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自信は2種類〜AFC U-23アジアカップ グループB第1節 U-23日本代表 vs U-23中国代表 マッチレビューと試合考察〜

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ヴェルサイユ宮殿馬術ってパワーワードが過ぎるのよ

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューAFC U-23アジアカップ グループB第1節、U-23日本代表 vs U-23中国代表の一戦です!

 

 

 

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私は1997年生まれです。

時代としてはアトランタ五輪…いわゆるマイアミの奇跡の後に生まれ、生後から1年と経たないうちに日本サッカーはジョホールバルの歓喜に酔った。私がサッカーというスポーツを見るようになった時には、もうワールドカップもオリンピックも「出られない」というシチュエーションとは縁遠いものだという感覚を細胞が持っていました。

正直なところ、W杯に関して言えばその感覚は必ずしも間違いではないと思います。W杯は突き詰めてリーグ戦。最終的な勝点で決まるがゆえに、ロシアW杯やカタールW杯への道のりがそうだったようにオーソドックスな予選のスタイルでは一つや二つの黒星なら取り返しがつく。逆に言えば、極端なまでの日本対策を敢行して日本に勝っても、その後の試合も勝てなければ日本より上の順位には来れない。そういう総合力で勝負できるシチュエーションであれば、やはり日本はアジアの中である程度の安泰を手にした立場である事は確かでしょう。

ただ、オリンピックの予選はグループステージから始まるとはいえ基本はトーナメント。そこはまさしくバーリトゥードな舞台です。一つの負けが致命傷に直結するこの舞台は、ある意味現代のサッカー界でオールオアナッシングを地で行く舞台なのかもしれません。パリへの挑戦権は生存競争の果てに初めて掴むもの。出場が当たり前と思われる時代に突入した幸運と困難を両手に抱え、パリ五輪世代の最終章が幕を開けます。

スタメンです。

 

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大岩剛監督就任後はシステムは4-1-2-3を継続して採用。この世代の代表活動ではレギュラー起用の多かった半田陸、鈴木海音、川﨑颯太がスタメンを外れた一方、今季のJリーグでの活躍が著しい関根大輝、平河悠がスタメンに抜擢されました。また、大岩ジャパンの中盤はいわゆる「6番タイプ」「8番タイプ」「10番タイプ」を明確化する特徴がありましたが、今日はアンカーに藤田穣瑠チマを置いた上で8番タイプとしての起用が多かった松木玖生と山本理仁をインサイドハーフに並べています。

 

 

 

本日の会場はカタールドーハのジャシム・ビン・ハマド・スタジアムです。

 

 

ドーハの都心に位置するスタジアムで、アル・ドゥハイルと並んでカタール屈指の強豪クラブとして知られるアル・サッドの本拠地として使用されています。近年のカタールカタールW杯開催に伴い多くの新スタジアムを建設しましたが、この建設ラッシュの前にはハリーファ国際スタジアムと共にカタール代表のホームスタジアム扱いを受けており、現に2008年に行われた南アフリカW杯最終予選のカタールvs日本の試合はこのスタジアムで行われました。

施設に関してはこのスタジアムも冷房機能を備えており、1月のアジアカップでもベスト16までの試合を開催。カタールでセントラル開催となった2020年のACLでも使用されており、同大会ではヴィッセル神戸蔚山現代と激闘を演じた準決勝の舞台ともなりました。

 

 

日本は基本的にポゼッションを高めてしっかりビルドアップしながら攻撃を組み立てようとしている中、スピードとパワーのフィジカルカウンターを仕掛けてくる中国の牙にも苦しめられ、序盤から激しい展開を強いられる試合の入りともなりました。しかし中国のカウンターに対しても元来このチームの強みであるトランジションの強さをしっかりと発揮して対応し、そこからも攻め急がずにボールを自陣から繋いでの前進をチームとして意識していく意図の見える形でゲームを進めていきます。

いきなりそれが実ったのが9分でした。中央でボールを持った日本は一度左サイドに出すと内野貴史が中にリターン。これを受けた山本理仁が右サイドに展開するパスを送ると、山田楓喜のスルーパスでポケットを狙った関根大輝こそ相手DFに対応されますが、関根もそこでボールを安易に失わずに山田に戻すと山田が絶妙なクロス。ここに飛び込んだ松木玖生がダイレクトで合わせて日本先制!

 

 

順調に試合に入ったように見えた日本。しかし落とし穴と言いますか、想定外の展開はすぐに訪れました。

15分、左サイドからのCKを獲得した日本は山本がボールを入れますが中国が跳ね返してシュートには至らず。そのクリアボールは日本が回収しましたが、選手がポジションを取り直す過程で西尾隆矢がジャ・ファイファンの顔面に肘打ちをヒットさせてしまう構図になって一発退場。日本は残り80分ほどの時間を10人で戦う自体に。大岩監督は直後のプレーで相手の蹴ったボールが鳩尾に直撃した山本を下げて木村誠二を投入してCBを埋め、システムは4-2-2-1の形に。

 

 

 

大岩ジャパンはウクライナ戦や2023年のアルゼンチン戦でそれが発揮されたようにプレッシング強度と積極性が特徴のチームではありながらも、やはり数的不利という状況で中国のフィジカルを押し出したスピーディーな攻撃を受ける形になるとやはりそこはリトリート気味なポジションを取らざるを得なくなり、自然と日本は押し下げられていく形になりました。

37分にはタオ・チャンロンがカットインでエリア外から放ったミドルがクロスバーに直撃する決定的な場面こそありましたが、ただ日本も中国に対して焦れずにプレーした事、中国のダイナミズムに脅威はあれど自滅的なロストも多かったところに救われて守備の機能は維持できている状況をキープしていました。42分にはヤン・ズーハオのクロスにアブドゥワイリが頭で合わせる決定機を作られますが、ここは小久保玲央ブライアンがファインセーブで阻止。

特に前半終盤はどうしても押し込まれる時間が続いたものの、GK小久保を中心にどうにか対応。耐え切る形で前半をリードで終えます。

 

 

中国は後半からドゥ・ユェジュンとシエ・ウェンノンの2人を同時投入。いきなりの47分でした。左サイドを持ち上がったドゥ・ユェジュンがカウンター気味に抜け出してから絶妙なスルーパスを送ると、反応きたシエ・ウェンノンにいきなり決定機到来。中国にとっては途中出場した2人のほぼファーストプレーで作った千載一遇の場面でしたが、ここは飛び出したGK小久保がビッグセーブ!

ただ後半立ち上がりは中国の背後へのランに苦しめられ、それに対応しようとラインを下げて構えると今度は中国にボールを持って押し込まれてしまう。加えて日本がマイボールの場面を作っても、単純計算でも一人余る選手を作れる中国が日本が1対2でボールを持たなければならないようなプレスをかけてクリアせざるを得ない状況に追い込み、そのボールを中国が回収する事でいわゆる中国のターンがずっと続き、日本が押し返せないという実に神経を消耗するような試合展開と化していきます。

 

 

 

67分には山田と平河を下げて藤尾翔太と佐藤恵充を投入して両WGをそのまま入れ替える形に。この交代で細谷真大をセンターでプレーさせながらサイドに藤尾と佐藤でカウンターのポイントを作りつつ、数的不利になってから守備への貢献と共に守備に忙殺されて消耗する形になっていた山田と平河のところで運動量の担保を図ります。

すると中国が押し込む展開そのものは続いていましたが、日本もサイドのところで佐藤と藤尾が運動量と推進力を見せ、特に佐藤のところでボールを持ち出せる時間が続いたことで少し中国の最終ラインを押し下げる事に成功し、中国がボールを持つ流れこそ変わらずとも、選手間の距離が間延びした事で中国が連続攻撃にも時間がかかる状態、或いは日本も構えた状態で対峙できるロングボールに頼らせる形に持っていく事は出来るようになりました。

 

 

 

アディショナルタイム、中国はGK登録で身長2メートルを誇るユー・ジンヨンをFWとして、フィールドプレーヤーとして投入する奇策を敢行。日本も高さ対策に鈴木海音、そしてクリアボールの回収とプレスを担わせる目的で唯一の大学サッカー所属選手となる内藤航太郎を投入。

最後の最後まで苦しい時間、耐える展開が続き、80分以上の時間を数的不利の状態で中国のフィジカルと対峙する消耗の激しい過酷な試合となりましたがどうにか1-0のままフィニッシュ。日本、厳しい状況から光り輝く勝点3を手にしました!

 

 

 

基本的にこの試合を通常の評価基準で測るのは難しいです。だって80分以上10人の戦いを強いられた訳で、いわば殆どの時間がイレギュラーな状況でした。その中でシンプルにその時間と状況に応じたやるべき事をちゃんとやった…というところが全てでしょうか。

まず立ち上がりの日本の出足とパスワークは良かったんですね。ロングボールとスピード頼みで来た中国に対し、例えばマリ戦辺りで見られたように攻め急ぐような展開には持っていかず、藤田と山本のところでゲームを作りながらサイドに展開し、細谷を軸に松木が各所に顔を出す連動がスムーズにできていました。先制点はまさにそういう流れの中で生まれたゴールでしたし、今日の試合のポイントはやはり「数的不利になっても耐えた」というより「数的不利になった時点でリードを有していた」というところにあると思うので、試合展開的に見逃されがちですが…フル代表の北朝鮮戦然り、最近の日本は「点を取るべき流れの時間帯で点を取れるようになった」というところは評価されるべきポイントでしょう。あのゴールが無ければチームとして割り切る事もできなかった訳ですし。

守備対応にしても、積極的なプレッシングを基調とするチームでありながらそこは堪えた。今日の中国相手に数的不利で挑むオープンな展開ともなれば相当しんどいでしょうから、それを回避する為にもちゃんとリトリートで割り切る意思統一が前半の時点でちゃんと執れていた部分も良かった。そこの集中力はまあまあな極限状態と化した試合で最後まで保たれていたので、そこは個としての意識の醸成、個の結集としての組織の統率がしっかり出来ていました。

 

 

そして今日は大岩監督の交代策も素晴らしかった。西尾の退場に際して、山本のプレーが素晴らしかっただけに山本を下げるのは惜しいところがありましたが…山本を下げて松木と藤田のWボランチにシフトさせた事はベターというか、適切な手当てでした。あの状況であれば1点リードしていた事もあって3トップの誰かを下げる監督も多いですけど、あそこで変に3トップを弄らなかった事はその後の展開を踏まえても大きなポイントだったのかなと。

何より言うまでもないですが、あのタイミングでの両WGの入れ替えはチームにとって大きな助けになりましたね。前提として山田と平河の貢献、献身も素晴らしかったんですけど、サイドでの守備対応を通じて彼らも持ち味を活かしにくい展開で消耗していってしまった。日本自体が押し込まれた状態から押し返せなくなっていたのがあの時間帯でしたし。プレスでの貢献のみならず、シンプルな推進力で押し出していける藤尾と佐藤を投入し、細谷をサイドに流れさせず中央をキープさせた上でのカウンターをやれる態勢に持ち込めた事はチームにとって本当に大きかった。実際にあそこから日本は少し押し返せるようになりましたし、それが何を生むかというと、ほぼハーフコートゲームになりかけていた中で中国のDFラインを押し下げる事ができていったんですね。そのおかげで中国が連続攻撃に時間をかけざるを得ない状態に持っていけましたし、ロングボール攻勢なら日本も構えた状態で対応できる。佐藤に関してはちょっと最後の選択に疑問と課題を残す部分がありましたが、藤尾と佐藤があの時間から見せた動きは日本を随分守りやすい状況にしてくれたと思います。本来なら藤尾は真ん中の選手な訳で、ここで安易に細谷との2トップにするのではなく右WGとして投入したところも采配の妙を感じるところでしたし。

 

 

 

自信には2種類あると思います。

一つは手応えとしての自信。これはサッカーで言うなればやはり素晴らしい内容、素晴らしいサッカーを展開した時に得られる自信でしょう。今日の試合は先制点に至るまでの流れは手応えはあったと思いますが、この観点での自信を掴むには難しい展開になってしまった事は否めません。

一方で、もう一つの自信は「経験としての自信」です。今日のような逆境に追い込まれ、タフでハードな試合をどうにか制したという経験がもたらす自信…この試合で得た経験としての自信は成功体験とは少し異なりますが、精神的な支えや根拠、チームとしてのバックボーンになってくれるような自信になってくれると思います。五輪代表に選ばれるような選手は、ある意味でフル代表以上にエリート集団のようなキャリアを辿っているだけに、彼らは今日の試合を通じてひとつタフになった。結果と内容を兼ねた試合ではなくとも、結果を携えて経験値を大きく伸ばした試合だったのかなと。本当によく頑張ってくれました。

 

 

天晴玲央ブライアン

ではでは(´∀`)