G・BLUE〜ブログとは名ばかりのものではありますが...ブログ。〜

気ままに白熱、気ままな憂鬱。執筆等のご依頼はTwitter(@blueblack_gblue)のDM、もしくは[gamba_kyoto@yahoo.co.jp]のメールアドレスまでご連絡お願いします。

誰かが見る新しい景色の中へ〜2022 FIFAワールドカップカタール大会 ベスト16 日本代表vsクロアチア代表 マッチレビュー〜

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206091244j:image

 

決戦はアル・ワクラ。

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビュー2022 FIFAワールドカップカタール大会、グループE第3戦、日本代表vsクロアチア代表の一戦です!!

 

カタールW杯観戦ガイド更新中!是非覗いてください!

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

自称・当ブログ的カタールW杯テーマソング

 

 

 

「あのロストフの、倒れ込んで背中に感じた芝生の感触。それで見上げた空の色だか、感じだか。それは忘れるな。ベンチで座っていた選手たちの、あの居心地の悪い、ベンチのお尻の下の感触を忘れるな」-西野朗

 

ロストフの14秒……気がつけばその名前もすっかり定着しました。試合後、西野監督が振り絞るように語った「何が足りないんでしょうね…」と語ったその言葉。日本にとってこの4年半は、その「何」を探す旅であり、あの日届かなかった15秒目を追い続けた4年半だったような気がします。あの時必要だったものは何だったのか。あの時何をすれば、日本は優勝候補国の肩に手をかける事が出来たのか。W杯の話をする度に流れた映像のように繰り返す自問自答の末に、今、この舞台が与えられたと思っています。

その意味では、クロアチアは日本のような立場の国にとって偉大なる存在とも言えるでしょう。優勝候補とは見做されていなかった彼らが前回大会で成し遂げた準優勝という成績は、他の国々にとって少なからず希望となったはずです。そして日本にとってクロアチアは、初めてW杯に挑んだ1998年に、彼らの手によってこの大会を追われた。それから8年の時を経た2006年、あの時と違う姿を見せようとしながらも、大きな進歩としての勝点1はその後に意味を為さなかった。そして今、このタイミングでクロアチアとの再戦を迎えたストーリーは、それもまた一つの意味を持つのでしょう。それは日本のみならず、クロアチアにとっても。

 

 

歴史とは常に文脈であり、常に何かしらの意味を持ち、そこに必ず残像を残します。

ドーハの残像を超え、アセンシオの残像を乗り越えた日本がここにいる事を決して偶然だと捉えたくはない。ロストフで見上げた暗がりの空が晴れる時、その時にこの国が渇望する新しい景色が見えてくるはずです。ドイツを倒した。スペインを倒した。その一瞬一瞬もまた文脈であり、全てが過去と未来を繋ぐストーリーの一部です。

日本にとって、ベスト16は4度目の挑戦……一口にリベンジと言えば簡単ですが、自分達でリベンジを果たせる人間はほとんどいない。リベンジではなく、自分達で決めるしかない。その事が最終的に、日本代表というチームとしてのリベンジにもなり、それでこそ未来へと歴史を紡ぎます。あのロストフの夜からの4年半から今日に至るまでの旅は、いわば文脈としての13秒でした。今日がその14秒目。今日を終え、新たな景色が開いた時、この国はあの呪いから解き放たれる15秒目が始まります。さあ行け日本!手をかけたその先の世界へ!!

両チームスタメンです。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206090254j:image
f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206090247j:image
f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206090251j:image

 

スペイン戦でスタートのシステムを4-2-3-1から3-4-2-1に変更した日本ですが、今日もスペイン戦と同じ3-4-2-1システムを採用しました。スペイン戦からのスタメン変更は3人で、体調不良で欠場となった久保建英に代わって堂安律、出場停止の板倉滉に代わって冨安健洋が入り、冨安同様にスペイン戦は先発を回避した遠藤航が田中碧に代わってボランチに入っています。

クロアチアは第1〜3戦までを通じてのスタメン変更が一人のみでしたが、今日は第3戦のベルギー戦から2人を入れ替えてきました。センターフォワードにはマルコ・リヴァヤからブルーノ・ペトコビッチを抜擢し、体調不良で欠場となったボルナ・ソサに代わってボルナ・パリシッチが入っています。

 

本日の会場はカタール、アル・ワクラのアル・ジャヌーブ・スタジアムです。

アル・ワクラSCがホームスタジアムとするスタジアムで、今大会の試合会場の中では最も南に位置する会場となっています。カタールW杯に向けて新設されたスタジアムの中では最も早くに完成したスタジアムでもありますね。ちなみにアル・ワクラは現在、ドーハに次ぐカタール第二の都市になっています。

カタールで集中開催された2020年のACLでは横浜F・マリノスヴィッセル神戸もこのスタジアムで試合を行いました。このスタジアムの外観はカタールの伝統的な漁船「ダウ船」をモチーフにデザインされましたが、このスタジアムの設計を担ったのは新国立競技場改築騒動で話題になったザハ・ハディド氏。大会後はサイクリングや陸上トラックを設置し、大型スポーツコンプレックスとして再整備する予定になっていると同時に、学校などの公共施設も設置される予定との事。また、アル・ジャヌーブ・スタジアムでのカタールW杯は今日が最後の試合となります。


f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206090157j:image
f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206090201j:image

 

カタールW杯で使用される全スタジアムの紹介こちらからどうぞ!

 

 

 

開始早々から日本はセットプレーで2度チャンスを作りました。1度目はシュートまで行けませんでしたが、2度目のCKでは谷口がヘッドで合わせるも枠を捉えきれず。クロアチアもその直後、ペリシッチが裏に抜け出すと一度は冨安が身体を入れたものの、そこから奪い返してペナルティエリアに侵入して決定機。しかしここはGK権田修一の好セーブで阻んで失点を回避します。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206084512j:image

 

試合はどちらかと言えばクロアチアペースで、クロアチアは低い位置でのビルドアップから3バックの間を狙うような長いパスを繰り出し、そこにペリシッチやクラマリッチが反応する事で、中からサイドに広げていくようにチャンスを増やしていきました。

ただ、やはり日本にとってもドイツ戦スペイン戦とはチームとしての前提が違っており、日本も13分には伊東のグラウンダーのクロスに前田大然、更に左WBの長友佑都までもがゴール前に突っ込んでくるような場面が作れるなどチームとしてのライン設定は高く、守備もプレス開始の設定を高い位置から始められるなど、ややクロアチアペースというだけで試合としてはイーブンに近い展開で進んでいきます。

 

30分前後にはクロアチアに波状攻撃を喰らうような時間こそありましたが、それを乗り切った後は日本にもターンが回ってくる時間もありました。特に今日は前半からチームとして高い位置を取れていた事で、特に堂安と鎌田のシャドーがボールを上手く回収して2次攻撃、3次攻撃に繋げられていました。

日本が大きなチャンスを迎えたのは40分、伊東がカウンターで抜け出すと左サイドの前田へ。一旦はクロアチアの帰陣の前にカウンターアタックは頓挫しましたが、それでも前田とフォローに入った守田が粘って左サイドを突破すると、前田のパスを受けた遠藤のスルーパスに抜け出した鎌田が巧みな切り返しで決定機を迎えましたが、美しい流れからの巧みなシュートは惜しくも枠外。その直後、右サイドでボールを受けた堂安が入れた鋭いクロスは相手DFがブロックしてCKに。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206084531j:image

 

そして咆哮の時は43分でした。そのプレーで得たCKで堂安は伊東にショートで当たるとリターンを受けてライナー気味のクロス。ファーサイドに走り込み、ラインをギリギリまで引っ張った吉田がマイナスで折り返すと、ここに前田が走り込んで押し込んでゴール!!

決まったァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206084450j:image
f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206084446j:image

 

 

 

日本、1点リードで前半終了!!!!!!

 

 

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206084410j:image
f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206084414j:image

 

後半の開始からペースを握ったのは日本で、後半開始早々に鎌田が惜しいミドルシュートを放つなど得点機会は作っていました。しかしいくつかあったチャンスを逃すと、ここでクロアチアの老練さが日本の前に牙を見せます。

55分、じわじわと押し上げてきたクロアチアは右サイドでボールを持ったユラノビッチが高い位置をとっていたロブレンにパス。ロブレンがアーリークロス気味に早く中に入れると、ここにペリシッチがドンピシャで合わせたヘッドがGKの手が絶対に届かない場所に吸い込まれて日本失点………。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206084325j:image
f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206084328j:image

 

ここからは非常に締まった試合展開となっていきました。1-1になった直後には遠藤、そしてモドリッチが1本ずつ強烈なミドルシュートを飛ばしますが、これはリバコビッチ、そして権田がそれぞれビッグセーブで阻止。

すると、グループステージの3試合では全てハーフタイムでの交代を行いながら今日はメンバーそのままにしていた日本は64分に長友、前田を下げて三笘薫、浅野拓磨を送り込んで勝負に出ます。

 

その後、日本はサイドから攻め込まれる回数が増えた為、75分に鎌田を下げて怪我から復帰した酒井宏樹を投入し、伊東をシャドーに上げて対応。三笘への対応はクロアチアにかなり警戒されていたので三笘もスペースを消される時間が続いた一方、77分に吉田のパスを掻っ攫われて招いたピンチでは冨安の好対応で阻止。両チームとも、チャンスになりそうなボールの持ち方は出来るものの、お互いに決定機という場面は作り出せません。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206084300j:image

 

87分には日本は堂安を下げて南野拓実を投入。比較的落ち着いた試合展開の中で、しっかりとミドルゾーンでボールを持ちながら三笘の突破力と浅野のスピードを活かそうと試みていましたが、日本もクロアチアもお互いに一枚を剥がしきれないまま、ただ逆説的に言えば、お互いにミドルゾーンで高いレベルでの攻防を繰り広げた事で締まった展開のまま90分を終了。試合の行方は延長戦へ。

 

延長戦は全体的にクロアチアが攻める時間が続きました。しかし、日本もそこは集中した対応でしっかりと跳ね返すと、クロアチアの攻め方もやや単調なものになっていったところで、日本は105分に決定的なチャンスが。自陣から三笘がこれぞ三笘というべき豪快なカウンタードリブルを見せると、三笘がカットインから強烈なシュート!しかしGKに弾かれ、こぼれ球にも選手が詰めて波状攻撃となりますが…これは実らず。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206084208j:image

 

延長後半に入るとクロアチアの圧力が強くなってきたのに対し、日本もボランチを守田から田中に代えて中盤の運動量を担保しようと試みます。

しかし、時間経過と共にストロングポイントを抑えられ始めた日本は、伊東が疲弊してきた事もあって攻撃が浅野を走らせる形くらいしか無くなってきてしまい、延長後半はモドリッチペリシッチを下げたクロアチアに押される展開に。それでも守備陣はクロアチアを前に決定機に至らせる前にしっかりと跳ね返して、今大会初の延長戦だった試合はこちらも今大会初のPK戦へ。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206083743j:image

 

運命のPK戦…先行は日本。1番手は南野でしたが……南野のキックはGKドミニク・リバコビッチがセーブ。日本の新しい景色に手をかけたその挑戦の最後に立ちはだかったのは、PKストップに定評のあるリバコビッチでした。日本は3人目の浅野は決めたものの、リバコビッチは2人目の三笘、4人目の吉田と日本のキッカー3人のシュートをストップ。対するクロアチアは3人目のリヴァヤのキックはポストに当たりましたが、権田の惜しい反応もありながらも、リヴァヤ以外は全員成功。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206084139j:image
f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206083058j:image

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206090226j:image

 

歴史を切り拓いていくように進み続けたサムライブルーの2022年への旅の終着地はベスト16で終わる事となってしまいました。

 

 

 

全ての時間を通した、トータルでのクオリティの高さは今日の試合が一番高かったと思います。日本はドイツ戦スペイン戦のような段差で勝利を引き寄せる戦い方はクロアチア戦では考えていなかったと思いますし、考えていたとしてもおそらくできなかった。あれはドイツやスペインは「完璧な試合」を目指してくるから出来た戦法であり、逆にクロアチアというチームは軟体動物のように、その状況状況に応じて自分達にとって最もベターな形を敷いてくる。戦術やゲームプラン以上に、チームや個々のクオリティが最も求められたのはこのクロアチア戦でした。

その点で日本は素晴らしいゲームをしたと思います。少なくとも120分に於いて、どちらに転ぶかを断言出来るようなゲームではなかった。日本にとってもクロアチアにとっても「決定機を作れなかった試合」であり「決定機を作らせなかった試合」であり、特に延長後半はアバウトになってしまった部分はありましたが、少なくとも90分は間違いなく濃密な時間でした。トーナメントである以上、PK戦で決着をつける必要がありましたが、少なくともプレータイムの中でドローという結果に終わったことはどちらの視点で見ても妥当なスコアだったように思います。

これまでの3試合と同様に、試合の考察はまた後日更新しますが、なぜベスト8に届かなかったのか、なぜ120分を勝ちきれなかったのかという現実に向き合わなければならないと同時に、日本にとって何かを恥じるような試合では無かったはずです。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206083152j:image
f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206083156j:image

 

物語として美しい2週間でした。本当に……。

このW杯の日本代表の事については追々書こうと思っていますが、今現在は…ちょっとどういう感じで物事を書けばいいのかわからないというか、整理できていない部分があります。この大会の総括も、今後どうするべきなのかというような事を。

でもただただ楽しかった。Jリーグという概念が生まれ、日本代表がハンス・オフトを招聘し、この国が本格的に世界を目指してから30年……ドーハの悲劇歓喜に変わり、強豪国に勝ったにも関わらず敗退を余儀なくされたマイアミの奇跡をも超えた。ロストフの14秒を経た森保監督も、その時の悔いを自ら活かした采配もあった。このチームは色々なこの国のサッカーの歴史の文脈を飲み込んで成長し、この国にサッカーを教えたドイツと、この国が背中を追ったスペインを下してまでこの舞台に辿り着いた……本当に美しい物語だったと思います。

準々決勝には行けなかったけれど、この大会で見たものの全てが「新しい景色」でした。ドイツに勝った事も、スペインに勝った事も、コスタリカ戦で初めて挑戦される立場としての戦いを挑まれた事も、そしてこの試合の展開も……。「新しい景色」という言葉をベスト8という目標と切り離して考えた時、それは十分に見せてくれたような気もしました。きっと、日本がベスト8に行く為にはもう一段上のステージに行かなくてはならない。そしてそのもう一段上のステージとは、日本が見る新しい景色ではなく、誰かの見る新しい景色の中に日本がいるようになる事なんだと思います。

…これでもこの国は、7回も連続で出たW杯の半分以上で決勝トーナメントに進んでいるんですよ。結局またベスト8に行けなかった現実と、その課題に対して向き合う事は勿論ですが、一方でこの功績までも偶然と斬り捨てる訳にもいかない。それを相手の自滅と偶然で片付けたがる人もいるけれど、この事実はこの国が決して間違った道を進んでいる訳ではないことの証左でもあると思っています。日本代表は何が足りなかったのか、なぜ負けたのかも当然ですが、日本はどこまで進めたのか、日本は何が出来たのか、日本はなぜ勝てたのか……悪かった事も良かった事も、きっとその全てがまた文脈として飲み込まれていく。そうやって歩み続けながら、この国のサッカーをもっと膨らませていってほしいです。

 

 

 

選手・スタッフの皆さん、そして森保監督、お疲れ様でした。

あまり好きではない陳腐な表現ですが、今は素直にこの言葉を使いたい気持ちです。

感動をありがとう………。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206083713j:image

 

【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】

 

12月5日(大会16日目)

ベスト16

日本1(1PK3)1クロアチア

ブラジル4-1韓国

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206083024j:image
f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20221206083028j:image

 

12月6日(大会17日目)

ベスト16

24:00 ロッコvsスペイン

28:00 ポルトガルvsスイス

 

 

あぁ…

ではでは