RK-3はきだめスタジオブログ

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浦和レッズの天皇杯出場権剥奪に対する個人的見解と思う事(CASの件についても少し触れています)

 

 

 

2023年9月19日、日本サッカー協会(JFA)により、同年8月4日の天皇杯ラウンド16、名古屋グランパスvs浦和レッズの試合後に発生した浦和レッズサポーターによる事案についての処分発表がありました。

 

 

詳しい事やJFAとしての根拠は上記のJFAの公式リリースを読んでくださいという事で、簡潔に浦和の処分内容をまとめると【①2024年度天皇杯天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会)の参加資格の剥奪】【②譴責(始末書の提出)】の2点。特に①に関しては日本サッカーの歴史としては例を見ない処分でしたので、その処分が持つ意味の強さは多くの人が感じている事でしょう。

 

なぜ今回のような前代未聞の処分にJリーグは至ったのか。

あくまでJFAのリリースに基づいた推測にはなりますが、個人的な見解を書いていこうと思います。

 

 

 

JFAリリース内で「日本サッカー史上、過去に類を見ない極めて危険かつ醜悪なものであり」と言及しているように、今回の件は実際に、暴動の規模としては日本サッカー史の中で前例のないものでした。

ただ、そこで争点になる部分の一つとして、サポーターはいわばいち観客でもある訳で「観客の行為に対する責任をクラブが負うべきか否か」という部分があります。これは今回の浦和の件に限らず、サポーターの行動が事件化、ないしは問題視された時に議論されるテーマの一つで、当然ながら今回もその是非を問う声はありました。

 

個人的な考えとしては、サポーター(客)の行為をクラブの責任として、大会出場資格を含めた成績・結果に対する制裁……ここでいう成績や結果への制裁というのは今回で言うところの天皇杯出場権剥奪もそうですし、一部で叫ばれる勝点剥奪や降格処分もそれに該当しますね。そういう成績や結果に対する制裁を、今回のようなあくまで観客としての立場の人間の行為で科す事は、私個人の感覚としては基本的には反対というか、賛成ではありません。

ですが一方で、例えばサポーターグループであったり、その中枢に位置するような人達を「クラブと全く関係のないただの客」として扱う事も正直無理があると思っています。これは浦和に限った話ではないですが、程度はともあれ、基本的にサポーターグループはクラブと一定の相互関係がある。そうである以上、クラブは彼らに対してある程度の管理責任は負う事となるでしょうし、クラブが何かしらの処分を受ける事は自然です。

個人的な考えとしては成績面と運営面の処分は異なるものだと思っていますから、サポーターの行為で勝点やカテゴリーに関わる成績面での処分を科すべきではない。同時にクラブにはある程度の管理責任は生じていると思うので、運営面の処分…例えば罰金であったり、無観客試合としてホームゲームを行う事であったりの処分が、今回のような件で与えられるべき処分だと考えています。なので、そういう私としての元々の感覚で言えば、今回の件は事案だけで見れば無観客試合辺りが落としどころだと思っていました。

しかし、今回の試合は天皇杯である以上、JリーグではなくJFAが管轄する試合という事になります。ですので、JFAの主催大会での事案でJリーグの勝点を減らす、カテゴリーを下げるといった処分を科すのは整合性が取れず、それはJ1リーグ戦の無観客試合でも同じ事で、クラブが自主処分として無観客試合の設定でもしない限りは無観客試合JFAが科す事は出来ない訳です。じゃあJFAが科せる範囲で言えば「天皇杯の浦和ホーム開催分の無観客」や「浦和の天皇杯ホーム開催権剥奪」だったりもあるとは思いますが、本件の大きさと比べるとこれらは処分としての意味が薄い。本件の大きさと、浦和レッズというクラブのこれまでの累積を踏まえてより強い処分を…と考えた時、その文脈に最も沿う制裁が天皇杯の出場権剥奪だったと解釈すると、JFAがそういう解釈でこういう判断に至った事は理解出来ます。

 

 

 

ただ、踏み込んだ重い処分は必然的に前例となってしまうので、これはJFAに限らずどの団体・どの企業に於いてもインパクトの強い処分は極力科したくないはずです。だからこそ、今回のような特段に重い処分を科すにはそれだけの理由がいる。その理由として、浦和のこれまでの累積という部分が大きく影響したと思います。

実際に上記のJFAのリリースに於いても、JFAとしてその部分も踏まえた処分になった事を示唆する文言がありました。

 

これまでにも、対象者のサポーターが引き起こした問題行動による懲罰事案は、Jリーグ及び天皇杯を含めて2000年以降だけでも11件にも上る。サポーターの問題行動が起こるたびに、対象者が、再発防止に向け、様々な取組みを行ってきたことは一定程度評価するものの、残念ながら、そのような取組みにもかかわらず、対象者のサポーターによる問題行動は繰り返され、それらの問題行動は改善を見せるどころか、本件のような集団的に暴徒化するという許されざる暴挙にまで至っている。このような実態を直視すると、対象者による取組みは十分ではなかったといわざるを得ず、対象者にさらなる猛省と実効性のある再発防止策の策定及び実施を促すには、これまでと同様に罰金の処分を重ねたとしても、十分な効果は得られないと考えられる。

【規律委員会】 2023年9月19日付 公表

 

特に「対象者にさらなる猛省と実効性のある再発防止策の策定及び実施を促すには、これまでと同様に罰金の処分を重ねたとしても、十分な効果は得られないと考えられる」の部分に関してはある意味では今回の処分の全てとも言えるものでしょう。

現に昨年、浦和が度重なるガイドライン違反により2000万円の制裁金を科された際に、これはJFAではなくてJリーグでの事案ではありましたが、今回の処分の予告じゃないですけど…いわば「次なにかやれば成績面の処分にも踏み込むぞ」という事は明言されていました。

 

浦和レッズに対するサポーターの行為に起因する懲罰事案は、複数回に及んでおり看過できないものとなっている。集団で声を出して応援することはサポーターによる応援の本質的事項に関わるものであり、声出し応援の禁止等のガイドライン遵守をはじめとする秩序維持にはサポーターの強い自律が必要であって、クラブには、これを促すための不断の改善努力が求められる。短期間のうちに少なくとも複数回にわたり秩序を損なう行為を阻止できなかったことは重く受け止めざるを得ない。かかる状況はJリーグ全体への社会的信用の低下につながるものであることを再認識するよう要請するとともに、今後Jリーグも浦和レッズと共に再発防止に向けて対応するものの、浦和レッズが再びサポーターの行為に起因する懲罰事案を発生させた場合、無観客試合の開催又は勝点減といった懲罰を諮問する可能性があることを付言しておく。

懲罰決定について

 

結局のところ、クラブに対する罰金処分では事案を引き起こしたサポーターも当事者意識を持てないという部分が生じてくる。例えばJ3の小規模のクラブが2000万円の罰金を背負えばそれはもうクラブの存続に関わる問題となりますが、浦和のようなビッグクラブが2000万円の罰金を背負っても、もちろんクラブとしては痛いですが、存続の危機に陥る訳でもなければ補強も問題なく行っている…JFAのリリースの言葉を借りると「自らの行為がクラブに招いた結果の重大性」の実感を罰金では当事者には与えられない。そして現に浦和サポーターは繰り返してしまった…と。

 

 

 

加えて、もちろんそれを多数派と言うつもりはないですが、例えば今回で挑発した側とされる名古屋陣営や先日の天皇杯に於けるFC東京の事案を引き合いに出して、去年の罰金にしても「JFAが恣意的に浦和ばっかりを…」と言った具合に、まるで自分達が虐げられた被害者のようなムーブをしようとする層も見受けられました。もちろんそれらは少数派ではあると思いますが、少なくとも一部でそういう空気や風潮が醸成されている事は否めなくなった。それは色々掲示される横断幕を見ても察せられる部分だったと思います。

同時に、サポーターの独立性とクラブとの関係性はそのバランスを巡って議論になる事は浦和に限らずどのクラブでも少なからず起こっている話ではありますが、浦和に関しては浦和ゴール裏自体が唯一無二の価値を持っており、それが浦和レッズというクラブそのもののアイデンティティさえ背負っていたからか、浦和の場合はクラブがゴール裏の顔色を窺っているんじゃないかと思える部分が強かったり、むしろクラブがゴール裏に何も言えなくなっているというか、ちょっとパワーバランスがおかしくなっているように感じる節もありました。そうなるとJFAとしても「もはやクラブの取り組みに委ねるだけでは同じ事が起こるだけ」という判断になるしかなかったのでしょう。この期間の中で「なんで浦和ばっかり」とはよく聞いたフレーズで、それはJFAもおそらく思っている。ただそこには「なんで浦和ばっかり(恣意的に処分されなきゃならないのか)」と「なんで浦和ばっかり(ここまで問題事案を起こすのか)」と同じ言葉でも大きな意味合いの違いがあると思います。

名古屋の挑発行為にしても、名古屋を擁護するつもりはないですし、名古屋にも何かしらの処分があっても不自然ではないと思う一方で、個人的な感情ですが…この件を強く何かの根拠にしようとする一部浦和サポの論調には「普段ああいう感じで他所にやってるのに、ちょっとやられたらそうなるんだ…」と。今回の件とは関係ありませんが、例えばACL埼玉スタジアムでの開催可否問題にしたって、あれだけ埼玉県やJFAを劣化の如く総攻撃した割には、申請のところでクラブにまあまあな落ち度があったところにはほぼノータッチで被害者として振る舞い続けたところに正直モヤっとした感覚を抱いたのは偽らざる感情でした。これは浦和に限った話ではないですけど、普段は「自分達は単なるお客じゃない」という立場でいようとするのに、こういう時になったら「自分達はただの客」というスタンスで通そうとする人もいますし。

 

 

 

その辺りを踏まえると、私個人としての考えは天皇杯の出場権剥奪は基本的には賛成出来ないという一方で、JFAの言う「これまでと同様に罰金の処分を重ねたとしても、十分な効果は得られないと考えられる」という文言に照らせば、今回に関してはJFAの理屈に納得出来ると思っています。

 

浦和レッズの公式声明

 

最後に付け加えておくと、上で書いたように本来なら運営面での処分に留めることが定石である中で、協議面に処分を及ばせた…という処分は異例である事は確かです。実際、客の行為に対する処分を出場資格を含めた競技成績に科すべきなのかどうか?については選手の権利を含めて是非が問われるところではあります。

つまるところ、浦和はスポーツ仲裁裁判所に提訴できる立場ではありますし、最終的にどちらの望む裁定になるかはわかりませんが、少なくとも審判を仰ぐ権利は有しているとは考えられます。そうなった場合、提訴が通れば処分保留という事で2024年の天皇杯には出場できる可能性もありますし、それで敗訴した場合は処分執行が翌年以降に持ち越される…という形になる事が予想されます。個人的にはJFAのリリースには特に違和感は持っていないので、処分が減刑される可能性で言えば高いとは思わないですが、それは世間がなんと言おうとクラブの持つ権利ですからね。