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それぞれの矜持〜明治安田生命J1リーグ第19節 ヴィッセル神戸 vs 北海道コンサドーレ札幌 マッチレビュー〜

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グッバイNo.8

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビュー明治安田生命J1リーグ第19節、ヴィッセル神戸vs北海道コンサドーレ札幌の一戦です!

 

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スペインサッカー史上最高クラスのスーパースターは平成の終わりに日本に降り立ち、世界が激動に揺れた令和の数年を日本で過ごし、そして今、英雄として名を刻んだ国へと還ろうとしています。

 

 

アンドレス・イニエスタ……稀代のオールタイム・レジェンドは、言葉では語れない価値を、魅力を、意味を、影響力を…その一つ一つの行動、一つ一つのプレーで示してきました。彼がこの国でプレーした時間と、そして彼がそこに持たせた説得力はこの国、そしてこのリーグの財産である事は間違い無いです。

試合としても見応えのあるゲームになる事でしょう。今季のJリーグクラブの得点数は上位3チームとそれ以下のチームで大きく差が開いていますが、他でも無い…その1位が札幌であり、3位が神戸です。そういう破壊力がぶつかり合う中でイニエスタは最後にどんな輝きを見せるのか。それとも札幌がその輝きを封じ込めて意地を見せるのか。これまでがそうだったように、多くを語るよりもその姿で全てを物語ってくれるのが彼のサッカーキャリアでしょう。さぁ、今!ラストダンスが始まります!

両チームスタメンです。

 

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神戸は今日はシステムを4-1-2-3ではなく4-2-3-1を採用。スタメン変更は前節福岡戦から2名を入れ替えており、大迫勇也が今季初めてスタメンから外れてベンチスタートになりました。武藤嘉紀がワントップに入り、右MFに途中出場メインだったジェアン・パトリッキが出場停止から復帰して今季初スタメン。そして基本システムを動かして設けられたトップ下のポジションにアンドレス・イニエスタが据えられる事になりました。イニエスタは試合出場は第12節横浜FC戦以来。今季初スタメンです。

前節はC大阪相手に大敗を喫した札幌でしたが、スタメン変更は一人に留めて今日の試合に臨みます。ただし、前節は2トップ気味にスパチョークと浅野雄也を配したのに対し、今日は駒井善成を頂点としたゼロトップ気味な布陣です。ボランチには宮澤裕樹が復帰する形になりました。

 

 

 

本日の会場は兵庫県神戸市、ノエビアスタジアム神戸です。

当然ながら本日のイベントはイニエスタ一色。神戸はこの試合を「Iniesta KO8E FOREVER」と題して、スタジアム場内では様々な限定グッズの販売や限定フォトスポットを多数配置。スタジアムのエントランスではイニエスタラウンジが1日限定で開設され、イニエスタワインを始めとしたお酒とおつまみが楽しめる他、ラウンジ内にはイニエスタの神戸での軌跡が実際のユニフォームや天皇杯ゼロックス杯のトロフィーと共に展示されていて、ちょっとしたミュージアムと化すイベントが行われました。

イニエスタの退団セレモニーは試合後に実施。野々村芳和チェアマンからチェアマン特別賞の表彰、三木谷浩史代表から日本刀のプレゼントが贈られ、煌びやかな場内演出と共に最後はゴール裏との交流が行われるセレモニーとなりました。

 

 

本日は現地観戦!

やっぱり行きたかった…。スポーツ観戦日記は後日に→更新しました

 

 

序盤から試合を優勢に進め、アグレッシブな入りを見せたのは札幌の方で、WBを含めた前の5人を軸に緩急を使い分けた流動的な攻撃を仕掛けたながら試合を押し気味に進めていました。

しかし神戸もこの日はWボランチスタートだった事もあってかブロックは比較的組みやすくはなっていたのでそこはそれなり対処が出来ており、札幌相手に重心は下げられてしまっていた分、逆にボール奪取からは素早く両SHがカウンターを仕掛け、実際にパトリッキには20分までに2〜3度ほどチャンスが訪れる事に。

 

しかし神戸はいつもなら山口蛍が積極的に攻撃の糸口を作れるところが、この日はWボランチで押し込まれる展開になった為に齋藤未月と共にDFラインに吸収される形に。イニエスタもいつもより高い位置かつ岡村大八に徹底したマークを受けていた事に加え、武藤もいつもとは違う角度でのプレーとなった事でパトリッキとコースが被る場面が多く、両SHの個人での仕掛けは鋭かったものの呼吸が合わずに選手同士がフラストレーションを露わにする場面もあり、中々やイニエスタを介する程の時間はなく、武藤をフィニッシャーとして利用するのも難しい時間が続きます。

 

すると札幌が攻勢に出ます。23分に浅野のシュートから始まった波状攻撃はGK前川黛也の好セーブやDF陣の奮闘でなんとか阻止したものの、26分には自陣で奪ったボールをキープし、自陣からのパスワークで右サイドの金子拓郎へ展開。金子の柔らかいクロスボールは一度はGK前川が飛び出して弾きましたが、こぼれ球を上手く収めたスパチョークが押し込む形で札幌が先制!世界の英雄の目の前で、タイの新星がチャナティップの想いに応える一発。

 

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神戸も42分には自陣で汰木康也が武藤に預けてリターンのスルーパスを受けると、鋭いクロスがGK菅野孝憲を超えてファーサイドのパトリッキが合わせにいきますが…シュートはミートせず。

前半は0-1というスコア以上にやりたい事をやって見せた札幌のリードで終えます。

 

 

後半に入り、神戸は汰木を下げて大迫を投入。パトリッキを左に、武藤を右にポジションを変え、前半は明確にトップ下として高い位置を取っていたイニエスタを少し下げて山口を少し前に出した従来の4-1-2-3に近い形にシフトします。

イニエスタがスピードを上げ切らない場所でボールを持てるようになった事、大迫という明確な軸が生まれた事、武藤と山口がより良さを出せる配置になった事で、後半開始から神戸は主体的な攻撃を繰り出せるようになっていました。51分、左サイドでの初瀬亮のFKをファーサイド本多勇喜が頭で折り返すと、そのボールに詰めた武藤がワントラップからシュート。立て続けにパトリッキもシュートを放ちましたが、いずれも札幌守備陣の渾身のブロックの前にゴールを破れず。

ただ神戸が攻撃を改善させた後半も札幌の勢いが落ちたり形勢ごとひっくり返せた訳ではなく、52分にはスパチョークの折り返しに入った浅野がシュート。更に本多のハンドかとも思われたブロックからのクリアを拾った荒野拓馬のスルーパスに再び浅野が反応しますが、シュートはGK前川が好セーブ。そこから金子が右サイドを抉りましたが、またしても前川が立ちはだかってゴールを許しません。

 

そして、その時は57分に訪れます。

神戸は佐々木大樹の投入に際し、交代ボードに光った赤文字は「8」……山口蛍にキャプテンマークを託し、万雷の拍手、スタンディングオベーションに包まれながらアンドレス・イニエスタの日本での軌跡は一つピリオドが打たれました。

 

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試合は札幌が多くのチャンスを作る時間が続いていきます。64分、スパチョークのスルーパスに抜け出した浅野のシュートは上手くミートしなかった事が幸いし、先に予測して飛んだ前川の完全に逆を突く形に。それでも前川が懸命に体を伸ばして防ぐと、この辺りから試合は少しずつ神戸が押し返していきます。74分には強引に突破を図った齋藤のドリブルは阻まれましたが、フォローに入った武藤が左サイドに流れて入れたクロスに大迫が頭で合わせますが僅かに枠の右へ。

神戸は飯野七聖と大﨑玲央を投入して逆転を目論む中で85分でした。初瀬の右CKを、ゴール中央でフリーのポジションを作ったマテウス・トゥーレルがドンピシャで頭で合わせて同点!神戸が終了間際にようやくタイスコアに戻します。

 

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ここから試合は一気にカウンターの応酬となるスリリングな展開となっていきました。交代回数を使い切っていた神戸に対し、札幌は失点前に投入していたキム・ゴンヒに続いて深井一希と古巣対決となる小林祐希を投入。1-1になってからの時間で最も勝利に近づいたのはアディショナルタイムの札幌でした。アディショナルタイムに入ってから左の深い位置でボールを受けた小林がアーリークロスを入れると、前に残っていた岡村大八がニアに飛び込んでダイビングヘッド。満員のノエスタの一角を除いて一瞬静まった刹那、ボールはクロスバーが弾いてゴールには至らず。

試合はそのまま終了。終盤は両チームの選手がピッチに倒れ込むほどの激闘となり、イニエスタの神戸ラストゲームは1-1のドローという結果になりました。

 

 

 

イニエスタについての想いと言いますか、"イニエスタ終戦"としての感想は観戦日記の方で書いたので、ここではあくまで90分にフォーカスして書いていきます。

 

 

トータルで言えばこの試合で"勝点3を取れた"立場だったの札幌であり、神戸は"どうにか勝点1を拾えた"という立場ではあったと思います。札幌からすれば勝てなかったこと以外はほぼ理想通りのゲームであり、逆に神戸は今後がちょっと心配になるゲームでもあったような気はします。

前半の神戸の4-2-3-1はイニエスタをより良い状態で活かす為のシステムだったとは思いますが、元々札幌はマンツーマンを徹底してくるチームですから、前半のようにイニエスタが高い位置でスタートしてくれた方が岡村としては躊躇いなくイニエスタを潰しに行けたという背景があり、武藤はやはり前線での機動力に優れた選手という特性を持つが故に今日の人選と配置の中でのワントップは苦しかった。両ボランチは完全に守備に忙殺されていましたし、パトリッキや汰木の縦突破に頼らざるを得なくなったのは必然の流れではあったのかなと。逆に後半はイニエスタのスタート位置が低くなった事で、イニエスタに付いていた岡村が中盤のエリアまでマンツーマンを仕掛ける事は札幌のリスクになるような状況が作れた。そこで前半は札幌がやりたい放題にやれていた展開を少し改善出来たのかなと。そういう意味では流動的な攻撃を繰り出す札幌に対して、アンカーの位置でよく動く齋藤から比較的ステイするタイプの大﨑にスイッチした事も手当てとしては適切だったのかなと。

ただ、80分に札幌がカウンターを仕掛けた場面で…齋藤や本多が良い対応を見せ、札幌もフォローの人数がそう多くなかった事で決定的なシーンには至りませんでしたが、この時の神戸って映像では守備の枚数が揃っているように見えますが、前線にいた選手4人が誰も帰ってこれていなくて…カウンター対応に戻った選手と前の選手の間にとんでもない空白地帯が出来ていたんですよね。チームとして前に残っていてほしい大迫はともかくとして、武藤や佐々木も戻れていなかった。少なくとも彼らはそれをやらない、やれない選手ではない。特に武藤なんかは蓄積疲労も相当でしょうし。それだけに…今日に関しては札幌に翻弄されてかなり消耗させられた部分もありましたが、あのシーンは今後への不安というか、早い段階から夏の不安点として懸念されていた部分がちょっと可視化されたシーンだったようには思いました。大迫のいる時・いない時の差も含めてそうですが、例えばアンカーをサンペールや大﨑にした時のやり方だとか、チームとして幅を拡げていく事は神戸にとって大事なポイントではあるでしょうね。イニエスタ云々の前に、チームとしての懸念点は結構噴き出した試合だったように感じました。

対する札幌に関しては、逆にここでとりとめて何かを書く事がないくらいいつも通りの良い札幌を見せてくれたと思います。いくらなんでも監督会見言い過ぎやろとは思いつつ、そりゃ自信と手応えはあるわな、と。今の札幌はアドリブというか、即興性を意図を持って繰り出せるところが攻撃好調の要因でしょうし、神戸の2CBも焦れない対応を見せてくる中で、駒井善成のフリーランとそこに確実に走り込む浅野、そしてその瞬間を確実に捉えるスパチョークの3人は本当に素晴らしかった。前川のハイパフォーマンスもあって1点に留まりましたが、ともすればヒール的な役付けをされかねない状況の中で"いつもの札幌"をしっかり発揮してみせたのは大いに称賛されるべき事です。

 

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気迫溢れるスリリングなゲームでした。

お互いに精神的な理由も大きかったはずです。言うまでもなくこの試合はクラブ史の中で大きな意味合いを占めた訳で、その中でなんとしても勝たねばならない立場の神戸。そして何がなんでも引き立て役としてこの試合の脇役に成り果てる訳にはいかない札幌。そういう両者の意地は間違いなく試合をスリリングで手に汗握る展開に仕向けてくれましたし、最後に両チームの選手が倒れ込む姿はそういう背景を込みにしたお互いのプロとしての矜持のようなものに見えました。

それはアンドレス・イニエスタという世界のサッカー史に名を残すプレーヤーがこの国、この街でやってきた事にしても、そして今回の退団の遠因ともなった吉田孝行監督の方針とイニエスタを早いタイミングで下げた判断にもそれは表れていたと思います。勝者と敗者がいて、順位表に上と下があるように、最終的に全員がそれで良い思いを出来るようには世の中はなっていません。ただそれでも、だからこそ、この日のノエスタのピッチにはそれぞれのプロとしての矜持が交差していたように見えて、そういう意味で美しい光景だった…それが率直な感想ですかね。

 

 

 

【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】

 

 

明治安田生命J1リーグ第19節

セレッソ大阪0-1アビスパ福岡

鹿島アントラーズ0-0京都サンガFC

アルビレックス新潟2-0サンフレッチェ広島

名古屋グランパス2-0川崎フロンターレ

横浜FC0-0ガンバ大阪

FC東京1-0柏レイソル

ヴィッセル神戸1-1北海道コンサドーレ札幌

サガン鳥栖1-2浦和レッズ

横浜F・マリノス4-1湘南ベルマーレ

 

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1位 横浜F・マリノス(42)

2位 名古屋グランパス(38)

3位 ヴィッセル神戸(37)※

4位 浦和レッズ(36)

5位 セレッソ大阪(32)

6位 鹿島アントラーズ(29)

7位 サンフレッチェ広島(29)

8位 北海道コンサドーレ札幌(27)

9位 サガン鳥栖(26)

10位 川崎フロンターレ(25)※

11位 FC東京(25)

12位 アビスパ福岡(23)

13位 アルビレックス新潟(21)

14位 京都サンガFC(20)

15位 ガンバ大阪(20)

16位 横浜FC(14)

17位 柏レイソル(13)

18位 湘南ベルマーレ(12)

※1試合未消化

 

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首位vs最下位の対決となった横浜FMと湘南の神奈川ダービーは4-1で横浜FMが快勝。3位神戸が1試合少ない状況とは言え、2位名古屋との勝点差4を維持した状況が続いています。3位神戸が引き分けた一方、2位名古屋と4位浦和は共に勝利を収めて横浜FMを追走しています。

下位では直接対決となった横浜FCG大阪、京都の3チームが引き分けて新潟が勝利した一方、柏と湘南は今節も敗北。柏は井原正巳体制で未だ勝利を得られておらず、湘南はこれで3試合で14失点という事になってしまいました。

 

 

グッバイ No.8

ではでは(´∀`)