RK-3はきだめスタジオブログ

気ままに白熱、気ままな憂鬱。執筆等のご依頼はTwitter(@blueblack_gblue)のDM、もしくは[gamba_kyoto@yahoo.co.jp]のメールアドレスまでご連絡お願いします。

"最悪"から逃れるため〜AFC U-23アジアカップ 2024 U-23カタール代表 vs U-23日本代表 マッチレビューと試合考察〜

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20240426041927j:image

 

今夜の「だっ」ぞんは超必見!!

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューAFC U-23アジアカップ準々決勝 U-23カタール代表 vs U-23日本代表の一戦です!

 

 

 

Jリーグをもっと楽しめる(かもしれない)、2024Jリーグ開幕ガイド作りました!是非お使いくださいませ。

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

今日の試合に出場する選手は基本的には「若手」と呼ばれる括りにカテゴライズされる選手達です。

2001年生まれの、既にある程度のプロキャリアを積んでいるような選手達はこれまでにも多くの試合を経験していますし、そして殆どの選手がこれからもっと多くの試合を経験していくことになると思います。しかしてサッカー選手の日常の多くはリーグ戦。例えばW杯のアジア最終予選でもそうですが、ある程度の取り返しは効く。W杯のノックアウトトーナメントにしたって、そこに辿り着いた時点でおおよそは失敗とは呼べない訳で、個人個人のポジション争いとしてはともかく、基本的には「次」が決してない訳ではない。

……生きるか死ぬか。今日の試合ほどその言葉が似合うゲームはそうそうこの世界にはなく、そして彼らにとってもこれからの人生に於いて、これほどギャンブル性すら感じるような「死」と「生」を行き交う90分はそうそう訪れないと思います。今日というは始まりから終わりまで極限状態。それはこのチームにとっての終わりとはじまりに直結する…そんなゲームです。相手は開催国。そして世代別代表からの強化に徹底したリソースを割く優勝候補。彼らのクオリティとモチベーションに、いつの間にか「出ることが当たり前になった」者としての矜持を見せなければならりません。人生で一度訪れるかどうかのシチュエーション…「出ることが当たり前」という口にするよりも遥かに高いハードルを超えた先に初めて凱旋門は待っています。

スタメンです。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20240426040043j:image

 

日本は中国戦に始まり、UAE戦、韓国戦とグループステージではメンバーを流動的に編成してきました。その中で今日の試合は3試合の中でも特にターンオーバー感の強かった前節韓国戦からはCB高井幸大を残してスタメン10人を変更。藤田穣瑠チマ、松木玖生、細谷真大はいずれも初戦の中国戦以来となるスタメン復帰となりました。基本的には初戦の中国戦に近いメンバー構成となっています。

 

 

 

本日の会場はカタール、ドーハのジャシム・ビン・ハマド・スタジアムです。

 

 

ドーハの都心に位置するスタジアムで、アル・ドゥハイルと並んでカタール屈指の強豪クラブとして知られるアル・サッドの本拠地として使用されています。近年のカタールカタールW杯開催に伴い多くの新スタジアムを建設しましたが、この建設ラッシュの前にはハリーファ国際スタジアムと共にカタール代表のホームスタジアム扱いを受けており、現に2008年に行われた南アフリカW杯最終予選のカタールvs日本の試合はこのスタジアムで行われました。施設に関してはこのスタジアムも冷房機能を完備しています。

なお、日本はグループステージ全3試合をこのスタジアムで戦っており、1位通過であれば準々決勝は別会場になる予定でしたが、2位通過だったことから4試合連続でこのスタジアムでのゲームとなりました。組み合わせ上、日本は決勝に進めば全試合をこのスタジアムで戦うことになり、準決勝に敗れた場合は3位決定戦のみ別のスタジアムでの開催が予定されています。

 

 

試合はむしろ想定外なほど早くに動きました。

2分、自陣でボールを回した日本は右サイドの関根大輝に回ったところで一気にロングボール。これはカタールにボールが渡りますが、カタールが試みたビルドアップが乱れたところを突いた山田楓喜が自ら最も得意なゾーン、得意なタイミングで得意なショット!!日本、幸先良すぎる先制劇!!!!

 

 

しかしその後は日本がボールを持つ時間こそ長く、18分にはゴール前で細谷真大が獲得したフリーキックを山田が狙う惜しいシーンもあったものの、一方でカタールのロングボールからサイドを攻略してくるような攻撃に日本はなかなかサイドのところで守備のリズムを作れず、隙が随所に垣間見える部分は少なからずありました。

ボール自体は繋げている。シュートチャンスこそ多くないながらも、サイドやレーンにボールを入れることは一応できている。悪いとまでは言えないゲーム展開。ただ拭えない不穏さは否めない…そういう感覚で試合は進みました。

 

 

 

するとカタールは24分、左サイドでボールを持ったアル・ラウィがエリア外にマイナスのパスを出しますがこのボールは味方と合わず。しかし右サイドに流れたボールを右CBのアル・フセインがフォローに入って縦パスに繋げると、アル・ヤジティがピンポイントで上げたクロスに対して中に飛び込んだのは攻撃の起点を作ったアル・ラウィ。ドンピシャの一撃で刺されて日本失点。

 

 

 

同点に追いつかれた日本の次なるチャンスは38分でした。左サイド深い位置でのスローインから佐藤恵允が一瞬のタイミングを見逃さずエリア内で相手を背負った細谷に長めのスローをすると、相手DFを背負った松木が巧みなキープ力とボディコントロールを見せてクロス。ファーサイドに細谷が走り込みますが…シュートは僅かに枠の右へ。

更に40分には相手のゴールキックを木村誠二が競り勝ったボールを拾った松木が一気に前線にロングボール。抜け出した細谷がチャンスを迎えますが、エリア外まで飛び出してきたGKアブドゥラーと接触してFKを獲得すると、VARの末にアブドゥラーは退場処分に。このFKはゴールに繋がらずも、日本は数的有利を手にして前半を終えます。

 

 

日本は後半から、前半の時点でイエローカードを1枚もらっていた松木を下げて藤尾翔太を投入。中盤をWボランチに、そして藤尾と細谷を2トップにした4-4-2にシフトします。

しかしショックは後半開始早々に訪れました。49分、カタールは左サイドからフリーキックを得るとボールには2人の選手が並ぶ形になり、1人の選手がキックモーションを入れることで日本のマークがズレたタイミングを狙ってメシャールがクロスボール。これをガベルがファーサイドで合わせてカタールが逆転…。1人少ないカタールとしは「ここしかない」とでも言うべきチャンスを活かし切る形に。

 

 

 

後半の日本のサイドでのボールの動かし方は必ずしも悪いものではありませんでした。特に右サイドのところで縦に抜ける藤尾、カットインも狙うモーションを見せる山田、それを大外にオーバーラップしていく関根のところで連動ができており、そこからグラウンダーのボールを入れるまでの流れはできていましたが…マイナス気味のボールに対してフィニッシュし切れない場面が多く、チャンスは作るけれどシュートまで持っていけない時間が続きます。

カタールのカウンター攻撃に対応しようとした高井幸大がバランスを崩したところに素晴らしいフォローを見せた大畑歩夢が攻撃を阻止すると、そこからボールを受けた山本理仁が完璧なロングスルーパスを送って逆カウンター。この攻撃は成就しませんでしたが藤尾が粘ってCKを獲得すると、ゴール中央に山本が放り込んだボールに木村が合わせて日本同点!!同点同点同点!!!!!!!!!大ピンチから一転、起死回生の同点ゴール!!!

 

 

そこからは明確に右サイドから押し込む日本とカウンター狙いのカタールで試合が推移していきました。

実際に日本は右サイドの山田、関根がそれぞれ非常に素晴らしい動きを見せており、右寄りにポジションを取る高井や山本もそこでのボール回しに絡みながら攻撃を仕掛けていきます。しかし76分には右サイドに走り込んだ藤田のクロスにファーで合わせた佐藤のヘッドが決め切れず、その後は関根のクロスに藤尾という場面が2度訪れるもいずれも決め切れません。

 

 

 

日本は明確に右で作って左で仕留めるというパターンでの攻撃が続いていた事もあってか、ここまでハーフタイムの松木→藤尾以降カードを切っていなかった大岩剛監督は83分に佐藤を下げてドリブルでの打開にも期待できる平河悠を投入。この交代以降、日本は左からのアクションも目立つようになってパターンを分散させるように試みていきました。

アディショナルタイム、山本理仁の絶妙なフライスルーパスをGKが弾いたところに藤尾が詰めましたが、シュートはむしろクロス調の軌道になってしまってゴールならず。後半ラストプレーの波状攻撃でも山本が一人かわして放ったシュートはサイドネット直撃…壮絶な90分の末、試合は延長戦に突入。

 

 

 

後半終了直前に山田を下げて荒木遼太郎を投入していた日本は基本的には後半と同様のスタンスを延長戦でも継続。その中で中央でゲームをコントロールしながらボールを捌く藤田と右サイドに流れながら決定的なパスも狙う山本を中心に良いボールとリズムは供給できていましたが、一方でそれを2れつめより前のところでなかなか収めきれない状態が続いていました。

しかしてその瞬間が訪れたのは101分。脚を攣る選手も続出したカタールが明確に危険にならないゾーンでのファウルで止める意図も明確になって中で右サイドの深い位置でFKを獲得。関根が高井に横パスを出し、高井が藤田へとスローにボールをつなぐと、藤田が一気にスピードギアを上げる縦パスを荒木に付け、おそらく彼が一番得意名前の向き方でボールを受けた荒木がスルーパス。反応したのはここまで不審に陥っていたエース細谷!!!!ここに来て目覚めたこの世代のエースFWのゴールで再逆転!!!

 

 

延長後半、日本は疲労の考慮に伴う強度の維持を目的に細谷と山本を下げて内野航太郎と川﨑颯太を投入。

延長後半は満身創痍のカタールも日本を押し返してくるだけの余力はもう残っておらず、日本も無理に前に出ようとはせずにボールを回してゲームコントロールを試みます。112分、荒木の左CKは一度は弾かれましたが、こぼれ球に走り込んだ川﨑がミドルシュート。相手に当たって跳ね返ったボールを内野が押し込んで追加点!延長後半から出た2人が絡むゴールで4-2!

そしてゲームフィニッシュ!!日本、準々決勝を勝利して生きるか死ぬかの戦いを生き延びました!!

 

 

 

いやー……壮絶な試合でしたね。見てて疲れました。見てて疲れましたし、やっぱり日本は戦力ではこの大会に参加しているチームの中でも群を抜いている。どういう背景があれども、延長戦を抜いても45分以上の時間を数的有利で戦いながら「見ているだけでも疲れた」というような試合になってしまった時点で問題ではあります。「勝って反省できる喜び」とはよく言ったもので、今日の試合はまさしくそういうゲームだったなと。

基本的に日本はハイプレスとゾーンディフェンスを使い分けようとしていて、敵陣やミドルゾーンでは積極的にプレスを仕掛けていく…それこそ1点目がそうでしたし、でも構えるところではしっかり構える、日本陣内で明確に相手がボールを保持しているときはゾーンの隊形を組んで構えるというのは自然な対応ではあります。ただ、今日のカタールのようにミドルゾーンでの対応はちゃんとやれていたものの、サイドの深い位置に持っていかれた時の対応が若干曖昧だった印象は受けました。つまるところ、中央でボールを動かされている時はちゃんとスライドして対応できるけど、サイドに振られた時のエリア内のマークの受け渡しだとか……チームとしてゾーンディフェンス自体は統一意識を持ってやっているとは思うんですけど、構える時はゾーンではなくて、サイドに振られた時のクロッサーへのアプローチやエリア内での対応はまた別で約束事を作る必要があるように感じました。それは中国戦や韓国戦でも少なからず発生していた事案でもありますし。

攻撃に関しても右サイドでの山田、関根、藤尾の連動は素晴らしかったですし、そこは見ていても面白い連携を見せてもらえたと思うのですが、そこから最終的な結論がクロス一辺倒になっていた時間が長かったのも課題でしょう。選択肢を多く持ちたい攻撃陣に対して、守備陣は守備の選択をなるべく減らしたい。特に後者は数的不利のカタールにとっては尚更で、カタール守備陣にとってはやる事がクリアになっていたのは救いになっていました。ただここに関してはビハインドの焦りゆえ…というところはあるかもしれません。例えば2-2になってからは山田や、右サイドに流れてきた山本が見せたようにサイドからエリア内にドリブルで侵入していくというプレーをいくつか見せていて、そういうアイデアは1-2の段階からもう少し見せてほしかった部分はあります。

 

 

 

一方で、1-0から1-1になり、退場劇を経て1-2になるまでの流れは最悪としか言いようがないですが……そこからの流れは色んな意味で興味深かったかなと。

それこそ、上で書いたクロス一辺倒の話に繋がりますが、後半の日本は1-2の時間も2-2になってからも右で作って左で仕留める事を狙うような攻撃パターンで一貫していたんですね。今日は後半からWボランチを組んだ藤田と山本のゲームメイクは本当に素晴らしかったんですが、藤田も右サイド攻撃を念頭においた捌き方をしていましたし、山本も同点弾に繋がった藤尾へのスルーパスを始め右サイドに対するキーパスが多く、最後は自分自身も右サイドに流れていった。上で書いたように、カタールは完全に日本の右サイドからの攻撃に対応する頭で守備をしていて、逆に言えば守りの選択肢がめちゃくちゃクリアになっていた時間でもあったんです。そしてそれは、例えばザックジャパンの左サイド攻撃のようにチームとして意図したものという訳でもないので、右サイドの攻撃は良くても右サイド偏重になっている事が日本としては必ずしも望ましい状況ではありませんでした。

ただ、大岩監督は左サイドをドリブルで崩せる平河を結構ギリギリまで引っ張ってから投入したんですね。平河を投入してからは平河の突破力という武器を左サイドが得た訳で、配球役の藤田もそこからは左右バランスよくボールを振るようになっていた。単路的に言えばそういう修正をもっと早くやるべきと言えばそうなのかもしれませんが、カタールの守備陣は日本の右サイド攻撃を前提とした対応を組んでいて、それに対してある種反射的に守れるように、反射的にスライドしてポジションを調整できるような状況に自分達を持っていっていたように見えたんです。そこで急に日本がポイントを左にも作り始めた。日本側からすれば「もっと早くそれをやれ」なのかもしれませんが、カタール側からすると「今更それをやられても困る」という感覚があったんじゃないか、日本側の感覚以上にカタールは急に攻撃のパターンを分散されて、反射的に対応できるように持っていった守備の対応を崩された事へのショックは少なからずあったんじゃないかなと。

それこそカタールW杯日本vsドイツ戦じゃないですが、問題にあえて手を付けずにそのまま状態をあえて引っ張る事は、いざ交代カードを切った時に修正が相手へのダメージに直結する可能性もある。ましてやクロス一辺倒とは言えどもチャンス自体は作れていた訳ですから、左にも分散させたいけど敢えてこの状況を引っ張る事の妙味はあったのかなと。選手交代の積極性ばかりが采配と捉えられがちですが、現状を引っ張る事、待つ事…もっと簡単に言えばカードを切らない事もまた立派な采配ですし。それは細谷を残した事も然り。

 

 

ただ、チームとしては実に課題、問題の多かった試合ではありますが、個々に関してはやるべき事はしっかりやってくれたなと感じる試合でもありました。

ボランチの藤田と山本はそれぞれの役割分担も含めて素晴らしかった。藤田は押し込む時間にミドルゾーンに落ちたボールの全てを捌いたんじゃないかという勢いでしたし、山本は心踊るようなスルーパスをいくつも出した。関根や藤尾の右サイドでの動きも良かったですし、荒木の決勝アシストはまさしくああいうプレーが一番得意でしょ?というプレー。そして今日は個人的には大畑を特に讃えたいですね。チームが右SBの関根を含めて右サイド偏重になっていき、右CBの高井まで攻撃に参加していく中で左CBのような立ち位置にもスライドして器用にこなした。何より特筆すべきは1-2で迎えた65分のシーンで…ハイライトでは消されそうなシーンですが、日本の右サイドからのカウンターになりそうな大ピンチで対応に当たった高井がバランスを崩したところをフォローしたのが逆サイドの大畑だったんですね。あそこで時間を稼ぎ、戻ってきた山田がボールをカットして高井がマイボールにしましたが、あそこで大畑のカバーが無ければもうGK小久保に祈るしかない場面でした。しかも最終的に、その高井からのパスを受けた山本のスルーパスに藤尾が飛び出したプレーで得たCKが同点ゴールになった訳で…。チームとしては課題だらけの試合でしたが、その中でも光った個々、やるべき事をやった選手にはちゃんとポジティブな目を当てたいなと。例えば延長後半、GKがスローイングでカウンターを試みようとするようなモーションがあった瞬間に藤尾が露骨なくらい邪魔しにいった場面だとか。藤尾の場合は所属する町田がそういうディテールを徹底しているがゆえかもしれませんが、その場面は吉田麻也がロストフの14秒で後悔しているプレーでもあったりするので、そういうところが一つずつ経験値として積み上がっていっているのは素晴らしい事だなと。

 

 

なにより、どんな綺麗事を言おうがこの試合で次に繋げられるものは勝利しかなく、内容の良かった次に繋がる敗戦なんてものは最初から存在しませんでした。何はともあれ勝てたこと……どんな御託を並べたところで、美しい敗北よりも正しいものを日本は手に入れた。それは紛れもない事実です。さぁ、パリまであと1勝。凱旋門の入り口はすぐそこまで迫っています。

 

 

書き切った今、韓国負けとる…

ではでは(´∀`)