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残酷な京都のテーゼ〜2018年の京都サンガを振り返ろう・下〜

【前回の続きですので、初めて辿り着いた方は是非前回のものからお読み下さい!】


 

夏の移籍期間が開く。

今年に始まった事ではないが、ここ数年のサンガフロントの働きぶりに文句を言いたくなる事は非常に多い。だが今夏の移籍市場での立ち回りは良かったと思う。まずスカスカだったボランチベガルタ仙台から庄司悦大を獲得。何しに来日したか最後までわからなかったアレシャンドレ、マティアン・カセレスを放出した代わりに、FC大阪に所属していて日本には既に順応しているジュニーニョをチームに迎え入れた。

彼らのデビュー戦となった松本山雅FC戦では、首位相手に敗れこそしたものの改善している兆しは確かに見えた。

 

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サンガはさらに動く。庄司と同じ仙台からMF金久保順セレッソ大阪横浜FCで活躍するなど日本での実績も豊富なFWカイオら即戦力に加え、バックアッパーの底上げを図るなど計7選手を補強した。

特に庄司、金久保、ジュニーニョ、カイオの補強は本当に大きかった。まず庄司、金久保の2人は中盤で確実にゲームを作ってくれる選手。そもそも前線にボールが入らないという悪循環はこの2人の補強で相当改善されたと思う。

 

カイオのフィジカルも魅力的で、ツートップにカイオや田中マルクス闘莉王が入る事で前線で確実にボールを収める事が出来るポイントを作る事が出来た。

ただ、そこまでは2017年のケヴィン・オリスと闘莉王のツートップと同じ。この時はツインタワー状態でサイドからのクロスしか攻撃パターンしかなくなっていたが、2017年と違ったのはジュニーニョの存在である。彼は単独での突破能力こそ岩崎や退団したエスクデロに劣るものの、前線を衛星のように動き回る事が出来る選手で闘莉王やカイオが落としたボールを拾い、流動性のある攻撃へと繋がる役割を担った。

 

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攻撃に於いてチャンスメイクの土台がしっかりと組み立てられた事は戦力の底上げのみならず、岩崎や小屋松知哉、仙頭哲矢らも前半戦より遥かに伸び伸びプレーできていたように感じる。

今年の前半戦、サンガの得点はレンゾ・ロペスに依るものが大きかった。賛否両論はあるにしても、近年のサンガの外国人補強に於いて少なくとも「ハズレ」と言えるほどの存在ではなく、ストライカーとして最低限の仕事はしっかりと果たしてくれていたと思う。

ただ決して万能型と言えるFWではなかったので、パスが来ないあの時のサンガではどうしても孤立してしまいがちだったのだが、チャンスメイクの土台が整ってからはロペスも自分の仕事に専念出来るようになった。選手層の底上げのみならず、現有戦力を活かすという意味でも夏の大量補強には大きな意義と効果があった。

 

 

第27節のモンテディオ山形戦で9試合ぶりの勝利を収めたサンガはFC岐阜レノファ山口にも勝利して3連勝。その後も安定には程遠くとも、第35節のロアッソ熊本との直接対決など抑えるべきところはしっかりと抑えたと言える。

アビスパ福岡大宮アルディージャと言った上位陣にも勝利したサンガの姿は無論、満足いく成績とはお世辞には言えなかったものの前半戦とは違う姿を見せていた。

 

それを如実に物語るのがホーム西京極での第22節福岡戦である。

本来この試合は夏の移籍解禁前の7月7日開催予定のゲームであり、諸事情により試合が順延されて9月26日の開催となった。

順延に至った理由が理由である為に「順延になって良かった!」なんて事は決して言えないが、予定通り7月7日に福岡戦が行われていればサンガは間違いなく勝利を収める事は出来なかったと思う。今シーズンは順延となった試合が多く、過密日程に苦しんだチームがちらほら出現したが、サンガについてはむしろ試合順延に助けられた部分もあるかもしれない。

 

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一時期はJ2残留圏内の20位との勝点差が8まで開いたサンガだったが第29節で最下位を、第30節で降格圏を脱出してからは一度も降格圏に再度転落する事なく、ロアッソ熊本カマタマーレ讃岐を突き放して第40節終了時点でなんとかJ2残留を決めた。

一度は本当に現実味を帯びたJ3降格という最大の危機をなんとか免れ、最終的に2018年の京都サンガは20位でシーズンをフィニッシュ。当然、過去ワーストである。

 

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さて、難しいのがボスコ・ジュロヴスキーをどう評価するか、という点である。

 

 

 

J2の中ではそれなりに恵まれた戦力を持っていた以上、19位という順位は看過されるべきものではないし、前半戦より改善の余地は見られたとは言えどもそれは補強の効果が大きく、またボスコ自身も布部氏から監督を引き継いだ後、長いスランプを味わっている。そもそも布部政権の失敗にしたって、今季はボスコがヘッドコーチとして入閣していた訳だから、そもそもの責任がない訳でもない。

 

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一方で、ボスコがチームに最低限の修正を施し、救いようがないとも思える様な状態から残留に漕ぎ着けたのも事実ではある。補強の効果が大きいとは言ったが、その補強は布部氏でも活かす事が出来たか?と聞かれればそうは思わない。夏の補強によってある程度のチームとしての態勢を整える事が出来たのはボスコの手腕も幾ばくかはあるだろう。

ボスコの下で戦った半年は決して成功ではないだろう。だが失敗という訳でも無かったと思う。J2に残留させた、今年の序盤のサンガを見れば、この時点である程度は十分な功績とも言える。

 

 

 

今、一番大事なのは来年に向けてのプランである。

大木武監督退任後のサンガは2016年を除いて毎年そこで失敗している。先程夏の補強は良かったと述べたものの、特に庄司と金久保の部分、ボランチの補強は本来シーズン開幕前にするべき事だった。むしろ夏の補強が成功した事でフロントは身を以て「取るべき場所に適した選手」を獲得する事の重要性を感じてくれていないと同じ事を繰り返すだろう。

 

まずは残すべき選手をきっちりと残す事だ。

今のサンガではJ1に引き抜かれるのは防ぎようがない。だがそれ以外の場合ならある程度抑止出来る努力は最大限にしなければならない。まずするべき事は仙台からレンタル移籍で加入している庄司をチーム残せるようにする事だ。完全移籍を掴み取れればベスト。こればっかりは仙台に帰って来いと言われてしまえばどうしようもないが、最低でもレンタル延長は果たして欲しい。

攻撃陣はある程度現状維持でも何とかなるかもしれないが、DFラインの補強は実現させてほしい。センターバック染谷悠太は良いが、さすがに増川隆洋は限界が来ている。サイドバックにしても本多勇喜石櫃洋祐に依存している状態で、特に石櫃は35歳である事も考えるとここも早急に手を施さないといけないポジションの一つと言える。

 

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何より大事なのは補強にしても監督人事にしても「明確なビジョンを持つ事」だ。それは別にポゼッションだとか縦に速くとかでなくてもいい。「改革」だとか「現状維持路線」だとか程度でいい。ボスコを続投させるにしても退任させるにしてもまず真っ先に考えなければならない事で、これまでのサンガはそこさえも出来ていなかった訳だから…。

 

 

 

J2最終節が終わった翌日である11月18日、サンガはボスコ・ジュロヴスキー監督の退任を発表した。先程も述べたように、成功とはいかなくても就任当初のミッションはこなしたと言っていいと思う。

 

問題はこの後だ。

 

今思えばここ数年のサンガは、確固たるスタイルを築いた大木武の後任監督という一番慎重にならなければならない場面でバドゥのようなタイプの監督を招聘してしまった。世代交代推進の為に和田昌裕氏を監督にした時は是非はともかく、少なくとも間違いなくその目的に反するようにベテランの補強ばかりに終始した。そして典型が布部陽功氏だった。近年のサンガフロントには、中長期どころか2ヶ月、3ヶ月先のビジョンすら描けていないように感じる。

チームに流行語だけを残した小島卓強化部長も退任となり、新しい強化部の体制となっての最初の大きな仕事が次の監督選びになる訳だが、ここで間違いを犯せば来年こそは本当にJ3かもしれない。

「大木さんが続投していれば」「石丸さんが続投していれば」…そんな事ばかりサンガファンは言い続けていた。勿論、優秀な監督を招聘出来るのならそれが一番だし、わざわざ石丸氏を切って布部氏に切り替えたようなギャンブルも、少なくとも今はあの当時よりは正当性はある。

どちらにせよ最悪なのは、来年の今頃にまた「ボスコが続投していれば」なんて言い出してしまっているような展開で、今のサンガの悲しいところはその未来も容易く想像出来てしまうというところだ。

 

 

 

何にせよ、再びサンガが昇格争い、或いはJ1に舞い戻る為にはチームに関わる全ての人が2017年、2018年の2シーズンのチームを反面教師にしなければならない。

サンガのJ2生活も気がつけば8シーズン目だ。サンガの4度目のJ2生活が始まったのは2011年。この年に産まれた子供は今年小学校に入学した年代だ。もうそれほどの時間が経ったのだ。

今のサンガはもはや昇格候補ではない。2019年シーズンはそれを自覚しなければ始まらない。

 

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おわり。

 

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