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奪還〜ガンバ大阪2018振り返り企画〜第1話 歪な船出【2017.12〜2018.5】

不吉な予感は大きかった。

 

今シーズンから就任したブラジル人監督の下で降格圏に低迷

遠藤保仁名探偵コナン出演

シーズン途中で急に昇格させられたクラブのレジェンド

繰り返される終了間際の失点

最終節の日付は「あの時」と同じ12月1日…

 

全てが「あの時」と同じだった。

8月までは……。

 

 

 

【今回はガンバ大阪の2018年を振り返っていきます!お付き合い下さい♪】

 

 

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5シーズンでJ1とJ2、リーグ杯を1度ずつ、そして天皇杯を2度制した長谷川健太監督が2017年シーズンを以って退任し、ブラジル人指揮官のレヴィー・クルピが後任監督として発表されたのが12月3日。長谷川監督のラストゲームである敵地でのFC東京戦がドローに終わり、ガンバの公式戦での未勝利記録が13に伸びたその翌日だった。

 

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クルピ政権が失敗に終わった事を知っている今でも尚、クルピという人選そのものが根本から間違いだったとまでは思わない。

長谷川政権末期の低迷感を打破する為にも攻撃サッカーへの回帰は求められていたし、世代交代という4文字を嫌でも考えなければならなくなっていたガンバにとって、同じ県のライバルチームであるセレッソ大阪で攻撃サッカーを確立し、多くの若手選手を積極的に起用して日本代表クラスに育てた実績のあるクルピの招聘は2012年のジョゼ・カルロス・セホーン招聘時と比べれば理には適っていた。

結局のところ、長谷川監督のように長い期間監督を務めた人間の後任というものは誰を選ぼうが相応のリスクを伴う決断となる。退任発表のタイミングには問題があったとしても、退任そのものには理由の正当性はあったし、ここまではそこまでフロントの愚行と呼べるほどのものはなかったように思っている。

 

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しかしまずフロントと現場にズレが起きたのはこの後だった。近年のガンバフロントは三浦弦太を筆頭に獲得した選手を当てる事はそれなりに出来るものの、そもそも補強する気を感じられなかったり、補強ポイントが明らかにズレている事が多くなっていた。その典型的な事例と、これまで誤魔化してきた補強の不備のツケが一気に回ってきたのが2018年の補強とその後のシーズン動向だったように思う。

2017年にはJリーグベストイレブンにも選ばれ、ハリルジャパンではレギュラーにもなっていた井手口陽介の海外移籍が決まった時点で、ガンバには守備的MFと言える選手が今野泰幸しか居なくなっていた。今野は未だにスーパーな選手だが今年で35歳。いつまでトップコンディションをキープ出来るかはわからないし、そもそも守備的MFが1人しか居ない時点で「今野が怪我でもしたらどうするのか?」というのは誰もが抱いていた危機感である為、まず守備的MFを獲得すべきという事は誰もがわかり切っていたはずである。

 

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だがガンバはボランチの選手を獲得こそしたものの、それは守備的MFではなく攻撃的なタイプの矢島慎也だった。

リオ五輪でも活躍した矢島の獲得自体は別に良いし、期待も大いに出来る選手だった。しかし問題なのは矢島を獲得した事でボランチの獲得を終了してしまった事である。優先順位としては、ユース出身の市丸瑞希が育ち始めたゲームメイカー系よりも守備的なボランチであった事は間違いない。要はたとえ矢島がどれだけ活躍していたとしてもその穴は埋まらない。矢島と守備的MFを両獲りするか、それが厳しいのなら矢島よりも守備的MFを明らかに優先すべきで、じゃあ矢島以外の補強は?というと即戦力級は1人もおらず、モンテディオ山形から復帰という形になったDF菅沼駿哉の復帰、残りはJ3が主戦場になるであろう新卒選手の獲得に終始するに止まる。

この時点で今年のガンバは「今野が怪我をすれば終わる」という状態が既に始まっており、そして見事にその通りになったのが2018年だった。

 

 

 

一つ一つの綻びは波及していくかのように編成のみならずチームにも及んでいく。クルピはセレッソ時代もそうだったが、基本的に個人個人に縛りを与えず自由度の高いサッカーを志向していた。良くも悪くもブラジルらしいと言えばブラジルらしい。

ただチーム戦術というものを施すという事にクルピは余り長けてはいなかった。その結果、キャンプ中の練習試合では低調な内容が続く。とはいえ、ここまではクルピはセレッソ時代もスロースターターだったし、ガンバもスロースターター的な傾向があった為に計算外という程ではなかった。しかし全ての計算が一気に狂う事態が起こる。今野泰幸が負傷による離脱を余儀なくされたのだ。

セレッソ時代も余りチーム戦術を授けず、特に前線は良くも悪くも自由が与えられていた。ただセレッソではそれがある程度機能していたのはアマラウシンプリシオ、山口蛍といった守備面で優秀な選手が中盤での守備を一手に引き受けていたからで、恐らくクルピはガンバでその役割を今野に求めようとしていたのだろう。その構想が早々に崩壊し、更には前述のようにガンバは守備的MFの補強を誰も行なっていなかった為、不安感いっぱいのまま2018年の開幕を迎える事になる。

 

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名古屋との開幕戦では高卒新人で本来2列目の選手である福田湧矢を抜擢。福田は福田で攻守に奮闘し、可能性を感じさせるプレーをこの試合で見せたが同時にガンバの選手編成の不備を感じずにはいられなかった。

とはいえ開幕戦に関しては、ガンバ以上に守備の事を考慮していなかったとも言える名古屋相手とはいえ、2-3で敗れたもののある程度の希望は感じる事の出来た試合だったと思う。

だが本当の悪夢が始まったのは第2節からだった。

第2節鹿島戦ではGK東口順昭を始めとした守備陣の奮闘とルーキー、17歳の中村敬斗のキレのある動きが光ったものの、試合全体としては鹿島に一方的に押される形で0-1で敗北。第3節では前年度王者の川崎相手に90分間何もさせて貰えないまま0-2で敗れ去って「あの時」以来となる開幕3連敗を喫し、しかもベストメンバーで挑んだルヴァン杯では控え主体の広島にホームで0-4の惨敗。前年から続く公式戦の未勝利は遂に17にまで伸びてしまった。

 

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ルヴァン杯の浦和戦に勝利した事で公式戦での未勝利記録こそ17でストップし、今野が復帰した第4節柏戦は2点ビハインドから追いついて開幕からの連敗も何とかストップ。しかし新戦力のボランチマテウス・ジェズスを加えて迎えた長谷川健太監督との再戦となる第5節FC東京戦では再び今野が負傷離脱を余儀なくされて欠場して2-3で敗北。続く神戸戦では後半アディショナルタイムでの失点で0-1で敗れ去った。

今野の離脱中、ガンバはボランチ遠藤保仁マテウスに組ませる事がメインとなっていた。新戦力のマテウスは決してハズレではなく、一定以上の活躍を見せてくれていた事は間違いない。だが守備面での軽さには難があり、2016年辺りから遠藤の守備力が低下している事を加味すれば遠藤とマテウスのコンビというものは余りにもリスキーだった。必然的にガンバは中盤の守備がスカスカになってしまい、サイドバック藤春廣輝や初瀬亮はガンガン前に出て行くタイプの為、ディフェンスはGK東口と両CB、またはオ・ジェソクの4人に委ねるような形になってしまっていた。ファビオが後ろから相手FWを追いかけるシーンなんて今シーズン何度見た事だろうか。結局のところ、それがFC東京戦、神戸戦に代表されるように「内容は悪くないけど勝てない」という状況を生み出していた。

 

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それでも、文字通りGK東口の孤軍奮闘になっていた昨シーズン後半と違ったのは、前線で核となれる選手がいた事である。前半戦の勝点のほとんどは東口とファン・ウィジョの2人でもたらした物が大きいと言っても決して過言ではないくらいだった。

第7節磐田戦でようやく2017年8月以来となるリーグ戦での勝利を収めたガンバは、第8節長崎戦、第10節湘南戦には敗れたものの第9節セレッソとの大阪ダービーでは東口の負傷退場というアクシンデントを乗り越えて勝利。市立吹田サッカースタジアムが完成してからホームでの戦績が著しく悪かったガンバだったが、Panasonic Stadium Suitaと名を変えた今シーズンはホームでは実はクルピ時代から悪くない成績を残していた。守備はまだ東口に頼りすぎな部分はあったが、少なくとも攻撃はファン・ウィジョを中心に少しずつ機能し始める。

第11節鳥栖戦では米倉を一列前で起用する配置が功を奏して3-0の完勝。そして今野が復帰した第12節仙台戦にも勝利し、第14節横浜戦では大阪ダービーで負傷した東口がスピード復帰。お先真っ暗だったガンバのシーズンにようやく光が差した。誰もがそんな予感を抱いた。

 

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だがこの時、ガンバファンはまだ知る由もなかった。

この先味わう絶望が自分達の想像を遥かに超えすらしていた事を…。

 

 

 

つづく。