セレッソ大阪、レヴィー・クルピ監督の解任に思ふ〜クルピの功績と時代の変化、そしてセレッソフロントの罪〜

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このブログは8月27日に書いております。このブログを書いている段階では大阪ダービーの結果も、乾貴士の復帰濃厚報道も出ておりません。情報のタイムラグは予めご了承くださいませ。

 

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まぁ…なんというんでしょう、やっぱりと言うべきか……。

 

8月26日、セレッソ大阪レヴィー・クルピ監督とマテルヘッドコーチの契約解除(事実上の解任)、そして小菊昭雄コーチの監督就任を発表しました。

 

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2020年に4位に入って今季のACL出場権を獲得したミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が退任したセレッソは、今季からクルピ監督を迎えた新シーズンに挑みました。このクルピ監督という人物は1997年、2007年5月〜2011年、そして2012年8月〜2013年までの3度に渡ってセレッソを率いており、今回がなんと4度目のセレッソの監督就任。そんな中で迎えた新シーズンは、序盤戦こそ大久保嘉人の好調もあって上位につけ、6〜7月にタイで集中開催されたACLでも決勝トーナメント進出を決めたものの、リーグ戦では第10節浦和戦に勝利して以降11試合未勝利に陥ってしまい、気が付けば残留争いもチラつく12位という順位に。未勝利自体は第25節横浜FC戦の勝利でストップしましたが、続く第26節湘南戦では決して攻撃力が高いチームではない湘南相手に1-5で敗れてしまいました。

試合後のインタビューや会見でクルピ監督が辞任や解任を匂わせるような発言をしていた事もあって動向が注目されましたが、お昼頃に解禁という正式リリースがセレッソ大阪から発されています。

 

 

 

結論から言えばそもそもクルピを監督に据えたのが明確な失敗ですし、ここから話の流れはどうやったって「なんでクルピを監督にしたの?」というところに行き着きますから、その前にまず大前提として書いておきたいのは……レヴィー・クルピという監督のキャリアは、トータルで見れば監督しては十二分に成功と呼ぶべきキャリアを歩んでおり、今回の失敗で「名監督」の称号が剥奪される訳ではない…という事です。

ブラジルでのクルピの実績はこれまでJリーグで指揮を執ったブラジル人監督の中でもトップクラスと言っても過言ではありません。多くのタイトルも手にして、2001年には翌年の日韓W杯を目指すブラジル代表監督の最有力候補にまでなっていました(最終的に実現はせず、清水やV川崎の監督経験があるエメルソン・レオンが就任)。上で「4度目のセレッソ監督就任」となりましたが、特に2〜3期のクルピ体制での働きは見事なモノでした。2007年5月に就任するなり、当時ボランチの選手として出場機会に恵まれなかった18歳の選手を攻撃的MFとしてレギュラーに抜擢。それが後に歴代日本人選手の中でトップクラスの実績を残す香川真司でした。

 

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クルピは攻撃的なサッカーを標榜する監督として知られていましたが、それ以上に彼のセールスポイントとして知られていたのが若手選手の育成力です。…もっと細かく言えば、若手を見る目とそれを躊躇なく抜擢出来る胆力…でしょうか。

特に2007年5月から2011年シーズン、或いは2012年8月から2013年シーズンの、いわゆる第2次・第3次クルピ体制の合計6シーズンではクルピのその能力と、セレッソユースを中心とした育成・スカウト力、そして才能豊かなタレントの3つがガッチリ嵌った時期でした。上記の香川はその代表格で、後に「セレ女」なんて単語が話題になったのもこの時期でしたね。クルピ体制のセレッソから台頭した選手で言えば、ユース組としては山口蛍、扇原貴宏丸橋祐介杉本健勇柿谷曜一朗南野拓実、若手の時に他チームから獲得した選手でいえば乾貴士清武弘嗣、更に言えば韓国代表経験も豊富なキム・ボギョンキム・ジンヒョンも大学卒業後にプロとして初めて契約したのはクルピのセレッソでした。2018年に半年だけ指揮したガンバでの評価は誰の目で見ても明らかなる失敗ではありましたが(後述)、若手起用の側面に於いては食野亮太郎、福田湧矢、中村敬斗、髙江麗央といった選手に積極的にチャンスを与えるなど、その後の宮本恒靖体制が世代交代に踏み切れる下地の一部を担った側面もありました。

 

一方、セレッソで好成績を残していた頃からクルピは戦術的な整備をできる監督ではありませんでした。クルピの練習はフィジカルトレーニング以外はほぼほぼ紅白戦オンリーというのは有名な話で、それは今季のセレッソでも同じだったのでしょう。やり方としてはとにかく実践を積む事で個と個のケミストリーを自然発生的に高めていく……良くも悪くもピッチ内での自由の裁量が大きい監督でした。クルピがメンバーを固定する傾向にあるのもこの性質に依る部分が大きいでしょうし、逆を言えば若手がグングン伸びたのもこの性質がそれを助けた部分はあると思います。香川と乾が2シャドーを組んだ2009年、清武、乾、家長昭博の2列目が躍動した2010年…まぁ、長所も短所もTHE・ブラジル人監督という感じでした。

 

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しかしサッカー界の戦術レベルが向上し、Jリーグに限らず世界的に他の多くのブラジル人監督の評価が失墜していく中、ある意味そのタイプの典型例とも言えるクルピもその流れに飲み込まれていく事になります。

それが如実に現れてしまったのが2018年に監督に就任したガンバ時代でした。上記のように若手起用には積極性を見せたものの、守備に於ける約束事がまるでない状態となって完全に「頑張れ東口」「頼むぞ東口」の状態に。怪我人が多かった事や補強が進まなかった事などクルピも被害者の一人と思える事柄も確かにありましたが、あの半年間の評価は「失敗」以外に付けようがありませんでした。クルピのガンバでの最後の2試合(広島戦&清水戦)はクルピの神通力の崩壊を見ているようでしたし……あの半年間のクルピは、もちろんガンバ側の責は確かにあったけれど「たまたま上手くいかなかった」という問題でも無かったのを印象付けるだけの結果になってしまっていたというか、従来のタイプのブラジル人監督の限界に近いものすら感じさせる結果と内容だったのです(その辺は下記のブログ参照)。

 

 

今季のセレッソに関しても……そんな毎試合見てる訳じゃないので断定的な事は言えないですが、少なくともクルピのスタイルは変わっていない印象でした。序盤は前任者の貯金みたいなものが少し残っていたようにも見えましたが、5月くらいにはそれも使い果たしてしまった感もありましたし。

 

 

 

結局のところ、セレッソファンにとって一番のフラストレーションで、かつセレッソファンじゃない立場からしても謎だったのが「そもそもなぜクルピにしたのか」という点だった訳です。

 

 

昨年までのセレッソの組織としての完成度はピカイチでした。ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の下で築いたスタイルのレベルは非常に高かったですし、あれだけの安定感と結果を残せば普通は続投がベターになります。実際、そもそもロティーナが上手くいっただけで前任のユン・ジョンファン監督も似たような過程で退任を余儀なくされていた背景があるので、あの時点でセレッソサポーターからの反発はかなり大きなものでした。

確かに昨季の終盤戦、攻撃面でマンネリ的な状況が発生していたのは否めませんし、その打開策を監督交代に求める気持ちもまだわからなくはありません。だけど、それを実行する為には後任人事にそれ相応の説得力が必要になります。「あぁ、その監督を連れてくるのならロティーナを切っても仕方ないか」…と。しかし後任はクルピだった。そうなってくるとセレッソファンからすれば「安定していたロティーナを切ってまで連れてきたのがクルピか?」という話になってくる訳で。そもそもクルピはガンバで思いっきり失敗したのをセレッソ側も知っているはずで、その上クルピは監督業から引退していました。安定していた監督をわざわざ切って、もう既に監督業をリタイアして人生を楽しみ始めていた元監督をわざわざ呼び戻す意味と意義とは?…と。

個人的にはむしろ、よくここまで持ったな…くらいに思っていました。それはひとえに、セレッソの選手のクオリティの高さとか…なんやかんやで選手獲得のセンスはかなり高いチームだと思うので、そこの頑張りがあってこそだとは思うのですが、少なくともロティーナ→クルピのプロセスはガンバファンから見ても「?」「??」だったというか、ズレとしてはずっと感じていました。そもそも開幕前、梶野智チーム統括部長は2021年の目標を「最低トップ3」と掲げていましたが、セレッソJリーグに加盟してからの27シーズンでトップ3なんて2回しか入ってない訳です。にも関わらず「最低」という言葉を使えてしまった辺りにも認識と現状のズレはあったように思います。

 

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そう考えた上で湘南戦後のインタビュー動画を見ると、やっぱりちょっとクルピが気の毒にもなってくるんですよね。

クルピの発言にもそれを示唆するようなコメントがありましたが、仮に解任を通告されなくても辞任は申し出ていたんだろうなと。あのインタビューを聞いている感じだと、多分クルピ自身もガンバを退任した時点で多少なりとも時代を含めた自分の限界を自覚していたように思いますし、それが引退の決断にも繋がっていたと思います。

…にも関わらず監督業に復帰したのはやっぱり「セレッソだったから」というのが彼の中でも大きかったと思いますし、梶野氏とは初めてクルピがセレッソの監督を務めた1997年の監督と選手の関係で、梶野氏がフロントの重役について真っ先に行った仕事がクルピの招聘だったように確固たる信頼関係もありますから、梶野氏の助けになりたいみたいな気持ちもあるでしょうし、或いは引退を決めた後のNumberの取材で「ガンバを退団して帰国する際、驚いたことに、空港にセレッソのファンが見送りに来てくれていた。胸が詰まった。このとき、自分が大きな過ちを犯したことを悟った」と語っているように、一度ガンバの人間になってしまった事への贖罪めいた感情もあったのかもしれません。

確かな事は、レヴィー・クルピが過去にセレッソで残した功績には疑いの余地が無く、セレッソ歴代最高監督を決めるなら確実に候補に入ってくるだけの貢献は間違いなくしてきた事、そして2021年の監督就任さえ無ければセレッソにとってレヴィー・クルピは英雄のままでいられた…という事でしょうか。その意味でも今回梶野氏がやった事の罪は重いというか…梶野氏もまた、かつてはクルピと共に素晴らしいチームを作り上げただけにどうしてこうなった…的な部分はあると思います。色んな意味で。

 

 

 

後任は小菊昭雄コーチが昇格する形で監督に就任します。

小菊コーチというのは2005年から実に16年に渡ってトップチームのコーチを務めており(途中フロントスタッフの経験も歴任)、2012年12月の天皇杯など、監督が何らかの事情で不在の際には代行監督を務める事もありました。今年4月にクルピ監督が濃厚接触者に認定された時も代行で指揮を執ってたように、セレッソファンからも「どこかのタイミングで監督になるであろう人」という目で見られていたと思います。個人的に小菊氏みたいなキャリアの方が監督を務めるというのは面白いというか、興味深いですよね。プロ経験がなく、そもそもセレッソにスタッフとして入った1998年はアルバイト扱い。そこから小林伸二、クルピ、ロティーナなど様々な監督の下でコーチを務めて監督まで来る…という事ですから、こういうキャリアの監督がどこまでやってくれるのか、という部分は少し楽しみなところもあります。

ただ、一方でセレッソ側は元々2021年の1シーズンのみをクルピ監督に託し、2022年から小菊コーチを昇格させる予定だったそうで。

 

 

思い返すと、これって2018年にガンバがやらかした事と全くそのまんま一緒なんですよね。

ガンバも翌シーズンだったかどうかまではわかりませんが、近い将来の宮本恒靖監督就任を前提にした上でクルピを監督に据えていました。しかしクルピの下で結果が出ず、残留争いがチラつく事態になった事で予定を前倒しして監督交代。結果、宮本監督は凄く難しい中途半端なタイミングでバトンを渡されるというか、バトンをブン投げられる形になってしまって。セレッソよ、おたくらガンバ見てなかったの…?みたいな状態にもなってる訳ですよ。果たしてこれが吉と出るか凶と出るか……。

 

 

 

最近冒頭の下りすっ飛ばすこと増えてる。

ではでは(´∀`)