RK-3はきだめスタジオブログ

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「COMPLEX 日本一心 2024」@東京ドームのライブレポート〜未練が溶けた鼓動と聖域〜【後編】

 

このブログは前回の続きでございます!前回のブログでは会場入りから1曲目(BE MY BABY)〜14曲目(HALF MOON)までの模様を記載しておりますゆえ、是非前編からお読みくださいませ!

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

HALF MOONの時点で一足早く舞台裏にはけていた吉川さんに対し、極上のインストを演奏し終えた布袋さんもフェードアウト。サポートメンバーでROMANTICAが演奏されました。

COMPLEXの2枚目のアルバムって人生の中でも屈指に好きな一枚なんですけど、聴けば聴くほど「吉川晃司がボーカルを務めるGUITARHYTHM 1.5」みたいな匂いがどことなくするんですよね。それが良いのか悪いのかみたいなところはファンの中でも意見が分かれるでしょうし、もっと言えば好みの問題でもあるんでしょうけど。そして今回のサポートは基本的に布袋チームで構成されていた事もあって、個人的にはあのメンバーでのROMANTICAを聴くとよりGUITARHYTHM感を抱いた部分はあります。奥野真哉さんの繊細なピアノ然り、そこに至るまでの打楽器隊の絡み付くようなリズム感然り。

 

 

 

そしてROMANTICAが空が広がるように終わったと同時に、雲を切り裂くドラムの音がなればそうオフコースPROPAGANDA!!シンプルかつソリッド、衝動と爆発、そこに突然差し込まれるリリカル……PROPAGANDAってTab譜とか見たらよくわかるんですけど、楽譜にしたらクッソシンプルどころか、Bメロとギターソロ以外ほぼ一つのコードで最後まで押し倒すとかいうだいぶ狂った楽曲なんですよね。それをカッティングとミュートだけであそこまで彩鮮やかな楽曲にしてしまう訳ですから…。布袋さんはよく「音を消すために音を出す」と言いますけど、そのスタイルが一番色濃く出ている曲がこの曲なのかなぁとも。あのガットギターなんかエロいったらありゃしない。

 

で、続くのが……まあ、ここまで来たらファンは「1990年と2011年と同じセトリ」という事を察しているでしょうし次に何が来るかもよくわかるんですけど、爆発的に鳴り響くギターリフで始まったのがIMAGINE HEROESですよ。そうです、私がCOMPLEXで3番目に好きな曲です。生で聴けましたよ…アウトロの「イマジナルヒロォ!!」のところ。

編曲は布袋さんとは言え、COMPLEXの中でも布袋印感が強い曲でありながら作詞作曲両方吉川さんっていうのがなかなか面白いですよね、この曲。なんというか…リアルタイムで見てない立場で言うのもなんですけど、COMPLEXって最終的には方向性の違いで決別の道を辿った訳ですけど、方向性は違えどもやっぱり音楽性はビタハマりしてたんじゃないかなぁとも思ったりするんですよねぇ…ファンがあーだこーだ言っても仕方ない話ではありますが。

 

 

 

…で、次ですよ次。

ドラムのカウントが鳴ったら始まる訳ですよ。

私ががCOMPLEXで一番好きな曲が。

そしてこのライブのハイライトとも言えよう瞬間が。GOOD SAVAGE!!

 

COMPLEXで一番大好きなんですよ、これ。

セトリはもうわかっていたので、IMAGINE HEROESが終わった時にはもう「来るぞ…」という状況ではあったんですけど、あの強烈なギターリフが爆裂的に鳴り響くと脳天を貫かれるような気分でした。

この曲の大好きなポイントはなんといってもギターソロど頭のガットギターですよ。PROPAGANDAもそうですけど、この曲調からあの局面でああいうギターを挟んでくる辺りがもう………。全身の細胞が喜ぶフレーズですよ。一応双眼鏡とかメガネ持っていってたんですけど、あのシーンばかりは全てを外して肉眼で見たかった。肉眼で布袋さんのあの音色を堪能していました。

 

で、狂喜乱舞のシーンと言えばこの次ですよ。

もうね、今回の…15日がどういう感じだったのかはわかりませんが、16日に行った人に最も脳汁が出た瞬間を尋ねれば多くの人がこのGOOD SAVAGE(以下グッサベ)のギターバトルを挙げるんじゃなかろうかと思う訳ですよ。綾小路翔さんも仰せになられていました。

 

 

考えてみたらこのグッサベは元々吉川さんもギターを持つ曲ですし、間奏で布袋さんと吉川さんのギターの掛け合いは最初からあるんですが、1990年はお2人の距離感を表すかのような位置関係でのギターの掛け合いだったのに対し、2011年は近距離でマイクを分け合うようにして2人が向き合う形でした。

さあどうなる2024年。もうなんでしょうね、もうとにかくカッコよかった。2人が向き合って、それはオリジナルの再現ではなく、オリジナルよりも長い尺を使ったギターバトル。綾小路氏の表現をそのまま借りればこの興奮を的確に表現する言葉を知らぬ事が悔しいくらいにカッコよかった。

…COMPLEXって、言ったらあの2人が2人で売れる為に始めたバンドではないじゃないですか。既にクッソ売れていて、既にミュージックシーンのカリスマだった2人が、言わばタレントとしては出来上がったような2人が組んだユニットだった…と。つまるところ、彼らはCOMPLEXによって何者かになったのではなく、何者かを確立してからCOMPLEXを生み出した。言ってしまえば、COMPLEXはそれぞれが既に築いていた2つの聖域がぶつかり合うようなユニットであり、だからこそ1990年当時の衝突にも繋がったように思うんです。ごめんなさいね、リアルタイムの時生まれてなかったやつがなに語ったんだって話ですけど。

あのギターバトルはまさしく、ステージ中央に歩み寄った2つの聖域がぶつかり、火花を散らし合い、そしてギターバトルを終えた2人はユニゾンする間奏の後半で2つの聖域が一つのとてつもなく大きく眩い聖域になった……そんな感覚があったんですよね。それこそ、どことなくオープニングのBE MY BABYが始まる時の映像演出とシンクロしたようにも感じたというか……。何より、吉川さんがギターに集中しすぎてBメロの歌い出しを失念したところが美しかったなと…。

 

 

 

で、そんなグッサベの余韻に浸る事を許さないかのように畳み掛けてくるアンセムのようなリフ!本編の最後の曲はMAJESTIC BABYで、この曲の布袋さんのシンプルの中にトリッキーを潜ませたようなギターと吉川さんの力強すぎる煌びやかな声の圧も圧巻だったんですが、やっぱり恋をとめないでという曲のアンセム感は大団円を感じさせるものでした。グッサベで2つの聖域が一つになり、その一つの聖域が東京ドームを包み込むより大きな聖域になっていくような。木曜日の夜に吉川さんにこの東京ドームという聖域に連れ出してもらえたような…ね。

 


 

はい、アンコールでございます。

アンコールの1曲目はもうここまで来たら会場の皆様がお分かりだったことでしょう。心臓の音より響くあのシンセサイザー。ビジョンの真ん中に表示される【1990】の文字。…なんというか、敢えてこういう言い方をすると、2011年との違いみたいなところが最も如実に出ていたのはこの曲だったように思うんですね。

一つは社会情勢。ふと考えてみたら、当時の世情を如実に表した1990という楽曲が発売されて以降、世界は最も1990年に近い雰囲気を纏っていると思うんです。今年というよりはここ数年…ですけど。MODERN VISIONやDRAGON CRIMEにしても、同じ「ROMANTIC 1990」収録曲の聞こえ方が、やっぱり2024年に聴くそれは少し違うものがあったな…と。これらの曲の歌詞に、よりリアリティを抱かずにはいられない時勢になってしまったというか。

 

もう一つは…言うまでもなく、今回のライブの最大の目的は復興支援であり、コンサートの動機と目的はそれ一択。東日本大震災を踏まえた2011年も然りです。ただ、復興支援を大前提かつ第一に置いた上で、この機会を経る上での裏テーマもあるように感じるんですよね。

あの握手が強烈なインパクトを与えた2011年は、言うなれば「ぎこちない形で終わってしまった19901108を完結させる事」みたいな裏テーマがあったように見えたんです。セットリストも同じで、サポートメンバーもドラム以外は同じ。アレンジも基本的には同様にした上で、ある意味はCOMPLEX再結成であると同時に綺麗にCOMPLEXを終わらせる為、着地させる為の2日間だったようにも見えたというか……。それが美しく着地していたからこそ私も3度目のCOMPLEXなんてないだろうなあと思っていた根底にあったでしょうし。

でも今年…2024年のCOMPLEXは、セットリストも1990年及び2011年と同じながらも2曲追加されて、一部にアレンジが変更されていたような曲も少なからずあった。何よりサポートメンバーがパーカッションのスティーブ・エトウ氏を除いて全員変わっている訳で、ある意味では2011年が本当の解散ライブであり、ある意味では2024年が本当の再結成だったような雰囲気も感じたんですね。2011年が1990年をやり直すようなライブならば、今回はCOMPLEXとして新たに構築していったライブであるかのような。

1990のギターソロ、布袋さんがこれまではソロで奏でていたメロディーを、2024年は吉川さんも間奏でギターを手にしてユニゾン形式で奏でられたんです。1990に限らず、吉川さんが1990年や2011年では持っていなかった場面でギターを持つ機会も多かった。後に布袋さんがXで「今の彼はビンテージギターの太いサウンドで粘りのあるフレーズを弾く存在感あるギタリストだ」と綴っていたように、今の2人はタイプの異なるスーパーギタリスト同士という側面さえも手にした。2011年がCOMPLEXを完結させるライブだったのならば、やっぱり2024年は新しいCOMPLEXを、より力強く、より煌びやかで、あの頃に出来なかった表現さえも追い求めたCOMPLEXだったのかな…と。

 

「COMPLEXは2人の歩みを重ねて、進化ではなく『深化』したのだ」(5月24日21:25 布袋寅泰 公式X @Official_Hotei より)

 

ほどけた靴紐が結ばれ合うようなギターソロと最後のサビが終わり、【1990】と表示されていたビジョンの数字が【2024】に変わったその時、どことなくこのライブが持つもう一つの意味に触れた気がしました。

 

 

 

そんな感情に浸る気持ちを良い意味で弾き飛ばすかのように狂わせてくれたCOMPLEXのキラーチューンRAMBLING MAN。まさかの吉川さんが向けたマイクに布袋さん気付かずというご愛嬌シーンもありましたが…やっぱりRAMBLING MANも、もうどちらかのソロでしか聴けないんだろうなぁ……という気持ちがありましたから、あのシンプルなドラムから始まるライブverのオープニングと、そこからの圧倒的な疾走感。

そしてWアンコール扱いとして挿入されたのは2011年にはセットリストに入っていなかったCLOCKWORK RUNNERSだったんですけど、COMPLEXのライブをリアルで見られなかった人にとってこの曲のイメージはやっぱり「白黒の映像で踊るCOMPLEX」だと思うんです。この曲の時のモニターが白黒で映し出されていたのはもうセンスでしかない。ゆったりとしつつもハードで小気味のいいロックンロールから最後に放たれたAfter the Rainはどこまでも美しく、ギターとボーカルというよりも、あの空間の中に佇んでいたことで全身の全てが浄化されていくような気分でした。

 

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ふとした瞬間に、ふと周りを俯瞰的に見る瞬間があったんですよね。

私は26歳。今年で27歳になる立場です。遂にアラサーと呼ばれる領域に達してしまった……サッカーを見ても先発メンバーの大半が自分より年下の人間で構成される事も珍しくなく、今もし仮に日本代表に入れば年齢は真ん中より上でしょう。親に言わせれば「26で何を言うか」と返されたが、自分は自分で歳をとったと直面する機会は少しずつ増えてきていて、若干憂鬱になったりもしたり。それでもこの日ばかりは周りの観客は大体親世代で、20〜30歳ほど年上の人達ばかりでした。そしてそれは人間観察として実に不思議な環境だったと思います。

曲単体で聴けば、どう考えても泣き曲ではないはずのBE MY BABYの歌い出しや恋をとめないでのイントロで泣き出すおばさん、PRETTY DOLLのSEで「あぁ…」と漏らした40〜50代と思わしき夫婦、会社から直接来たのだろうかスーツ姿にメガネをかけた真面目そうな見た目のおじさんは、いつの間にかジャケットを脱ぎ捨ててRAMBLING MANでワイシャツが破けるような勢いで拳を突き上げていた……。今の職場、今の立場、今の家族……今の自分が護らなければならない聖域というものは彼らくらいの年齢になった人間は誰もが抱えている。そしてその誰しもにかつて通ってきた道の青春という閉じ込めた聖域が心の奥底にある。2つの圧倒的な聖域がステージの上で一つになった時、観客席ではいくつもの聖域が全てを脱ぎ捨てるかのように剥き出しになっていたように見えたんですね。あの瞬間だけ、あの2時間半だけは、それぞれの聖域を抱えた大人達が過去に還って、目の前の夢のような現実に酔いしれていた。聖域のような空間と化したあの日の東京ドームには、他のどのライブでも表現し得ないような物語が渦巻いていたように見えました。


MCで布袋さんが語った「かつての少年少女達」がしまい込んだ聖域に飛び込み、それぞれの物語に想いを馳せていた一方で、そのかつての少年少女の夫婦から1997年に生まれ、2014〜2015年頃からCOMPLEXを聴くようになった私にとって、COMPLEXとは映像や音源でしか触れることのできない歴史上の出来事であり、そして「あと3年早く興味持ってたらなぁ…」と小さくも根深い未練を与えてくる存在でした。
2024年5月16日に東京ドームで私が見たCOMPLEXは、私の中で過去の幻を追うことでしか体験できない教科書の中の歴史の偉人などではなく、誰よりもカッコいい、2024年を生きる憧れの大人2人でした。2024年5月16日に見たもの、聴いたもの、感じたものの全て、そしてあまりにも圧倒的だった2人と周りの大人達の全てを剥き出しにしていた姿を見て無意識に抱いた「歳をとるってのも案外悪いものでもないなぁ…」という感情の感覚はこれからの人生の支えにもなるのかな…なんて。

未練が弾けた場所で見た景色は夢よりも何倍も美しい景色でした。COMPLEX 日本一心 2024── 20年、30年後の自分が、思い出の聖域として心に閉じ込める1ページになるんだと思います。

 

 

という訳でWOWOWを見る

ではでは(´∀`)