【Jリーグ、VAR再導入】VARについての歴史と現状の問題点と、意識すべき事について考えてみた。

マッチレビュー以外で2021年初めてちゃんとブログ書いてる。

 

どーもこんばんは

 

さてさて、年も明けまして2021年。今年のJリーグはいくつか変更点があります。言うまでもなく最も大きいのは降格チームが4チームになるところ。やっべぇよね…これやっばいね。4チームですよ、4チーム……勝点計算めちゃくちゃ胃が痛くなりそう。

で、もう一つの変更点はやはりVARの導入です。

 

 

 

…まぁ、厳密には2020年も元々は導入予定だったので「変更点」という言い方は相応しくないかもしれませんが。2021年シーズンでは明治安田生命J1リーグFUJI XEROX SUPER CUP 2021、2021JリーグYBCルヴァンカップ プライムステージの3大会で採用される事が発表されており、2022年にはここにJ1参入プレーオフが加えられる予定となっていますので、とりあえず2022年までは基本的にはJ1とルヴァン杯の決勝トーナメントのみで適用されます。

元々は2020年もVARが導入される予定になっていたので2月21〜23日に行われたJ1開幕戦でもVARは適用され、実際に湘南vs浦和、川崎vs鳥栖横浜FMvsG大阪ではVARにより判定が覆ったシーンも。しかしご存知のように開幕戦が終わった段階でJ1は新型コロナウィルスの影響により中断。7月4日に再開を果たしたものの、人材確保が困難である事から第2節以降の導入は見送った…という背景がありました。一方、ACLでは準々決勝からVARが導入され、神戸vs蔚山現代の対戦となったベスト4では75分に佐々木大樹がゴールを決めた一連の流れにVARが介入して得点が取り消され、来季からJ1でVARが再導入される背景もあって大きな話題に。イングランドプレミアリーグに於いても最近は「VARの過剰介入」が目立ち、日本のみならず世界的に「VARの是非」が改めて問い直されています。

VARのルールや運用にに関しては、DAZNで配信されている「Jリーグジャッジリプレイ」然り、個人ブログでも詳しく書いていらっしゃる方が多くいるのでここでは触れず、今回はVAR導入の歴史を振り返りつつ、単純に私自身がVARに対してどう思っているのかやVARの課題や現在の過剰介入について考えていこうと思います。

 

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近年ではサッカー市場の規模拡大もあってカメラも増え、ピッチの中の死角が随分と減るようになった事で、長きに渡り訴えられていた重大な誤審を防ぐ為の技術・制度の導入の議論は2010年代頃から活発化されていきました。12-13シーズンの一部試合ではVAR導入を主導したオランダサッカー協会により12オランダ国内の一部の試合で試験導入され、トップリーグでは17-18シーズンよりドイツ(ブンデスリーガ)とイタリア(セリエA)にて本格導入。2018年にはロシアで開催されたFIFAワールドカップでも採用されました。

ロシアW杯の際には賛否両論こそあったとはいえ、当初懸念された程は混乱と騒動は起きませんでした。というのも、W杯の際は原則として「明確な誤審以外には介入しない」という方針のもとで行われた部分も影響しています。否定的見解も決して少なくはなかったものの、W杯では比較的スムーズに運用が進んで一定の成功は収めたと考えられた事で、18-19シーズン以降はUEFAが管轄するヨーロッパのリーグを中心にVAR導入が一気に加速しました。

 

VARがここまで一気に広がった理由の一つには「GLTの存在」が挙げられます。GLT(ゴールラインテクノロジー)とは、一応最終的には審判員が判断するVARとは異なり、ゴールに入ったかどうかを機械が判定してくれるものです。ゴールラインは動きませんし、ファウルとは違って判断するものが「ゴールラインを割ったかどうか」のみであり、重要かつ基準も主観も無いので、GLT導入に関しては基本的に支持されていました。

しかし、GLTの最大の問題は余りにもコストがかかりすぎる事。GLT専用の機械をスタジアムに設置するには1会場につき約1600万円かかると言われていて、一つの会場に設置するという事は全スタジアムに付ける必要がありますので、古い設備の整っていないスタジアムならGLTを設置できる状況にする必要もあるかもしれません。しかもあくまでリプレイ映像を見るだけのVARとは違って、自動でゴールを判定できる精密機器とあらば故障や不具合のリスクもありますし、そもそもサッカーはゴールシーン自体がそんなに多いスポーツじゃない。W杯規模ならまだしも、通常のリーグ戦でGLTを導入するのは余りにも負担が多過ぎるのです。

ですがVARさえ導入すれば、それは結果的にGLTの目的を兼ねる事も可能になります。GLTのメリットと目的を維持しながら障壁をクリアできるという部分もVARの促進には大きな後押しとなったのは間違いありません。

 

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ですがロシアW杯以降急速にVARが広がり始めると、徐々に「明確な誤審以外には介入しない」というW杯時の原則が完全に失われ始めました。直近であれば前述の神戸vs蔚山現代の他にはプレミアリーグエバートンvsリバプールクリスタル・パレスvsリーズ・ユナイテッドが代表例でしょうか。

その理由としては多くか分けると以下の2点が挙げられます。

 

ミスジャッジをしても最悪VARでなんとかなる事を理由に審判がプレーを止めなくなった(基本的に一旦流すようになった)

②あくまで審判の補助だったはずのVARとの力関係が逆転し始めた(「審判>VAR」であるべき原則が「審判<VAR」になり始めた)

 

①に関してはそこまで悪いことでは無いですし、VAR導入がもたらす一つのメリットであるともいえます。具体例を挙げると2020年J1開幕戦の横浜F・マリノスvsガンバ大阪の試合に於ける34分の矢島慎也のゴールに至る一連のプレーでしょうか。

流れとしては、一気にラインを上げたマリノスDFの背後にGK東口順昭がボールを蹴り、抜け出した倉田秋の折り返しに矢島が詰めた…というシーンでしたが、マリノスDFの背後に抜けた倉田がボールを受けた時点でオフサイドの有無が問われました。しかし副審はすぐには旗を上げず、一旦攻撃の流れが止まるまではプレーを続行させてからオフサイドを申告。最終的にVARによりオフサイドでは無い事が明確になったのでゴールが認められてオフサイド判定が取り消された…というシーンです。

VARをどこまで意識していたかはわかりませんが、この場面で倉田は積極的に押し上げるマリノスのDFラインに対して高度な駆け引きを仕掛けていました。もしここで旗が上がり笛が吹かれればプレーを止めなければならないので、倉田のところでプレーが止まれば必然的に幻のゴールにさえなっていなかった事になります。オフサイドなど攻撃側の反則による誤審だと幻のゴールにすらならない可能性があるので、一旦流して様子を見る余裕が出来たのはVARがもたらした一つのメリットだと考えています。

 

 

 

一方で②は相当深刻な問題になりつつあります。上で述べた①のメリットは「審判がVARに依存するようになった」という上体を加速させる事にも繋がりました。上で挙げたプレミアリーグの件や神戸の件はまさに典型的な例と言えるでしょう。

まず、第一にVARは使用場面が限定されているとはいえ、その場面に該当する区域であれば些細な事でも介入するようになってしまった事。よく言われるのは「相手チームの選手が誰も抗議すらしていないのにVARが発動している」という状況ですね。この言葉をあまり正当化すると「とりあえず抗議しとけばいい」みたいな話になりかねないのであまり推し出したくは無いのですが、誤審を受けた側のチームですら「え?今のファウルあったの?」となってしまうようなシーンにまでVARが入り始めたのは最近の傾向として事実です。

 

最近では審判がVARを有意義に使うようになったというよりは審判がVARに責任を投げるような場面が目立ち、しかもVARもその責任を果たしてしまう事例が多くなってきています。前述のプレミアリーグのシーンではオフサイド判定の際に画面上にミリ単位のラインを引き、ボールを要求するジェスチャーの手ですらオフサイドと判定するようになり始めました。今季のプレミアではこういったシーンが頻発しており、挙げ句の果てにはVARで得をした形になったチームの選手からもクレームをつけられる始末です。

 

最終的に上記のオフサイドの件にも繋がる話なんですが、先日の神戸vs蔚山現代の試合は②の状況を象徴するようなシーンでした。

ルール上、VARがあったとて最大かつ最終的な権限を持つのは主審です。VARによる助言があって主審が映像を確認したところで、主審が判定を変える必要は無いと思えば判定を変える必要は無く「VARが介入すれば判定を変えなければいけない」というルールでは決してありません。ですが、最近は審判の中で「VARが入ったら判定変更」が少しテンプレ化しているような気がします。これが上で書いた「審判がVARに責任を投げるようになった」と感じる部分です。

要するに、審判がファウルを認識していない時にVARが介入してしまった時点で、審判にとってはある種の「間違い探し」が始まるような状況になってしまっているのです。力関係としては「審判の仕事をVARに手伝ってもらう」という形であるはずなのが、今や「はいVAR入りまーす。どこがファウルなのか探してやー」という「VARクイズ」みたいな状態というか。そうなると審判はミスジャッジがあったか否かを確かめるのではなく、画面の中からファウルを探す粗探しのような事をし始めてしまうように最近はなってきました。その典型が神戸vs蔚山現代のあのシーンだったと思います。

 

言ってしまえばもはや、現状のVARなんてサイゼリヤの間違い探しみたいなもんですよ。あれって間違いを7つ探せって言われるんですけど、最後の1〜2個くらいがめちゃくちゃ難しいんですよ。6つ目、7つ目が全然見つからないうちに、頼んだメニューがぼちぼち出来上がりそうというタイムリミットは迫る。そうなると段々自暴自棄になって「この部分の印刷がちょっとズレてる」とか言い出すんです(経験アリ)今は「ファウルを血眼に探す」という状況が問題視されていますが、このまま「審判<VAR」になりつつある現状が加速すると「ファウルを無理矢理画面の中から作り出す」という状態に陥る可能性だってあるかもしれません。

 

 

 

色々言いましたが、私自身はVARを賛成か反対かの二択で問われれば賛成寄りです。マラドーナの神の手」と呼ばれた1986年メキシコW杯のイングランドvsアルゼンチンを筆頭に、2002年日韓W杯の韓国vsスペインのホアキンのクロス、2010年南アフリカW杯予選でのアンリのハンド疑惑……ファンやサポーターにとっては時間が経てば一つの伝説や思い出として消化出来たとしても、当事者にとっては自身の栄誉や収入を含めたキャリアに直結しかねない問題な訳で、VARないしはそれに準じたシステムを採用する事には賛成というスタンスではあります。同時に、現状の悪い方向に転がりかかっているVARはどうにかして欲しいとも思っていますし、過剰介入については勿論反対ですし、VARを「現状のVAR」とするなら反対に傾きます。なんなら「VARに賛成」というよりは「VAR的な技術と制度を導入する事に賛成」みたいなスタンスですからね。

これは審判団に意識してもらいたいのは勿論、我々見る側としても意識しておきたいと思うのが「VARは必要最低限でいいという認識」「VARを介入したからといって判定を変えなくてはならない訳では無いという判断」「審判>VARという前提」……この3つの意識は裁く側には常に持っておいて欲しいし、見る側もこの3つを意識は持ち合わせた上で見ていかないといけないと思っています。

 

 

 

ちなみに私、W杯で初めてVARが適用された試合は現地で観てました(フランスvsオーストラリア)。

 

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ではでは(´∀`)