チェフェリンさすがに11ヶ国開催二度とやらん言うてて草
どーもこんばんは
さてさて、本日のマッチレビューはUEFA EURO 2020 決勝戦!イタリア代表vsイングランド代表の一戦です!!
1ヶ月にも及ぶ激闘は遂にクライマックスを迎えます。1ヶ月前……大会開幕前に皆さんが予想した決勝のカード、そして優勝チームはどこでしたか?当たった人もいれば外れた人もいるでしょう。今日、この異例づくしの大会の「勝者」が決まります。
イタリアにしてもイングランドにしても、大会の有力チーム、優勝候補としてカウントされていたのは間違いありませんが、同時にこの2チームは本命的な位置にいたわけでもありませんでした。しかしいざ大会が開幕してみれば、開幕戦を戦ったイタリアは出だしからロベルト・マンチーニ監督の下で圧倒的な完成度を誇り、イングランドはガレス・サウスゲート監督の下で尻上がりに調子を上げていき、7月11日…遂に最高の舞台に辿り着いたのです。特にイタリアは決勝トーナメントでは苦戦する試合もありましたが、それはかえって様々なパターンの勝ち方が出来る事を見せつけましたし、一方のイングランドは長らく勝てなかったドイツに勝利した上で長らく辿り着く事さえ出来なかった決勝までやってきました。
意外かもしれませんが、イタリアもイングランドでもEUROの優勝経験には乏しく、イタリアは過去に53年前に一度優勝したのみ。イングランドに至ってはEURO優勝経験が無いどころか今回がはじめての決勝戦で勝てば初優勝です。サッカーの伝統国である事に疑う余地はなく、でもどこか何か足りない……それを埋める事が出来るのは今日を制した者のみ。伝統と革新渦巻く欧州最高の結末は数時間後に訪れます。カルチョかフットボールか……欧州サッカー最高の祭典の結末や如何に!!
両チームスタメンです。
イタリアは準決勝スペイン戦からスタメンの11人に変更はありません。システムも開幕戦トルコ戦から一貫して採用している4-1-2-3で決勝戦に挑みます。
一方、少し変えてきたのがイングランドでした。スタメン自体は準決勝デンマーク戦から一人変更したのみですが、システムをこれまでの6試合のうちベスト16ドイツ戦でのみ使用した3バック、3-4-2-1に変更。キーラン・トリッピアーとルーク・ショーがWBに入り、ラヒム・スターリングとメイソン・マウントが2シャドーに入るなど、イングランドのサウスゲート監督は一つの賭けに出た格好になります。
ちなみに、イタリアはEURO2012以来の決勝進出となりましたが、その時の決勝戦(vsスペイン)に出場していたのはジョルジョ・キエッリーニ、レオナルド・ボヌッチの2人で、今日ベンチ入りしているサルヴァトーレ・シリグも登録メンバーには入っていました。
本日の会場はイングランド、ロンドンのウェンブリー・スタジアムです。
代表クラスのメジャー大会での直近の優勝だとイタリアは2006年のドイツW杯になりますが、イングランドはイタリアの優勝の40年前…1966年のW杯まで遡る必要があります。そして、その時の会場は他でもないウェンブリーでした。今日は7万人近い観客が入り、イタリアの観客も1000人ほど来場するとの事ですが、イングランドが圧倒的なホームアドバンテージを得る事に変わりはありません。その為、どちらが勝つかによってスタジアムの雰囲気は相当異なるものになるでしょう。そこを想像してみるのも楽しいかもしれません。
UEFAチャンピオンズリーグの決勝は数度開催しましたが、2007年にいわゆる「旧・ウェンブリー」かれ「新・ウェンブリー」に建て直してから代表クラスの大会での決勝戦が行われるのは初めて。大会に歴史があるように、そのベニューとなるスタジアムにも当然歴史は積み重なっていきます。そういう意味では、今回のような分散開催で行われる大会のファイナルを飾れるのはウェンブリーを除いて他になかった。それはイギリス国民でなくても異議を唱える人は少なかったのではないでしょうか。ウェンブリーとはそれだけのスタジアムであり、そしてこれほどまでに「決勝戦」が似合うのは世界中に無数にあるサッカースタジアムの中でもウェンブリーとマラカナンだけでしょう。勝者がどちらであろうと、偉大なる歴史が新たに刻まれる事に変わりはありません。
試合は想定外なほど早く動きます。自陣からルーク・ショーがハリー・ケインに繋ぐと、ケインがドリブルで持ち運びながら右サイドに一気に展開。すると右サイドを抜けていったキーラン・トリッピアーのファーサイドへのクロスを攻撃の起点となったショーがダイレクトで叩き込んでイングランドがいきなり先制!!
その後はイタリアが圧倒的にボールを支配はしますが、5バックながらもプレスに行く時は行くなどメリハリをつけていたイングランドの前に攻め手をなかなか見つけられません。なんとか高い位置にボールを運んでいこうとはしますが、イタリアの3トップをイングランドの守備陣が外へ外へと追いやる事でそれぞれが孤立気味になり、かつインサイドハーフもそれを追い越す動きが出来ないまま。
イングランドも先制点以降のほとんどの時間で2度目のチャンスこそ無かったものの、イタリアの攻撃に対しては要所要所をしっかりケアしながら上手く「ボールを持たせている状態」を作り出せていて、イタリアの惜しいシーンといえばフェデリコ・キエーザが放ったミドルシュートぐらい。前半は開始早々の得点から動かないままイングランドが1点リード。イタリアにとっては今大会で初めてビハインドを背負った試合を強いられながら後半に向かいます。
何かを変える必要があったイタリアは55分、ニコラ・バレッラとインモービレを下げてブライアン・クリスタンテとドメニコ・ベラルディを投入。特にインモービレを下げてベラルディを入れた事で、イタリアはインシーニェをセンターに置いたゼロトップ気味のシステムに変更してきました。機動力のある3人を最前線に置いたことでイタリアの攻撃も少し流動性を取り戻し、62分にはキエーザに決定的なシュートが。しかしこれはGKジョーダン・ピックフォードがスーパーセーブ。
そして67分でした。右からのコーナーキックはファーに流れてキエッリーニがシュート。これはポストに当たり、そしてゴールエリアで大混戦が発生しましたが、次々とイタリアの選手が雪崩れ込む中で最後はボヌッチが押し込んでイタリアが同点に追いつきます!
71分、イングランドはトリッピアーを下げてブカヨ・サカを投入し、デンマーク戦のスタート時と同じ4-2-3-1に戻して2点目を狙いにいきます。74分にはデクラン・ライスに代えてジョーダン・ヘンダーソンを入れてバタつき始めたイングランドに冷静さを取り戻そうとしますが、一度傾いた流れは加速度を増してイタリアに振り回される展開が続いていました。
イングランドは主導権を取り戻すには至らず、後半の攻撃手段はほぼスターリングのスピード頼みになってしまっていましたが、ヘンダーソン投入の甲斐もあってバタバタ感の緩和には成功します。イタリアはイタリアで、86分にここまで重要なゴールを決めた続けていたキエーザが負傷退場。フェデリコ・ベルナルデスキとの交代を余儀なくされしていました。終盤はどちらも延長戦を睨んだチキンレースのような展開にもなり90分が終了トロフィーの行方は延長戦へ。
延長戦、先に動いたのはイタリアでした。インシーニェ、ヴェッラッティとキーマン2人を下げてアンドレア・ベロッティとマヌエル・ロカテッリを次々と投入。しかし延長前半はややイングランド寄りの流れに戻っており、そしてイングランドもその流れをさらに加速させるべく、スーパーサブ的な存在になりつつあるジャック・グリーリッシュを送り込みます。
そんな中でも103分にはエメルソンの左サイドの抜け出しからイタリアに決定機到来。しかしどちらも後の一押しを押し切れません。
延長後半はややイングランドのペースでした。しかしイングランドの攻撃に対してはキエッリーニがなかなか獅子奮迅のスーパーパフォーマンスを発揮。まさしく「手に汗握る」という言葉の相応しいスリリングな、綱渡りみたいな攻防戦は結局勝ち越し点を挙げる者は現れず。欧州王者の座はPK戦に委ねられます。PK戦はイタリアとしては準決勝から2試合連続。そしてEURO決勝としては1976年大会のチェコスロバキアvs西ドイツ、パネンカの語源となったあの試合以来です。
迎えたPK戦……イタリアは2人目、ベロッティのPKをピックフォードが見事にストップしますが、イングランドは3人目の途中出場マーカス・ラッシュフォードのシュートがポストに当たってしまい、続く4人目のジェイドン・サンチョのPKはイタリアのGKドンナルンマが見事にセーブ!
そして迎えた5人目、PK職人ジョルジーニョのPKこそピックフォードがストップしましたが、イングランドの5人目サカのキックは再びドンナルンマが阻止!イタリア、53年ぶりの優勝です!!
得点を取る時間なんてコントロール出来るものじゃないですし「今は都合悪いからチャンス来ても点取らないで!」なんて出来るわけもないですから、それを課題や敗因というには無理があるのを前提で言うと……やっぱりイングランドは先制点が早すぎたのは否めないかな…と。恐らく、サウスゲート監督にはイタリアvsスペインの時のスペインの戦い方が頭にあったと思うんですよ。いくらケインとて、いつも通りのCFに置けばキエッリーニ&ボヌッチの最強CBに絡め取られる可能性が高いと。だからこそスペインがゼロトップにして常にイタリアのCBが一枚足りない状況にしたようにイングランドは1トップ2シャドーにした…そして先制点は余りにも完璧な形で、そして早過ぎた……。サウスゲート監督がこの試合に向けて立てたゲームプランはほぼ完璧だったと思います。
だからこそ、ある意味ではイタリアがスペイン、そしてイングランドにやられた事を応用するような形の采配を後半途中から施し、完全に流れを引き戻したマンチーニ監督の采配は見事なだけでなく、もはや美しさすらありました。サウスゲート監督とイングランドからすればイタリアの形成逆転はパズルがぶっ壊れたような感覚だったと思います。もし仮にショーの先制ゴールがあと20〜30分後だったら…イタリアの消耗も激しくなったのかもしれませんが、サウスゲートが組み立てたゲームプランも、そして全ての流れを一変させたマンチーニの采配もら今回の決勝はまさしく知略戦でした。ロシアW杯に出場すら出来ない屈辱から、よくぞ…よくぞイタリアをアズーリに戻しました。もちろん、イタリアの褒めるべきところはそれだけに留まりませんが、書き始めると止まらなくのでとりあえず今日はこの辺で。
PK戦についてはもうドンナルンマとピックフォードの双方を称えるしかないでしょう。ただ…サウスゲートのここまでの構築が素晴らしかったからこそ、PK要因を送り込む事が正しかったのか、PK戦への対応はもう少しなかったのか、せめてサカは蹴らせるなら2〜3番手にすべきでは無かったのか…とは思いました。
さぁ、UEFA EURO 2020が終わりましたね。
本当に面白かったです。今大会。UEFAのチェフェリン会長が「(11ヶ国開催は)もう二度としない」と語ったように運営やフォーマットの面では課題というか文句も多い大会でしたけど、そのエンターテイメント性、或いはドラマ性は歴代の大会の中でも屈指だったと思います。相次ぐアップセットと劇的すぎる結末、ダークホースの出現にデンマークの軌跡……スポットライトを当てるべき場所の多い素晴らしい大会は、我々は1年待っただけあると言わせるだけの魅力を見せてくれたと思います。
選手・関係者の皆様、イレギュラーなシーズンから突入したEUROはフォーマットも手伝って相当しんどい部分があったと思いますが、本当にありがとうございました。イタリアおめでとう!!!!
泥のように眠る。
ではでは(´∀`)