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アジア各国のリーグをざっくり紹介してみる〜第5回 サウジアラビア サウジ・プロフェッショナル・リーグ〜

 

 

 

でもよくよく考えたら中東ってずっとバブルだしなぁ…

 

どーもこんばんは

 

さてさて、アジア各国リーグを雑に紹介する企画、実に2年ぶりの5回目でございます。

過去シリーズのリンクは一応貼っておきますが…情報は完全に2〜3年前!中国回に至っては何チームか消滅したぞ!…というクソタイムラグ状態でも良ければ是非ご覧くださいまし。

 

 

……はい、という訳で今回はですね。まぁ、ほぼ封印というか自分でもぶっちゃけ存在を忘れていた企画群をわざわざやろうと思うだけのリーグがあったという訳ですよ。

 

 

 

サウジ・プロフェッショナルリーグ

 

 

 

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サウジリーグといえば、確かにJリーグファンからすれば古くはブラジル人助っ人が強奪されたり、欧州トップクラブで少しピークを過ぎた選手が中堅クラブではない移籍先として選んだり…といった立ち位置で、ポジションとしてはカタールUAEに近かったように思います。

しかし今季…もう完全に移籍市場の主役でした。まー恐ろしかった。クリスティアーノ・ロナウドアル・ナスル移籍を引き金にラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。今がピークみたいなトッププレーヤーまで獲るもん。やべえよあんなの。日本でも一部の試合はSPOTVで観れるようになったみたいですし。

という訳で今回は有力チームを紹介しつつ、リーグの歴史・概要・システムを書き連ねていきます。

 

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いってもサウジアラビアは中東の中でも昔からサッカーが盛んな国でして、今年のバブルっぷりは新興勢力感もパッと見はありますが、サウジという国自体のサッカーの歴史は結構深いです。それこそ、日本が台頭する以前はアジアサッカーはイラン・サウジ・韓国で回っていたようなところもありますし。

 

 

 

1976年以前はサウジ・キングスカップというカップ戦のみが国内コンペティションでしたが、1976年に8チームでリーグ戦をスタートさせると、1981年より2部リーグ制がスタート。1990年にプロ化に移行し、当時は年間王者はプレーオフで決定していましたが、2007年より通常の2回戦総当たり方式のリーグ戦になったと共に現在の名称になりました。なお、超保守的なイスラム教国という背景もあってかねてより女性の権利問題が問われているサウジアラビアですが、女性のスタジアムでのサッカー観戦は2018年より解禁されています。

 

前述のように元々サウジアラビアはサッカーが盛んな国として知られていましたし、カタールUAEのようにオイルマネーの力は元々有していただけでなく純粋にサウジアラビア代表がアジアサッカーの中で屈指の競技力を持っていましたから、やはり西アジア諸国の中ではACLでも常々存在感を発揮しています。前身のアジアクラブ選手権も含めると、サウジのチームの優勝回数は韓国、日本に次いで3位。決勝進出回数では韓国に次いで2位になっており、クラブ別ではアル・ヒラルが優勝回数・決勝進出回数共に1位。今回のバブル以前から、ACLで戦う西アジアの相手としてはカタールUAEのクラブ以上に警戒されていたところはありますね。

 

 

 

さて、2023年に話題になっているサウジの爆買いですが……結局のところはオイルマネーではあるんですけど、単なるオイルだけで語れるプロジェクトという訳でもないんですね。

というのも、言っても石油はいつか枯渇する時が来る訳じゃないですか。それは世界共通認識の課題であり、サウジを含めた中東諸国もその自覚はある。それが石油が採れなくなるのが先か、それに代わるエネルギー源が確立されるのが先かはともかくとして、いずれ石油だけでは立場を失う時期が訪れる…なので、カタールカタールW杯でもそうですけど、中東諸国はオイルマネーによるキャッシュが確保できているうちに別の形でのビジネスを確立させておく必要がある…と。いわゆる「石油に頼らない経済強国」になる為の目標として定めたのが「ビジョン2030」で、ここには医療や学問を含めた社会的インフラの増強もそうですし、エンターテイメントコンテンツを強化する事で投資と進出を呼び込んでいこうと。目標が2030年までに完成するかどうかはともかくとして、実際に医療の向上であったりGDPの向上だったりと、既に一定の成果は出つつあるようで。

その一環としてサウジはスポーツエンターテイメントに巨額の投資を行い、例えばゴルフやテニスなんかがわかりやすいですね。そしてサッカーではニューカッスル・ユナイテッドを買収した事でも知られる政府系ファンドのPIFが、サウジリーグに所属する4クラブを実質的に買収する形になったことが今回の一大ムーブメントに繋がりました。言ってしまえば、いくらオイルマネーとは言ってもこれまでは一つの金満クラブとして補強を行っていたのが、国家予算としてクラブ経営を行えるようになってしまった。そこが、あくまで一つずつのクラブが多額の資金を注ぐ形だったこれまでの中東や中国バブルとの最大の相違点で、強化計画が一クラブの範疇を超えて、それ自体が国家プロジェクトになった…という側面はあります。

要はサウジに限らず日本でもそうですが、それこそコロナ禍で「エンタメは不要不急か否か」みたいな議論がありましたが、エンタメってやっぱり経済を循環させて膨らませる為のツールとして一番わかりやすいんですよね。サッカーもテニスもゴルフも。スポーツのみならず、あれだけ厳格なイスラム教国だったサウジが2019年に女性の入場も認めた上でBTSのスタジアムコンサートを開催したくらいですから。なので、セットで語られる人権問題に対するスポーツウォッシングの要素も確実に存在しますが、一連のサウジのムーブメントはそれがメインというよりは、それも一要素とした上での超巨大プロモーション、超大型ブランディングといった方が正解でしょう。

 

では23-24シーズンに出場するチームのラインナップを。

 

【23-24 サウジ・プロフェッショナルリーグ】

アル・イテハド(1位)

アル・ナスルFC(2位)

アル・ヒラル(3位)

アル・シャバブ・リヤド(4位)

アル・タアーウンFC(5位)

アル・ファトフSC(6位)

アル・イテファク(7位)

ダマクSC(8位)

アル・タエー(9位)

アル・ラーイド(10位)

アル・フェイハ(11位)

アブハー(12位)

アル・ワフダ・メッカ(13位)

アル・ハリージュ・クラブ(14位)

アル・アハリ・サウジFC(2部1位)

アル・ハズム(2部2位)

アル・オクドゥード・クラブ(2部3位)

アル・リヤド(2部4位)

 

アル・イテハドアル・ヒラルアル・フェイハACL本戦に、アル・ナスルACLプレーオフに出場する。

 

《レギュレーション》

・2回戦総当たりのリーグ戦

・1位と2位は24-25シーズンのACL出場権を獲得

・16〜18位の3クラブが降格

 

 

 

【一部チーム紹介】

※1 ACLでの成績は前身のアジアクラブ選手権を含む。

※2 すべて8月11日時点での情報に基づく。

 

アル・イテハド

★ACL23-24出場

 

創設年:1927年

22-23順位:優勝

ACL最高成績:優勝(2004,2005)

監督:ヌーノ・エスピリト・サント(2年目)

本拠地:ジッダ

ホームスタジアム:キング・アブドゥッラー・スポーツシティ

 

前年度優勝チームであり、サウジ屈指の名門チーム。近年は成績を落とすシーズンもあったが、ヌーノ監督に率いられた昨季は14年ぶりの優勝を果たし、アルヒラルの連覇をストップさせた。ACLでも2度の優勝経験がある他、2009年のACLでは準決勝で名古屋グランパスに圧勝している。また、1999年には当時行われていたアジアスーパーカップではジュビロ磐田アウェイゴールの差で優勝を譲った。伝統的に黄色と黒の縦縞ユニフォームを着用している。

サウジバブルのパイオニアとなったのはアルナスルC・ロナウド獲得だったが、今夏のサウジ移籍ラッシュの引き金を引いたのはこのクラブがレアル・マドリードから現役バロンドーラーであるカリム・ベンゼマ(フランス代表)を獲得した事だった。加えて、共にプレミアリーグUEFAチャンピオンズリーグの制覇経験があるエンゴロ・カンテ(フランス代表)とファビーニョ(ブラジル代表)も補強。大型補強でありながら堅実さも手に入れ、連覇を目指す。

 

 

アル・ナスルFC

★ACL23-24プレーオフ出場

 

創設年:1955年

22-23順位:2位

ACL最高成績:準優勝(1995)

監督:ルイス・カストロ(新任)

本拠地:リヤド

ホームスタジアム:キングサウード大学スタジアム

 

首都、リヤドに本拠地を置く名門。同じくリヤドを本拠地とするアルヒラルとは長きに渡ってライバル関係として知られており、13-14シーズンから昨季にアルイテハドが優勝するまでの9シーズンは1シーズンを除いてアルナスルアルヒラルが優勝していた。同国での人気もこの両クラブが2トップのような形となっている。

このサウジバブルはこのクラブがクリスティアーノ・ロナウド(元ポルトガル代表)の補強に成功したところから始まったと言えるので、ある意味このプロジェクトに於ける最も大きな役割を果たしたクラブと言える。今季もブロゾビッチ(クロアチア代表)、サディオ・マネ(セネガル代表)といったワールドクラスを補強。多くの現役サウジアラビア代表を擁し既存戦力でも一定のタレントパワーを誇っているだけに、リーグタイトルの奪還と共に、未だ経験のないACLタイトル獲得を実現したい。

C・ロナウド獲得の影響は様々な意味で大きく、今夏には日本ツアーを実施した事でも知られる。大阪のヤンマースタジアム長居パリ・サンジェルマンインテル・ミラノと対戦した。

 

 

アル・ヒラル

★ACL23-24出場

 

創設年:1957年

22-23順位:3位

ACL最高成績:優勝(1992,2000,2019,2021)

監督:ジョルジェ・ジェズス(新任)

本拠地:リヤド

ホームスタジアム:キング・ファハド国際スタジアム

 

ACL決勝では浦和レッズと実に3回も対戦しており、その経緯から日本でもすっかりお馴染みになったサウジ屈指の名門。その実績に疑いの余地はなく、サウジリーグの優勝18回とACLの優勝4回は共に史上最多であり、ACLでは決勝進出回数9回も史上最多記録。昨季は3位で4連覇こそ逃したが、ここ7シーズンで実に5度の優勝を果たしている。

大金星を挙げたカタールW杯アルゼンチン戦のサウジアラビアのスタメン11人中9人がアルヒラル所属選手だった事が物語るように、所属選手は基本的にほぼサウジアラビア代表。助っ人も強力な選手を常に揃えているが、今季はそこにカリドゥ・クリバリ(セネガル代表)、ルベン・ネヴェス(ポルトガル代表)、セルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ(セルビア代表)といったトップクラスを続々と獲得。磐石のスカッドとなった。ネルシーニョトニーニョ・セレーゾなど歴代監督のラインナップにはJリーグ監督経験者も多いが、近年は監督交代の頻度がかなり高い。

なおアルヒラルと言えば浦和のイメージが強いが、前身のアジアクラブ選手権アジアカップウィナーズカップ(ACWC)、アジアスーパーカップ(AC)ではJクラブや前身クラブとの対戦経験も多く、アジアクラブ選手権ではジュビロ磐田、ACWCでは名古屋グランパス、ACでは清水エスパルスを決勝で倒して優勝しているが、アジアクラブ選手権時代は古河電工に決勝リーグで、読売クラブに大学受験の日程と被ったことによる棄権(不戦敗)で敗れている。

 

 

 

アル・シャバブ・リヤド

 

創設年:1947年

22-23順位:4位

ACL最高成績:準優勝(92-93)

監督:マルセル・カイザー

本拠地:リヤド

ホームスタジアム:プリンス・ファイサル・ビン・ファハド・スタジアム

 

首都・リヤドに本拠地を置く強豪チーム。人気やタイトル獲得数では同じリヤドのアルヒラルアルナスルに及ばないながらも、その両者とアルイテハドに次ぐ歴代4位となる優勝回数(6回)を誇っており、11-12シーズンの優勝以降は中位に留まる年も多かったが、ここ3シーズンはいずれもトップ5に入り、安定した順位をキープしている。

前述のように、移籍市場の主役となっているクラブはPIFの傘下に置かれたクラブが中心だが、アルシャバブPIFの買収対象ではなく、非PIFのクラブとしては最も実績のあるクラブと言える。それでもカタールW杯のサウジアラビア代表にはリーグで3番目に多い4選手を送り出しており、現役サウジ代表以外にもエベル・バネガ(元アルゼンチン代表)やJリーグでもお馴染みキム・スンギュ(韓国代表)を擁しており、補強はアルヒラルに押し出される形になったグスタボ・クエジャール(コロンビア代表)など最小限に留めた。激動のサウジの中で、非PIFで最も計算が立つ彼らがどこまでタイトルレースに食い込めるか。

 

 

アル・イテファク

 

創設年:1944年

22-23順位:7位

ACL最高成績:3位(1989)

監督:スティーブン・ジェラード(新任)

本拠地:ダンマーム

ホームスタジアム:プリンス・モハメド・ビン・ファハド・スタジアム

 

世界最大クラスの石油会社、サウジ・アラムコの本社があるダンマームに本拠地を置くクラブ。1980年代に黄金期を迎え、リーグ初優勝となった82-83シーズンは無敗優勝を達成しており、1983年のGCCクラブカップ優勝は、サウジアラビアのクラブにとって初めての国外タイトル獲得でもあった。80年代には国内外で複数タイトル獲得を果たした古豪クラブ。

近年は低迷が続く中、古豪復活を期して、 ムサ・デンベレ(フランス)やジャック・ヘンドリー(スコットランド代表)など欧州の実力者を積極補強。更にかのスティーブン・ジェラードを新監督として招聘すると、監督が強い影響力を持つリバプールからジョーダン・ヘンダーソン(イングランド代表)を獲得した。ヘンダーソン獲得のインパクトからアルイテファクもPIF傘下のような印象を受ける人も多いが、アルイテファクに関してはPIF傘下のクラブではない。

 

 

 

アル・アハリ・サウジ

 

創設年:1937年

22-23順位:優勝(2部)

ACL最高成績:準優勝(1986,2012)

監督:マティアス・ヤイスレ(新任)

本拠地:ジッダ

ホームスタジアム:キング・アブドゥッラー・スポーツシティ

 

メッカの玄関口として知られるジッダに本拠地を置くクラブで、同じくジッダを本拠地としているアルイテハドとは共通のホームスタジアムを使用している。国内カップ戦であるサウジ国王杯では最多優勝を飾っており、リーグ戦でも15-16シーズンに3度目の優勝を果たすなどサウジ有数のクラブだったが、優勝から6年後にはまさかの2部に降格。それでも1年で昇格し、トップリーグへの復帰を果たした。

PIF傘下となる4クラブのうちの一つで、降格自体が意外だってとはいえども一応昇格組であるにも関わらず4クラブの中でも特に大胆な大型補強を実施。ロベルト・フィルミーノ(ブラジル代表)、エドゥアール・メンディ(セネガル代表)、リヤド・マフレズ(アルジェリア代表)といった近年のCL優勝メンバーに加え、フランク・ケシエ(コートジボワール代表)やアラン・サン=マクシマン(フランス)といった実力者を補強し、ロジェール・イバニェス(ブラジル代表)も獲得濃厚。特にマンチェスター・シティの三冠に貢献したばかりのマフレズやまだ24歳のイバニェス獲得は大きなインパクトを与え、監督までもザルツブルクからヤイスレ監督を引き抜いてみせた。

クラブ名の「アル・アハリ」はアラビア語圏のクラブチームによく使用される名前ゆえに混同しやすいが、エジプトのアルアハリ以外は都市名を冠している。

 

 

あらびあ〜ん

ではでは(´∀`)