RK-3はきだめスタジオブログ

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痛快で皮肉な分岐点〜2025明治安田J1リーグ第6節 東京ヴェルディ vs 名古屋グランパス マッチレビュー&試合考察〜

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地味にヴェルディのホーム戦全部レビュー書いてる今年

 

どーもこんばんは

 

 

さてさて、本日のマッチレビューは2025明治安田J1リーグ第6節、東京ヴェルディ vs 名古屋グランパスの一戦です!

 

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2025年のJ1も5試合を終え、もちろん今の調子が最終成績に直結するかどうかは別問題ですが……スタートダッシュに成功したクラブ、スタートダッシュに失敗したクラブの色合いははっきりとしてきました。

昨季に続く躍進とJ1定着の先に名門復活を目指すヴェルディは開幕戦、清水に挑まれる格好になったリベンジマッチを落としたことを皮切りに、第3節の東京ダービーこそ勝利しましたが、ここまで1勝1分3敗と黒星先行と難しいシーズンの入りになりました。とはいえヴェルディそれでも昨季の開幕当初よりは勝点を取れているポジティブ要素があるのに対し、名古屋はここまで未勝利かつ2分3敗という苦しいスタートに。正GKとエースFWを相次いで負傷で失う苦しい状況の中、新戦力との擦り合わせを含めた作業にまだ答えを出せていません。

昨季出した答えの続きを再び軌道に乗せたいヴェルディ、最適解を求めた手探りにケリをつけたい名古屋。5試合一区切りのフェーズを終えた両チームの再浮上を懸けた一戦です。

両チームスタメンです。

 

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今季のJ1で最年長の城福浩監督と2番目に年長者となる長谷川健太監督の対戦は両チームとも3-4-2-1を採用した構図となっています。

ヴェルディは2-2で引き分けた前節新潟戦と同じスタメンを起用。ベンチメンバーも第4節G大阪戦で負傷退場となった福田湧矢が復帰した以外の変更はありません。マテウス、谷口、綱島、森田、齋藤、宮原の6人は開幕から全試合スタメンとなっており、宮原和也は古巣との対戦となりました。

対する名古屋は1-1のドローに終わった前節C大阪戦では山岸祐也と徳元悠平が負傷退場となった影響もあってかスタメンを5人変更。前線3枚はそのまま入れ替えており、マテウスカストロをゼロトップ気味に頂点にしながらシャドーなら森島司と浅野雄也を起用し、前節はトップ下に置いた和泉竜司も左WBにスライド。3バックも佐藤瑶大を残して2人入れ替えており、浅野は移籍後初スタメン、河面旺成は開幕戦以来の先発です。

 

 

 

本日の会場は東京都調布市味の素スタジアムです。

 

 

この試合ではレディースデーの一環として、ヴェルディ応援大使に就任しているAppare!が来場し、試合前にはミニライブが開催されます。スポンサーデーとして先着でパックご飯と米粉もプレゼントされる他、パートナーシップクラブであるレアル・ベティスとのコラボイベントも開催されるとの事。

ちなみに名古屋にとって味スタは鬼門と呼ぶべきスタジアムで、味スタのヴェルディ戦ではヴェルディが降格したシーズンやJ2の2017年でも勝てておらず、唯一勝利したのはストイコビッチ引退試合となった2001年の試合のみ。FC東京戦を含めても味スタでは2015年以来勝てておらず、挙げ句の果てに長谷川健太監督もガンバ大阪の監督に就任した2013年以降、FC東京の監督を務めていた時代を除けばリーグ戦で味スタの勝利から遠ざかっています。名古屋は鬼門を突破できるか、ヴェルディは鬼門を鬼門たらしめる事ができるか…!

 

 

 

 

序盤からハイプレッシャーをかけに行こうとしたヴェルディに対し、最初のチャンスを作ったのは名古屋でした。GK武田洋平にまでプレスをかけたヴェルディに対し、名古屋はなんとか掻い潜ってビルドアップを試みると右サイドから縦パスを繋いで突破。マテウスのスルーパスに抜け出した浅野雄也の折り返しを中山克広がシュートに持ち込みますがGKマテウスが好セーブ。そのCKの流れから稲垣祥が放ったミドルも枠を捉えられません。

ただ序盤は名古屋の方がスムーズに攻撃を運べており、マテウスをゼロトップとして運用しながら攻撃機会にはリンクマン的に顔を出させる、逆に森島は衛星的に動きながら、浅野や中山が背後を突こうとする動きを見せつつ、今日は河面を起用している事もあって攻撃時には河面と三國をサイドに出した可変4バックにシフトする事でギャップを生み出そうとしていました。

 

 

 

試合が動いたのは21分。既にコンパクトな陣形を前線にキープできるようになっていた名古屋はプレスでヴェルディのビルドアップのミスを誘発すると、浅野のロブパスに走り込んだ稲垣のフリックから森島が決め切って名古屋が先制!ボール奪取からの鮮やかなテンポとリズムで名古屋が先制に成功します。

 

 

ヴェルディもボール保持時にビルドアップしながらどうにか最終ラインを押し上げて、ボール非保持になっても名古屋が攻撃にリンクしにくくなるような状況を作れるかどうか…が前半は一つ問われるポイントではありましたが、今日は名古屋もヴェルディを押し下げるようなプレスを行い、かつロングボールに対しても上手くサイドに追い出した事で、ヴェルディはなかなか距離感を掴めない状態で前半を戦わざるを得なくなっていました。

前半は全体的に名古屋が自分達の望む流れに持ち込む形でリードして終了。

 

 

前半途中に森田晃樹が負傷により平川怜との交代を余儀なくされていたヴェルディは後半から宮原を下げて山見大登を投入し、新井悠太をWBに変更して山見をシャドーに置いて後半に向かいます。

基本的にライン設定は名古屋がコンパクトな陣形をキープしながら高い位置を保ててはいたのでそこの構図としては前半とは大きくは変わっていませんでしたが、後半のヴェルディは木村が背後へのアクションを増やしてロングボールを引き出す動きを見せた事でロングカウンター的な攻撃で名古屋を撹乱させる回数が増えていきました。55分には谷口栄斗のロングボールに抜け出した木村の折り返しから染野唯月がシュートに持ち込み、このシュートは枠を外れるもヴェルディが名古屋のアタッキングサードに侵入する機会は増える形に。

 

 

 

山見投入でアプローチを変更したヴェルディが仕掛け続けた揺さぶりが結果に繋がったのは63分でした。名古屋が久しぶりに相手陣内に押し込んで繰り広げた攻撃が実らず跳ね返されたところ、名古屋が回収できなかったセカンドボールを拾った染野がドリブルで持ち運びスルーパス。ボールを受けた山見のシュートに持ち込み、DFに当たって僅かにコースを変えたボールはGK武田洋平の手を掠めてゴールへ!まさしく城福浩監督の采配が当たる形でヴェルディが試合を振り出しに戻します。

 

 

名古屋は同点直後に中山と浅野を下げて永井謙佑と内田宅哉を投入。しかし一度ヴェルディが掴んだ流れを変えるには至らないまま73分には相手にCKの機会を与えると、山見が蹴ったマイナス気味の右CKをファーサイド綱島悠斗が合わせたヘッドはループ気味な軌道を描いてゴールへ!綱島の2試合連続ゴールでヴェルディが遂に逆転!

 

 

名古屋も80分には椎橋のパスを受けた和泉が落としたボールにマテウスが走り込みますが、マテウスのシュートはフカしてしまう形でゴールの上へ。直後には佐藤とマテウスを下げて菊地泰智とデビューとなる18歳の杉浦駿吾、86分には和泉を下げて山中亮輔も送り込みます。

しかし最後の最後まで効果的なチャンスを生み出せず、逆に前がかりになった名古屋を巧みにヴェルディが突くように時間を進めて試合終了。鮮やかな逆転劇を演じたヴェルディが今季ホーム初勝利!一方、名古屋はこれで開幕6戦未勝利(2分4敗)という結果になりました。

 

 

 

いやー……どう言えばいいんでしょう、ここまで「鮮やかな逆転劇」という言葉が似合うゲームもそうそう無いなと思うようなゲームでしたね。前半の名古屋のパフォーマンスの良さ、そこからのヴェルディの采配と全員がそれに伴った動き、流れが変わった時の押す側と受ける側の対比……「サッカーの怖さ」というと手垢の付いた表現ですけど、バイオリズムのようなところも含めて勝負事の怖さ、現状の流れを敵に付けるか味方に付けるか…みたいなところで示唆に富んだゲームだったなと思います。

 

 

前半の名古屋はほぼパーフェクトにゲームを進めていました。

基本的にヴェルディにしても名古屋にしても、Aプランと呼ぶべき狙いは同じだったように思います。なるべく高いライン設定をキープして、高い位置で攻撃と守備をスタートさせられるようにしておく、そういう状況を早い段階から固めておく…と。そうやって整えた陣形をヴェルディの場合はプレスとショートカウンターを効率的に繰り出す為に使いたい、名古屋の場合はビルドアップの最低ラインを高いところにキープさせたい…そこの目的意識に違いはあった中で、名古屋は開始早々にGK武田のところまでプレスに来られた場面を上手く剥がしてチャンスまで繋げる事が出来た。あの場面を起点に攻撃時には4バックに可変できる状況を作りながら、マテウスを起点に森島とWボランチでゲームを作り、浅野や中山の流動性を活用する…というダイナミズムを生み出せていました。

前半に関してはやりたい放題…とはいきませんでしたが、試合自体を名古屋のコントロール下に置くことが出来ていましたし、逆にヴェルディは本来やりたかったプランを完全に封じられる形になっていったので、前半は名古屋とヴェルディの間で手応えに大きな差を感じる展開でした。

 

 

 

ただ、ヴェルディは森田の負傷退場も含めてプランAが封じられたと判断するや否や、後半からは当初の狙いを完全に放棄してでも…ぐらいの勢いでプランBに切り替えてきた印象はありました。とにかく木村が背後へのアクションを増やしていく事、木村が前に走り、その間のスペースを山見や染野がしっかりとフォローする事。この2点を徹底して行い、ロングフィードをしっかりと蹴れる選手もいるので、前半は最終ラインの高さを護持しながら相手を跳ね返してビルドアップへの貢献に集中出来ていたところに上下動を強いるように仕向けていく…後半のヴェルディはそれを徹底的に繰り返すようになっていきましたが、これが名古屋にとっては苦しかったですね。

今の名古屋の3バックは純粋な対人守備であったり、ビルドアップ時の参画には一定の貢献ができますし、前半のようにプラン通りにチームが動けている時のラインコントロールのような事は問題なくできる一方、プランが崩れた状態になった時に3バックとして守備の距離感を微調整していく事が出来ないのが弱点で、それは前節C大阪戦の失点シーンでも明白でした。今日はそれでも耐えていた方ではありましたが、木村のアクションへの対応、それに追随する山見や染野へのケアに完全に後手を踏んでしまい、前半のような隊列は組めなくなった…と。面白いのはヴェルディもあくまでロングカウンター主体にだったので、別に名古屋は押し込まれたり押し下げられたりした訳では無かったんです。ただ後ろの状況が怪しくなり、展開が苦しくなってきた焦燥感は前線にも間違いなく波及していたのか「あと30分くらいあるけどラインを下げて守りに徹する」か「刺される前にどうにか2点目を取る」という決断を急いでしまい、おそらく後者を選んだと思われる名古屋はそれ自体は良いとしても、前半は落ち着いてボールを動かせていたような局面でもアバウトに攻め急いでしまった。あの局面で前半のように最終ラインを護持したビルドアップができれば違う未来もあったのかもしれないんですが、その余裕を開幕5戦未勝利のチームに求めるのは厳しい部分はあるというか……結局、アバウトに攻め急いではロストしてロングカウンターを喰らい、またDFラインが崩れていく、同じ事を繰り返す…という状況になってしまった。山見のゴールに至る一連の経緯は象徴的な場面だったように思います。

 

 

 

その点ではこの試合は城福監督の采配が見事だったという点が大きかった。木村に託した役割とロングカウンターに適した山見という選手の投入、それを全選手に共有させた事は全て理に適っていましたし、選手もそれに基づいて動いた結果に繋げた。何より、あそこで元々の狙いを完全に捨ててまで割り切った作戦に変更出来てしまう判断力と胆力は彼ならではと言えるものでしょう。この逆転劇は痛快感すらありましたね。

逆に名古屋からすれば、城福監督の采配がある意味では森田の負傷も含めて、前半はヴェルディにとって全てが上手くいかなかったから切り替えやすかった…とも考えれば実に皮肉な結果だったとも言えるかもしれないのはスポーツの怖いところと言えるのかなと。名古屋の精神状態を踏まえ…たのかどうかは実際にはわかりませんが、城福監督が後半に施した作戦は今の名古屋にとって心技体の全てで鬼畜とすら呼べるほどに効果のあるものだった。その機を掴む采配は城福さんならでは…というか長谷川監督も本来は得意な采配なはずではあるんですが、そこはやっぱり長谷川監督のガンバ時代やFC東京時代のイメージとは異なる仕事を名古屋では託されている事の表れではあるのかも、とは少し思う部分もあります。

 

 

第6節分のうれしはずかしじゅんいひょうのコーナーは清水エスパルスvs京都サンガFCのマッチレビューページに記載しています

 

 

そういえば名古屋って1ヶ月で2回味スタ来てるのね

ではでは(´∀`)