数々。皆さんはこの決勝カードを予想したでしょうか?…まぁ、割と当てた方は多いでしょう(というかワイ当てた)

 

 

プレミアリーグで眩いほどの輝きを放つスターを揃えたイングランド代表は今まさに黄金時代です。ガレス・サウスゲート監督率いるチームは、戦術面での乏しさを指摘されて批判される機会も少なくはないですが、一方でトーナメントで勝つためのマネジメントは徹底してやってきたチームでしょうし、同時にチーム内の雰囲気の良さも目立つ。まさに機は熟したと言いますか、過去何回か叫ばれた「イングランド黄金時代」に一番不足していたピースを持っているのが今のイングランドと言えるかもしれません。

対するスペインは黄金時代を終えた2014年ブラジルW杯で失態を見た後、前回大会のEURO(2021年)を除けば国際大会では失態続きでした。そんな中で今のチームは、スペインが伝統的に持ち合わせているスタイルの上に両翼の破壊的な突破力を併せ、若手の勢い、中堅の牽引、そしてベテランの老練さと"要素"を全て備えてここまでやってきました。スペインにとっては一度崩れた黄金期をここから再び積み上げていきたいところでしょう。

このカードを予想した人がどれくらいいたかは分かりませんが、いずれにしても「決勝らしいカードだけど、どこか決勝っぽくないカード」という印象はあるかもしれません。確かな強さの割に、あまりこのフェーズまで辿り着く機会の少なかった両者が、聖杯をかけた最後の聖戦に挑みます。さぁ、EURO2024、ベルリンの地で決着です!

両チームスタメンです。

 

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本日の会場はベルリン、オリンピア・シュタディオンです。

 

 

元々は1936年のベルリンオリンピックに向けて建設されたスタジアムで、スタジアム周辺にはその遺構とも言えるモニュメントもいくつか残されています。2006年ドイツW杯に向けたリノベーションを行った際には、1936年当時の建築技術の美しさを残しながらモダンな機能を備えることを念頭にした設計が行われ、聖火台をゴール裏に望む建築美は世界屈指と言っても過言ではないでしょう。

この大会で使用されたスタジアムはデュッセルドルフ会場を除いては全て2006年ドイツW杯で使用されたスタジアムでしたが、開幕戦をミュンヘン、決勝をベルリンという流れは当時と全く同じです。ちなみにW杯決勝とEURO決勝を両方改札したスタジアムはこれで史上5つ目となりました。

 

 

序盤は決勝ゆえ、お互いに構える形で様子見的な展開にはなりつつも、その中でもスペインは自陣からワイドにボールを回していつものようにピッチを広く使いながらの戦いを狙っていたのに対し、4バックと3バックを併用していたイングランドは今日は4バックシフトにしつつ、両サイドバックがスペインのニコ・ウィリアムズ、ラミン・ヤマルをケアしに行く布陣をとりながら、状況に合わせてサカを引き込む形の3バックになっていく戦い方を選択。

展開としては攻撃でアクションを起こしていきたいスペイン、そしてスペインシフトのディフェンスを組むと言う形で守備で一つ仕掛けてきたイングランド…という構図が前半は色濃く現れていました。

 

 

 

イングランドが両WGをしっかりケアしつつ、Wボランチ+トップ下の形にした事でスペインの中盤であるロドリとファビアン・ルイスを上手く囲うような形でうまく守っていた事もあり、スペインもニコとヤマルの両WGがいつもより内寄りのポジションでプレーしようとするなどイングランドの包囲網から抜け出すべくアプローチを変えたりもしましたが、前半は表面的にはスペインが押す形になりながらも、どちらと言えばイングランドが守備面で主導権を持っているような形に。

ただしイングランドイングランドで、守備を先に考えた設計にしたところも影響したのか攻撃の面ではなかなかサカやケインが高い位置に行けないことで形作るような場面には乏しいところも。

 

 

 

前半終了間際には遠い位置からのイングランドのFKに対するルノルマンのクリアがヒットしなかったところにファーサイドにフォーデンが走り込みますがシュートは枠を捉えられず。

いわゆる「ハイライトシーンが少ない展開」とも表現できそうな緊迫した状況ではありましたが、ピンチになりそうな場面では両チームのDFがきっちりブロックに入るなど、ヒリつくような展開で前半は終えていきます。

 

 

スペインは後半開始と共に、前半の時点で負傷していたらしい大黒柱のロドリを下げてスビメンディを投入。

しかし膠着した前半とは打って変わって、後半は開始早々に試合に大きな動きが生まれました。イングランドの戦い方によりややWGが内よりのポジションを取った分、SBが幅を確保していたスペインは47分に右サイドでカルバハルがボールを開けると斜めにパス。これを受けたヤマルのカットインからのスルーパスに対し、ファーサイドに走ったニコが決めきつてスペイン先制!イングランドの対応に対するスペインのアプローチの変化が結実するような形から12年ぶりの優勝に王手をかける一発!

 

 

ビハインドを背負う方のチームになった事で必然的に得点の必要性が巻き真したイングランドはやや前がかりな店内がここから進んで気がいきます。しかし割り切った守備で拮抗した戦いに持ち込んでいたイングランドはかえってバランスを崩し、得点直後にもヤマルのスルーパスにモラタ、更にヤマルにもシュートチャンスが訪れ、ピックフォードのビッグセーブもあって追加点こそ阻止しながらもイングランドはスペインを相手になかなか挽回するところまで持ち込めません。

 

 

 

イングランドは61分にケインを下げてワトキンスを投入すると、70分にはメイヌーを下げてベリンガムをボランチに落とし、その上で2列目にパーマーを投入して勝負に出ます。

するとパーマー投入から盛り返したイングランドがやってのけます。73分、右サイドに振ったイングランドはサカが突破を試みてエリア内に侵入して折り返し。ここにニアに自ら走り込んだベリンガムが相手DFを背負いながらもペナルティアークへボールを落とすと、走り込んだパーマーがここしかないコースに糸を通すように決め切って同点!!決勝トーナメントは全て先制されたところから試合が始まったイングランド。それは決勝でも健在!

 

 

勢いに乗ったイングランドはここから一気に構成をかけようとしていき、同時にスペインもやはりサイドの個としての強さが活きやすい展開にはなるというところでオープンな形になっていきました。それでもアタッカーも超一流なら守備者も超一流の対決では最後の最後で巧みなディフェンスをそれぞれの選手が披露する、決定的な場面の前に潰される場面も多く見られた中で最大の好機は82分。中央でボールを動かしたスペインは最後にヤマルがショットを放ちましたが、今度もピックフォードがスーパーセーブ。

しかしこのまま延長戦…も脳裏によぎった86分、ルイス→オルモ→オヤルサバルと縦パスを2本繋いだスペインは、オヤルサバルががワンタッチで左サイドに展開すると走ってきたククレジャがワンタッチでリターン。ここにスライディングで足を伸ばした途中出場オヤルサバル。その伸ばした脚の先で触れたボールは転がりネットは揺れ、爆発するような歓喜と熱気がスコアに「2」の文字を刻んでスペイン勝ち越し!!

 

 

90分にはイングランドがセットプレーからライスがヘッドを放つもGKシモンがビッグセーブ。更にそのこぼれ球をグエヒが合わせますが、今度はゴールラインギリギリでオルモが頭でクリア。

美しく規則的なサッカーを持ち味とするスペインとて、最後の最後に必要なパッションはしっかりと見せつけていきます。

 

そして……タイムアップ!!

スペイン代表、かつて黄金時代と呼ばれていた2012年以来の優勝!!

 

 

素晴らしかった。面白いゲームでした。

まず戦略として先手を打ったのはイングランドで、両サイドに張ったところから雪崩れ込んでくるように襲いかかるWGをケアするような守備面でのポジショニングと、ロドリとファビアン・ルイスがフリーにならないようなシステムを立ち上がりからしっかりと構築してきた。まずこの"守備の先制攻撃"が上手くハマった事で、スペインはいつものような攻撃はできない。前半はそこのプランとアプローチの変更、そしてその擦り合わせを求められるような状況でした。

その中でスペインのアプローチの変更はヤマルとニコの両翼をいつもより内側でプレーさせる事、そしてイングランドが上述の戦略を仕掛ける分、攻撃面では前に出られない弊害が自分達にのしかかっていたこともあって両SBに高い位置で幅を取らせるやり方を選んだ。前半はスペインもその擦り合わせに悩んでいたところを感じましたが、後半の先制点のシーンに代表されるように自分達をアジャストさせていったのはさすがの一言。しかしイングランドの守備戦略が攻撃に弊害をもたらした事と同様に、スペインはサイドがいつもと違うポジション取りになった事で守備時の対応が曖昧になってしまった。そこにイングランドがファイヤーフォーメーション的な策を講じてきた事もあって、そこで崩れていったのが同点弾の場面だったのでしょう。最後のゴールにしても、ククレジャがあの位置にいた事や中央を2本の縦パスで突破しようとする試みはあのアプローチからの文脈にあったでしょうし。

そう考えると、スペインもイングランドもその戦略のメリットが、そしてデメリットが両面に出た。物事とはやはり一長一短、全てがパーフェクトな方策は無いものだなぁ…という人生の業を改めて感じるものでしたね。

 

 

 

イングランドに関してはサウスゲート監督は結構色々な批判に晒されてきましたし、今日のファイヤーフォーメーションが議論の対象になることもあるでしょう。しかし昨今の代表チームのマネジメントは必ずしもクラブチームの文脈で語れるものではありません。いつでもFCバルセロナをモチーフにしたやり方が明確なスペインならともかく、プレミアリーグの勢力図や代表クラスの選手の分布が移り変わる中で、何かをベースにすることは困難を極めます。そこで彼が織りなしたトータル的なマネジメントは掛け値なしに評価されるべきもので、こういう試合で「賭け」ができる事は無謀ではなく才能。この世代の圧倒的な煌めきをもうまとめるか。その仕事は十二分に果たしたと評価されるべきでしょう。

森保一監督じゃないですが"代表チームのマネジメント"という観点でやはり一目置くべき存在だなと。

 

 

そしてスペイン代表です。

復活を期して挑んだ2022年カタールW杯の時、彼らはあまりにも規則正しいチームでした。そういうチームとしての基盤は、チームや監督というよりもスペインという国には元来備わっている。そこがスペインにとっては黄金期が終わっても、また新しい時代をすぐに期待できる要因だったのは確かです。しかし、あの時の規則正しさはその出口を失っていた。ゴールに近付く為の攻撃をする為には組織が必要、でもゴールを生まれる瞬間は自分達で作り上げた組織を自分達で破壊した瞬間です。グアルディオラがあれだけバケモノストライカーを求めてるのはそれを理解しているからでしょう。そこの出口の無さが日本に付け入られた隙であり、モロッコを貫けなかった鈍さでもあったように感じます。

ですが今回は、ラミン・ヤマルとニコ・ウィリアムズという圧倒的な破壊力を……元々優れていた中盤が作った組織を自分達で壊せるだけの破壊力を持つ両翼を手にしました。そしてこの2人に対し、もちろん最低限の約束は守らせつつも、組織性に溶けるよりも異物としてサイドに君臨し、徹底的に仕掛けることをデラフエンテ監督は2人に強く求めた。このアプローチは柔でしかなかったスペインに間違いなく剛を与えましたし、おそらくデラフエンテ監督も上述の問題、カタールW杯の顛末を踏まえた上であの両翼をラストピースと捉えていたのでしょう。元々持ち合わせていた組織性、そこに現れた圧倒的な2つの才能、そしてそこに対する監督のアプローチ。そして最後にヒーローとなったオヤルサバルや準決勝のヒーローとなったオルモやメリーノといった選手が必要な時に出ていき、仕事をして帰ってくる。彼らがかつての黄金期に匹敵する存在感を持つ国になるかどうかはわかりませんが、この1ヶ月は一時代の終焉と代表チームの解釈の変化に苦しめられたスペインが、新たなる完璧に近付いた1ヶ月だったのではないかなと。本当におめでとうございます!

 

 

 

【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】

 

 

優勝:スペイン(12年ぶり4回目)

準決勝:イングランド

ベスト4:フランスオランダ

ベスト8:ドイツ、スイスポルトガルトルコ

ベスト16:ジョージアスロバキアベルギールーマニアデンマークイタリアスロベニアオーストリア

 

 

PERFECT!!

ではでは(´∀`)