RK-3はきだめスタジオブログ

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自我の灯る牢獄〜UEFA EURO 2024 グループB第2節 スペイン代表 vs イタリア代表 マッチレビューと試合考察〜

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2012の1-1が一番好きです。

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューUEFA EURO 2024 グループB第2節、スペイン代表 vs イタリア代表の一戦です!

 

 

 

RK-3 UEFA EURO 2024観戦ガイドはこちらから

 

昨年夏のマンチェスター・シティ&バイエルン・ミュンヘン観戦日記

 

一昨年冬のASローマ観戦日記

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

常に好カードが目白押しになるEUROとて、2000年代以降のEUROで最も代表的なカードを挙げるならばこのカードになるかもしれません。2008年のカシージャスブッフォンによるPK戦、2012年の伝説のデ・ロッシ3バックと衝撃のファイナル、スペインの行く手を阻んだコンテマジックの2016と決勝を捉えた2020…彼らは今回はグループステージからぶつかります。

スペインにとって、難敵クロアチアと激突した初戦は苦しい展開になるかもしれないという予想もあった中で、結果・内容共にパーフェクトに近い3-0の快勝を飾りました。対するイタリアもアルバニアとの初戦は大会史上最速ゴールとなる得点を奪われて先手を取られましたが、前半のうちに逆転に成功して2-1で勝利。両手放しでは喜べずとも、それでもミッションはしっかりと変えてきました。優勝候補にして21世紀の伝統の一戦…この両者は少し早すぎるフェーズにて、お互いに第一関門をしっかり突破してぶつかります。

両チームスタメンです。

 

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本日の会場はドイツ、ゲルゼンキルヒェンアレーナ・アウフシャルケです。

 

 

本拠地とするシャルケ04がホームゲームを開催する際にはネーミングライツを冠した「フェルティンス・アレーナ」として運営されているスタジアム。熱狂的なシャルカーの本拠地として知られるのみならず、03-04シーズンのCL決勝会場にも選ばれるなどスタジアムとしても優秀さが認められているこのスタジアム名物はなんと言っても地下にフェルティンス社のビールを貯蔵するビールタンクがあり、そこからパイプがスタジアムの各所に繋がっているところ。ビール大国ドイツを象徴する異次元の設備ですね。

なおこのスタジアムは開閉式の屋根を持つドーム型スタジアムとして運用されていますが、芝生は札幌ドームと同様に普段は可動式のステージを設けてスタジアムに隣接する場外の屋外スペースに出して養生し、試合開催時はスタジアム内に引き込むというシステムを採用しています。

 

 

左からニコ・ウィリアムズのクロスにペドリがヘッドで合わせ、GKドンナルンマのファインセーブで掻き出したところから開幕した試合。10分には同じく左からのモラタのクロスにファーサイドでニコが飛び込む場面を作るなど、序盤はスペインペースで進んで行きました。

基本的にはスペインが常にボールを保持し、左はニコ、右はヤマルのいるサイドにボールを宅したところから加速していく形で攻撃を仕掛けて行きましたが、それ以上に今日のスペインはハイプレスを徹底的に実行。イタリアボールになった際には最前線のモラタがGKにまでプレスで追うほどの即時奪回を試みており、スペインがボールを持つ時間を増やすというよりはイタリアがボールを持っている時間をゼロに近づけるような展開に持ち込もうとしていました。

 

 

 

イタリアもミドルゾーンではスペインに対して激しいプレスでボールを奪おうとする場面もありましたが、基本的に守備で構える形になった時にはセーフティーに守りながら守備面では常に落ち着いてプレーし、自陣での守りについては安定したパフォーマンスを見せていました。ただボール保持に関しては、ビルドアップ時には3バックにして最終ラインからしっかりと繋ごうとするものの、スペインの強烈なプレスを前に最前線のスカマッカはおろか、中盤のジョルジーニョやバレッラにもボールをつけられない時間がずっと続いていきます。

そうこうしているうちに、SBはスペインのWGに対して…特にディ・ロレンツォはニコへの対応に忙殺されてしまう形により、イタリアとしては前進しようにも前に出ていけない、そういう状況にスペインが自分達をしっかりと持っていくようなプレーを実現できていました。

 

 

 

スペインもイタリアの守備を前にアタッキングサードまで切り込む機会はニコの突破以外ではなかなか作り出せなかったものの、可能性のあるミドルシュートを果敢に放ちながらイタリアには前半アディショナルタイムまで一本のシュートも許さず。

前半は0-0。内容としてはほぼほぼスペインが望み通りに進み、イタリアも内容としてはかなり分が悪いながらも締めなければならないところはしっかりと締めて前半を終えます。

 

 

イタリアのスパレッティ監督は後半開始と共にジョルジーニョ、フラッテージを下げてクリスタンテ、カンビアーゾの投入でスペインに支配されていた中盤の再編を図ります。

51分にはイタリアがカウンターからスカマッカが持ち出して好機を掴みしたが、やはり試合全体としてのスペインペースは変わらず直後にはポケットを取ったククレジャの折り返しにペドリ。この場面も僅かに枠の外に逸れますが、後半はイタリアがボールを持った時にスペインが1人に対して2人がかりで狭いエリアに追い込むようなプレスをしてきた事で、よりイタリアは苦しい態勢に追い込まれる形となっていました。

 

 

 

試合が動いたのは55分でした。

高い位置でボールを保持してアクションを起こし、前進というよりも自陣から脱出できない状況が続いたイタリアに対してニコが左サイドを縦に切り刻む突破を見せると、その折り返しをモラタが僅かに触ってコースを変えたところをGKドンナルンマがなんとかセーブ。しかしこのセーブでボールの軌道が変わった事でカラフィオーリがコントロールできずオウンゴール。緊迫した試合はオウンゴールで均衡かわ破れます。

 

 

イタリアは64分にキエーザとスカマッカを下げてザッカーニとレテギを投入。リードを奪ったスペインが0-0の時ほどハイプレスには出なくなった事もあり、今日は苦しみましたが元々イタリアもビルドアップはちゃんとできるチームゆえ、65分以降はイタリアがボールを保持して前進しながらサイドからチャンスを作れる場面も増えていきました。

しかしイタリアが攻めの姿勢を見せてスペースが生まれやすい土壌になると、今度はやはりヤマルやニコの突破力がより脅威として刺さりやすい試合展開となり、71分にはニコがドリブル突破→カットインからクロスバー直撃の一発を放っていきます。

 

 

 

その後のスペインは前線の選手を都度入れ替えて前線での運動量を担保しながら試合を締めにかかる姿勢を比較的早い段階で明確にしたスペインは、攻め込もうとするイタリアに対して途中出場のアジョセ・ペレスやオヤルサバル、フェラン・トーレスといったアタッカーでカウンターを繰り出そうとしていきました。

イタリアもスペインの守備ラインを崩せる場面は無かったながらも人数をかけた攻撃で終盤には意地を見せましたが……スペインの肝を冷やさせるような場面は遂に訪れず。グループステージ最大の注目カードはスペインが1-0で勝利しました!

 

 

 

今日の試合でオウンゴールの1失点に抑えたことはやはりさすがイタリアと評するべきものだったと思いますし、イタリアの凄みはスペインの攻撃に対する守備対応で存分に見せてくれていたと思います。一方で、試合全体としては完全にスペインがコントロールできていたゲームであり、1-0というスコア以上にスペインからすれば会心の出来だったのではないでしょうか。

「守備からリズムをつくる」という点ではイタリアはそれに値する守備ができていましたし、なかなかファイナルサードまで進めないスペインと焦れずに対応するイタリア…という世界線もこの試合には存在していたとは思いますが、イタリアが自陣の深い位置でボールを持った時に複数人がかりでスペインにハイプレスをかけられ、そこで攻撃の芽すら出ない段階で刈り取るようにボールを奪われる展開はイタリアにとって相当苦しかったでしょうし、その時点で「ニコやヤマルが切り込んできても安定して守れてはいる」という状況が「全く自陣から出られないままニコやヤマルのアタックに耐えなければならない」といった具合に主語が変わってしまった。逆にスペインが先制して、少しイタリアがボールを持てるようになってからはカンビアーゾを高い位置で張らせてスペインが作ったような状況を作ろうとしているようにも見えましたが……WBとしての縦への推進力に定評のあるカンビアーゾを、WGの位置でWGとしてニコやヤマルに近い動きを求めるのは酷だったのかなと。

最後のところでの守備自体は上手くやっていたけどそういう状況に追い込まれていたイタリア、最後のところは崩せずともそういう状況に追い込めていたスペイン。その構図での攻防戦だったので、この試合は「オウンゴールの1点で1-0」という感覚の試合ではなかったと同時に、唯一のゴールがオウンゴールだった事は流れとして実に自然だったように思います。面白い試合でしたね。

 

 

イーターリャー

ではでは(´∀`)